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漢字・かな混じりの単語というのは、どうにも気持ち悪い。
一方で、「害」という字を使いたくない、という本人たちの気持ちも、なるべく尊重したい。
その両者を満たすには、「害」以外の感じを使えばいい。では、どんな? いくつかの候補を掲げる。
(1) 障碍者
もともとの表現だ。しかし「碍」の字が常用漢字外だ。これを常用漢字に含めるというのも、面倒だし、賛意を得ていない。
→ 「障害」の「害」を「碍」と表記 常用漢字追加見送りへ | NHK
(2) 障該者
私の考えた造語だ。「該当」の「該」を用いた、当て字だ。「当て字はとんでもない」と多う人もいそうだが、そもそも「障害」が「障碍」の当て字なのだから、「当て字が駄目だ」ということにはならない。
「該」の語義からすると、「障該者」でも特に矛盾は生じない。
ただし、使う頻度が低い文字なので、子供には読みにくいのが難だ。
- 《 加筆 》
「障碍」と「障害」は、「正書法 / 当て字」という関係でもないようだ。障害という用字は、古くから使われていたそうだ。その指摘を受けた。コメント欄(1番目)を参照。
(3) 障外者
これも私の考えた造語だ。当て字で「外」という字を使っている。子供にも読みやすいの利点だ。ただし、意味的には通りにくい。語感もあまり良くない。
(4) 障具合者
これも私の考えた造語だ。「しょうぐあいしゃ」と読むが、発音すると、「しょうがいしゃ」というふうに聞こえなくもない。今日、初めて思い浮かんだアイデアだ。だから本項を書いた。
わりとお勧めである。
(5) 障ガイ者
カタカナを使って「障ガイ者」と書く。これを見慣れていると、「障外者」でもいいか、という気になってくる。
(6) 身障者
障害者のうち、身体障害者だけなら、「身障者」と略記することで、「害」の字を表示しないで済む。私はもっぱらこの語を使っている。ただ、車イスを使う人にはいいが、障害者一般に使うには適していないのが難だ。
(7) 行動不便者
台湾では障碍のことを「行動不便」と書くそうだ。
台湾では「行動不便」と表記されていて、まさにこのお医者様のおっしゃる通りだなぁと思いました。 pic.twitter.com/75FdATdIKU
— 超絶☆晴れ女☆ふくみん?? (@faracat) February 9, 2020
とすると、「行動不便者」と書けばいいことになるが、ちょっと長すぎるのが困る。
(8) 要助者
いっそのこと、発想を根本的に変えて、「助けが必要な人」という意味で「要助者」にしてもいい。これだと、次の二つのニュアンスが生じる。
・ 「欠陥がある」という否定的なニュアンスが消える。
・ 「周囲の人に協力を促す」という肯定的なニュアンスが生じる。
つまり、まわりの目から見て、「あの人は何か足りない人間なんだ」と見なすよりも、「あの人は困っているので何か協力しよう」と見なす方がいい。そういうニュアンスで、この語を使う。
熟語の用例としては、「身体要助者」「視覚要助者」「精神要助者」などがあるが、特に不自然ではない。むしろ、好ましいニュアンスがあると言える。(知恵遅れの人を、「精神障害者」と呼ぶよりは、「精神要助者」と呼ぶ方がずっといいだろう。)
というわけで、この語が私のお勧めである。これを結論としたい。(ただし、発想の転換が必要だ。)
※ 病人や老人なども「助けが必要な人」と言えるので、これらも「要助者」と呼ぶのか? まぎらわしいぞ。……という反論もありそうだ。まあ、確かにまぎらわしい。だが、これは「障害者」の代用語だ、と理解すればいい。どうせそのうち慣れてくるので、混同することもなくなるだろう。似た例では、「主人」という言葉で「夫」のこと意味することがある。つまり、言葉を字面通りに解釈しなくてもいいのだ。
[ 余談 ]
余談だが、次の話もある。
『しょうがい者という言葉は言われた人が嫌だから言い換えよう』と投稿した9歳の子に、お返事の投稿している小児科医の松永正訓先生です。優しい文章です。 pic.twitter.com/QN4fx9xDKs
— ???morningcoffee? (@G2AhBdnmjqvMP5r) February 8, 2020
【 関連項目 】
「オレオレ詐欺」については、「親だまし」または「親だまし詐欺」という名称が好もしい。この件については、前に述べた。下記項目の最後。
→ 原発支援の費用負担: Open ブログ
> もともとの表現だ。しかし「碍」の字が常用漢字外だ。これを常用漢字に含めるというのも、面倒だし、賛意を得ていない。
⇒ 「聯合艦隊」を「連合艦隊」みたいに、旧字体の部分に読みの同じ新字体の漢字を当てた(当て字)、という歴史的経緯ではなさそうです。つまり、「障碍がもともとの表現(表記)だ」とはいえないかもしれません。下のリンクの、「障害の表記に関する作業チーム」が平成22年に出したレポートの2ページには、次のようにあります。ご参考まで。
(以下引用)「障害」については、遅くとも江戸末期には使用された用例があり、他方、「障碍(礙)」については、もともと仏教語で、明治期に至るまで「しょうげ」と読まれてきた語であり、「ものごとの発生、持続にあたってさまたげになること」を意味するが、仏教語から転じて平安末期以降「悪魔、怨霊などが邪魔すること。さわり。障害。」の意味で多く使われてきた。 明治期に入ると、「障碍(礙)」を「しょうがい」と読む用例が現れ、「障碍(礙)」という一つの表記について、呉音で読む「しょうげ」と漢音で読む「しょうがい」という二つの読み方が併存するようになる。こうした不便な状況を解消するためということもあって、次第に「しょうげ=障碍(礙)」と「しょうがい=障害」を書き分ける例が多くなり、大正期になると、「しょうがい」の表記としては、「障碍(礙)」よりも「障害」の方が一般的になる。
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_26/pdf/s2.pdf
文中で 《 加筆 》 の箇所で言及しておきました。