2021年05月14日

◆ ミサイル防衛:アイアン・ドーム 2

telaviv.jpg 千発以上のロケット弾がイスラエルに襲いかかるのを、対空防衛システム「アイアン・ドーム」が撃墜しようとしたが。……

 ――

 イスラエルに向けて多数のロケット弾が発射され、それをイスラエルの迎撃システム「アイアンドーム」が見事に撃墜している。




 この動画ツイートは、下記サイトで紹介されているものだ。(その孫引き。)
  → 日本政府のパレスチナ問題公式見解と相反する防衛副大臣の暴走発言(JSF)

 ――

 さて。これを見て私が思ったことは、こうだ。
 「イスラエルは死者数名というふうに報じているが、これほど多数のロケット弾があると、撃墜し損ねた分も多数あるはずだ。とすれば、かなり多くの被害が出たのでは?」
 つまり、
 「ミサイル迎撃システムがいくら優秀でも、相手が同時多発で多数のミサイルを発射するという《 飽和攻撃 》をやったら、ミサイル迎撃システムはなかば無効化するのでは?」

 そう思って、イスラエルの被害状況を調べたら、まさしく多数の被害が確認された。

 以上はイスラエル市民(首都テル・アビブ)からの報告だが、イスラエル国防軍も被害の状況を動画で公開している。

 ※「自分たちは被害者だ」という顔をしている。(自分たちこそ、先に手を出した加害者なのに、相手に反撃されると、被害者ヅラをする。)

 ――

 ともあれ、「鉄の守り」を誇っていたアイアン・ドームは、相手の飽和攻撃の前に、脆くも崩れ去ったようだ。(崩れ去ったというほどではないので、穴があいたと言うべきか。)

 では、これは意外だろうか? 「迎撃ミサイルは、最高の防衛システムだ」と信じている人々には、意外だったかもしれない。しかし私は前から、こうなることを予想していた。前出記事がある。
  → ミサイル防衛:アイアン・ドーム: Open ブログ

 ここでは、次の2点が重要だ。
 (A)飽和攻撃

 大量のロケット弾で迎撃ミサイルを上回るような、同時多数攻撃がなされる。
 では、その必要数を、用意できなかったら? 当然、弾切れになる。たとえば、全体で1500発を用意しておいて、テルアビブには 400発だけを配備していたとすれば、テルアビブでは 400発を撃ち尽くした時点で、弾切れとなる。

 「弾切れになった」という事実が判明するのは、威嚇効果がなくなるので、きわめてまずい。張り子の虎を「強力な武器だ」と見せかけていたのに、「実は張り子の虎でした」とバレてしまうことになるからだ。

 (B)コスト

 ロケット弾はごく安価なのに、迎撃ミサイルはとても高価なので、1対1で撃墜したら、コスパが悪すぎる。
 第1に、すでに見たように、被害額は防空ミサイルのコストに見合わない。(少額の被害をなくすために高額の防空網を使っている。本末転倒。)
 第2に、相手のロケット弾はあまりにも小額すぎる。その額はたったの 500ドルだ。単位をそろえると、 0.05万ドルだ。
 つまり、0.05万ドルのロケット弾を撃墜するために、4〜10万ドルもの大金をかけて、迎撃ミサイルを飛ばしている。まったく割に合わない。迎撃ミサイルを飛ばすたびに、4〜10万ドルもの大金がすっとぷ。

 上に再掲したとおりだ。実は、本項で新たに書こうと思ったのだが、前に書いたことがあるのを思い出して、単に再掲しておくことにした。
 前回記事を書いたのが 2012年11月21日。それから 9年弱を経て、その予想通りになったわけだ。

 ――

 以上の点について、現時点では、より詳細な事実報道や分析がなされている。下記ページだ。
  → アイアンドームによる迎撃も限界、3日間でイスラエルに打ち込まれたロケット弾は1,500発以上( 2021.05.13 の記事 )
 一部抜粋しよう。
 決して少数とは言えない量のロケット弾がアイアンドームの迎撃をすり抜けて人口の多い都市に着弾してイスラエル側に無視できない被害をもたらしている。
 過去72時間にハマスが発射したロケット弾の総数は1,500発以上(昨日時点で1,050発以上)に達したとイスラエル国防軍が発表しており、昨日実績だけで見ると480発以上のロケット弾に対して200発以上の迎撃に成功したとIDFは主張しているので半分程度のロケット弾が無対処のままイスラエル側に着弾している計算だ。
 都市部に届かない無害なロケット弾の迎撃は意図的に見送っていると語っていたため280発以上のロケット弾がアイアンドームの迎撃をすり抜けたと認識するのは早計だが、……ハマスによるロケット弾の飽和攻撃にアイアンドームの迎撃が追いつかなくなっているのだろう。

