2021年04月27日

◆ 欧州排ガス規制 CAFE

 欧州で自動車の炭酸ガス排出規制 CAFE がある。2021年にはきわめて厳しくなるが、日本の自動車会社は対応できるか? 

 ――

 CAFE 規制


 昔の排ガス規制は有害ガスを規制するものだった。また、燃費規制は、炭酸ガスの排出量を間接的に規制するものだったが、電気自動車の扱いがはっきりしなかった。
 そこで新たに出たのが(欧州の) CAFE というもので、炭酸ガスの排出量を直接的に測定して規制するというものだ。これだと、EV や FCV は「炭酸ガスの排出量がゼロ」となるので、「 EV や FCV を推進する」という目的に合致する方式の規制だと言える。
 北米の ZEV と並んで、欧州では CAFE という規制があるわけだ。この件は、前にも言及した。
  → 日本の温室効果ガス政策: Open ブログ

 この CAFE に、日本の各社はどう対応したか? 
 2019年は、各社はおおむねクリアできたようだ。
 しかし、2020年の規制をクリアするのは(トヨタ以外は)厳しいようだ。2021年は、さらに厳しくなりそうで、トヨタ以外は巨額の罰金を科されることになりそうだという。
  → 【国産メーカー大打撃か!?】新欧州燃費規制で苦境のメーカーと無傷の会社【クルマの達人になる】 - 自動車情報誌「ベストカー」
  → 【間に合わない?】WLTP新基準、メーカーは「苦戦」 燃費等の数値公表 | AUTOCAR JAPAN
  → 欧州新車のCO2排出量「目標値に逆行」 トヨタや日産は削減成功/民間調査 | ニュース | 環境ビジネスオンライン
  → 欧州の車排ガス規制、罰金1.8兆円 主要13社の21年推計: 日本経済新聞
 
 2020年のデータは、調べてみたが、トヨタはクリアできたようだが、VW はかなりの罰金を払うハメになったそうだ。
  → 独VW、EUの新CO2規制クリアできず 罰金200億円弱か: 日本経済新聞
  → VWに130億円の罰金、EUの排ガス基準未達で−決算には響かず - Bloomberg

 ホンダと日産の額は不明だが、推定値がある。
  → EUで巨額の罰金に直面する自動車メーカーをPAコンサルティングが予測 | EVsmartブログ
 ここから一部抜粋すると、こうだ。


2021cafe.png


 トヨタ以外は、各社ともかなりの罰金を払うことになりそうだ。
 とはいえ、これはあくまで予測である。実際にどうなるかは、はっきりとしない。そもそも、上の予測は、2020年2月10日のものであって、基板となる情報が古すぎる。
 そこで新たに私が独自に考えてみよう。(予想)

 トヨタ


 トヨタは 2021年も万全だと言える。欧州 カー・オブ・ザ・イヤーを取ったヤリス HV が絶好調だからだ。
 ヤリスは、自動車としてみれば、たいして優れているわけでもない。日本でもフィットやノートと比べて特に優れているわけでもない。販売台数でも、本来のヤリスよりも、SUV のヤリスクロスで台数を稼いでいるというありさまだ。(日本では。)それでも欧州でカー・オブ・ザ・イヤーを取ったのは、ヤリス HV は炭酸ガスの排出量が圧倒的に少ないからだろう。95g/km という目標値の3分の2程度の排出量しかないので、大型車で多くの炭酸ガスを出す分を相殺できる。全車種平均でもうまくクリアできそうだ。
 さらに、他の車種でも全方位的に HV をそろえている。
 電気自動車では大幅に出遅れているが、HV で圧倒的に進んでいるので、CAFE に対しては万全だと言えよう。

 ホンダ


 ホンダはどうか? 一時は出遅れていたようだが、フィット HV を2020年初めに出したので、十分に間に合っているようだ。他の車種ではハイブリッド化が進んでいないので、トヨタに比べるとやや出遅れ気味だが、少しずつハイブリッドの車種を増やすことで、将来的にもトヨタ並みに対応できるようになるだろう。
 特に強みがあるのは、ハイブリッドにエンジン直結モードがあることだ。これで高速燃費を稼ぐことができるので、この意味ではトヨタ以上だと言える。技術的には最も優れていると言えるだろう。(車種の展開がまだだが。)
 電気自動車で出遅れているという点では、トヨタと同様だ。

