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外国人技能実習生は、ひどい奴隷制度だ。こういう問題があることは、かねて指摘されてきた。最近でも、次の記事がある。厚労省が対策の努力をする、という話。
「外国人技能実習制度」は、外国人が日本で働きながら技術を学ぶ制度で、去年6月の時点でおよそ40万人が働いています。
しかし厚生労働省によりますと、技能実習生が受け入れ先の企業側から暴力などを受けたり低い賃金で長時間労働を強制され、事実上、逃げられなくなるなど、いわゆる「人身取引」が疑われるケースが出ています。
このため厚生労働省が先月、全国の労働局に対して対策の強化を求める通知を出していたことが分かりました。
( → 外国人技能実習生「人身取引」疑われるケース 対策強化へ )
ただ、問題があることはすでにわかっているが、どうしてなかなか解決しないのか、という疑問がある。この疑問を解明しようとする記事が、本日の朝日新聞に掲載された。次の記事だ。
→ (失踪村 ベトナム人技能実習生)逃亡先も悲惨、命がけで働き:朝日新聞
長文記事だが、要旨は次の通り。
・ 低賃金で長時間労働だ。月収10万円で、睡眠時間が3時間、という例も。
・ 出身国の送り出し業者に払う手数料が巨額だ。100万円ぐらい。
・ 送り出し業者は、日本の監理団体に賄賂・接待を贈る。20万円以上も。
性的接待(売春婦をあてがう)ことも。
・ 借金の返済が大変なので、働いても最後に残るのは借金だけ、ということも。
こういうふうに実習生には多額の借金が生じるが、それというのも、出国前に、送り出し業者(ブローカー)に多額の手数料を払うからだ。
送り出し業者が多額の手数料を取るのは、暴利を得るためだけでなく、その金を日本の監理団体(技能実習生の引き受け手)に上納するためだ。(賄賂や接待の形で。)
そういうことが記事でわかった。
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結局、技能実習生の側は多額の手数料を払うハメになるわけは、日本の監理団体が不当な利益を得るからだ。金をもらったり、売春婦の接待を受けたり。
では、監理団体が諸悪の根源か? いや、もっと悪いやつがいるはずだ。それは、管理団体の金を吸い上げる組織だ。それは何か? 政治献金を受け取る自民党だろう。
そう思ってググってみたら、該当記事が見つかった。そのものズバリだ。
いま、技能実習生を12万人も送り出している最多国はベトナムだが、そのベトナム人技能実習生受け入れの監理団体のひとつに「公益財団法人東亜総研」という団体がある。そして、この同団体の代表理事・会長を務めているのは、自民党幹事長などを歴任した武部勤・元衆院議員。さらに、同団体の特別顧問に就いているのは、自民党の二階俊博幹事長なのだ。
監理団体には、技能実習生ひとりあたり毎月数万円の「監理費」が支払われる。「非営利団体」が条件としながらも、その実態は人材派遣業だ。そのため、技能実習生の保護よりも儲けを優先させる監理団体が後を絶たないのだが、そうした監理団体のトップや特別顧問に大物政治家が就いているのである。
しかも、この問題は同団体だけではない。ミャンマーからの技能実習生受け入れで「求人票の事前審査業務」をおこない、監理団体から手数料を徴収している「一般社団法人日本ミャンマー協会」の役員名簿(今年10月現在)にも、数多くの政治家の名前がズラリと並んでいる。
まず、名誉会長は中曽根康弘・元総理大臣。最高顧問は麻生太郎・副総理兼財務相。会長・理事職には渡邉秀央・元郵政大臣、理事長代行には古賀誠・元運輸大臣、理事には甘利明・自民党選挙対策委員長、浜田靖一・元防衛相……。このように、現役から引退した議員まで、自民党の大物議員が関係しているのだ。
( → 外国人実習生を搾取する関係団体役員に麻生、二階、甘利ら大物政治家たちが! 劣悪な労働環境を放置し甘い汁を (2018年11月22日) )
こうして、物事の本質がわかった。
留学生が食い物にされているのは、送り出し業者が莫大な手数料を召し上げているせいだと思われているが、実は、その金は、監理団体に上納され、さらにその金は自民党に上納されているのだ。
こうして「諸悪の根源は、政府を牛耳っている与党の政治家たちだ」と判明した。悪の親玉は、こいつらだったのである。こいつらが自分の懐を潤わすために、技能実習生を奴隷状態にしているわけだ。そして、そこから吸い取った金を、送り出し業者・監理団体・自民党議員のそれぞれが、懐に入れているのである。
この利権構造ゆえに、問題は解決されないまま残っているわけだ。

