JR東 のサイトは根本的に失敗していると言える。(これが問題の根源だとも言える。)
※ 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
――
この件については、(前々項で述べたが)本来ならば予約する段階で「車椅子対応の有無」を確認するべきだった。そうすれば、「車椅子対応なし」と判明するので、「来宮駅にしよう」などとは思わなかったはずだ。かくて、問題は生じなかったはずだ。
→ 鉄道駅の車椅子対応: Open ブログ
→ 続・車椅子対応の問題はネットリテラシー
とはいえ、たとえ予約前にこのサイトを確認したとしても、それで問題を回避できたかというと、おぼつかない。
先の女性身障者は、JR東 のサイト(来宮駅)を見ても、必要な情報(車椅子情報)を得られなかった。次のように述べている。
事前にインターネットで、来宮駅の構内図を確認し、1Fの図の表示しかなく、上りホーム側に階段が。
下りなら階段なしなのかな、と思い、行ってから考えようとなりました。
( → JRで車いすは乗車拒否されました : コラムニスト伊是名夏子ブログ )
別の記事では、もっと詳しく説明している。
JR来宮駅で検索すると構内図が出てきて、それには、階段があるのは分かったんですけど、1階という書かれ方しかなくて、無人駅かどうかも分かりませんでした。私の見方も間違ったんですけど、片方側に階段が付いているのかなと考え、長い階段があるとは思っていなかったです。5段ぐらいの階段かなとは思っていました。そういう場合があったとしても、いつも駅員さんが集まってくれて持ち上げてくれるし、介助者もいたので、さほど問題はないかなと思って行きました。
( → なぜ彼女は「JRに乗車拒否された」と訴えたのか 波紋ブログの真意、伊是名夏子さんに聞いた: J-CAST ニュース )
つまり、構内図のページだけを見ていて、車椅子情報のページを見ていないのだ。
では、どうしてか?
まず、Google で「来宮駅 JR」を検索する。
→ 来宮駅 JR - Google 検索
ここでは、1番目に表示されるのは構内図のページだけだ。他のページは2番目以後にも表示されない。
そこで、1番目のページを開くと、こうなる。

このあと、これをスクロールすると、下の方に構内図の情報が出てくる。さらにいくつかの情報が出てくる。そこを見て、「車椅子の情報はない」と判断したわけだ。
しかし正しくは、上の画像が出た段階で、左端の「駅情報」というアイコンをクリックするべきだった。そうすれば、車椅子情報を得ることができた。
しかし彼女はそうしなかった。「このページだけを見れば必要な情報は得られる」と思い込んでおり、「このページになければ情報はどこにもないのだ」と思い込んだ。かくて車椅子情報がないまま、出発した。
下りなら階段なしなのかな、と思い、行ってから考えようとなりました。
何ともまあお気楽なものだが、情弱というのはこういうものだ。そして、世の中の大半の人々は情弱なのだ。
その意味で、情弱対策ができていなかった JR東 のサイト設計が根本的に間違っていたと言える。
この問題は、「車椅子設備の問題というより、情報処理の問題だ」と言えるのだが、その問題は、サイトを見る身障者の側だけにあるのではなく、サイトを提供する JR東 の側にもあるのだ。(むしろ、JR東 の責任の方が圧倒的に大きい。)
――
では、どうするべきだったか? 以下で示そう。
(1) 選択状態
最初の状態では、「構内図」が選択された状態となっている。別にユーザーが「構内図」を選択したわけでもないのに、「来宮駅」で検索しただけで、自動的に「構内図」が選択されている。

しかも、それが選択状態だということが、わかりにくい。情報強者ならば、これが緑色で下線が付いているので、「選択状態なのだろう」と見当が付く。だが、情弱の人には、それが選択状態だということがわからない。
「選択もしていないのに、どうして勝手に選択しているんだよ」
と文句を言いたくなるだろう。
そして、それが選択状態だと気づかなければ、「駅情報」という別ページに移転するべきだとはわからないわけだ。
かくて、必要な情報のあるページに行けなくなって、必要な情報を得られないままとなる。
(2) トップページ
この問題を回避するには、どうすればいいか? トップページを設置すればいい。そこでは、上図の三つのアイコンだけを表示して、他の情報は一切表示しなければいい。
この状態では、アイコンはいずれも未選択状態である。また、情報は何も記していない。
となると、ユーザーとしては、三つのアイコンのうち、いずれかを選択するしかない。そこで、選択するという行為が発生するから、自分がどのページに行くかもわかる。そのとき、自分で選択して「駅情報」というアイコンをクリックする。すると、以後は「バリアフリー情報」という項目を選択できるようになるのだ。