 ハマスが使用しているロケット弾は簡素な作りで1発あたりの製造コストは500ドル〜600ドル程度と見積もられており、イランからの密輸以外にもハマスが独自に製造しているため消耗したロケット弾の補充は比較的容易だと言われている。
 これに対処するアイアンドームの迎撃弾は1発4万ドル〜10万ドルと言われており、1,000発のロケット弾による攻撃コストは50万ドル/5,480万円〜60万ドル/約6,580万円に過ぎないが迎撃コストは4,000万ドル/約44億円〜1億ドル/約110億円にもなるため物量で押されるとイスラエル国防軍は苦しくなるしかない。

 9年ほど前に予想したことがまさしく現実化しているわけだ。
 


 [ 付記 ]
 何度も述べているとおり、ミサイル防衛網というのは、大量の攻撃による飽和攻撃で無効化する。たいていは「弾切れ」になる。だから、大金をかけて構築しても、意味がないのだ。
 ところが政府は、またしても超高額の金をかけて、陸上イージスの海上配備のために、奇策を講じようとしている。
 政府が配備を断念した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替として導入する「イージス・システム搭載艦」をめぐり、船の構造を複数の船体をつなげた「多胴船」型にする案を検討していることが9日、分かった。多胴船は通常の「単胴船」と比べて波の影響を受けにくいとされ、近く最新の多胴船の設計・製造経験がある民間事業者に調査研究を委託する。
 多胴船は、海の波で船体が傾いた際に元の姿勢に戻る性能が高く、船体が2つの「双胴船」や「三胴船」といったタイプがある。
( → イージス搭載艦は「多胴船」検討  - 産経ニュース

 いくら大金をかけて配備しても、飽和攻撃の前では無効化するのだが。
 
 ――

 一方では、その無理のゴリ押しぶりを理解しながらも、「無理っぽいけど、もしかしたら実現するかも」と期待している軍事オタクもいる。
 戦力化を急ぐのであれば「イージス・システム搭載艦」が多胴船型を採用するとは非常に考え難いことですが、もしも採用された場合は、……世界最大の多胴船型水上戦闘艦となるかもしれません。
( → イージスアショア代替艦は多胴船?(JSF)

 軍事オタクならば、「こんな馬鹿げたことに大金をかけると、かえって日本の国防力は低下する」と指摘した上で、「どうせなら、安価で効果的な無人ドローンを開発しろ」と提案するべきだろう。
 上の軍事オタクの見解は、まことに嘆かわしい。
posted by 管理人 at 22:59| Comment(8) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> 自分たちこそ、先に手を出した加害者なのに、相手に反撃されると、被害者ヅラをする。

それって、ハマスのことじゃありませんかね?
Posted by けろ at 2021年05月16日 14:23
 今回だけじゃなくて、長い目で見れば、イスラエルが国連違反の入植をずっと続けている。
 ハマスはイスラエルを占領したことなんかない。

 ――

 今回に限ると、朝日新聞では、4月22日の衝突がきっかけのように見える。
  https://digital.asahi.com/articles/DA3S14884885.html

 別の報道によると、4月16日にはすでにイスラエルが空爆していた。
  https://bit.ly/33TMXHD
Posted by 管理人 at 2021年05月16日 18:40
イスラエルに頻繁に大量に撃ち込まれるミサイル、実行される無差別テロの数を考えると、軍事行動も全否定できない気もします。ガザを返還したら、そこから攻撃して来るんですもん。

イスラエルが善だなんて思いませんが、ハマスの悪辣ぶりも相当なもんだと思います。国連や国際社会からの支援金が市民生活向上以外に費やされているようにも見えます。そんな中ハマスには目を瞑ってイスラエルだけ非難しても何の解決にもならないのでは。
イスラエルに殺されるパレスチナ人と、ハマスに殺されるパレスチナ人と、いずれにしても殺されるパレスチナ市民を救うにはどうしたらいいんでしょう。
管理人様の解決策をぜひ。
(本題のミサイル防衛システムの話題と違ってすみません)
Posted by けろ at 2021年05月16日 19:19
 話の前提として、国連決議を守って、イスラエルが入植を停止する(侵略をやめる)ことが必要。

