2021年04月29日

◆ 日系各社の自動運転技術

 ホンダ・トヨタ・日産の自動運転技術の現状を評価する。

 ――

 ホンダとトヨタが自動運転技術の付いた新型車を出したので、現時点における各社の自動運転技術を評価する。

 ランキング


 手っ取り早いのは、各社の自動運転技術を評価するランキング表だ。米国カリフォルニア州の自動運転車の走行距離を見ることで、どの程度の熱意があるかを数値化することができる。

 2020年版は、前に 別項 でも紹介したが、下記だ。
  → ウーバーの自動運転車は危ない?数字が明かす真相
  ※ 日産が6位で、ホンダやトヨタははるか下位だ。(圏外ふう。)

 2021年版は、下記だ。
  → 自動運転成績ランキングで見る米国、中国企業の拮抗

 これを見ると、ランキングが大幅に変動している。
  ・ 日産は6位から 16位まで、大幅に悪化。
  ・ トヨタとホンダは、圏外ふう。
  ・ 中国の各社が大幅に上昇し、日系各社を大きく超える。

 たったの1年でこれほどにも大きな変動がある。

 ランキングは以上の通りだが、それとは別に、製品開発の現状を個別に見よう。

 ホンダ


 ホンダは、自動運転車の新型車を発売した。
  → 世界初 高度な自動運転機能「レベル3」搭載車 ホンダ販売へ | NHK
  → 自動運転レベル3を世界初採用したホンダ レジェンドが発売に。 - carview!

 時速 50km までという限定が付くが、自動運転レベル3を世界初採用したそうだ。
 装備は、ミリ波レーダーと LiDAR をそれぞれ5つ搭載しているということなので、日産のプロパイロット 2.0 をはるかに上回る構成の部品を搭載していることになる。日産のプロパイロット 2.0 を大きく超える技術水準だと言えるだろう。

 では、これは肯定的に評価できるか? 「否」というのが、私の判定だ。なぜなら、あまりにも高価な部品を搭載している性で、価格は従来比 400万円もアップしているからだ。これでは、売れるはずがない。
 というか、この車はそもそも売っていない。市販されていないのだ。リースという形で貸与されるだけだ。台数も 100台限定だ。
  → 世界初の自動運転レベル3搭載車レジェンドはまさかの100台限定のリース販売! 一体なぜ

 「100台限定のリース販売」というのは、「市販された」とは言わない。実験的な用途で、モニター的な試験貸与をしているというだけだ。
 というか、そもそも「高速道路で時速 50km まで」というのは、渋滞のとき専用だから、使う用途がほとんどないと言える。似た機能はスバルのアイサイトX にもある。
 アイサイトXでも、約50km/h以下の渋滞時にはハンズオフアシフトや渋滞時発進アシストの機能が作動できます。
 クルマの動きだけ見ると、ホンダセンシングエリートと大差ないように思えますが、仮にその状態でスマホを使うと道路交通法に違反してしまいます。
( → アイサイトXと何が違う? ホンダが実用化した世界初「レベル3自動運転」は何が凄いのか | くるまのニュース

 ホンダの方式も、アイサイトX も、どちらも 50km/h以下の渋滞時に手放しの自動運転ができる。ただし精度(信頼性)が違うので、ホンダは機械任せにしていても安心できるが、アイサイトX は万一のために人間が常に目をあけて注意している必要がある。とはいえ、そのくらいの差だ。実質的にはどちらも手放しの自動運転ができるので、大差がない。それでいて、価格には圧倒的な大差がある。ホンダの方式は 400万円だが、アイサイトX は 11万円程度で済む。( → 出典
 ホンダの方式は、時速 50km を越えても、レベル2の自動運転ができるので、その意味では日産のプロパイロット 2.0 と同等だと言える。とはいえ、ここでもコストの差が大きい。日産の方は 400万円もしない。(本体込み 5,57万円で、プロパイロット 2.0 が搭載されている。 → 出典

 以上を見ると、ホンダの自動運転車は、「市販した」と言えるようなものではなく、開発中のプロトタイプを試験的に貸与しているだけにすぎない。客はモルモットになるのも同然だろう。こんなことのために高い金を払う人がいるとは思えない。
 試験開発中ということであれば、ホンダよりももっと優れた技術を持つ社はいっぱいある。ホンダの自動運転車は、「ほとんど評価するに値しない」と言えるだろう。「とりあえず何かをやっています」というアリバイづくりみたいに試験販売(貸与)するだけだ。
 そもそも、「ミリ波レーダーと LiDAR をそれぞれ5つ搭載している」という高コストな車を出しているというところからして、「まともに売る気があるのか」と疑いたくなるね。
 

