2021年03月02日

◆ 脱炭素にはコジェネ

 脱炭素社会のためには、化石燃料から再生可能エネルギー(太陽光・風力)へという流れがある。だが、コジェネも主軸に据えたい。熱効率が格段に高いからだ。

 ――

 【 要旨 】
 省エネのために、エネルギーの熱効率を上げることを考えると、コジェネが最も効率的だ。


 ……というのが要旨となる。話はあちこちを巡るので、話の流れがつかみにくくなるだろうから、初めに上記の要旨を念頭に入れておいてほしい。

 日産の新エンジン


 まず、話の取っかかりは、これだ。
  → 日産の新型エンジン(VCターボ): Open ブログ

 ここで紹介したように、日産の新型エンジン(VCターボ)は、新技術を用いて、高い熱効率を実現することに成功した。
 報道は下記にある。
  → 日産、「eパワー」発電用エンジンで世界最高熱効率50%実現 | ロイター
  → 日産自動車、次世代「e-POWER」発電専用エンジンで世界最高レベルの熱効率50%を実現

 後者から一部抜粋すると、こうだ。
 希釈方式としてEGR(*1)を使う場合で43%、リーン燃焼(*2)を使う場合で46%の熱効率を既に多筒エンジンにて実証しており、それらを完全定点運転することと、廃熱回収技術を組み合わせることで、熱効率50%が実現できることを確認しました。

 メーカーは「完全定点運転」と言っているが、それなら、ノート e-POWER でも部分的に実現している。だからどうやら、廃熱回収技術がキモらしい。その内実ははっきりとしないが、たとえば、次のような方法がある。
 「廃熱でターボチャージャーを回して、それでモーターを駆動して発電する」
 これだと、回転数が高くなりすぎて、普通のモーターでは耐えられそうにないが、原理的にはありそうな話だ。似た例だが、次の方法もある。
 「ターボチャージャーで生じた圧縮空気で、風車を回転させて、それでモーターを駆動して発電する」
 これなら容易に発電できる。その発電でエネルギーを回収して、自動車の充電池に充電すれば、熱効率は上がることになる。

 以上のように熱効率を上げるということは大切だ。それによって地球全体の「脱炭素社会」への道筋が付く。

 火力発電の熱効率


 では、ガソリンエンジン車がこれほどにも熱効率が高くなるとしたら、火力発電で電気自動車を動かすのよりも、効率が高くなるのでは? ……そういう疑問が生じる。もしそうなら、電気自動車を普及させるより、日産の新エンジン車を普及させた方がいいことになる。
 しかし、それは成立しない。理由は二つ。

 (1) 日産の新エンジンは、完全定点運転だから、 e-POWER でしか使えない。 e-POWER で使うなら、「エンジン → 発電機(発電) → モーター(駆動)」という経路で、エネルギーを変換する過程が二つ生じる。ここで、エネルギーのロスが 10%以上発生する。このロスは、電気自動車にはないロスであり、 e-POWER のようなハイブリッド車に特有のロスである。この分があるから、「電気自動車よりもハイブリッド( e-POWER )の方が有利だ」とは言えないのだ。 e-POWER で 50% を達成しても、それは電気自動車に換算すると、45% 以下になる。

 (2) 火力発電の効率は、旧式のものでは 50%以下のものが多い。だが、最新式の LNG 発電では、63%にも達する。( → 出典 ) e-POWER の換算値が 45% 以下であるのに比べると、この数値は圧倒的に高い。つまり、火力発電の方が、熱効率はずっと高い。

 以上の二点ゆえに、ガソリンエンジンを使うハイブリッド車は、いくら熱効率が高いとしても、火力発電には勝てないのだ。

 ※ 火力発電には「送電ロスがあるぞ」という意見もありそうだが、送電ロスは、ガソリン燃料を運ぶエネルギーロスに比べれば、ずっと小さいので、問題ない。

 LNG の不足


 ガソリン車よりも火力発電の方が熱効率は高いとしても、そこで言う火力発電は、LNG 発電だ。(重油や石炭だと、もっと熱効率は下がる。)

