2021年04月28日

◆ e-POWER + VCターボ は無効

 日産の新型キャシュカイには、「 e-POWER + VCターボ 」という組み合わせの機構が搭載される。これを評価する。

 ――

 初めに結論を述べれば、「これは駄目だ」という評価だ。
  ・ e-POWER という技術は良い。
  ・ VCターボ という技術も良い。

 というふうに、それぞれの技術は良い。しかしこの両者を組み合わせるのは、駄目だ。一種の「食い合わせ」みたいに、まずいことになる。それが結論だ。

 ところが、日産はそのことに気づかないまま、新型キャシュカイに搭載している。「どっちも良いものだから、両方を組み合わせれば、さらに良くなる」と思っているのだろう。しかし、それは間違いだ。
 比喩的に言えば、それは、ハーゲンダッツと寿司を合わせて食べるようなものだ。どちらも単独ではおいしいが、両方を混ぜたらまずくなる。……そういうことに気づかないで、良いもの同士を組み合わせようというのが、素人考えというものだが。

 ※ 以下では、駄目な理由を説明しよう。

 ――

 VCターボ とは何か? 可変圧縮比のエンジンだ。可変圧縮比というのはどういうものかというと、圧縮比が可変的に変化するものだ。
  → 可変圧縮比エンジンが実用化: Open ブログ
 ここでは特に、エンジン回転するの高低に応じて変わる」という点が重要だ。
 自動車のエンジンは、必要とされる出力が状況に応じて変化するが、出力を変えるためには、回転数を変えることで出力を変える。ところが、高回転と低回転とでは、必要とされる圧縮比が異なる。
  ・ 低回転では、経済性を狙いたいので、高い圧縮比。
  ・ 高回転では、高出力を狙いたいので、高いターボ・ブーストにするが、そのためには低い圧縮比。

 こういうふうに圧縮比を変えるわけだが、その前提として、「回転数を変えることで出力を変える」ということがある。

 ところが、である。
 e-POWER の場合には、「回転数を変えることで出力を変える」ということが必要ない。つまり、回転数を常に一定にしていてよい。出力を減らしたいときには、回転数を下げるのではなく、エンジンそのものを断続的に止めればいい。次のように。
 「エンジンの出力を半分に下げたいときには、回転数を半分に下げるかわりに、エンジンの稼働している時間を、時間的に半分にすればいい」

 たとえば、「エンジンを5分間稼働して、5分間休止する」というふうにすれば、平均的な出力は半分になるから、回転数を半分に下げたのと同じ効果が得られる。
 ( ※ 断続的な出力変動を、なめらかな平均出力に変換するのは、充電池の役割である。)

 エンジンを稼働したり休止させめたりするのは、排気量を「全部」と「ゼロ」とで変化させるのと同等の効果がある。その意味では、これは一種の「可変排気量システム」と同等である。(時分割の可変排気量)
 そして、「可変排気量システム」があれば、出力の可変的な変化はいくらでも可能だから、VCターボ みたいに回転数を変化させる必要はないわけだ。
 では、VCターボのかわりにどうすればいいかというと、単に出力不足に対応するだけでいい。その方策は、いろいろとある。
  ・ 気筒数アップや、排気量アップ
  ・ ミラーサイクルターボ (可変圧縮比は無し)


 たとえば、新型キャシュカイの標準仕様には、「 1.3L、3気筒、140ps のターボエンジン」が搭載されるようだ。
  → 日産の新型エンジン(VCターボ): Open ブログ
 だが、これをそのまま搭載したのでは、回転数を一定にしたときの最高出力が足りなくなる。それは困る。
 そこで、「 2.0L、4気筒、150ps のミラーサイクルターボエンジン」を搭載すればいい。これを常に低回転にして、断続的に稼働させればいいのだ。
( ※ 一時的には、中回転まで上げてもいいが、低効率の高回転は捨てる。)
( ※ 気筒数を増やすと、摩擦によるロスが増えるように見えるが、エンジンの稼働時間が短縮するから、差し引きして、摩擦によるロスは増えない。)

 このようにすれば、VCターボ とほぼ同等の性能を、圧倒的に低い価格で実現できる。
 要するに、 e-POWER によって「可変排気量」を実現できるのであれば、「可変圧縮比」という高価なシステムは必要ないのだ。これが原理だ。
 その意味で、「 VCターボ + e-POWER 」という組み合わせは、ナンセンスである。

