2021年04月30日

◆ 地域間送電に巨額投入

 北海道や九州で発電した電力を、関東や関西に送電するために、兆円単位の巨費を投入しよう、という方針がある。電力料金の大幅値上げ。

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 これは莫大な電力料金アップをもたらすので、人々の生活に大きな影響があるのだが、人々は気づかないまま受け入れるつもりでいるようだ。「再生エネのため」という口実があると、マスコミも安易に受け入れるので、自民党とマスコミが共同して、国民生活を破壊することになる。これを批判する人はほとんどいない。
 重大な問題なので、例によって本サイトだけが指摘する。

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 記事は下記だ。
 国の認可法人「電力広域的運営推進機関(広域機関)」は28日、地域間で電力をやりとりする送電網の容量を、いまの2倍程度に増強する計画案を示した。投資額は最大 4.8兆円にのぼり、電気料金に一部は上乗せされる可能性がある。
( → 地域間送電、容量倍増へ 再生エネ普及促す 運用は30年代:朝日新聞


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 北海道や九州で発電した電力(洋上風力や太陽光で発電した再生エネ発電の電力)が、現地では消費しきれないので、関東や関西の需要地に送りたい。そのためには送電網が貧弱なので、送電網を整備したい。それには5兆円ほどの巨費がかかるので、電気代を値上げすることでまかないたい。国民は値上げを受け入れるしかない……という趣旨だ。
  → 地域間送電網に4.8兆円: 日本経済新聞

 これが正しい主張であれば、5兆円の負担も仕方ない。だが、実は、これはまったくの無駄だ。5兆円をドブに捨てるようなものだ。
 以下で理由を示す。

 (1) 図を見ればわかるように、「北海道 → 東京」は、たったの 800万kW でしかない。そのために2兆円前後をかける。「正気かよ」と疑いたくなる。「火力発電 建設費」でググればわかるが、火力発電の新設では 100kW で 1000億円だ。800万kW なら 8000億円。なのに、その3倍もの巨費をかけて送電網を整備するだと? 狂気の沙汰だ。比喩で言えば、「新車を買えば 100万円で済むのに、レンタカーを週にいっぺん借りることにして、総額 300万円を払う」というようなものだ。それでいて、「新車を買わずにレンタカーを借りたので節約できました」と威張るようなものだ。3倍の金を払って「節約できました」だと? アホか? 

 (2) 金がかかるだけでなく、規模が小さい。この程度しか送電できないのでは、いざというときの需給安定にも足りない。東京電力の一日の需要量は、最大では 5000万kW ぐらいになるので、北海道から 800万kW ぐらいをもらっても、全然足りない。関西や九州から多少もらっても、まったく足りない。巨額を投入する割には、効果があまりにも小さすぎる。(新規の火力発電所を建設した方がマシだ。)

 (3) そもそも再生エネ発電というのは、「地産地消」が原則である。つまり、需要の場所に近いところで発電するべきだ。なのに、北海道や九州で発電するというのは、原則に反しているので、本末転倒だ。

 (4) 北海道で洋上発電をするというのは、北海道には台風が来ないので、都合がいいからだろう。九州で太陽光発電をするというのは、九州では東が強いので、都合がいいからだろう。……だが、こういうふうに発電所の都合ばかりを考えて、送電のための巨額の費用を消費者に転嫁するというのは、泥棒も同然だ。自分の都合のために他人の金を奪うというのは、泥棒も同然だ。

 (5) 北海道や九州で発電するのが都合がいいというのなら、そのための費用は、北海道や九州の発電業者が負担するべきだ。送電網を建設したいのなら建設してもいいが、それを負担するのは北海道や九州の発電業者であるべきだ。関西や関東の消費者は、余計なコストを負担するべきではない。どうしても制度を導入するのなら、(送電に経費がかかって)高コストの電力の代わりに、(送電に経費がかからない)近場の電力を任意で選択できるようにするべきだ。……このようにすれば、高コストの発電を選択する人はいなくなるので、馬鹿げた方式は自動的に消滅する。

 (6) 北海道や九州で再生エネを増やしたいのであれば、関西や関東に送電するより、北海道や九州の地域内で需要を増やす方がいい。そのためには、北海道や九州で電力価格を下げればいい。そうすれば、各地の工場や事務所が引き寄せられるので、電力需要が増える。……なお、(経営の都合で)どうしても電力価格を下げることができないというのであれば、北海道や九州の発電をやめればいい。

 (7) 「北海道や九州の発電をやめたら、再生エネの発電量を増やせなくなる」という反論が来そうだ。しかし、そんなことはない。北海道や九州で発電するかわりに、東北や山陽や中部で発電すればいい。そうすれば、莫大な送電網の経費は激減する。特に、津軽海峡を渡る海底ケーブルを使わなくて済むので、経費は激減する。九州の発電の分も、四国経由で海底ケーブルを使わなくて済むので、経費は激減する。(予定では「九州 → 四国」という海底ルートで 6000億円程度の巨費を投入する予定だが、馬鹿げている。)

 (8) 「多大な発電能力が眠っているのは、本州よりも、北海道や九州だ」という見解もありそうだが、無視していい。なぜなら、現時点では、日本中のどこでも再生エネ発電が僅少だからだ。まずは本州で再生エネを普及させるべきであり、それが飽和したあとで、北海道や九州の発電量を増やせばいい。そういう順番を取れば、送電網の建設は何十年も後まで先延ばしできるのだ。