 ところが、その LNG は、「燃料不足」という問題に見舞われた。
  → 電力の需給逼迫が続く: Open ブログ
 この問題には、どう対処すればいいだろうか? いくら熱効率が高いといっても、肝心の燃料が不足して、停電になってしまうのでは、元も子もないが。 

 この問題については、上記の項目を書いたあとで、改めて調べ直してみた。すると、新たな事実がわかった。
 LNG の不足は、短期的には「北東アジアでの需要急増」という問題があったが、それは構造的な問題ではない。(上記項目では「構造的」と述べたが、それはちょっと視野が狭かった。)

 長期的に見ると、(構造的には)LNG は供給過剰という状況にある。というのは、米国のシェールガスがどんどん開発中であって、莫大な量が供給可能だからだ。
 なのにどうして昨今は供給不足になっているかというと、昨春の(コロナのころの)需要急減で、開発中止が続出したからだ。2020年4月20日には原油価格がマイナスになったが、そういう価格低下にともなって、連動する LNG 価格も急落した。そのせいで、シェールガスの開発中止が続出したのだ。
  → コロナ危機、LNGに波及 需要減速で開発延期相次ぐ: 日本経済新聞(2020年4月20日)

 こうして春ごろに供給が絞られた。その傾向は夏まで続いた。そういう影響は秋から冬にも引き継がれた。だからこそ、供給不足となったのだ。しかも、北東アジアでは、中国や韓国がコロナ下の需要の見積もりをミスったせいで、秋以後になって LNG をいきなり大量購入することもあった。
  → なぜ電力ひっ迫を招いたLNG不足を予測できなかったのか|日経エネルギーNext

 以上のように、昨今の LNG 不足は、あくまで一時的なものだ。コロナに見舞われたせいで、需給に急激な変動があったので、「絞られた供給」と「急増した需要」という両面が同時に起こった。
 しかし、こういう世界規模の急変動は、今後は起こらないだろう。コロナのような疫病が次々と襲いかかるわけではないからだ。したがって、このような需要逼迫は、再発することはないだろう。

 では、それほど大規模な変動ではなくとも、中規模の変動が起こったら? 例えば、局地的な戦争などで需給が逼迫したら? ……その場合には、需要の側で、ある程度は対策が可能だ。

 その原理は、次のことだ。
 「突発的に需給が逼迫することはあるが、それは、突発的に天候が変動した日だけだ。たとえば、雪が降って厳寒になった日。また、突発的に 35度以上の猛暑になった日。……こういう厳寒・猛暑の日は、常に起こるわけではなく、時たま起こるだけだ。しかも、数日前には、予想が付いている。とすれば、その日にはあらかじめ全国規模で休業すればいいのだ。厳寒休日とか、猛暑休日のように。……こうすれば、突発的に電力需要が増える日に、企業を休ませることで、電力不足への対策ができる」

 さらには、異常時への供給対策として、原発を「再稼働可能」にするといいだろう。(再稼働を可能にするだけである。それは異常時への対策として、「万が一」への対策であるだけだから、現実には再稼働しないで済む。)
 
 さらには、将来的には再生エネ発電(太陽光・風力)が主流となる。そうなると、発電では炭酸ガスを出さなくなるので、脱炭素という意味で、ハイブリッド車は電気自動車には勝てなくなる。(火力発電に頼る現状とは異なる。)

 以上のことは、前に述べたとおりだ。
  → 厳寒・猛暑なら休業日に: Open ブログ
  → 電力の需給逼迫の解決策: Open ブログ
 

 LNG の難点(コスト)


 すでに述べたように、LNG 発電を使えば、熱効率の点ではガソリン車を上回るし、LNG の供給不足の問題もない。(長期的には)
 では、当面は LNG 発電に頼ればいいのか? 実は、そうでもない。欧州を見ると、LNG発電は、増えるどころか、どんどん廃止されているのだ。

 では、なぜ? 理由は、次の三つだ。
  ・ 再生エネがどんどん増えているので、その分、火力発電を減らす必要がある。
  ・ 火力発電のうちでは、高コストな LNG 発電が先に廃止され、低コストな石炭発電が生き残る。
  ・ 炭素税を導入しても、その額が少ないので、( LNG と石炭の)コスト差を埋められない。


 ※ 以上の出典は下記。 
   → なぜドイツでトップレベルの高効率ガスタービンが閉鎖されるのか

 しかし、こんなことでは、炭酸ガスはどんどん増えてしまう。かといって、炭素税を大幅に高額にするというのは、世界的に合意を得にくい。(欧州ばかりがそうすると、国際的な競争力も下がってしまうので、まずい。)
 困った。どうする?