(3) アイコンの配置
三つのアイコンの配置も重要だ。現状では
駅情報 時刻表 構内図
という順で並んでいる。しかし、これは不適切だ。なぜか? 「駅情報」というのは「その他の情報すべて」のことを意味するからだ。(詳細は上図にたくさん掲載されているとおり。)
しかし、「その他」が冒頭に来るというのは、いかにもおかしい。論理的に狂っている。「その他」は最後に来る必要がある。とすれば、次の並びが妥当だ。
構内図 時刻表 駅情報
こうすれば、車椅子情報を知りたい人は、「構内図でもなく、時刻表でもないので、(その他にあたる)駅情報を選べばいいのだな」とわかる。
こうして自動的に、車椅子の情報を得られるようになるのだ。
――
結局、以上が正しいサイト設計だ。
・ トップページを設置する。
・ トップページには、簡単なアイコンだけを表示する。
・ 各アイコンは、未選択状態である。
・ 「その他」を意味するアイコンは、最後に置く。
この4点を守ることが必要だった。下図のように。

なのに、実際にはそうではなかった。だから、情弱の身障者が迷走することになったのだ。
サイトの利用には高いIT知識を必要として、情弱の人には対策ができていなかったという点で、JR東 のサイト設計には大きな失敗があったと言える。
これをひとことで言えば、身障者よりも JR東 が情弱だった、ということだ。JR東 の情弱ぶりを是正しないと、多くのユーザーが迷惑を受ける。
実際、「えきねっと」というサイトの使いにくさは、普通の利用者にも悪評が出ている。
→ えきねっと 使いにくい - Google 検索
困っているのは身障者だけではないのだ。国民の多くが困っているのだ。そのうち、今回は特に身障者だけが被害に遭った、と言える。
問題の根本的な改善のためには、JR東 の情弱ぶりを是正する必要がある。せめて、「すぐれたサイトデザインを公募する」というぐらいのことはしてもいいはずだが。
※ 自分で優秀案を評価できなければ、評価する専門家に頼めばいい。
( 結局は、今回の問題は、車椅子の設備うんぬんよりも、JR東 の情報処理の問題だったのである。)
【 関連サイト 】
新幹線の回数券が販売されなくなるそうだ。
→ 消えゆく新幹線回数券 「時代終わった」金券店主の嘆き:朝日新聞
今回の追加の廃止で、東京―新大阪間の指定席とグリーン車の回数券は、すべて消えることになる。金子慎社長は4月8日の記者会見で、「(回数券の)販売実績が落ち、利用実態もネット予約を使うお客さまがだいぶ増えてきた」と説明した。
と社長は述べているが、肝心のネット販売は、えきねっと が使いにくくて仕方がない、と悪評なのだ。
そこを放置して回数券を廃止することには、大いに問題がある。新聞社は、その点を指摘しないと駄目だね。
――
なお、えきねっと が使えるのは、JR東 と JR西 の新幹線だけだ。一方、東海道新幹線は JR東海なので、東海道新幹線は、えきねっと でうまくサポートされていない。そのせいでトラブルも発生している。
窓口で事情を話したところ、JR東海の職員はJR東日本が運営する「えきねっと」のことはわからないらしく、5分くらいマニュアルと格闘したのちに「えきねっとのチケットは発券していないので、クレジットカードに請求されません。」と断言したので、品川からの乗車券と特急券+指定券?を支払いました。
ところがです。
後日JR東日本のサイトを確認してみると、発券のいかんにかかわらず、しっかりとクレジットカードにチケット代が請求されていました。
( → 「えきねっと」の衝撃! 最悪のユーザビリティーを放置するJR東日本の体質 )
このユーザーにもいくらか責任があったようだが、トラブルが発生しやすい構造があるという点では、えきねっと には大きな問題があるようだ。
――
この問題を解決するには、どうすればいいか? そこは困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