 トヨタ


 トヨタは、レクサスLS と、トヨタミライに、自動運転技術を搭載した新型車を発売した。
  → トヨタが最新の高度運転支援機能「アドバンストドライブ」発表 「レクサスLS」「トヨタ・ミライ」から搭載
  → 新型レクサスLSの“自動運転技術”は何がすごいのか? | GQ Japan

 価格は、レクサスLS では 66万〜98万円で、トヨタミライでは 55万円だ。
  → 自動運転レベル2をレクサス車に新採用! ベース車66万〜98万円高で将来の発展性も見込む高度自動運転システムを搭載|

 ホンダに比べると、 LiDAR が1台しか搭載されていないので、技術的には劣っている。しかし 100万円を切る価格で販売しているし、台数も限定されていない。ただのモニター販売(貸与)をするだけのホンダに比べると、立派に市販していると言える

 日産との比較では、 LiDAR を使っている分、高精度であり、かなりレベルは上だと言えよう。とはいえ、日産のプロパイロット 2.0 が出たのが 2019年7月16日だ。
  → 【日産 スカイライン 新型】“手放し運転”が可能、プロパイロット2.0搭載---分岐や追い越しでは補助
 このときから2年近くも立っている。そのわりには、日産のプロパイロット 2.0 とたいして違いはないようだ。口の悪い言い方をすれば、「日産よりも2年遅れている」と言えなくもない。(それほどひどくはないが。)

 ただし、私は前にトヨタの自動運転について悲観的に評価した。提携先のウーバーが自動運転から撤退したので、トヨタもお先真っ暗だ、という評価。
  → トヨタの自動運転が頓挫: Open ブログ

 現実には、それほどひどくはなかったらしい。ウーバーが撤退しても、トヨタは撤退しないで済みそうだ。
 とはいえ、トヨタはろくに技術をもたないことを、自分でも自覚しているようなので、ウーバーの代わりに、別の米国の会社を買収することにした。
  → トヨタ、米リフトの自動運転部門を買収 590億円: 日本経済新聞

 この会社(リフト)は、2020年版ではランキングに入っていないが、2021年版ではランキングで 13位に入っている。その点では、16位の日産よりは上だ。
 とはいえ、13位と 16位では、どちらも威張れたものではない。「どちらも負け」という評価になりそうだ。

 その点では、ランキング2位の GM クルーズ と提携しているホンダの方が、提携先としてはずっと良い相手と組んでいることになる。ホンダとしては、 GM クルーズ の技術を利用する権利を持つことができそうだ。とはいえ、技術使用料に莫大な金を払うとしたら、あまり喜んでもいられないが。

 日産


 日産は、2年前にスカイラインのプロパイロット 2.0 を出したときには、世界最先端というふうにも評価できた。ところが、その後がいただけない。2021年になると、はるかに上回る技術の新型車を出すと予想されたのだが、2021年6月ごろに販売が予定されている日産アリアは、スカイラインのプロパイロット 2.0 とほぼ同様のシステムを出すと推定されている。つまり、この2年間、技術の進歩がほとんど停滞していたことになる。呆れるばかり。(ゴーンが逮捕されたあとなのに、無為無策であり続けたわけだ。)
 
 技術的にも、他社のほとんどが LiDAR を搭載しているのに、日産だけは相も変わらず単眼カメラ方式のモービルアイを採用するだけらしい。ひどいものだ。
 LiDAR を使わなくても、ステレオカメラを使えば、3次元認識は可能だが、単眼カメラ方式では、それも無理だ。世界はどんどん進歩しているのに、日産だけは化石的な旧技術を使い続けることになる。3次元認識ができないまま、単に「コストの安い方式」というのばかりを狙っている。

 日産の単眼カメラは、3つのカメラ(遠・中・近)を組み合わせて使うもので、トライカムと呼ばれるものだ。モービルアイと ZF 社の開発によるもので、昨年夏の日産ローグにもこのカメラは搭載されている。
  → 日産 ローグ 新型、ZFの新世代カメラ純正採用…部分自動運転を支援

 しかし、こういうふうに(コスト安ばかりを狙って)単眼カメラという道を進むのは、間違った道・行き止まりの道に進んでいることになる。そのあげく、限界ないし袋小路にぶつかるのは避けがたい。
 他社は LiDAR やステレオカメラで、どんどん精度を上げてきているのに、日産だけは、単眼カメラによって低精度のポンコツ自動運転技術にこだわっているようだ。「コスト安なので」という理屈で。
 ところがそのコストも、日産だけがやっているような方式では大量生産ができずに、コスト高になりつつある。すでにトヨタは LiDAR を搭載しても比較的安い価格で自動運転を実現した。このままでは日産は世界の中で取り残されることになりそうだ。
 