 コジェネ


 そこで、困ったときの Openブログ……と言いたいところだが、実は、私が考えるまでもなく、うまい案はすでに出ている。
 それは、コジェネだ。コジェネならば、高いエネルギー効率となるので、コスト減と脱炭素の双方を両立させることができる(らしい)のだ。

 具体的には、重油や石炭でコジェネをする、という方法が開発されている。下記だ。
  → コージェネレーションシステム | ガスタービン | 川崎重工業株式会社

 従来型コジェネだと、廃熱は給湯で使うことぐらいしかできなかったのだが、給湯の使い道がなかなか見つからなかった(特に夏は暖房にも使えなかった)ので、うまく熱効率を上げることができなかった。
 新型コジェネは、近年に開発されたものだが、廃熱の利用が進むようになった。給湯以外にも、低い熱温度で発電などをすることができるようになったので、捨てていたエネルギーの回収が容易になったのだ。
  → 熱と電気の比率を利用場所に合わせて最適に調整 天然ガスコージェネレーションの普及範囲を広げるガスエンジンシステムを開発New !

 近年ではコジェネで 95%の熱効率を上げることもできるようになったらしい。
  → なぜドイツでトップレベルの高効率ガスタービンが閉鎖されるのか
    ※ ただしその記事の原典となる記事は見つからなかった。
       → https://bit.ly/3b39OFa

 ともあれ、コジェネの効率は 95% ぐらいまで行くので、最優秀と言える。

 コジェネの問題


 効率の観点からすれば、コジェネが最優秀であるので、「これしかない」と言える。では、それで話は万事 片付くか? いや、そうではない。

 コジェネは、効率の点ではいいのだが、汎用性の点では弱いのだ。
 (1) 発電の点では、給湯の利用は分散する必要があるので、設置場所は、マンションや工場などに限られる。
 (2) 規模が小規模だと、コストがかさむので、家庭用には向かない。
 (3) 自動車に搭載することもできない。( EV には使えない。)

 以上のように、用途はかなり限定される。決して万能選手ではない。

  ※ 家庭用には、燃料電池タイプのコジェネがある。ただし現時点では、普及していない。コストがかさむのと、お湯が大量に出過ぎて、利用しきれないからだ。

 ――

 燃料の面からは、どうか? コジェネの燃料は、低コストで供給過剰気味の重油石炭を利用できるといい。しかし現実には、その逆になっている。つまり、重油ボイラーのコジェネを廃止して、LNG のコジェネが新規導入されている。
  ヤマハ、掛川工場にコジェネ導入、重油焚きボイラーもLNGに | レスポンス(Response.jp)
 これはどうしてか? たぶん、メンテナンスの容易さが理由だろう。重油や石炭は、燃料の補給を含め、メンテナンスが大変だ。人件費もかかる。一方、ガスならば、メンテナンスは容易だ。特に、マンションなら、なおさらだ。メンテナンスの点では、ガスの優位は動かせない。
 しかし、ガスでコジェネをするとなると、「余っている燃料を高効率で使う」という最善の方策からは遠ざかってしまうことになる。その点では、ちょっと残念ではある。(期待はずれ気味)