 (9) 何十年かたったあとは? そのころになって送電網を建設すればいいか? いや、その必要はない。そのころには、太陽光発電や洋上発電の効率が大幅に高まっているので、本州だけで必要な電力をまかなえるようになっている。北海道や九州の電力を必要としない。また、電気自動車が普及しているので、そこに充電することで、電力の需給の時間的なミスマッチも解消できる。というわけで、海底ケーブルによる送電も必要ないので、高額の送電網建設は必要ない。
  → 参考記事(北海道−関東で送電網増強・海底ケーブル検討 )

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 結局、「超高額なのに規模は小さい」という送電網建設は必要ない。そんなものは、ただの無駄だから、やめた方がいいのだ。
 どうせやるなら、本州内部で太陽光や風力の再生エネ発電の補助金額を増やす方がマシである。わざわざ北海道や九州に発電設備を建設して、さらに送電設備まで建設するというのは、(発電の)コスト意識をまったく欠いた発想であり、狂気的だとすら言える。
 さらには、そのコストを自分では負担できないから他人に負担させるという発想に至っては、泥棒の発想そのものだ。再生エネの推進論者は、今ではただの泥棒になり下がった。他人の金を使って善行をしているつもりになっているやつほど、始末の悪いものはない。



 【 関連項目 】

 (i)
 「他人の金を使って善行をしているつもり」
 という件では、似た話を前に書いたことがある。
 朝日のようなエコ信者や、自民党のような農家べったりだと、「国の金を奪って、環境や農業を推進するべきだ」と思いたがる。しかし、「それは一種の泥棒なのだ」という倫理観を働かせるべきだ。
 どれほど善行をしているつもりでも、他人の金を奪ってやるのであれば、それは決して善行ではないのだ。
( → 必要とされない職には就かない?: Open ブログ


 (ii)
 津軽海峡の送電(海底ケーブル敷設)については、前に批判したことがある。
 北海道と本州の電力を結ぶ 北本連系(きたほんれんけい)は、新たに設備が拡充されたが、ただの無駄であろう。(壮大な浪費。)

 たったの 30万キロワットのために、600億円だ。とんでもない巨額だ。
( → 北本連系(線)は無駄だ: Open ブログ

 狭い関門海峡ならまだしも、広くて深い津軽海峡は、海底ケーブルを敷設するには適さない。こんなところに海底ケーブルを敷設しても、効果はろくにないのに、やたらと巨額の金を食う。
 「金をドブに捨てる」かわりに「金を海峡に捨てる」わけだ。……ちょっとは違いがあるが、まさしく字面通りという感じだ。いくらか違いはあるが、そっくりなことをやるわけだ。してみると、海峡というのは、巨大なドブみたいなものかもね。



 [ 補足 ]
 こんな馬鹿げたことに大金を投入するというのは、コスパや経済効率という概念がまったく欠けているからだ。
 まともな頭があれば、コスパや経済効率を考える。最小の費用で最大の効果をもたらそうとする。その場合、最も優れた方法は、こうだ。
 「断熱住宅を推進することで、冷暖房のエネルギー消費を激減させる」
 これが最も賢明な方法だ。だからこの方針を推進するために、税制や補助金をうまく活用するといい。

 ところが現実には、そういう賢明な方法を取らずに、馬鹿げた愚行のために巨額の金を投入する。馬鹿の極みというしかない。

posted by 管理人 at 23:54| Comment(4) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
本州での洋上風力や太陽光発電が難しいからの送電という前提なんですから、(7)(8)は議論にならないかと。(1)(2)は再生エネルギーの話に火力発電が出てくるので、驚きました。(3)の地産地消も水素やアンモニアで成り立つ議論でしょうか?

地域間送電にこんなに費用がかかるのなら、水素やアンモニアに変えて輸送した場合との費用比較した方がいいかもですね。
Posted by 飛び魚 at 2021年05月01日 10:30
> 本州での洋上風力や太陽光発電が難しい

 そんなことないですよ。本州の住宅地の屋根はありあまっているし、耕作放棄の畑だってありあまっている。
 洋上風力は、今の技術では難しいが、どっちみち、今すぐの話ではなく、10年以上先の話だ。そのころには洋上風力も低コストで実施できそうだ。できなければ、本州でも北海道でも、どっちもできない。

 北海道や九州で多い理由は、「他ではできないから」ではなく、「他ではコストが少し上がるから」という金銭的な理由だ。

 (1)(2)は、再生エネの話ではなく、電力安定化の話。

 地産地消は、需要を移すことで、いくらか実現できる。

 ――

 水素やアンモニアは、悪手。コストはさらに十倍以上になる。

Posted by 管理人 at 2021年05月01日 11:02
電力が余るなら、蓄電(物理的、化学的)を考えれば良いですよね。
巨費投入は、実用上・危機管理上の施策というよりも利権が主眼なのではないでしょうか。
断熱は、ご指摘の通り。
現実は、昨今の猛暑対策として無断熱の鉄筋コンクリート校舎にエアコンをばしばし設置しています。
焼け石に、エアコン。
せめて屋根と外壁面に外付けの断熱をすればいいのに。
Posted by けろ at 2021年05月01日 14:33
確かに北海道から関東と九州から四国は費用対効果が低そうですね。
断熱住宅と屋根に太陽光の組合せは最強です。
その為には窓をどうにかしないといけません。熱伝導率の高いアルミをサッシにつかうのはばかげています。
しかも日本の窓は外付けなので交換する為には足場が必要。欧米の窓は内付けなので足場不要。
電力とか建設業界とかの海外との競争にさらされていない業界の作るものは、たいがいお粗末ですね。
Posted by メーオ at 2021年05月08日 15:39
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