 ――

 ただし、VCターボ がまったく不要だ、というわけでもない。
 前項でも述べたように、高速燃費を向上させるには、シリーズ方式だけでなく、エンジン直結のモードも必要だ。
 そして、エンジン直結のモードを使うときには、もはやシリーズ方式( e-POWER )は使えないので、エンジンの断続駆動もできない。その場合には、VCターボ は強みを発揮できる。
 つまり、VCターボ は、「 e-POWER 単体との組み合わせ」では不要なのだが、「 e-POWER とエンジン直結の併用」では有効なのだ。その意味では、「 VCターボ は不要だ」とは言えない。

 ただし現実には、日産は VCターボ をエンジン直結と組み合わせてはいない。 VCターボ を「 e-POWER 単体」と組み合わせている。これは、ナンセンスである。(前述の通り。)

 ――

 物事には、「正しいやり方」とか「正しい組み合わせ」とかいうものがある。「良いもの同士を組み合わせればうまく行く」というような発想は成立しないのだ。
 男と女だって、相性というものがある。どんなに素晴らしい男と女でも、うまく行かないこともあるのだ。
 たとえば、顔も性格も、何から何まですごく素敵で、大好きになれる女性なのに、男と女としてはどういうわけかうまく行かない……というようなこともある。
 一方で、性格はひどい女なのに、美貌に惹かれて付き合ってみると、男と女としてはどういうわけかうまく行く……ということもある。





 おやおや。話がちょっとズレてしまった。
 ともあれ、機械でも人間関係でも料理でも、「組み合わせ」や「食い合わせ」には注意した方がいい、と言えるだろう。
 


 【 追記 】
 日産は「すでに VCターボ エンジンを開発したのに、今さら変えられないよ。新規エンジンを開発するのには、時間がかかりすぎる」と異を立てるかもしれない。
 だが、大丈夫。新規エンジンを開発するのではなく、エンジン直結のシステムを開発すればいい。これならば比較的短時間で済む。しかも、このシステムは将来的には不可避なのだから、どうしても開発する必要があるのだ。
 日産がやるべきことは、さっさと「エンジン直結」のシステムを搭載することだ。ホンダを真似しろ。

 ※ 技術的にはかなり容易だ。既存のシステムを流用するだけでいい。詳細は下記。
 → 次のハイブリッドは?: Open ブログ

posted by 管理人 at 23:27| Comment(3) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日産も将来的に可変圧縮比の機能は取り払うといっています。リンク機構は残すそうですが。リンク機構は可変圧縮比のためだけでなく、シリンダー振動を単一周波数の正弦波となるように設定して、振動低減と、側面圧力減による摩擦抵抗の低減を実現する目的でも搭載されており、この機構は熱効率50%に必要だというのが日産の主張です。

直結モードについてですが、今回発表されたキャシュカイe-POWERの時点で、140キロまででTHSに匹敵するという話ですので、この先搭載されることはないでしょう。e-POWERシステムはEVとのユニット共用が出来るように設計されており、直結機構の追加のような、共用化率を下げることはしないと思われます。また、欧州はメーカー主導で日本のように最高速リミッターが180、160キロと順次導入される流れなので、超高速走行にたいする要求はなくなると思われます。
Posted by なまず at 2021年04月29日 21:33
> 140キロまででTHSに匹敵する

 THS は、高速燃費が DCT やロックアップ AT よりもかなり劣るので、欧州では不評なんです。
 日産が直結モードを採用しないなら、直結モードを採用したホンダ車ばかりが売れることになるでしょう。他社も真似するだろうし、そうなると、日産とトヨタばかりがシェアを落とすことになる。

> e-POWERシステムはEVとのユニット共用が出来るように設計されており、

 その程度のことのために、効率を 10%も悪化させたら、この先生き残ることはできないでしょう。燃費悪化のせいで科される罰金だけで、膨大な額になります。ユニット共用で 5万円のコストダウンにして、燃費悪化で罰金 50万円を払う、という感じ。

 もっとも、そういう馬鹿丸出しのことをするのが日産の伝統なので、「日産は馬鹿だから、馬鹿丸出しの間違ったことをやるのだろう」というふうに予想するのであれば、その予想は当たるでしょう。あげく、大赤字を出すハメになるわけだが、それは今の日産を見ればわかる。常に間違った道を取り続ける。
Posted by 管理人 at 2021年04月29日 22:23
> POWERシステムはEVとのユニット共用が出来るように設計されており、

 この件は関係ないですね。エンジン直結の部分は、エンジンまわりだけで実現するので、EV は無関係です。EV にはエンジンが搭載されないので。
 共用するのは、モーターまわりだけです。エンジンまわりは、共用とは関係ありません。
Posted by 管理人 at 2021年04月30日 08:00
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