2021年03月21日

◆ 接待は賄賂か?

 高級官僚や大臣への接待があった。これらは賄賂と見なされるか?

 ――

 「賄賂に決まっているだろ!」と思う人が多いようだが、法的には、賄賂であるとは認めがたい。なぜなら、賄賂であるためには、賄賂が「対価」であることが必要だからだ。つまり、役人が何らかの便宜を図ったことと、民間人が何らかの利益(金・物品)を贈ったこととが、「対価」の関係であることが必要なのだ。
 となると、「役人が何らかの便宜を図ったこと」が証明されなくてはならない。通常、ここで暗礁にぶつかる。具体的にどんな便宜を図ったかが不明だからだ。
 今回も、次の便宜が与えられたと推定されているが、定かではない。
  ・ 東北新社は、自社が 20%の外資規制に違反したことを、見逃してもらいたかった。
  ・ NTT は、子会社のドコモを吸収合併することを、容認してもらいたかった。


 現実的には、これらの便宜を図ってもらうことを狙いにして、接待をしたのだが、接待の場では、これらのことは口頭の話題にはなっていなかったようだ。本人たちが「そういう話題は出なかった」と口にしているし()、その証言は(後述の理由で)信じられる。だから、実際に、それらのことは話題にならなかったのだろう。つまり、「対価」としての性質がなくなる。
 以上のことから、法的には「賄賂」と認めがたい。たとえ実質的には賄賂であるにしても、だ。

 ――
 
 以上のことは、すでに知られていたことである。私がいちいち書くまでもないし、法律関係者ならばとっくにわかっていたことである。
 肝心の話は、このあとだ。

 朝日新聞の「経済気象台」というコラムで、興味深い話が掲載されていた。
 事業者が役人を接待するときには、賄賂にならないように工夫する。それは、「接待をする場と、お願いをする場とを、一致させない」(日も場所も変える)ということだ。そうすることで、「対価」としての性質を隠蔽するわけだ。
 そもそも官僚接待の席で露骨な利益誘導などまず行われない。そこまでする下品な事業者だと、さすがに官僚側も怖くなって警戒心が働くものだ。
 だから通常、事業者は個別具体の要望には触れず、業界事情についての意見交換や世間話で和気藹々(あいあい)と宴席を終える。それでも許認可権限を握る官僚を2〜3時間独占し、楽しいひと時を過ごした印象を持たせられれば十分だ。のちに電話や面会依頼を入れても門前払いを食らわされることはなくなるからだ。
 これこそが接待の効果であり、……
 接待の効用がそうしたデリケートなものである以上、宴席での利益誘導の有無をぎりぎり追及し、立証しようとしても意味がない。権限を持つ官僚が利害関係者から接待を受けること自体が行政への国民の信頼を失墜させる。外形的な基準のみで問責し、断罪すべきなのである。
( → (経済気象台)検証が難しい接待の本質:朝日新聞

 「賄賂」が成立するためには、「対価」であることが必要だ。「対価」であることの証明は、接待と便宜供与とがいっしょであることが必要だ。そこで、接待は接待で単独でなしておいて、便宜供与はあとで別途もらいうけるようにするわけだ。日も場所も変えて。……こうすることで、「賄賂」の法的要件を外して、罪を免れようとするわけだ。

 なるほど。法律逃れのために、法の穴を突くわけだ。ずる賢いですね。
 となると、対策としては、「賄賂」を禁じるだけでなく、「接待」そのものを禁じるしかない。(上記記事にある通り。)

 ――

 この話は、なかなか興味深いことだ。大臣は「その場では便宜供与の話題は上らなかったから賄賂ではない」というふうに弁解して逃れようとする。一方、国民は「賄賂だろ」と指弾する。法律家は「法的には賄賂ではない」と裁定する。……しかし、そのいずれも、話は見当違いなのである。問題は「賄賂を受け取ったかどうか」ではない。「接待を受けたこと」自体が駄目なのだ。
 現時点では、「接待を受けること」を禁じる法律はない。公務員向けの規則があるだけだ。それを侵しても、規則違反になるだけであって、法律違反にはならない。受けるのはせいぜい行政罰(減給や停職など)だけであって、刑事罰にはならない。
 ここを厳しく処罰するように法律を整備することが必要だろう。そもそも、公務員が仕事の際に、飲食をともにする必要などはないからだ。

 ちなみに、警察官や税務署員が、調査相手から高額の接待を受けたりしたら、とんでもないことだと批判されるだろう。それと同様のことは、高級官僚にも当てはまる。タダ酒・タダ飯を頂こうとするような、さもしい公務員は、さっさと追放するべきなのである。



 [ 付記1 ]
 山田真貴子内閣広報官が辞職した件について。
 彼女は以前、こう語っている。
 「イベントやプロジェクトに誘われたら、絶対に断らない。飲み会も断らない。断る人は二度と誘われません。幸運にめぐり合う機会も減っていきます」
( → 【風を読む】「わきまえた男」になりたい! 論説委員長・乾正人 - 産経ニュース

 これだと、業者からの接待を断れないことになるね。業者にとっては最もいい獲物だと言える。

 [ 付記2 ]
 武田総務大臣の釈明。接待の場では、要望を受けていない、と釈明する。
 武田総務大臣はNTTの澤田社長らと会食していたとする「週刊文春」の報道について、衆議院総務委員会で会食の事実を認めたうえで「特定の許認可などに関する要望を受けたことはなく、大臣規範に抵触する会食ではなかった」と強調しました。
( → 総務相 NTT社長らとの会食認める “大臣規範には抵触なし” | NHKニュース

 同じ場では話題にしていない、ということで、「対価」であることを打ち消しているわけだ。

 [ 付記3 ]
 「規則でも法律でも同じだろ。どっちでも処分すればいい」
 と思う人もいるだろうが、そうではない。
 第1に、法律ならば、警察や検察が強制調査をすることができる。
 第2に、公務員規則ならば、大臣は対象外となるので、処罰されない。今回も、役人は停職などの処罰を受けたが、大臣は何の処罰も受けない。政治家が業界人から接待を受けることは禁止されていないからだ。(そもそも公務員規則の対象外である。大臣は一般職でなく特別職なので。)
 
 ※ 罰は、特に厳罰にする必要はない。罰金刑だけで足りる。重要なのは「一罰百戒」という厳罰性ではなくて、検察の手が入りやすくすることだけだ。罰金刑でも、刑が確定すれば、あとは自動的に懲戒免職にできるだろう。そっちの方が肝心だ。
 
posted by 管理人 at 23:59| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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