2021年05月01日

◆ テキサスの停電

 テキサスで停電があった。この理由をクルーグマンが考察している。
 
 ――

 ちょっと古い話で恐縮だが、下記記事だ。市場原理万能論者(自由化論者)を批判する趣旨。
  → 自由化の暗い教訓 電力はアボカドではない ポール・クルーグマン:朝日新聞(2021年3月5日)
 電力の安定供給をするには、どうすればいいか? 「市場原理で自動的に需給は安定する。だから何もしないで自由放任にすればいい」と古典派経済学者は考えがちだ。だが、実際にはそれでは済まない。災害や事故や突発的な事件で、供給が縮小して、価格高騰が起こる場合があるが、そういう万一の場合の価格高騰に備えて、もともと供給を増やしておくはずがない(設備投資をするはずがない)。
 しかし、こうなると、万一の場合には、停電する家庭が多数生じる。また、停電しない家庭も、超高額を請求されて、破綻しかねない。
 というわけで、「自由化すれば市場原理で自動的にうまく行く」という発想では駄目だ……と判明したわけだ。
 以上がクルーグマンの指摘である。(要旨)

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 では、どうすればいいか? クルーグマンは、市場原理万能論者を批判するだけで、解決策は示していない。そこで、私が対策を考えよう。

 まず、テキサスの停電とはどういうものか? 紹介しよう。
 米テキサス州が記録的な寒波に見舞われた。
 零下18度という極寒の中で数百万人が凍える夜を過ごした。死者多数。
 テキサス州の大停電はなぜ起きたのだろうか。……テキサス州では全電力に占める風力発電の比率が42%だったが、寒波で発電用タービンの半数が凍結し、比率が8%まで低下。電力供給を下支えして安定させる役割のはずの(火力発電など)ベースロード電源も、暖房利用による電力需要の急増をカバーすることができなかったという。
( → 寒波で死者多数のテキサス大停電が示した「電気自動車一辺倒」の危険。カーボンフリー燃料がいま必要だ | Business Insider Japan

 これに対して、自由化論者の意見で、設備投資をするための対策(容量市場の創設)はなされなかった。
 テキサス州は電力を自由化しているが、容量市場を導入しておらず設備導入も市場に任せている。
 容量市場を導入し予備力を確保すべきとの議論もあったが、ピーク時に卸市場価格が上昇すれば、収入が保証されるので発電事業者はピーク対応の天然ガス火力を建設するだろうとの見通しと、容量市場を導入すれば電気料金の上昇を招く、将来は需要サイドの抑制策の導入により対応可能。停電は発生していないとの主張が通ったようで、容量市場の導入は行われなかった。
( → 何がテキサス州を停電させたのか ? NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute

 同じ記事で、こう続く。
 寒波来襲前に、天然ガス供給が逼迫することが予想されたためテキサス州のパイプラインを管理している鉄道委員会は、家庭、病院、学校、教会、主に住宅に電力供給を行う発電所に優先的に天然ガス供給を行う方針を立て、産業部門、商業部門への電力供給を行う発電所への供給は後回しにされたと報じられている。
 さらに、通常電力需要が落ちる時期なので休止あるいは補修を行っていた発電所も多くあり、急な立ち上げができなかったうえ、立ち上げた後もガス供給、運転に問題があったようだ。テキサス州以外の州では小規模な停電はあったものの、テキサス州程の大規模停電は発生しなかった。テキサス州では発電所で予備の燃料の準備もなく、風力発電の凍結防止設備も設置されておらず、タービンが屋内に設置されていない設備もあるなどERCOTの準備不足も伝えられている。
 2月17日地元のテレビニュースに出演したアボット・テキサス州知事(共和党)は、「ERCOTは情報開示を行っておらず透明性に欠ける、事前に寒波来襲が分かっていたのに予備力を確保していなかった、全発電設備で問題があり、天然ガス供給がないため停電が発生した」

 火力発電は足りなくて、風力発電は凍結した。他の州では対策ができていたのに、自由化ばかりに熱中していたテキサスでは対策ができていなかったので、供給が急減してしまった。
 これはまあ、クルーグマンの言っているとおりだとも言える。

 ――

 そこで、対策としては、「電力の安定供給のために、供給する設備を整備すればいい。そのためには、容量市場を創設すればいい」というふうになりそうだ。
 実際、日本でも容量市場は創設された。では、それで問題は片付いたか? 否。日本では、逆の問題が起こった。価格がやたらと高騰してしまったのだ。そのせいで、供給側が優遇されすぎて、消費者や新電力に過剰な負担がかかることになった。前に言及したとおり。
  → 電力の負担増 1.6兆円: Open ブログ
  → 電力の需給逼迫が続く: Open ブログ

 では、どうしてこうななったか? 発送電の分離がないからだ。こうなると、自分で自分に売ることになるから、価格がどれほど高くなっても、大手電力会社は損しない。(価格を消費者に転嫁できるからだ。)一方で、大手電力会社が新電力に売るときには、高値で売れるので、利益がガッポリ入る。
 
 こういう問題が起こるのは、発送電の分離がないからだ。
 逆に、発送電が分離されれば、「自分で自分に売る」ということはできなくなるから、価格が上昇すると、売り手は儲かるが買い手は損する。ゆえに価格の上昇に買い手が抵抗して、「高ければ買わない」というふうに手を引く。
 つまり、日本のような価格高騰を防ぐには、発送電を分離すればいい。そのことで、先の需給逼迫時のような問題を避けることができる。

 ――

 一方で、発送電を分離すると、(容量市場が安定するだけでなく)、普通の電力市場も安定する。価格が上昇しそうになれば、送電会社の側が需給調整契約を発動して、需要を減らすことができるからだ。
  → 電力安定供給には発送電分離: Open ブログ

 現実には、発送電を分離していないので、価格が急騰しても、大手電力会社は需給調整契約を発動しなかった。そのせいで、価格が急騰してので、大手電力会社は(市場の不安定さを利用して)ガッポリ儲けた。
 その一方で、急騰した価格で購入せざるを得なくなった新電力の側は、大損した。倒産した会社もある。(新電力のトップだったこともある会社が倒産した。)
  → 新電力で一時首位、エフパワー経営破綻 電力逼迫の影響:朝日新聞

 ――

 というわけで、(容量市場で)供給を安定させるためにも、(電力市場で)需要を安定させるためにも、そのどちらでも「発送電の分離」が有効であるわけだ。発送電の分離はそれほどにも大切なことなのである。
 こういうふうに、発送電の分離が必要だ、というのが重要だ。

 ※ ところが、先日、朝日新聞が新電力の問題を調べた連載では、「発送電の分離」という点についてはまったく言及されなかった。一番肝心な点をスルーしているのだから、朝日新聞の電力担当記者がまともに専門知識をもっていないことがわかる。

 ――

 ともあれ、問題の解決には「発送電の分離」が重要だ、と言える。米国でも、日本でも。
 ただし、解決策は同じでも、問題の方向は逆だ。米国は供給が疎かとなっており、日本は供給が優遇されすぎている。
 これはいわば、「(症状は正反対である)二つの病気に、共通の薬が有効だ」というようなものだ。ちょっと不思議に思えるかもしれないが、そういうこともあるものだ。

 
posted by 管理人 at 23:02| Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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