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原因はわかった。では、対策はどうするべきか? 私としては、対策(問題の解決策)として、次の三点を掲げよう。
・ 賃金保証
・ 勤務先の自由化
・ 国家監視
以下では、それぞれ個別に論じる。
(1) 賃金保証
現行制度では、「技能実習」という名目で、最低賃金以下の低賃金がまかり通っている。それでいて、技能の教育などは何もないまま、ただの安上がりな奴隷労働にされている。
ならば、技能実習生にも、最低賃金制を適用すればいい。……ただし、このことは、制度上は実現している。以前はそうでなかったのだが、2018年に「最低賃金制を適用する」と改訂されたからだ。
→ 外国人労働者の法案: Open ブログ
このことは、厚労省も明示している。
→ 技能実習生の労働条件の確保・改善のために
だから、制度が有効であるならば、技能実習生には十分な賃金が支払われているはずなのだ。
ところが、現実にはそうではない。朝日新聞の上記記事によれば、次のような例がある。
・ 週6日、朝7時から深夜まで働き、睡眠時間は3時間。それで月給 10万円。
・ 建設解体の仕事で月給9万円。
・ 横浜のコロナ集団感染の船の清掃で、日給1万2千円。
・ 農家で働いたが、安月給で、食事もまともにない。
法律と現実とが食い違っているわけだ。ならば、法律がきちんと守られるように、何らかの対処をするべきだろう。この件は、(3) で述べる。
※ なお、さらに言えば、最低賃金よりも、もう少し高い価格を適用する方がいいだろう。たとえば、最低賃金の2割高。なぜか? 日本人の最低賃金は、病弱な人や高齢者にも適用されるような最低限度額だが、外国人は、健康な青壮年の労働者が多いので、もっと高賃金にするべきなのだ。作業量だって、日本人の高齢者よりは多いはずなのだから。
※ 「賃金を高くすると払えない」というような企業も出てくるだろうが、そういう企業は倒産してしまった方がいい。まともな金を払えない企業は存在価値がないのである。
※ 「賃金が高いと、労働者が解雇されて失業されてしまう」という心配もありそうだが、外国人労働者に限ってはその問題はない。外国人労働者が解雇されて失業したとしても、それなら本国に帰ってもらえばいいだけのことだ。外国人が失業するのは、日本人が失業するのとは違う。
(2) 勤務先の自由化
技能実習生の勤務先は、自由化するべきだ。現状では、「勤務先からの脱走」「不法就労」などが問題となるが、勤務先を限定するという現状の制度がおかしい。自由にどこでも働けるようにするべきだ。
そもそも「技能実習生」というが、技能の教習なんて、実際にはなされていない。実態は、ただの低賃金労働・奴隷労働だ。
また、監理団体による監理は、名ばかりであって、実際には長時間労働や賃金カットも見逃されている。
要するに、「技能教習がある」という建前ばかりを信じて、「ただの低賃金労働である」という実態を無視するから、建前と実態とが乖離して、おかしなことになる。
だから、この乖離をなくすために、勤務先を自由化すればいい。どこでも好きなところで働けるようにすればいい。奴隷のように縛り付けるのをやめればいい。
(3) 国家監視
とはいえ、勤務先を自由化するといっても、外国人労働者を無制限に受け入れるわけには行かない。何もかも自由化したら、世界中の貧民が何十億人も押し寄せて、日本は破綻してしまう。それはまずい。
では、どうすればいい? 自由化をしないで勤務先を縛り続ければ、現状のように奴隷待遇が継続する。かといって、完全に自由化すれば、日本という器が破綻してしまう。あちらが立てば、こちらが立たず。困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
「外国人労働者の流入に、人数の枠を付けた上で、外国人労働者をマイナンバーで監視する」
ここでは、次のことが重要だ。
・ 監理団体ではなく国が、外国人労働者を監視する。
・ 外国人労働者に、マイナンバーを付与する。
・ マイナンバーで、給与の支払額を国がチェックする。
・ チェックは、厚労省と国税庁がともにチェックする。
ここでは、最後の点が重要だ。理由は、こうだ。
・ 厚労省のチェックで、賃金の不払いを是正できる。
・ 国税庁のチェックで、賃金の不払いを脱税と見なせる。
まともな賃金を払っていれば、何も問題はない。だが、まともな賃金を払わないで、低賃金しか払わないなら、次の二点の問題が生じる。
・ 厚労省から見て、「最賃法の違反」
・ 国税庁から見て、「低賃金による利益増加を計上しない脱税」
