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サンマやイワシなどの沿岸漁業が不振だとはすでに何度も報道されてきた。
本日も次の記事があった。不漁で缶詰が値上げする、という話。
一部の食品も値上がりする。…… 昨年、記録的な不漁に見舞われたサンマの缶詰も大手マルハニチロが値上げする。
( → 春、じわり負担増 減る年金・増える介護保険料 4月から暮らし、こう変わる:朝日新聞 )
不漁の原因は何か? 「取り過ぎの乱獲が原因だ」とよく言われる。だが、それだけではなさそうだ。(乱獲は昔からだが、今ほどの不漁にはならなかった。)

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ここで、参考となる情報がある。魚だけでなく、
記事はこちら。対策は?
→ WEB特集 “きれいすぎる海”で、いま何が | NHKニュース
一部抜粋しよう。
のりを使わないおにぎりが増えている。その理由が、「海がきれいになりすぎたことだ」というのです。
(のりは)色落ちしたものは風味がなくなるため廃棄せざるをえないそうです。
なぜ色落ちしてしまうのか。原因として浮かび上がってきたのが、海中に含まれる「窒素」などの成分です。
国は法律を定めてほかの海域より窒素の排出を厳しく制限。半世紀かけて水質は大幅に改善しました。
ところが、きれいになった海がかえって水産資源に悪い影響を与えていることが分かってきたのです。
実は窒素などの成分は「栄養塩」とも呼ばれ、魚のエサとなるプランクトンを育んできました。
そこで国は対策に乗り出しました。これまで目指してきた「きれいな海」から「豊かな海」へ方針を転換。
水産資源を守るため、沿岸の府県が地域の実情に応じて排水に含まれる窒素の量を独自に緩和できる内容です。
下水処理施設で……除いていた窒素を、今度は基準を超えない範囲でできるかぎり多く排水してほしいと頼んだのです。
水をきれいにしたら、貧栄養化して、かえって不漁になってしまった、というわけだ。
これは、魚で言えば、「水清ければ魚棲まず」ということだ。
とすれば、河川や池などの内海だけでなく、概要についても、同様のことが成立すると考えられる。つまり、漁獲高の減少は、海洋の貧栄養化によるというわけだ。
上記の海苔の話は、瀬戸内海のことだった。だが、瀬戸内海だけでなく、近海の概要でも、同様のことが成立しそうだ。つまり、窒素を増やして、プランクトンを増やすことで、不漁を解決することができそうだ。
そもそも、魚は太平洋や大西洋のど真ん中にはいない。そこにはプランクトンがいないからだ。なぜなら、貧栄養化しているからだ。逆に、陸地の沿海では、河川から流れ込む栄養分があるので、プランクトンが豊富であり、魚も豊富になる。
ところが近年は、森林が人工林になって、広葉樹から針葉樹に転じた。そのせいで、(落ち葉がないので)河川に流れ込む栄養分が減少している。そのせいで、魚が減っている。
森林を人工林にする → 川に流れる栄養分が減る → 外洋に流れる栄養分が減る → 近海での漁獲高が減る
こういう過程で、不漁が起こるのだ。
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実は、以上のことは、前にも述べたことがある。
→ ノリの大凶作: Open ブログ
一部抜粋しよう。
昔から、こういうではないか。
「水清ければ 魚棲まず」
「白河の清きに魚も住みかねて もとの濁りの田沼恋ひしき」
不思議に思えるかもしれないが、生物学的には妥当である。
水が清い → 栄養分がない → 植物プランクトンがない → 魚が増えない
という経路で、「水清ければ 魚棲まず」となるのだ。
このことは、ノリの生産だけに当てはまるのではない。魚にもまた当てはまるはずだ。
とすれば、次のことも、理由は同じかもしれない。
・ サンマの減少
・ イワシの減少
・ ウナギの減少
これらはいずれも、「水清ければ 魚棲まず」ということの結果かもしれないのだ。
人々は、「サンマ・イワシ・ウナギが減少したのは、海洋汚染と地球温暖化のせいだ」と思っているようだ。しかし本当は、環境保護で河川をきれいにしすぎたことが原因かもしれないのだ。
というわけで、近海に栄養分をもたらすことで、近年の不漁を解決できるはずだという目途が立つわけだ。(困ったときの Openブログ。)
[ 付記 ]
2019年に「森林環境税」が制定されたので、2024年度から1人 1000円の定額課税がなされる。
→ 森林環境税 - Wikipedia
これは「森林の環境保全のため」という名目だが、実際には「放置すると荒廃する人工林を保全するため」である。人工林は、外部から金を投入しないと維持することのできない、赤字産業なのである。金食い虫。
一方、広葉樹林なら、放置しても、ずっと安定している。赤字でも黒字でもない。
「それでも人工林を維持するべきだ」というのが既存の方針だった。しかし人工林は、やたらと金を食うだけでなく、海洋を貧困化するという効果もあるのだ。
全部まとめれば、日本人は広葉樹林を人工林に転換した状態を維持するために、1人 1000円をかけて、さらに海洋を貧困化しているわけだ。自殺するために必死に努力しているのも同然だ。何もしないで放置しておけば、一切の無駄が生じないのだが。
ゴロ寝しているグータラ人間の方が、精勤な破壊者である日本人より、はるかに賢明なのである。

【 関連項目 】
次の項目でも、似たプランを提出している。
→ 海洋緑化計画: Open ブログ
※ 窒素よりも鉄分の不足が問題なので、鉄分を海に投入せよ、という話。
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広葉樹林と人工林の問題については、下記で論じた。
→ 針葉樹林 < カエデ林 < 混合林: Open ブログ
※ 広葉樹林と低木との混合林にすると、低木が背が伸びないので、自動的に間伐をしたのと同じ効果になり、コストがかからない……という話。
【 関連サイト 】
不漁の原因は海水温の上昇だ、という話。
これは(日本の)人為的原因ではないので、(日本の)人間はどうしようもない。あえて言うなら、地球温暖化の阻止という、世界規模の話になる。
ここ三年くらい継続。
根本は解決しませんよ。
漁場が岸から離れてガス代がかかるので、
誰も取りに行かない。
高知のカツオの不漁もしかり。
太陽活動低下の大きな影響であって、
温暖化とは真逆。
春や夏に雹が降る数がまだ増えますよ。
去年春の北米の氷河成長と融解、
今年の黄砂も冷気による大陸の乾燥が原因。
日本は海に守られているので暖かいだけ。
→ ウナギ不漁は黒潮蛇行のせい: Open ブログ
http://openblog.seesaa.net/article/456734566.html
三面コンクリ護岸もまた同じ影響を及ぼすのでしょう。
一気に流された有機物(窒素やりんも)はプランクトンの少ない深場に溜まって沿岸は貧栄養化すると思います。
干潟を埋め立ててコンクリ護岸にするのもまた同じでしょう。