「 JR 4社の新幹線部門を統合する。統合してできた新会社が えきねっと を運営する。事業収入は4社で配分するが、経営は4社を統合する。その新会社には、情報に強い専門家をたくさん導入する。NEC や富士通の技術者(定年間際の高齢者)を導入する」
こうすれば、東大出の優秀な人がいっぱいやってくるだろうから、問題の解決も可能だろう。現状のような馬鹿げた状態が放置されることはなくなるだろう。
[ 付記 ]
ただし J-CAST のインタビューの後段では、彼女は自分の非をまったく認めていない。「無人駅であろうと、JR は身障者のために最大限の奉仕をするべきだ」という王様ぶりの専横ぶりを徹底的に主張している。その点では、前項で記した通り。
今回、小田原駅の方は多分、一番最初は、来宮駅に階段があるとか無人駅とか分かっていなかったと思うんですね。やっと分かったところで、「ああ、案内できません」と軽く言われたので、「じゃあ、お願いします」と言いましたが、一方的に、案内できません、人なんて集められません、と言われました。ちょっとこれは交渉しないといけないなと思って1時間交渉しました。
「来宮駅に階段があるとか無人駅とか分かっていなかったと思う」というんだから、呆れる。他人を馬鹿にするのにもほどがある、と言いたくなるレベルだ。徹底的に他人を見下しているようだ。そのあげく、批判されて、記事を大量に削除するようなことになった。( → 前項のコメント欄)
――
ただ、彼女の事後的な対応にも問題はあるが、話の根源は、予約以前だ。JR東 が最初から「来宮駅では車椅子は使えません」と明示しておけば、彼女が来宮駅のホテルを選ぶこともなかったはずなのだ。そうすれば問題は最初から生じなかった。
JR東 のサイトが見にくいことがすべての根源である……ということは、本項の話からも理解できるだろう。その意味では、彼女もまた被害者の一人だった。のみならず、健常者もまた、「えきねっと」の使いにくさの被害者となっている。それが、これまでは回数券で回避できていたのに、今後は回避することもできなくなった。
人々は今回の女性身障者を批判しているようだが、それでいい気になっていると、自分もまた、JR東 の使いにくさの被害を受ける一人となってしまうのだ。
【 追記 】
もう一つ重要なことがある。「車椅子情報のページへのリンク」が、スマホではトップページから消えてしまう、ということだ。


画面上端にある お身体の不自由なお客様へ という文字が、パソコン画面では表示されるのに、スマホ画面では消えてしまう。
だから今回の女性身障者は、車椅子情報のページへたどり着くことができなかったのだ。
実は、スマホ画面でも右上の メニュー というアイコンをクリックすれば、車椅子情報のページへのリンクが見えるようになる。しかしそれは、情報強者向けの話だ。情弱の人にはわからないだろう。
どうせなら画面最下部に「お身体の不自由なお客様へ」というリンクを掲載するべきだった。それができなかったという点で、JR東 には大きなミスがある。
えきねっとは確かに使いにくいです。
なのでなるべく出張では新幹線は使わないで飛行機ばかりにしてました。(コロナ前)
先日子供の新幹線定期券を購入する為にみどりの窓口を利用しました。
みどりの窓口の案内人が2人もいる半面、窓口は1つしか開けずに長打の列。案内人1人減らす代わりに窓口2つ開けろと思いました。
挙句窓口担当者は定期発券が上手くできず別な社員にすべて入力して貰っている状態。
余っている人員が居るのに、(窓口の外に2名、中に1名の計3名)臨機応変に対応出来ないのは海外との競争にさらされない業界ならではと思いました。
伊是名氏”消された動画”が語る来宮駅狙い撃ち
https://reiwa-kawaraban.com/society/20210413/
伊是名氏の計算違いか 自民・熱海市議に聞く
https://reiwa-kawaraban.com/society/20210414/