2021年05月15日

◆ 教師の苛酷労働の理由

 教師の苛酷労働が問題になっている。その根源的な理由は、たまたまではなく、「あえて(故意に)引き起こされた」ということだ。

 ――

 ちょっと古い話だが、「#教師のバトン」というプロジェクトが話題になった。3月30日。
 教師という仕事の魅力を投稿してもらい、なり手不足解消につなげたい――。そんな狙いで文部科学省がツイッターなどで始めた「#教師のバトン」プロジェクトに、長時間労働などの改善を訴える現場の悲痛な声が次々と投稿されている。意図とは違うネガティブな反響が広がっているが、文科省は、教師の働き方改革につなげたいとしている。
( → イイ話のつもりが…文科省「#教師のバトン」に悲痛続々:朝日新聞

 詳報。
  → 教師の生の声を届ける「♯教師のバトン」…「死んでしまう」現役教師の悲痛な叫び
 
 教師のなり手が少ないので、なり手不足解消につなげるため、教師という仕事の魅力を投稿してもらいたい……という目的で、「#教師のバトン」プロジェクトが始まった。これでツイッターに投稿してもらおうとしたら、長時間労働などの改善を訴える現場の悲痛な声が次々と投稿されているという逆効果になったそうだ。


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 これは政府の失敗談として、一種の笑い話みたいになった。だが、その根源には、教職の応募者不足による、倍率の低下がある。これで教員の質の低下が懸念されているのだ。
 2020年度に採用された公立小学校教員の採用倍率が、13自治体で2倍を下回った。全国平均は 2.7倍で、過去最低だった。文部科学省が2日、調査結果を発表した。教員の大量退職期が続き採用が増えた一方で、学校現場の長時間労働などを嫌って民間企業をめざす人が増えたことが要因とみられる
( → 公立小教員倍率、過去最低の2.7倍 13自治体で2倍下回る:朝日新聞

 佐賀県教委によると、定年退職者が多く、特に小学校で特別支援学級が激増しているため、ここ数年は採用数が高止まりしている。一方、受験者数は横ばい、または微減しており、倍率が下がっているという。
 より多様な人に挑戦してもらえるよう、18年度採用からは39歳だった受験年齢制限を49歳に。講師や他県の現職教員ら「即戦力」となる40代を毎年約20〜30人確保している。さらに21年度採用からは、59歳まで受験できるようにした。
 また、20年度採用からは小学校でピアノ、小中高すべてで水泳の実技試験もなくした。
( → 先生確保に四苦八苦 59歳まで受験/実技廃止/「全国一早い」試験:朝日新聞

 新規採用・中途採用に年齢制限があるので、年齢の引き上げや撤廃で対処しよう、というわけだが、これでは効果は限定的だ。実技試験をなくすのも、同様だ。
 
 それで結果的に、教員の質の低下は留まらない。ひどい事件が続出する。
 たとえば、わいせつ事件の続出。
  → 「胸を触ったり、下着をまくらせて体を見たり」懲戒処分の“わいせつ教師”1030人

 また、体罰では、消しゴム忘れの体罰事件がある。
 神戸市北区の小学校の男性教諭(25)が昨年12月、「忘れ物をした」という理由で、担任をする小学3年生の児童3人に、最長3時間半にわたり教室内に立たせる体罰を与えていたことが分かった。同市教育委員会は2日、教諭を戒告の懲戒処分にし、発表した。
( → 消しゴム忘れた児童、3時間半立たせる 体罰で教諭処分:朝日新聞

 これに対して、はてなブックマークでは「辞めさせろ」という意見が多い。だが、この程度で辞めさせたら、教師はみんな辞めさせられてしまう。

 次のような署名運動もある。
  → 1週間で5万人署名「わいせつ教員」の根深い問題| 東洋経済
 やめさせたい気持ちはわかるが、補充する教員もいないのに、どんどん辞めさせたら、「そして誰もいなくなった」となりかねない。

