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高輪築堤は、日本最初の鉄道路線だが、海上を走る鉄道ということで、奇特なものだった。その姿は当時の錦絵に残されていた。

その遺構が、高輪駅前の再開発に当たって、工事現場から新たに出土した。
そこでこれを「是非保存するべきだ」という声が上がった。
一方、JR東は、「そんなことをしたら開発ができない」と反対している。
今月2日、考古学研究者でつくる日本考古学協会(東京)が辻秀人会長名で声明文を出した。高輪築堤の遺構を「世界史的にも稀有(けう)だ」と高く評価し、「東アジア最初の鉄道の遺跡として全体を保存する責務がある」と指摘。JR東に全面保存と開発計画の抜本的見直しを求めた。
この翌日、JR東の深沢祐二社長は定例会見で、高輪築堤の遺構を「大変意義深い」と評価しながらも、「全面保存という形では開発自体が全く成り立たなくなる」と述べ、協会の要望に否定的な考えを示した。
( → 海上の鉄道遺構「高輪築堤」保存めぐりJRと学者が対立:朝日新聞 )
両者は真っ正面から対立している。あちらが立てばこちらが立たず。困った。どうする?
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そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。基本はこうだ。
「双方の利益がぶつかっているので、双方の利益をどちらも成立させるような案を出せばいい。つまり、名案を出せばいい」
換言すれば、こうだ。
「一方の意見だけを採用して、他方の意見を否定する、という片面的な解決策は取らない」
では、双方の顔を立てる名案とは?
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まず、配置図を見よう。

出典:朝日新聞
これによれば、「築堤の出土箇所(赤色部分)は、ごく限られた面積しかない」とわかる。
このことから、次の解決策が浮かぶ。
「築堤の部分を丸ごと残しても、面積の点では何ら問題がない。なぜなら、現地には超高層ビルを建てるので、容積率の関係から、空地の部分を大量に用意する必要があるからだ」
開発するといっても、空地もなしにビルだらけにして、建物で敷き詰めるわけではない。一部を高層ビルにして、一部を空地にするのが常道だ。
だったら、どうせもともと空地ができるのだから、その空地部分に築堤を含めればいいのだ。こうすれば、何の問題もなく、築堤を残すことができる。
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以上が基本アイデアだ。あとはこれを実行するために、法制度を活用すればいい。
・ 築堤部分は、建築物とは見なさないで、空地と見なす。(建ぺい率の算定基準)
・ 築堤部分は、ただの空地でなく、公開空地と見なす。
公開空地(こうかいくうち)とは、オープンスペースの一種。1971年に創設された総合設計制度に基づいて設置され、開発プロジェクトの対象敷地に設けられた空地のうち、一般に開放され自由に通行または利用できる区域のことを言う。
有効容積に応じて、容積率割増や高さ制限を特定行政庁が緩和する。
( → 公開空地 - Wikipedia )
空地を、私的利用でなく公的利用に供すれば、容積率割増というご褒美を与えられるわけだ。
この制度を利用して、築堤を公開空地に認定すればいい。つまり、JR東が築堤部分を残せば、容積率割増というご褒美を与えられるわけだ。
特に今回は容積率割増というご褒美を、特別割り増ししてもいいだろう。文化的な貢献に対して、容積率割増を多めに与えるわけだ。すると、JR東としては、「遺構を多く残せば多く残すほど、容積率割増しの量が増えるので、いっぱい残したがる」という動機が生じる。
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JR東が渋っているのは「開発できなくなるからだ」というふうに記事は報道していう。しかしそれは誤りだ。もともと空地の量はたくさんあるのだから、「開発できなくなる」ということはない。
ではどうして JR東は渋っているのか? それは、次の二点だ。
・ 工事の開始が遅れると、利益を得る機会を失う。(先延ばしになる。)
・ 出土箇所を開発から除外すると、開発計画の全面変更が必要だ。(面倒臭い)
要するに、「場所が削られる」というような実損が生じるわけではなくて、「時期が遅れる」「考え直す手間がかかる」という、無形の損害が生じるだけだ。しかし、それは特に金銭的な損失をもたらすわけではないのだから、文化的価値と比べれば、はるかに小さな損失だと言えるだろう。
結局、JR東は、単にものぐさがっているだけなのだ。そういうときには、尻をひっぱたいてやるのが一番だろう。
【 関連サイト 】
この件については、自民党議員が乗り気だ。
→ 「高輪築堤」現地保存の在り方検討へ 自民 国会議員有志 | NHK
→ 「高輪築堤」保存で自民議連:時事ドットコム
自民党には、鉄道オタク(鉄オタ)が多いのかもしれない。
そんなはず、ないよね。利権狙いだろう。つまり、JR東から、袖の下をもらいたがる。
・ 高額の食事で接待してもらいたい。
・ パーティー券を買ってもらいたい。
・ 献金してもらいたい。
そのために、JR東 に圧力をかけよう、というわけだ。自分たちの私益のために遺構をうまく利用してやれ、というわけ。手前ミソ。
渋っているのは、築堤など無いものとして進めてきた開発計画・建物設計を、ゼロからやり直さなければならないからなんじゃないでしょうか。
今まで費やしてきた数億の費用が無駄になり、しかも申請関係をやり直すことで着手と完成が遅れ、資金計画に大幅な狂いが生じ、「金銭的な損失」が大きいのだと思います。
とすれば、そのあたりを補填するから……などの支援策でも示されないと、同意しづらいのではないでしょうか。
> 遺構の一部が史跡に指定される見通しになった。
> 約800メートルの遺構が確認された。
> 漁師らの舟が堤をくぐり抜けて沖に出られるように設けられた橋梁(きょうりょう)部分などを含む計約120メートルが史跡に指定される見通し。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15019693.html
https://digital.asahi.com/articles/ASP8R3VHYP8MUCVL025.html