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医療予算不足?
コロナワクチンが日本では開発が遅れているのはなぜか? 「開発体制がまったく小規模だから仕方がない」というふうに私は思っていた。実際、それを裏付ける記事もある。
新型コロナを受け、米国は当時のトランプ政権が「ワープスピード作戦」を掲げ、有望なワクチン候補に1兆円規模の資金を投じた。日本政府もこれまでに、治験の結果を待たずに企業の量産体制を支援するなどしてきたが、開発支援のための当初の予算額は100億円と、単純計算で100倍ほどの開きがあった。「この差が、開発遅れの決定打となった」
( → 国産ワクチン、なぜ遅い 製造経験なく治験長期化 新型コロナ:朝日新聞 )
こういう開発体制の差があるならば仕方がない……と言えそうだ。
開発中止
ところが、事実はそうではなかった。「金はなくとも技術を開発する」というのが、貧しい日本の技術者魂なのだ。昔は零戦でその技術水準を示した。現在でも日本のワクチン開発は、金はろくになくとも、十分に開発できていた。それを裏付ける記事がある。
新型コロナウイルスのワクチンは、国内でも複数のチームで開発が進められている。欧米で開発されて接種が進むのは、病原体に合わせて素早く設計できる新タイプの「RNAワクチン」。実は国内でもRNAワクチンの開発が治験直前まで進んでいたが、2018年に国の予算打ち切りで頓挫した。研究者は「日本は長年ワクチン研究を軽視してきた」と指摘し、欧米と差がついた現状を憂慮する。
「当時、治験に進みたいと何度も訴えたが、予算を出してもらえなかった」。東京大医科学研究所ワクチン科学分野の石井健教授は無念さを語る。
最初に新型コロナのRNAワクチンを開発した米モデルナや、製薬大手の米ファイザーと組む独ベンチャーのビオンテックと同様に、石井さんたちもコロナ禍の前からRNAワクチンを手掛けていた。
( → <新型コロナ>国産ワクチン、3年前に治験直前で頓挫 東大・石井教授「日本は長年、研究軽視」のツケ今に:東京新聞 )
ファイザーと同様の技術開発は、日本でもなされていたのだ。予算は少なかったが、その少ない予算を工夫して、日本でも研究開発は十分になされていたのだ。そして実用化の寸前にまで達していた。まことにすばらしいことだ。
なのに、安倍政権がワクチン開発予算を完全カットした。それまでは少ないながらも予算が付いていたので研究開発ができていたが、最後の最後になって(育てた果実が実をつける寸前になって)中断にしてしまった。かくて、せっかく育ったものが、枯れてしまった。……こうして、ワクチン開発は途絶えたのだ。
ワクチン開発ができなくなったのは、すべては安倍政権の方針のせいだったのである。(かわりに八ツ場ダムや防潮堤のために莫大な金を投じたからだ。)
朝日新聞がワクチンに反対したから?
「政府がワクチン開発をやめたのは、朝日新聞(などのマスコミ)がワクチン反対を唱えてきたからだ。特に、子宮頸がんワクチン( HPVワクチン)に反対したからだ」……という説がある。はてなブックマークでは、こういう説を唱えて、朝日新聞を批判する人が多い。
→ はてなブックマーク
しかしこれは奇妙である。私の記憶している限り、朝日新聞が HPVワクチンに反対しているという記事はなかったはずだ。そこで、朝日新聞の記事を検索してみた。
→ https://bit.ly/3uLGcTZ
やはりそうだった。 HPVワクチンの記事はたくさん見つかったが、朝日新聞が HPVワクチンに反対しているという記事は見当たらなかった。かわりに、客観的な報道記事が多い。次の趣旨だ。
・ HPVワクチンは、接種中止から数年間がたっている。
・ 賛否両論があって、対立する意見がある。
・ 医者の意見は、「証明されてもいないし、否定されてもいない」
たとえば、次の記事だ。
→ 「因果関係、否定も証明もされず」佐々木征行氏に聞く:朝日新聞(2019年11月27日)
要するに、朝日新聞社自身は、何も主張していない。「国立精神・神経医療研究センター病院小児神経診療部長」のような著名な専門家に意見を聞いて、副作用との因果関係について、「証明されてもいないし、否定されてもいない」(つまり判明していない)という見解を紹介しているだけだ。
これは、「これまで50人近く、HPVワクチンの接種後に症状を訴える患者さんを診察しました」という最高レベルの専門家の話であるから、最も信頼性が高い。そういう専門家の話を聞いて、報道しているのであるから、最も公正であると言えるだろう。(社としての意見はなくて、客観報道だけをしている。)
これが事実だ。
なのに、「朝日新聞が反ワクチン運動をしているからだ」と主張する人々は、何を妄想しているのだろう? 朝日新聞を読みもしないで朝日新聞を批判する。これでは、フェイクニュースまたはデマも同然だと言える。
しかも、そういうことを唱えるのが、一人や二人ではない。非常に多くの人々が、この手の朝日新聞批判をしている。
はてなブックマークには、やたらと HPVワクチン賛成派が多い。医療の問題ならばいろいろとあるのだが、ことさらワクチンに関してワクチン賛成派が多い。実に奇妙なことである。どうしてだろうか?
