2021年04月07日

◆ F-15 と巡航ミサイル

 F-15 に航ミサイルを搭載する計画があるが、金がかかりすぎるので中止になる見込みだという。

 ――

 朝日新聞に報道がある。
 航空自衛隊のF15戦闘機に対地攻撃用巡航ミサイルなどを搭載する改修をめぐり、防衛省が現計画の全面的な見直しを決めたことが分かった。2027年度までに20機を改修する計画だったが、改修に先立つ初期経費が高騰するなど、費用をめぐって日米間の協議が難航。岸信夫防衛相が改修計画の精査を指示した。
( → F15戦闘機の改修、全面見直し 費用膨れ日米協議難航:朝日新聞

 F15は米国開発でライセンス生産されているため、日本独自の改修には大きな制約がある。
( → F15改修、米の言い値にNO 画期的だが…代替策は:朝日新聞

 日本で独自の巡航ミサイルを開発したので、それを搭載するために、F-15 を回収しようとしたが、日本独自の回収なんて、面倒臭いので、米社はやりたがらない。そこで、とんでもない高値を吹っかけたら、日本政府は今になって「高すぎる」と、あたふたとしている。
 馬鹿丸出しというしかない。

 ――

 私の見解を言おう。
 巡航ミサイルを配備することは、軍事的には好ましいことだが、それを F-15 に搭載する必要はない。地上発射ミサイルで十分だ。理由は下記。

 (1) 北朝鮮に対する抑止力であるならば、日本の出雲か松江に配備すれば、北朝鮮のほぼ全土を 900km の射程に収めることができる。F-15 から発射する必要はない。


kita-shatei.png


 (2) 中国の侵攻への対策ならば、どうするべきか? 中国が日本を攻めるとしたら、第一目標は、福江島となる。日本の本土を攻めるための橋頭堡となるからだ。





 だから、中国の侵攻への対策をするならば、福江島の防衛を最優先とするべきだ。そのためには、福江島の自衛隊基地を充実したり、長崎あたりの基地を充実したり、……という方策が大事だ。まずはこっちを拡充するべきだ。

 (3) ところが政府は、「頭隠して尻隠さず」ふうに、どうでもいいところばかりを守ろうとする。
 中国が沖縄・尖閣諸島周辺に進出を強め、射程千キロ超のミサイルを搭載できるとされる海軍の艦艇をたびたび展開させる中、同省は長射程ミサイルの搭載や電子戦の能力を高める今回のF15の改修を「南西諸島の防衛力強化の柱」と位置づけていた。
 敵の上陸部隊に離島が占拠された状況などを想定し、同省は17年12月、F15に巡航ミサイル「JASSM―ER」(射程約900キロ)などを搭載することを決めた。
( → F15戦闘機の改修、全面見直し 費用膨れ日米協議難航:朝日新聞

 敵の上陸部隊に離島が占拠された状況のために、巡航ミサイルだって。馬鹿じゃなかろうか? 敵の上陸部隊を攻撃するために、巡航ミサイルを使うなんて、愚の骨頂だ。なぜなら、敵の上陸部隊は、常に移動するからだ。移動する目標を相手に、目標を事前に固定している巡航ミサイルを使うというのは、馬鹿げている。発射したあと、到着するまでに、敵が移動したら、巡航ミサイルはただの空打ちになる。誰もいない無人の土地を攻撃することになる。
 のみならず、たとえ敵の戦車を破壊できたとしても、問題がある。
  ・ 巡航ミサイルは高額なので、たとえ敵の戦車を破壊できても、コスパが良くない。
  ・ 巡航ミサイルの数は限られているので、何十発か撃ったら、弾切れになる。


 巡航ミサイルでも迎撃ミサイルでも、そんなものはすぐに「弾切れ」になるから、まともな戦力にはならないのだ。日本の軍隊の伝統だが、「質が良ければ勝てる」とだけ思い込んでいて、「物量の重要性」をまったく理解できていない。
 「巡航ミサイルや迎撃ミサイルが、質的に優れているぞ」とだけ考えており、「弾数が全然足りないので、すぐに弾切れになる」ということを理解できていない。

 正解を言おう。巡航ミサイルというのは、敵の重要な軍事施設を攻撃するものだ。たとえば、ミサイル基地とか、弾薬庫とか、レーダーとか。2億円の巡航ミサイルで、10〜20億円の敵施設を破壊するから、軍事的に有効になる。
 一方、敵の上陸部隊なんて、バラバラに展開しているから、陸上部隊に命中しても、1億円ぐらいの損害しか与えられない。これでは何の効果もないに等しい。
 要するに、敵の上陸部隊を攻撃するには、高額で少量の巡航ミサイルなんかは無効なのだ。かわりに、低額で大量の武器を使うべきだ。
  ・ 爆撃機による爆撃(誘導弾を含む)
  ・ 艦船からの砲撃
  ・ ドローンによる攻撃 ( → 参考記事