 ――

 そもそも、根源は何か? もともと長時間労働で薄給であることだ。それだからこそ、応募倍率は低い。
 とすれば、辞めるべきは、教師よりも、問題を放置する、政治家や役人だろう。
 特に、残業手当が4%しか付かないという違法状態を放置する財務省もどうかしている。河野太郎・行革相が、「残業手当の全額支払い」を指示したことはあったが、教師は対象外だった。また、教師以外でも、当初はともかく、その後は支払われなくなっているらしい。
  → 国家公務員3割「残業代が正しく払われず」。霞が関は『もうもたない……』進まぬ働き方改革
  → 霞が関の国家公務員 3割が「残業代が正しく支払われていない」 | NHK


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 とはいえ、残業手当は、問題の本質ではない。金をもらえば、不満は減るだろうが、「忙しすぎる」という問題は、解決しないからだ。教師が欲しいのは、金ではなく、時間だ。金をいくらもらっても、金は時間にならない。「時は金なり」というのは、時を金に変換するときには成立するが、金を時に返還するときには成立しないのだ。
( ※ 大金持ちのビルゲイツが、多大な時間を持っているわけではない。金では時を買えない。)

 ――

 この問題を解決する策として、しばしば提案されているのは、次のことだ。
 「教師の時間外勤務である、部活の指導を、外注化する」


 現状では、部活の指導のために、多大な時間が奪われている。これを、地域住民などに任せて、外注化すれば、教師の時間が奪われることが減る。
 このことは、予算の点で実現していないが、実現すれば、かなりの効果が出るだろう。また、教師に残業手当をきちんと払うよりは、安上がりに済むだろう。
( ※ 教師の時給[時間外加算を含む]は、最低賃金の 1.5〜3倍ぐらいになる。それよりは、ボランティアに最低賃金程度か、もっと少ない額を払う方が、安上がりだ。)

 これはこれで大事だが、これをやっても、まだまだ教師の時間不足は解決しないだろう。困った。


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 ――

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「教師に夏休みを与える。7月と8月の夏休みの期間中は、学校が休みなのだから、教師に休みを与える」


 これはつまり「時間を与える」という方針だ。教師に足りないのは(金でなく)時間なのだから、まさしく時間を与えればいいのだ。普通の学期中には、忙しくて忙しくて、時間が足りない。それなら、その分、夏休みにたくさんの時間を与えればいい。

 そうすれば、たとえば、学期中における教材の作成の手間を、あらかじめ夏休み中に実施することができる。夏休みのうちに、2学期と3学期の分の教材を作成しておけばいいのだ。さらには、翌年の1学期の分の教材も作成しておけばいい。授業計画も練っておけばいい。
 こうすれば、学期中における授業の手間を、夏休み中に実施できるから、学期中の忙しさが緩和される。これで問題の大半が解決する。
 これぞ名案だろう。

 ――

 しかし、これが名案だと聞くと、不思議に思う人が多いだろう。
 「教師に夏休みを与えるだと? そんなこと、当り前だろう。いちいち言われなくても、すでに実施済みだ。実際、僕が子供のころには、教師は夏休み中には休んでいたぞ。もともと休んでいるはずだ」
 
 なるほど、その通り。確かに、教師は夏休み中には休んでいた。ただし、以前は、という限定が付く。
 近年では、教師は夏休み中に、休めなくなった。「夏休み中も給料を払っているんだから、仕事をやれ」という理屈で、強制的に出勤を強いられるようになった。さまざまな研修に出席することが義務づけられるようになった。
 また、教員免許の更新のための研修というのも、新たに発生した。
 こうして、教員の夏休みは奪われることになったが、そのせいで、上記のような問題が多発するようになった。
 そこで、文科省は、「教員も夏休みを取れるようにする」というふうに、方針を転換した。つまり、私が上で述べたことが、一応実現されるようになった。
 文科省は学校の週5日制が完全導入された2002年、教員の夏休みのまとめ取り方式をやめ、研修の実施などを求める通知を出していた。当時は「教員が休みすぎている」という印象を避ける狙いがあったが、
 中央教育審議会が今年1月に教員の働き方改革に向けた答申を出したことを受け、28日付でこの通知内容を廃止した。