これはどうも、はてなブックマークには、NATROM という医者に感化された人が多いせいであるようだ。この医者がやたらとワクチン推進(というより反ワクチン運動に反対している)ので、朝日新聞のような中立的な立場のマスコミすら敵視するようになったようだ。
トンデモ批判をする人自身がトンデモになった、という見本か。ミイラ取りがミイラになったような。
※ 「読みもしないで批判する」というのは、この手の人々がよくやることだ。彼らは、私の記事を読みもしないで私の記事を批判する。その流儀を、またやった。だから朝日新聞を、「読みもしないで批判する」というふうになるのだ。
【 追記 】
2010年代の前半(5年以上前)ならば、状況は違った。朝日新聞その他で、「 HPV ワクチンの副作用で問題が起こっている」という報道が相次いだ。その影響で、HPV ワクチンの接種は中止されることになった。
これをもって「朝日新聞が反ワクチン運動をしたから、ワクチン反対の気運がはびこった」という主張も出ている。
→ 新型コロナ「反ワクチン報道」にある根深いメディアの問題(¶)
この件について解説しよう。
2010年代の前半においては、本サイトでも「 HPV ワクチンの副作用で問題が起こっている」という趣旨で何度も述べた。これは特に間違っていないと思う。ただし、2010年代の半ば以後では、この副作用の問題は観測されなくなった。そういう変化が起こったわけだ。それが判明したのが、2018年以後だ。
そこで 2019年になって、「これ以後は副作用の問題はなくなったようだから、HPV ワクチンを接種をしてもいい」というふうに私は方針を改めた。その理由についても、「アジュバントの使い方などを変えて、ワクチンが副作用を出さないように改善されたからだろう」というふうに私は推測した。
→ 子宮頸がんワクチンの現状: Open ブログ(2019年07月27日)
なお、上の(¶)の記事では、「反ワクチン運動のせいでワクチン接種をしないから、日本では大量の死者が出ている」というのは、ほとんどデマに近い。日本で大量の HPV 死者が出ているのは、反ワクチンのせいではなく、検診をしないからだ。
・ 検診をすれば、HPV の死者はほぼ 100% 予防できる。
・ ワクチンを接種しても、3割ぐらいは感染する。
つまり、死者を減らすことの最も有効な手段は検診であり、それに次ぐのがワクチンだ。なのに、「ワクチンさえ接種すれば大丈夫だ」と主張して、検診をなおざりにしたのが、ワクチン擁護派である。日本で大量の HPV 死者が出ているのは、検診をなおざりにして、反ワクチンの批判をしていることに熱中しているからだ、とも言えるだろう。

なお、現時点でどういう方針を取るべきかと言えば、こうだ。
「かつては HPVワクチンで副作用の問題が生じたらしいが、今では副作用の問題はなくなった。事情が変わった。だから今では、HPVワクチンを接種してもいい(接種した方がいい)」
こういう理由で「接種再開」を主張するべきなのだ。なのに、多くの人々は「反ワクチン運動のせいだ」というふうに主張して、朝日新聞などを攻撃することばかりに熱中している。そのせいで、いつまでたっても接種再開がなされない。
接種再開を阻害しているのは、こういうふうに他人を攻撃することばかりに熱中している人々のせいだろう。彼らは、他人を攻撃することが第一目的なのであって、患者を救うことは二の次なのだ。だから、「 HPVワクチンは改良されて安全になったのだ」というふうには、口が裂けても言わないわけだ。
[ 補足 ]
「ワクチンが改良されるなんてことがあるのか?」
と疑う人もいるだろう。そこで、とりあえずは、そういうことがあるという仮説ふうのストーリーを示そう。こういうことがあったかもしれない、という話。(読まなくてもいい。)
HPV ワクチンが悪さをするというのは、アジュバントが脳内にもぐりこんで、脳細胞に悪影響を及ぼすからである。アジュバントとは、アルミの微粒子だ。通常は、脳内関門があるので、アルミ微粒子が脳内に入ることはない。だから大部分の人には影響がない。しかし例外的に、脳内関門が不完全である(いわば抜け道があいている)ような人々がいる。これらの人々では、アルミ微粒子が脳内にもぐりこんで、それが脳細胞を破壊する。かくて脳が損傷して、重篤な症状を発症する。
この問題が生じたのは、アルミ微粒子が混入したからだ。いわゆるコンタミである。これが生じたのは、製造過程において、アルミの粉末を溶液に入れて、溶かしたからだ。アルミの粉末は、大部分が溶けるが、一部は、溶けないまま、小さな核のような状態(多数の原子のかたまり状態)で、微粒子状になって残る。
アルミの粉末を使うのは、溶かす時間を節約するため(作業工程の能率化のため)であった。しかし、問題が生じると判明したので、以後は、アルミの粉末を使うのをやめた。大きな固体状のアルミを溶液に入れて、その表面で少しずつアルミが溶けるようにした。この場合は、アルミは1原子ずつ溶液に溶けるようになったので、小さな核のような状態(多数の原子のかたまり状態)が残ることはなくなった。
こうして、製造工程を変えることで、アルミの微粒子が残ることはなくなった。かくて、副作用の問題もなくなった。ただし、製造に時間がかかるので、製造コストは上がった。製薬会社は、製造コストが上がるのを代償として、安全性を確保したのだ。逆に言えば、それまでは、安全性を確保するのをやめる代わりに、製造コストを引き下げて、利益を得ていたのである。
人命よりも企業利益を優先するという方針が、HPVワクチン の副作用の真相であった。それを改めることで、その問題も解決されるに至った。
【 関連項目 】
本項の話は、次項に続きます。
→ インフルエンザに簡易検査は不要: Open ブログ(次項)