特に後者が重要だ。まともな賃金を払っていないのなら、不当利益が出るはずなので、その不当利益にガッポリと税金をかけることができる。こうして異常な低賃金を咎めることができる。
実際には、これらの企業は、「実際には低賃金しか払っていないのに、帳簿上では高い賃金を払っていることにして、脱税する」という手口を使っているはずだ。だから、そこに着目して、「脱税を咎める」という形で、国税庁がメスを入れればいいのだ。これで、低賃金労働者を雇って不当利得を挙げている会社は、震え上がるだろう。
そして、そのためには、マイナンバーで、各人の給与を厳密にチェックすればいいのだ。……これは、ITによる監視という方法であり、頭のいい方法だ。
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なお、このようなことは、厚労省と国税庁が共同して事に当たる方が効果的だ。そこで、厚労省と国税庁が共同して、「外国人労働者監視センター」みたいな組織を作って、その組織が企業を監視するといいだろう。(厚労省と国税庁による共同監視)
同時に、現状のような監理団体は廃止するといいだろう。こんなものは、単に利権を食い物にするだけのゴミ組織だからだ。「売春婦をあてがってもらって、自民党に献金する」というぐらいの仕事しかしていない。肝心の「監視」という仕事を何もやっていない。(袖の下をもらって、虚偽報告を出すだけだ。)……こんな団体は、さっさとつぶす方がいい。現状では、自民党のおかげで、つぶれないで済んでいるだけだ。
それにしても、日本の悪事を突き詰めると、たいていは最終的に、自民党にたどり着くものだ。
[ 付記1 ]
先のコロナに感染したダイヤモンド・プリンセスの事例では、岩田教授が乗り込んだりして、話題になった。
で、その清掃の作業は、誰がやっているのかと思っていたが、上記の通りだとわかった。つまり、(部分的には)外国人技能実習生を格安で雇って、こき使っていたわけだ。
ここで、政府から払われる金は高額になるはずだから、業者は相当のピンハネをしていることになる。しかも、こういう素人を雇っておきながら、「高度技術あり」と誇大宣伝をしているらしい。
特殊清掃業者数は現在6000社ほどにまで膨れ上がっている。先述の惟村氏や岩橋氏らによれば、除菌や防疫のノウハウもない業者も少なくなく、業界全体が玉石混交状態という。
「自社サイトで『コロナ除染、多数実績あり』などと過剰に謳っている業者が出始めていますが、本当かな? と疑って見ています。きちんとしたノウハウを持たないのにウイルスが蔓延する現場で作業をすると、逆に感染拡大の要因をつくってしまう」(
( → あのクルーズ船の「特殊清掃」を任された業者が、次に抱えている仕事 特需に沸く一方で、悪質業者も…) )
ひどいものだ。(ここでも自民党が袖の下をもらっているのかも。)
[ 付記2 ]
本当の「技能実習」というものは、「日本だけで役立つ技能の実習」ではなく、「本国に帰ってからも使えるような技能の実習」であるべきだ。
その意味では、「ホタテの技能実習をフィリピン人に教える」というのはナンセンスだ。寒い地域にあるホタテの殻剥きの技術を、フィリピン人に教えても、フィリピンには同種のホタテなんかはないからだ。
( ※ フィリピンにあるのは、小型のベビーホタテだけであって、日本のような大型のホタテはない。)
そういうインチキとは違って、まともな技能伝承の例もある。たとえば、チョークだ。
日本の高品質チョークが中小企業で製造されていたが、高品質で高価格なのは市場が小さいので、製造者の高齢化で製造が途絶えそうになった。そこで、韓国人が製法を学んで、製造が継続されることになった。つまり、日本で技術を学んでから、韓国で製造する。こうして国際的な規模で製造が伝承されたおかげで、製造中止を免れることになった。詳しくは下記。
→ 教授の愛したチョーク 愛知の「羽衣」2015年廃業 韓国人が製法引き継ぎ:朝日新聞
→ 「チョークのロールスロイス」…講師ら支えた名門業者が廃業 韓国企業が継承へ - 産経
→ 廃業の名チョーク、韓国へ 製法継承で世界から注文: 日本経済新聞
ここではまさしく「本国に帰ってからも使えるような技能の実習」があったわけだ。こういう高度な技能の実習こそ、意味がある。ひるがえって、現状のように、「低賃金で低技能の実習」というのは、ほとんど意味のないことであり、ただの奴隷制度にしかなっていないのだ。
如何にも日本っぽい習慣というか。本音と建て前というか。最高に気持ち悪いですね。こんなことばっかりやってるから日本の競争力がどうしようもなく下がってるんだと思う。