2021年06月08日

◆ なぜ中世アラブは先進国だったか 2

 中世では、欧州よりもアラブの方が先進国だった。なぜか?

 ――

 この問題提起については、前に別項でも論じた。
  → なぜ中世アラブは先進国だったか 1: Open ブログ
 そこで記したのは、「欧州が遅れていた理由」であった。

 それとは別に、「アラブの方が進んでいた理由」を述べよう。

 ――

 「アラブの方が進んでいた理由」は、歴史的には次のように言える。
 「ギリシア文明・ヘレニズム文明・ローマ文明のあとで、欧州の東部には東ローマ帝国(ビザンチン帝国)の文明が隆盛したが、それがイスラムに侵攻されて滅んだ。そのとき、ビザンチン文明の精華は、イスラム文明に吸収された。かくてアラブ文化が花開いて、イスラーム黄金時代となった」

 詳細は下記。
  → イスラーム黄金時代 - Wikipedia

 この当時のアラブ文明は、武力によってビザンチン帝国を圧倒したことで、ギリシア文明・ヘレニズム文明・ローマ文明を引き継ぐビザンチン文明を吸収したのである。だからこそ世界最高の文化となったのだ。


arab-expn.png
出典:Wikipedia


東ローマ帝国(ビザンチン帝国)の変遷
Byzantine_Empire_animated.gif
出典:Wikipedia


 ――

 ここで、イスラムが強力になったことには、別途、理由がある。
 そもそもイスラム教というのは、キリスト教から派生したものだ。
  ・ 最初はユダヤ教(旧訳聖書)があった。
  ・ そこからキリスト教(新約聖書)が派生した。
  ・ さらにそこからイスラム教(コーラン)が派生した。

   → キリスト教とイスラム教 - Wikipedia

 こういう形で、最も新しい宗教という形で、イスラム教は誕生した。そこで厳しい戒律によって、強い布教活動が生じて、勢力を拡大していった。

  ※ この三つはどれもルーツが同じなので、兄弟の関係にある。これら三つをまとめて呼ぶときの「宗教」という言葉と、仏教やヒンズー教を含めて呼ぶときの「宗教」という言葉とは、まったく意味合いが違うので、注意。前者は同一の神をもつ一神教だが、仏教やヒンズー教はまったく別のものだ。前者の意味での「神」をもたない。ちなみに日本でいう「神」というのは、「八百万(やおよろず)の神」であったりする。

 ――

 欧州が弱体化したことには、別に理由がある。
 東ローマ帝国は上記の通りだったが、西ローマ帝国はゲルマン人に征服されて消滅し、ゲルマン人のフランク王国が樹立した。


Franks_expansion.gif
フランク帝国の領土


 ところがフランク王国のフランク人(ゲルマン系)には、文字がなかった。
 フランク王国を建国したフランク人たちは、クロヴィス1世によるガリア征服とフランク王国の成立の当時、インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派の一派であるフランク語を母語としていたが、この言語が筆記に使用されることはなかった。6世紀初頭に編纂されたサリー・フランク人の部族法典である『サリカ法典』には書面による売買契約や諸証についての規定がほとんどなく、一定の身振りや仕草を伴った口頭での契約や証明法、象徴物を用いた法律行為が採用されており、フランク人一般が当時まだ文字文化に親しんでいなかったことを示している。
( → フランク王国 - Wikipedia

 文字のない文明は、発達するはずがない。こうしてローマ文明以後の欧州文明は発達することができなかった。

 ※ これは、前出項目(なぜ中世アラブは先進国だったか 1)の話と共通する。

 ――

 以上をまとめて評価すれば、次のように言えるだろう。
 欧州文明とイスラム文明は、対立する文明のように思えるかもしれないが、本来はそうではなかった。もともとはギリシア・ローマ文明を源泉とする、共通する文明(兄弟のようなもの)だったのである。宗教面でも、兄弟関係にある。ただし、血のつながった兄弟というよりは、義兄弟のようなものだった。(アラブ文明は、ギリシア・ローマ文明の嫡出子ではなくて、嫡出子と婚姻したようなものだったからだ。)
 当初は、文字をもつアラブ文明が優れており、文字をもたないゲルマン系の文明は劣っていた。こうしてアラブ優位が確立していた。
 ところが、ルネッサンス期以後、アラブ文明がイタリアを経由して欧州各地に流入し、欧州各地でも印刷術の普及にともなって文字文明が発達していった。一方で、アラブ文明は停滞した。こうして一挙に逆転が起こった。欧州では急激に文明が発達していったのである。
  → 前出項目(なぜ〜 1)

 とすれば、欧州の発達は、ルネッサンスと印刷術が大きな影響を及ぼしたからだ、と言えそうだ。
 
posted by 管理人 at 22:21| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