 それでもまだハマスが攻撃してくるなら、そのときになって考えればいい。(たぶん攻撃はしない。あえて無駄なことはしない。だから平和になる。)

 ただ、上のことをやるには、アメリカが国連決議に反対しないことが必要。それが実現しないのだから、すべての責任はアメリカにあるとも言える。

> ハマスの悪辣ぶり

 それだと、中国が日本を侵略したときに、日本が中国に反撃したら、「日本は悪辣だ」と言われてしまう。

 パレスチナは最終的には、すべてイスラエルに占領されて、パレスチナ人は海から落とされてしまうだろう。パレスチナ滅亡。
 同様に、日本人も、中国に占領されて、北海道の先のオホーツク海に落とされてしまいそうだ。日本滅亡。


Posted by 管理人 at 2021年05月16日 19:40
なるほど。ありがとうございます。
でも「たぶん攻撃はしない」ってことはないでしょう。
ハマスが平和を希求しているという前提が違うので。

お暇なときにでも、ご考察の記事を上げていただければありがたいです。
Posted by けろ at 2021年05月17日 09:41
 猫とネズミ。
 
 窮鼠猫を噛むというのは、追い詰められたネズミが、食い殺される前に、せめてひと噛みしようというものです。どっちみち食い殺されるのだが、どうせ食い殺されるなら、むざむざ無抵抗で食い殺されるよりは、少しは抵抗しようというもの。これは合理的な判断です。

 一方、追い詰められてもいないのにネズミが勝手に猫に襲いかかるのは、ただの自殺行為です。何もしなければ生きていけるのに、圧倒的に実力差のある相手に襲いかかって、あっさり殺される。ひと噛みぐらいはできるかもしれないが、無駄に死ぬ。
 それをやったのが旧日本軍でしたが、ハマスがそれほど愚かだとは思えない。これは非合理的な自殺行為だ。

 頭が狂っているのでない限り、虚弱なネズミが、強大な猫に襲いかかって食い殺される道を選ぶはずがありません。
Posted by 管理人 at 2021年05月17日 10:36
ハマス幹部は愚かなはずがありません。非常に賢いと思います。
パレスチナ市民(特に子供と女性)を上手に劣悪な環境に保ち、イスラエル軍に殺される役を担わせ、世界中の同情と義憤を呼び覚まして多くの援助を引き出して(だからミサイルも調達できる)います。何千発ミサイルをガザから発射しても非難されず、管理人様のような方々をも味方につけています。諸外国の目もあるので「絶対に食い殺されない」ことを知っているからこそ、合理的に猫に襲いかかり続けているわけです。周囲の犬たちの目を利用して猫を殺そうとしているわけです。

Hamas、IDF、Al Jazeeraなど対外的英語アピールは何となく読めますが、アラビア語やヘブライ語の内輪向けのものは理解できませんので難しいですが、それぞれの主張は一般メディアの報道とは違っています。

イスラエルにはアラブ系国民もたくさんいて多様な意見が許容されます(だから侵攻反対デモもある)が、パレスチナでは親イスラエル、反ハマスは存在が許されません。イスラエルではパレスチナ人の患者も受け入れるしコロナワクチンも提供しますが、ハマスは市民がイスラエルの支援を受けることを禁止します。

イスラエルは国家や国民の安全が保証されるならパレスチナとの共存することに異存はありません(だからガザから撤退した。でも裏目に出た)が、ハマスはイスラエルの存在自体を許容しません。平和共存自体を否定しています。

イスラエルに肩入れする必要もありませんが、ハマスをあんまり美化するのもどうかと。
Posted by けろ at 2021年05月19日 13:06
 ハマスを美化しているわけじゃなくて、「それ以外に道がない」という状況に追い込まれている、と説明しているだけです。
 黙って殺されるか、殴って殺されるか。どっちにしても惨めであり、正解は用意されていません。
 そういう状況をもたらしているのは米国であり、「悪いのは米国だ」というのが結論。善はどこにもありません。
 
Posted by 管理人 at 2021年05月19日 13:44
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