 日産


 日産は、事情がかなり異なる。
 過去においては、ハイブリッドはなくとも、リーフの分で、うまく CAFE 規制をクリアできたようだ。
 しかし近年では違う。日産は e-POWER というハイブリッド技術を持っていたが、これを販売している地域は日本だけで、欧州や米国では販売していない。その意味で、ハイブリッド車の販売は、トヨタやホンダに比べて大きく遅れている。(というか、皆無である。)
 2021年になると、新型キャシュカイに e-POWER 車を用意するといっているが、実際に販売するのは夏または秋なので、どうしても出遅れとなる。また、たとえ e-POWER 車を出しても、可変圧縮比システムと併用するので、ものすごく高価(100万円高)になりそうで、販売台数は見込めない。また、エンジン直結モードがないので、高速走行時の燃費が悪くなりそうだ。その意味で、欧州向きではない。
  → 日産の新型エンジン(VCターボ): Open ブログ
 さらに言うと、日産は欧州では乗用車よりも SUV が売れているのだが、 SUV はただでさえ重量が重いので、燃費や排ガスの面では不利だ。
 以上のように、あれやこれやと、日産には不利な面が多い。不利というより、技術的に劣っていると言える。個々の技術を見る限りは悪くはないのだが、実際に製品になっている技術を見ると、とても時代に対応できているとは言えない。
 こういう体質があるせいか、2020年には販売台数を大きく落とした。
 日産も、アジアのナンバーワンメーカーの座をトヨタと争ってきたが、今年10か月間の販売はライバルの半分以下に落ち込んだ。
( → 【三菱だけじゃない】逆風に直面する日本メーカー 欧州で生き残る方法はあるか? | AUTOCAR JAPAN

 日産は惨憺たるありさまだと言える。お先真っ暗だ。日産がこういうことになったのは、経営者が技術に無知だからだろう。
 思えば、家電各社が大幅に衰退したのは、経営者が技術にはまったく無知だったからだ。技術のことを詳しく知っている経営者がいる台湾・中国の企業に比べると、大幅に劣っていると言える。
 日産は、技術に詳しい唯一の社長候補である関潤氏を社長にすることを拒んだ。(ルノーの経営者が絶対反対したせいらしい。)結果的に、技術のことを知らない文系の経営者が社長になった。(同志社大学神学部卒・日商岩井出身。)だが、こんな技術音痴が経営者になったのでは、会社全体の方向を正しく導くことなど、できるはずがない。
 日産は衰退するべくして衰退したと言える。(それが昨年一年間の大幅赤字や大幅なシェア減少となって現れている。)

 将来


 では、将来はどうか? 将来も現在と同様だと言えるだろうか? いや、そうでもない。

 トヨタのハイブリッド技術は、現在では世界一だが、今後はそうも言えない。トヨタのハイブリッド方式は、高速燃費が優れていないので、欧州向きではない。その点では、ホンダの方式に劣る。

 ホンダは、ハイブリッドで高速燃費を稼げるのはいいのだが、いかんせん、それ以外が駄目だ。ハイブリッドでは日常域でのチューニングで、日産の e-POWER に大きく遅れている。ハイブリッドの車種展開も、トヨタに遅れている。何よりまずいのは、自動車の魅力そのものが良くないことだ。そのせいで、販売台数増があまり見込めないので、ホンダは欧州における自動車生産から撤退することに決めた。
  → ホンダ、欧州の生産から撤退  2021年末までに | 日経クロステック