 ※ モービルアイの方針は下記記事。
 【PR】モービルアイ&インテル、将来のEyeQ6までのロードマップ公開 - Car Watch
 

 ※ 日産は、Google の Waymo と、事業面では協力しているが、自動運転技術そのものでは、技術提携していることはない(協力関係にはない)ようだ。

  NVIDIA


 日産はモービルアイにこだわっている。(上記)
 一方、世界の大多数は、「 NVIDIA と LiDAR 」という組み合わせを採用しつつある。
 LiDAR センサー メーカーが NVIDIA DRIVE を基盤に開発を進める | NVIDIA

 トヨタやホンダもそうだ。

 ホンダと NVIDIA は、下記。
  → 自動運転技術の自社開発: Open ブログ

 トヨタと NVIDIA は、下記。
  → 自動運転業界、NVIDIA DRIVEの採用加速!6年間で80億ドル以上の受注額 | 自動運転ラボ

 ――――――

  《 加筆 》
 NVIDIA の使う LiDAR は、コンチネンタル製であるらしい。両社は提携しているからだ。
 → コンチネンタルとNVIDIAが協力、自動運転向けAIの世界生産を実現

 トヨタが使う LiDAR も、コンチネンタル製のものをデンソーが供給するらしい。
  → トヨタが異例のLIDAR4個、20年冬発売「レクサスLS」で | 日経クロステック

 ホンダのライダーもコンチネンタル製だ。カメラも合わせて、セット 一式をコンチネンタル製にする。
  → ホンダ、自動運転システムにコンチネンタル製採用 カメラなどすべて

――

 自動車会社(ホンダ・トヨタ)の自動運転システムは、すべてを自社開発するのではなく、コンチネンタルなどの部品を買ってチューニングすることで済ませているようだ。
 日産の場合も、モービルアイの部品を買ってチューニングすることで済ませているようだ。

 LiDAR とステレオカメラ


 世界の多くは LiDAR を採用しているが、私としては、LiDAR よりもステレオカメラをお勧めしている。

 LiDAR が人気なのは、高い精度を出せるからだ。しかしステレオカメラも近年では精度を高くすることができている。

 (1) 高精細の 4K カメラや 8K カメラが市販されつつある。
 (2) カラーからモノクロにすることで、解像度を3倍にすることができる。( → 前出

 さらに、二つのカメラの間隔をなるべく広げることで、解像度を高めることができる。車幅 1.8メートルに対して、最大で 1.6メートルぐらいのカメラ間隔を取れそうだ。ちなみに、人間の瞳孔間距離は 6.3cm ぐらいだから、その 25倍になる。とすれば、人間よりも 25倍も幅広にできる分、25倍も高感度・高精度に距離認識ができることになりそうだ。

 ※ 次の話もある。
  → ステレオカメラでLiDARに匹敵する検出精度を実現――自動運転車の低コスト化も

 ――

 さらに、ステレオカメラには大きな優位性がある。
 「黒い物体については、 LiDAR では測定できないが、ステレオカメラならば測定できる」

  LiDAR では、赤外線の反射によって距離を測るので、光を全吸収してしまう黒い物体については、距離を測定できない。一方、ステレオカメラならば、黒であろうと赤であろうと青であろうと、単に立体視すればいいだけなので、距離を測定できる。
 前方に、黒ずくめの服装をした人や物体があれば、LiDAR では検出できないのに、ステレオカメラでは検出できる。これは大きな優位性だ。

 LiDAR のこの弱点を解消する方法として、「黒い自動車には LiDAR 用の反射塗料を使えばいい」というアイデアもある。
  → 衝撃! LiDARは黒く暗い塗装の車両を検知しにくいという事実。だがアクサルタのLiDAR反射塗料がそれを解決する!?
 しかし、自動車だけならともかく、他のほとんどの物体(人間の衣服を含む)には、そんな反射塗料を塗るわけには行かないので、意味のないことだろう。
 
 LiDAR では、光を反射しないものは見えない。黒いものは見えない。しかしステレオカメラならば、たとえ対象が見えなくても、対象の位置はわかる。なぜならまわりのものが黒くないので、黒いものの輪郭はわかるからだ。(ただし周囲まで黒いと、「闇夜にカラス」となるので、さすがにこれは見えない。とはいえ、そんな真っ暗な状況では、自動車を運転するはずもない。ヘッドライトが故障した状態で夜間運転をするのは違法である。)

 ※ 他にも、ステレオカメラの優位性をいろいろと語る文書がある。参考になる。
  → ステレオカメラの優位性

 ――

 LiDAR の難点は、価格が非常に高価なことだが、近年では、いくらか安価になりつつある。
  → 自動運転レベル3とレベル4用に設計された 高性能LiDAR 99,000円[
  → Horizon LiDAR センサー - Livox(デモ映像あり)

