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コロナが大騒ぎになったのが昨年の3月末だ。志村けん氏が死亡して、「いよいよ他人事ではない」と人々がおののいたころだ。この直後の4月1日に安倍首相がアベノマスクをしてテレビに登場し、政府各人もいっせいにマスクをするようになった。それまでマスクをしていなかった専門家会議の委員もいっせいにマスクをするようになったし、街のマスク装着率も一挙に高まった。( 80%から 95%へ。)……この3月末〜4月4日ごろは、対策が最も変化した期間だと言える。
それから1年たったわけだ。では、その間の対処策はどうだったか? 振り返って考えよう。
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最初に結論を言えば、こうだ。
・ 三密ばかりを唱えていた政府方針(専門家会議の方針)は、ほぼ見当はずれだった。大切なのは何よりも、「マスク」と「会食禁止」だった
・ しかるに専門家会議が「マスク」を推奨したのは、5月4日になってからであり、まったくの手遅れだった。「会食禁止」に至っては、現時点でもまだ方針になっていない。
・ 特にひどいのが政府の「 GoTo イート」だ。これは事実上、会食の推進だ。そのせいで第三波が大規模に発生した。最悪だ。
上記の三点が結論となる。以下では詳細を述べよう。
(1) 屋形船
最初に大騒ぎになったのは、屋形船で集団感染が出たときだった。(2020年2月14日)
→ 屋形船の従業員ら2人の感染確認 10人が発熱など症状
このあと、政府や専門家会議は、「密閉した環境が感染の原因だ」と判断して、「三密の禁止」を大々的に唱えた。
しかし私はこれを否定して、「会食こそが大量感染の原因だ」と指摘した。(屋形船からの教訓)
・ 屋形船は、乗るだけなら問題ないが、会話しながら食べることは不可。
( → 空気感染はあるのか?: Open ブログ 3月02日 )
スポーツジムや屋形船で危険が生じることの理由は、「換気が悪く、人が密集するような空間」にいることではなくて、スポーツジムでは「飛沫感染と接触感染」であり、屋形船では「会話しながらの食事」なのである。こちらが真犯人だ。この真犯人を見失って、別の犯人ばかりを追い求めても、事件は解決しないのである。そのあげく、真犯人が野放しになったせいで、被害者が続出することになる。
( → 飛沫感染と空気感染: Open ブログ 3月03日 )
屋形船では、食事こそが重要だ。会話しながら、飛沫が飛び散って、その飛沫が食事にかかるので、食事経由で感染する。ここでは、(会話しながらの)「食事」が要件なのだが、新指針には含まれていない。食事のかわりに、換気や密集などを重視している。見当違いと言うしかない。
( → 新型コロナウイルスの話題 11: Open ブログ 3月10日 )
さらに、上記三点を引用しながら、「会食こそが危険だ」(会話も)と指摘した。
→ 新型コロナは 会食が危険: Open ブログ(4月01日)
ここでは、「三密よりも会食が危険だ」と強く指摘している。
(2) 第二波と会食
第二波で感染急増があったときも、「これは多人数会食が原因だろう」と指摘した。同時に、GoTo イートが危険だということも指摘した。
→ 多人数会食で感染急増: Open ブログ
ここでは、マスクの推奨が5月4日になってからというふうに遅れたことも、皮肉っている。
(3) GoTo イート
政府が GoTo イート を始めたので、その危険性を強く指摘した。(会食の危険性)
→ GoTo イートで 感染しよう: Open ブログ
→ GoTo イートの会食をやめよ: Open ブログ
(4) 第三波 以後
12月に第三波の急増があって、菅首相はようやく GoTo イート の停止を決めたが、この時点でもまだ、会食禁止は実現していない。
「5人以上の会食」が自粛となっているだけだ。「2人〜4人の会食」は許容されている。午後8時より前の会食も許容されている。これらは一応、「自粛」が期待されているが、そんな甘い規制は現実には守られていないので、街の食堂やファミレスでは、おしゃべりをしている多人数会食がよく見られる。
現在、感染者の減少が止まっている(底打ちしている)が、これは、会食が続いているからだ、と考えていいだろう。会食が許容されている限りは、コロナ撲滅などができるはずがないのだ。
(5) 会食が危険である理由
会食が危険である理由については、次の項目で解説した。
→ 会食が危険である理由: Open ブログ
会食をすると、ウイルスを含んだ飛沫を飛ばす。それが、相手の食べ物に付着する。これはつまり、ウイルスをばらまいて、相手の食べ物に付着させてから、相手に食べさせる、ということだ。
会食が危険なのは、単に「密」であることや、「会話をすること」や、「マスクをしないこと」などが理由なのではない。会食の場合には、ウイルスの付着した食べ物を経口摂取する。そこに危険性の理由があるわけだ。
( → 会食が危険である理由: Open ブログ )
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こういうふうに、会食が危険なわけだが、政府はいまだに「会食禁止」を打ち出さない。特に「午後8時まで」の会食(2〜4人)が許容されている。2人の会食まで規制するのは厳しいかもしれないが、3〜4人の会食は禁止するべきだ。また、「黙食」を推進したり、「隣席と隔壁(スクリーン)で区切る」ということも推奨される。
現実には、そういうことがなされていないから、「食堂は危険だ」という認識が広まって、来る客が激減している。条件を緩々にして、客を増やそうとすればするほど、「条件がゆるくて危険だ」という認識が広まって、客が減ってしまうわけだ。
また、会食による感染を阻止できないから、感染者数が底打ちして、いつまでたっても緊急事態宣言を解除できるメドが立たないわけだ。
対処する方策を間違えているから、感染を減らせない……というふうになっている。
この一年の対策をひとことで言えば、「見当違い」である。(だから、ほぼ無効になる。)
【 訂正 】
志村けん氏が死亡した日付と、アベノマスクが始まった日付を、訂正しました。それぞれ2月末のころだと示しましたが、正しくは3月末でした。
これを修正するのにともなって、前後の記述の日付も修正しました。
※ 日付が修正されただけであり、本文の趣旨には影響がありません。(1周年が、11カ月に変わったことぐらい。タイトルに影響があるだけ。)
※ WHO のパンデミック宣言は、昨年の 3月11日。だから、タイトルは間違いではない。(根拠が変わるだけだ。)
日付の修正。