 日産はどうか? 当面は(前述のように)ひどいし、この先も e-POWER にエンジン直結が見込めないので、やはりお先真っ暗だと言える。
 とはいえ、もっと先になると、見通しは明るい。 E-POWER にエンジン直結モードを搭載すれば、鬼に金棒となって、低速でも高速でも最高の性能を発揮して、一挙に世界最高の地位を獲得できる。(それは技術的には容易だ。経営者が「うん」と言うだけで、すぐにも実現できる。)
 さらには、 e-POWER の電池量を少し増やすだけで、 e-POWER 車を PHV にすることができる。
  → e-POWER を PHV にする: Open ブログ
 こうなると、一挙に 2030年ごろの技術を実現できることになる。もうちょっと電池量を増やすと、PHV の先にある「レンジエクステンダー付き EV 」にすることができる。REEV ( range extended electric vehicle )というものだ。……これらのことは、他の企業では困難だが、日産に限っては、経営者が「うん」と言うだけで実現できるのだ。いずれも技術はすでにあるからだ。(ただし経営者が「うん」と言わないのが問題だが。)
 経営者の問題はあるにせよ、今の経営者が5年も続けているわけでもなさそうだから、将来的には、日産は状況が大幅に改善する可能性があると言えよう。(実際にそうなるかどうかは、経営者しだい。他の会社は技術に難点があるが、日産は経営者に難点がある。)

 EV との関係


 トヨタの社長はかねて EV に否定的だ。
 「 EV は走行中には炭酸ガスを出さないが、発電のときに(火力発電があるせいで)炭酸ガスを出すから、実際にはかなりの炭酸ガスを出している。また、製造過程でも大量の炭酸ガスを出している。トータルでは、EV も HV も大差ない。EV ばかりを優遇するのはおかしい」
 という趣旨だ。
 これには、次の批判が出る。
 「今現在では、HV も EV も炭酸ガスの排出量が同程度だとしても、将来には、再生可能エネ発電(太陽光発電・風力発電)が普及するのだから、将来には EV が HV よりも有利になる。だから今のうちに EV を推進するのだ」
 というわけ。
 これはこれでいいのだが、これには次の反論を出せる。
 「将来には EV が HV よりも有利になるから、今のうちに EV を推進するのだというのはいい。だが、今現在の CAFE 規制では、EV が HV よりも優れているということはないのだから、HV に比べて EV の炭酸ガス排出量をゼロにカウントするのは、おかしい。EV についても、HV の半分ぐらいの炭酸ガス排出をカウントするべきだ。少なくとも、今現在の時点では」
 これはまったくその通りだろう。だから、トヨタの社長は、そういうふうに主張するべきだ。そうすれば、他社に対するトヨタの優位性を、いっそう強く確立できる。
 なのに、トヨタの社長は、そう主張しない。やたらと EV 批判ばかりを言っていて、「頭の古い化石的な人間」と思われて、馬鹿にされる。のみならず、会社全体が EV化の流れに取り残されてしまう。
 トヨタの社長は「世間は馬鹿ばかりで、自分だけは利口だと思い込んでいる」という、お山の大将タイプだ。菅首相にも似ている。人の意見に耳を貸さないタイプだ。
 トヨタの社長は、もともと理系でもないのに、技術のことをよく知っているつもりでいる。
 日産の社長は、ただの無知だが、トヨタの社長は、「技術に少し詳しいだけなのに自惚れすぎている」というタイプだ。自惚れた社長というのは、まったく始末が悪い。



 【 関連サイト 】

 → 欧州のEV戦略は「ブラック魔王」で読み解ける:日経ビジネス電子版

 たいして面白い記事ではないが、ちょっとリンク示しておく。
 
posted by 管理人 at 23:54| Comment(2) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これからはまともなリチウムイオン電池を
いかに大量に確保するかだけの勝負ですね。
今までのエンジン技術競争に比べると
寂しい感じがしますが、電池さえあれば
いいので、中国系が伸びてくるんでしょう。
Posted by 横レス at 2021年04月28日 18:03
 電池は同じようなものでも、ホンダはルノー・ゾエに大差で負けている。

 https://blog.evsmart.net/ev-news/honda-joins-tesla-ev-credit-pool/
 https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20201119/se1/00m/020/001000d

 ルノーは、別に EV 技術が優れているわけじゃないんだが、日産の技術を丸ごと導入して自社の車に乗せたことで、テスラを上回る販売量となっている。(欧州で)

 ホンダは台数が出ないだけでなく、1台あたり 100万円の赤字だそうだ。(上記記事)

 ――

 なお、いずれにしても電気自動車の普及は 10年ぐらい先の話になる。当面は HV で、そのあとが PHV だ。電気自動車はまだまだ少数派だ。
Posted by 管理人 at 2021年04月28日 18:49
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