
デジタル庁の組織は、どうあるべきか?
――
どういう組織にするかは、まだ何も決まっていないようだ。単にピラミッド式の構造を作るだけかもしれない。

そこで私が「こうあるべきだ」という提案を示しておこう。
――
《 組織図 》
大臣 …… お飾りふう。国会や内閣への報告をするだけでいい。
次官という COO(最高執行責任者)を任命する。
次官 …… 実質上のトップ。地位は、事務次官。
「次官室」という集団のリーダー。
次官室 …… 次官というリーダーと、補佐官から成る。
これより下の下部組織を最初に構築する。
以後は、下部組織へ命令を下す。
管理室 …… 次官室の命令を受けて、下位の分局・班を管理する。
どの分局・班にどの人員を配置するか、などの管理・運営。
上位に提案することもある。企画・立案。
分局 …… デジタル庁という組織の実行部隊。各省庁に分駐する。
分局には、個別の班がたくさん所属する。
分局の長は、それらの班を管理する。
班 …… 各省庁に分駐して、個別案件を処理する。組織の末端。
班は固定されず、業務ごとに形成・廃止される。
個人 …… 班に所属して、実務を実行する。
事業ごとに班が形成されるので、そのたびに班を移る。
――
上の案で一番大事なことは、「実行部隊は、各省庁に分駐する」ということだ。
政府の予定では、「 ITに強いデジタル庁が、各省庁にデジタル業務の仕方を指導する」というつもりのようだが、私はそれを否定する。
日常的な通常の業務は、各省庁に任せていいが、ソフトの導入( COCOA やワクチン接種システムなど)については、デジタル庁が自ら遂行するべきだ。
ただし、そこでいうデジタル庁とは、各省庁の上に位置するものではない。各省庁の内部に取り込まれたものだ。いわば各省庁の「情報システム部」みたいなものである。(それが分局だ。)
ただし分局は、場所的には各省庁に取り込まれているのだが、組織的には取り込まれていない。組織的には、分局はデジタル庁の組織の一部である。空間的には各省庁にひろく分散しながら、指揮命令系統はデジタル庁の組織図に従う。
各省庁の職員の目からすると、分局のデジタル庁職員は、(よそものであるので)進駐軍かスパイのように思えるかもしれない。しかし、ちょっと違う。よそものであるというのは事実だが、各省庁を支配するのではなく、各省庁のデジタル業務を代行するのである。その意味では、委託業者に近い。たとえば、清掃業務とか、コピー機の点検とか、事務機械の点検とか、情報機器の配線とか。……そういう専門的な業務は、業者に代行させる。それと同様に、専門的なデジタル業務はデジタル庁の職員に代行させるわけだ。
そして、その結果、COCOA や ワクチン接種システムにおける失敗は、起こらなくなる。各省庁は、慣れぬデジタル業務で失敗することから、免れるわけだ。
「 ITが不得意なら、無理に ITをやらなくてもいい。それはデジタル庁の職員に任せればいい」ということだ。
[ 付記1 ]
末端の「個人」については、次のような職員をなるべく増やす。
・ 60歳で定年退職したIT技術者
・ IT技術を持つ障害者
これらを増やす理由は、「社会貢献」ではなく、「コストダウン」である。というのは、これらの人々は、能力の割に、人件費がかなり安く済むからだ。
特に、障害者は(法制上の理由で)格安で雇用できる。なぜなら、雇用しない場合には、(法制上の理由で)高額の罰金が科されるからだ。「雇用しないことで罰金を払う」くらいなら、雇用することで罰金を免れる方が安上がりだ。
しかも、同時に、末端の職員には IT技術を持つ人々が来ることで、大幅な能力向上が実現できる。今のように「 IT技術に無知な人々」がデジタル業務をするというナンセンスを免れる。
[ 付記2 ]
日本の政府職員の IT能力が非常に低いことについては、次のページで例示されている。
→ 世界よこれが日本だ。政府IT戦略室がコロナ禍でとてつもないイノベーションを生み出してしまう : IT速報
コロナワクチンの受診票に、バーコードが印刷されているのだが、そのバーコードを機械的に読み取るかわりに、数字をタブレットのカメラで OCR 読み取りする。OCR だと誤認識があるので不適切なのに、せっかくの バーコードを使う知恵がない。
IT後進国の見本がここに在る。