 文部科学省は28日、公立小中高校の教員が夏休み中に休日をまとめ取りできるよう、学校の夏季休暇中の業務を減らすことを求める通知を、全国の教育委員会に出した。これまでは夏休みの間も教員研修を受けたり、授業研究を進めたりするよう求めていたが、教員の長時間労働が問題となるなか、新たな方針を打ち出した。
( → 教員の夏休み「まとめ取り」復活へ 文科省が方針:朝日新聞 2019年6月29日

 2019年にようやく、方針は転換した。しかしながら実際には、旧態依然のままで、夏休みにも多大な研修がなされている。
 期休業期間中の部活動は部活動指導員や外部人材の参画を図りつつ、1日の活動時間は部活動ガイドラインで定める3時間程度とし、週当たり2日以上の休養日や長期の休養時間(オフシーズン)を設けるよう求めた。
( → 夏休みなどの教員研修を精選 文科省が教委に要請 | 教育新聞 2019年7月2日 )

 「週当たり2日以上の休養日や長期の休養時間(オフシーズン)を設ける」というのだから、ひどいものだ。「週当たり2日」では、普通のサラリーマンと同様だろう。それが夏休み期間中の勤務なのだから、いったいどこまで奴隷労働なんだよ。

 教員の現場報告もある。
 小学校教員には夏季特別休暇が5日間設けられています。
 その5日と年休を使って、3週間くらい休みをとることができます。

 今回は、小学校教員の夏休みの仕事と休みについて記事を書きました。
 7月末までは、研修等がたくさん入っていますが、8月からは自分の時間を作ることができます。
( → 小学校教員の夏休み?仕事と休み(給料)について? | naoblog

 「年休を使って、3週間くらい休みをとる」のだったら、普通のサラリーマンよりも、もっとひどい。普通の大企業なら、(年休とは別に)夏休みは 10日間ぐらいは取れるのが普通だ。また、普通の時期にはサービス残業なんて、ない。
 なのに、学期中にはサービス残業ばかりさせられている教師が、学期中にもろくに休めないとなると、これはもう、奴隷労働というしかないだろう。
 学期中にはサービス残業ばかりさせられているのだから、せめてその分、夏休み期間にはきちんと休めるようにするべきだ。「自宅勤務」または「在宅勤務」という形で。……その間に、教材の作成などをすればいいのだ。
 なのに、やたらと研修への出席を強制していて、それがいまだになかなか是正されない。


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 特に、2009年に導入された「教員免許の更新のための研修」は、義務づけられていて、ひどい状況だ。現場の教員は「負担が大きい」と嘆いている。金も自腹での出費を強いられるありさまだ。
  ・ 教員免許状の有効期間は10年です。今年大学を卒業し、22歳で免許状を取得した人であれば、32歳を迎える年度に更新をしなければなりません。

  ・ 教員免許状は以前、一度取得すれば生涯にわたって有効とされていましたが、現在は10年に1回程度の割合で、更新をしなければなりません。具体的に、30時間以上の免許状の更新講習を受講しなければならないこととなっています。これが「教員免許更新制」で、2009年4月から導入されました。

  ・ 更新講習で必要な受講時間は「30時間」です。その多くは、夏休み期間中の7〜8月に開設されていますが、一部では冬季に開設している所もあります。

  ・ 受講料は3万円程度で、大学等の実施機関に直接支払います。教育委員会や学校では負担せず、自己負担となります。
( → 教員免許の更新期限、講習の対象になる人は? | 教育新聞

 業務にかかる費用が自己負担だというのは、違法であろう。こんな違法状態を放置するのだから、呆れるしかない。
 こういう馬鹿げた研修や免許制は、さっさと廃止するべきだろう。なのに、廃止しない。だから、教員のなり手が、どんどん減っていく。

 ――

 ここで、問題の根源を探ろう。どうして文科省は、こういう馬鹿げた施策を次々と実施したのか? 教員を虐待して、質を低下させるなんて、亡国政策そのものなのだが、どうしてこういう亡国政策をわざわざ取るのか?
 実に不思議である。まったくの謎に思えるだろう。

 そこで私が種明かしをしよう。真相はこうだ。
 「自民党は、教員の労組である日教組と敵対していた。そこで、日教組をいじめるために、教師の勤務状況を悪化させた。そうして教師を虐待することで、日教組を弱めようとした」