 とはいえ、この価格でも、まだまだ高い。ホンダ車のように5台も搭載すると、それだけで 50万円になる。部品代でそれだけなら、ソフトや手間などで 100万円の値段を付ける必要がある。ステレオカメラに比べると、圧倒的に高価だと言える。

 ――

 LiDAR には、原理的に分解能が高くないという難点もある。これは好ましくない。たとえば、闇のなかを歩く黒人がいるとしたら、目と唇だけしか見えないかもしれない。
 目と唇だけだとしても、ステレオカメラならば十分に検出が可能だが、LiDAR では検出できないかもしれない。(分解能の低さのせいで。)

 ――

 LiDAR では、電波のかわりに赤外線を使うが、これだと、青色のものを検出できないかもしれない。(赤外線がぜん吸収されてしまって、黒く見えるせいで。)
 たとえば、青い車、青い服など。これらが認識されない危険があるので、その分、LiDAR の信頼性は低くなる。

 ――

 LiDAR は赤外線を放出するが、これが人間の目に入ると、健康の面で良くない可能性もある。
 レーダーでは電波を使用しますが、LiDARではそれよりも波長が短い赤外光を利用します。そのためレーダーよりも分解能が高く、サイズが小さい物体の位置検出や形状把握に向いています。現在は900nm帯の光の使用が主流ですが、最近では人間の目への安全性を考慮し、1500nm帯の開発も進められています。
( → LiDARの開発課題へのソリューション:光学総合サイト:サイバネット

 現実には、空の青さを見るだけでも、赤外線や紫外線が飛び込んでくるので、あまり神経質になる必要はないかもしれない。とはいえ、自動車の運転では、前方にいる車はずっと同じ車であることが多いので、ずっと同じ車の屋根にある LiDAR を見つめ続けていると、目の健康に良くないことも考えられる。

 ――

 テスラは、LiDAR の搭載に否定的だ。下記に動画がある。(字幕あり)







 【 関連サイト 】

 参考記事。
  → 距離センサ入門(ステレオカメラ、プロジェクション、LiDAR) - arutema47's blog
 
posted by 管理人 at 23:58| Comment(5) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 「NVIDIA」の章の後半に、 《 加筆 》 という箇所を書き足しておきました。
 コンチネンタル製のライダーの話など。
Posted by 管理人 at 2021年04月30日 13:36
中国企業の自動運転技術がどんなものかが気になりますね。
Posted by 反財務省 at 2021年04月30日 15:52
 中国の技術。以下引用。

 ――

自動運転車の「目」となる次世代光センサー「LiDAR(ライダー)」が3つ、ミリ波レーダーが6つ、カメラが12個搭載され、1秒間に400兆回の演算能力(400TOPS)を持つファーウェイ製チップが採用されている。

  https://news.yahoo.co.jp/articles/3aab7c0da112aa1144f4e6911b075856e2ec05eb

 トヨタ・ホンダと同レベルであり、日産よりはずっと上か。どこまで実用化しているかは不明だが、少なくとも装置レベルでは日産を大幅に上回る。日産は装置がないので、スタートラインで勝ち目がない。
 


Posted by 管理人 at 2021年04月30日 17:03
 ファーウェイの自動運転車

> 今回の試乗車はレベル4に相当するといい、2021年の冬から中国国内で販売予定。
  
https://www.fnn.jp/articles/-/173652

 ――

ホンダ、中国で自動運転実験 公道で「レベル4」

  https://www.jiji.com/jc/article?k=2021041601121&g=eco
Posted by 管理人 at 2021年04月30日 18:14
 日産のアリアが発売決定した。
 自動運転の名称は、プロパイロット2.0 であるので、2年前の技術がそのまま使われているようだ。その点は、本文に記したとおり。

 トヨタは逆で、大幅に進歩した。本文に書いてある通り、すでに LiDAR が1個ついた車種を販売しているが、さらに LiDAR 3個の増設を無償アップグレードで実施するそうだ。

> 側方に2つのLiDAR、後方に1つのLiDARを増設するハードウェアアップグレードが無償で行なわれる

 https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1320169.html

 これだけの装備で、価格差は 55万円なので、バーゲンプライスである。価格でも性能でも、日産は大きく引き離されたと言えるだろう。

 ただ、トヨタの弱点は、Lexus LS と Mirai という超高級車にしか装備しないこと。最低でも 800万円ほどだ。補助金はいっぱい付くが、本体がどうにも買う気になれない(買えない)ものばかり。

 ――

 なお、日産は遅れているようでも、直接のライバルとなる ベンツ EQA の半自動運転よりは、ずっと進んでいるので、その点ではマシである。
Posted by 管理人 at 2021年06月05日 16:27
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