 これらならば、敵の上陸部隊を攻撃するのに適している。巡航ミサイルなんかを使うより、こちらを使うべきなのだ。

 ――

 ちなみに、日本が現在のような戦略を取るのならば、中国は簡単に日本を撃破することができる。次のように。
  ・ 中国が(おとりで)南西諸島を占拠する。プレハブ小屋を建てる。
  ・ 日本が巡航ミサイルで、南西諸島の中国部隊を攻撃する。
  ・ 中国は、プレハブ小屋だけを破壊させて、移動する。
  ・ 上記の三点を、何度もループで繰り返す。
  ・ 結果的に、中国は何度も移動してプレハブ小屋をたくさん失う一方で、日本は巡航ミサイルが弾切れになる。
  ・ そのあとで、中国は福江島を占拠する。
  ・ 日本は巡航ミサイルで攻撃しようと思ったが、もはや弾切れ。
  ・ 中国は、福江島を橋頭堡にして、ここから巡航ミサイルを飛ばす。
  ・ 日本の各地の自衛隊基地は、中国の巡航ミサイルで破壊される。
  ・ 日本は降伏する。ウイグル人のように虐殺される。
  ・ 日本は滅びる前に、「巡航ミサイルの使い方を間違えた」と後悔する。


 ――

 結局、日本は「南西諸島を守ろう」としてはいけないのだ。南西諸島は、あくまで「不沈空母」として使うだけでいい。「占拠されてはいけない」ということはない。占拠されてもいいのだ。ただし、占拠されたら、占拠した敵部隊を、十分に痛い目に遭わせればいい。そして、そのための方法は、巡航ミサイルではなくて、「安くて大量の武器」を使うべきなのだ。

 日本の自衛隊は、「中国は攻めやすいところを攻めてくる」とだけ思っている。違う。中国はそんなに馬鹿ではない。「攻めやすいところを攻める」というのは、馬鹿な自衛隊の発想だが、中国はそれほど馬鹿ではない。
 中国が日本を攻めるとしたら、「攻めやすいところ」ではなく、「戦争で勝つために必要なところ」である。そして、それは、橋頭堡たる福江島なのだ。あるいは、対馬や隠岐であってもいい。また、種子島であってもいい。とにかく、日本の弱点となるところを狙う。しかもそれは、日本の「喉元」であるところだ。日本の息の根を止めることのできるところだ。南西諸島は、その条件に合致しない。だから、中国は、そんな馬鹿げたところを攻撃したりはしない。


china-attack.png


 中国が攻めるとしたら、どう攻めるか? 
 もちろん、最短距離で、紫の線のように攻めるだろう。その途中に福江島がある。
 なのに自衛隊は、「中国はわざわざすごい遠回りをして、南西諸島経由で日本を攻める」と思っている。つまり、「中国は途方もない大馬鹿野郎だ」ということを前提としている。
 こんなことでは、日本軍は一日にして崩壊するだろう。

 ローマは一日にしてならず。日本は一日にして滅ぶ。
 


 [ 付記 ]
 日本の巡航ミサイルは、射程 900km のものを開発中だが、さらに射程 1500km のものも開発中である( → 出典 )。とすれば、もともと F-15 なんかは必要ないのだ。
 F-15 が必要となる場面は、中国本土の北京や内陸都市を攻撃したい場合だ。しかしそれは明らかに憲法違反である。(というか、そもそも F-15 が南シナ海まで進出したら、日本国土周辺の防衛が疎かになって、防衛力が弱体化する。それでは敵の戦闘機や爆撃機の進出を許してしまうので、本末転倒だ。)
 そんな無意味なことのためにしか役立たないような武器が、「 F-15 に搭載された巡航ミサイル」というやつだ。
 使える武器のためには金を出さず、使えない武器のために金を出す。これじゃ、負けは必定だ。

posted by 管理人 at 23:59| Comment(2) |  戦争・軍備 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自国の防衛ではなくて先制攻撃がしたいんでしょ。
Posted by とーりすがり at 2021年04月08日 21:13
お邪魔します。
 かつて日本は黒船によって開国させられたばかりか不平等条約を押し付けられました。だからその後の日本は「如何に押し寄せる黒船を撃退するか」を目指しました。それの集大成が「最強最大の黒船」である戦艦大和です。しかし開国以降の日本は経済発展のために海外の資源に依存するようになり、先の大戦でアメリカの潜水艦等によって海上輸送を破壊されて干上がってしまいました。
 今の日本が南西諸島で戦おうとするのは先の大戦での沖縄戦が念頭にあるからでしょう。「戦艦大和は沖縄に到達できずに沈められたが、巡航ミサイルを搭載したF15なら突破できるはず。」とでも思っているからではないかと。つまり再び「今目の前にある脅威ではなく、過去の戦闘(敗北)を見ている。」わけで。
Posted by ブロガー(志望) at 2021年04月11日 23:40
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