 つまり、教師が虐待されるのは、自民党の意図的な政策だったのである。換言すれば、教師を虐待して、教員の質を低下させるのは、政府・与党の意図的な方針だったのである。

 かくて亡国政策が意図的に取られることになった。ちょうどコロナのさなかで、「GoTo イート」のような亡国政策が意図的に取られたように。コロナのワクチン不足のさなかで、ワクチンの承認を意図的に送らせたように。
  → コロナの変異ウイルス: Open ブログ
  → ワクチンの接種を中止せよ: Open ブログ

 日本で狂気的な亡国政策が取られているとき、その理由は、「たまたま運悪くそうなった」ということではなく、「狂った自民党(や政府)が意図的にそうしている」からなのである。狂気的な政策は、狂気の人間によってもたらされるのだ。
 
 ※ さらに言えば、大多数の国民がそういう政党を支持するからでもある。ちょうど昔のドイツ人が、ナチスを支持したように。その再来である。(トランプ支持の米国もそうだった。)
 つまり、国民は自ら、自分たちが奴隷であろうと望んでいるわけだ。


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posted by 管理人 at 20:40| Comment(7) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いまさら言うまでもありませんが、日本は教育・研究・開発への投資をケチりすぎています。また、技術者の待遇も悪い。

このため、自民党員や自民党支持者が忌み嫌う中国のほうが、技術開発の面で世界をリードするようになってしまいました。日本なんて最早、眼中にないでしょう。

以下、ご参考まで。

(朝日新聞)「中国の火星着陸「常識外れ。たいしたもん」 驚く専門家」
https://www.asahi.com/sp/articles/ASP5H462DP5GULBJ01S.html?iref=sptop_7_04
Posted by 反財務省 at 2021年05月15日 21:29
 サイエンスZERO の はやぶさ シリーズによると、日本のはやぶさは、それ以前の探査機も含めて、三段階を順順に実行していった。
 ところが中国はいきなり三段階を一挙に実現した。

 日本が階段を一段ずつ上がって、ようやく「はやぶさ」を帰還させて喜んでいたら、中国が一挙に大股の三段跳びで、六段ぐらいを進んで、日本を大幅に追い越してしまった。
Posted by 管理人 at 2021年05月15日 22:14
「忙しさ」の質も問題ですよね。
本来家庭で行われるべき躾や生活習慣指導まで要求される上に、下手すると親兄弟や地域社会とも対峙しなくてはならない状況に置かれて。
医師もそうですが「雑用」を行う職種を別に設けないと、本業にかけられる時間と労力は削られるばかりでは。
Posted by けろ at 2021年05月16日 14:31
けろさま
>「雑用」を行う職種

小中学校のみならず、大学や公立の研究機関などでもそうですが、いわゆる間接部門の人員がことごとくカットされています。このため、本来は事務方が行うべき仕事を、学校教師や大学教員が行うハメに。

原因は、教育予算のカット。大学等の運営費交付金の削減という愚策は令和になってもなお、続いています。
Posted by 反財務省 at 2021年05月16日 18:14
その成果があるから今の日本があるんでしょうね 期待される人間象という怪獣が昭和の高校学園祭で流行りました 民コロの教師におこられたな 当時の日教組は社会党協会派でしたね
Posted by k at 2021年05月16日 23:37
この流れだと答えは明白で、教員の組合は自民の応援にまわり、自民の中に教育族を育てればいいということになりますね
Posted by 権兵衛 at 2021年05月17日 10:56
 組合が献金する例はないです。そんな金はどこからも湧いてこない。
 事業の経費で落とせる企業だけが、自民党に献金できます。その後に、補助金や利権を受け取る。
 特定業種の組合が補助金や利権を受け取ることは無理です。

 仮に献金するとして、そんな組合に、あなた、入りますか? 「自民党に献金する費用、月、3000円を徴収します」と言われたら? 

 そもそも、組合がいくら献金しても、企業の献金よりはずっと少ないので、単に無視されるだけです。
 「自民党に協力すれば見返りを得られる」
 というのは、企業には成立するが、組合には成立しない。
Posted by 管理人 at 2021年05月17日 11:00
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