 まとめ


 ここまでの話を、まとめて言おう。

 脱炭素社会をめざすには、再生可能エネルギーで発電するのが理想だが、現実には、再生可能エネルギーには電力供給の安定性がない。特に、太陽光発電は、夜間にはまったく発電できないので、頼りにならない。風力発電も、日や時間によっては変動が起こる。
 こうした変動を吸収するには、原子力発電でも駄目で、火力発電に頼るしかない。その火力発電で、少しでも脱炭素をめざすには、熱効率を上げるしかない。
 熱効率を上げるというと、日産の新型エンジンが話題になったが、これよりも LNG 発電の方がずっと高効率だ。(最新型)
 LNG は、供給が不安定だという点が懸念されたが、それは短期的にコロナのせいで変動があっただけだ。長期的には、シェールガスがどんどん開発されるので、供給の心配はない。
 LNG 発電は、コスト面では石炭発電よりも不利なので、欧州では消えつつある。
 しかし、コジェネを使うと、効率面で優位に立つので、コスト面でも石炭発電に対抗できそうだ。また、効率アップによって、脱炭素も推進できる。
 従来型のコジェネは、給湯(温水)の利用が難しかったが、最新のコジェネでは、低温の発電などで熱利用が進んでいる。だから、最新のコジェネを推進するといい。
 ただしコジェネを利用できるのは、工場やマンションなどに限られる。家庭用には不向きだ。また、自動車に搭載することもできない。(発電所でコジェネ発電をしてから、電気自動車に充電することはできる。これが推奨される。)
 コジェネの燃料は、重油や石炭が低コストで望ましいが、メンテナンスが難しいので、一般的にはガスのコジェネが普及しそうだ。

 おしまい。



 [ 付記 ]
 参考記事を掲げる。温暖化ガスの削減を目標とする「パリ協定」を実施しても、目標の達成はとうてい困難だ……という見通しが出た。
 地球温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の下で、各国・地域が提出・更新した温室効果ガスの排出削減目標を積み上げても、協定の掲げる気温上昇を抑える目標達成にはほど遠いことが26日、国連の報告書で明らかになった。
 パリ協定は産業革命以降の気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目標として掲げ、各国に削減目標の提出・更新を義務づけている。「2度未満」の達成に2030年に10年比約25%減、「1.5度」の達成には、約45%減が必要とされる。
 だが国連が昨年末までに提出・更新された世界75の国・地域の削減目標を積み上げたところ、全体で30年までに10年比1%減の効果にとどまることがわかった。
( → パリ協定の目標達成「到底おぼつかない」 国連報告書:朝日新聞

 ただしこれは、2030年の話だ。このころには、温暖化阻止という目標が達成できないのは、もはやどうしようもないだろう。
 技術革新によって温暖化阻止ができるのは、2050年以後のこととなりそうだ。というか、2100年ごろのことになりそうだ。そして、そのころには、われわれはみんな死んでいる。目標達成を、生きて目にすることはあるまい。
 

posted by 管理人 at 22:57| Comment(7) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マンションにコジェネは向いていません。昼間は人が居ないのでお湯を使う需要が無いのです。
お湯需要のある病院、ホテルの方が向いています。
Posted by メーオ at 2021年03月03日 08:58
> 昼間は人が居ないのでお湯を使う需要が無いのです。

 昼間は人が居ないのなら、昼間は発電もしないで済むので、お湯がどんどん出てくることもありません。

 病院やホテルは、もちろんいいのですが、それだと数が限られるのが、制約となります。もっと大量に導入しないと。
Posted by 管理人 at 2021年03月03日 09:27
極論
人間は飯を食って生きる
美味しい食生活を楽しみたいなら脱炭素は無理だ
人間を小型化するか、減らすほうが有効だと思う
Posted by 老人 at 2021年03月03日 13:39
 鉄腕アトムのころの予想だと、将来は原子力エネルギーを莫大に使えるようになって、石油や石炭は不要になるはずだったんです。
 光エネルギーを吸収するエプシロンは、ロボットで最強の能力をもっていたのだが、太陽が隠れると、力を失って、プルートーにバラバラにされてしまったんです。
Posted by 管理人 at 2021年03月03日 14:45
コ・ジェネなんて何十年も前から利用はされていますが、課題は「電気需要と熱需要が合わない」ことです。貯湯槽を設けたり蓄熱したり地域熱供給的に使ったりするものの、どちらかが余って(たいてい熱)結局捨てる(大気、河川などに放熱)するしかなくなりますので、本来の最高効率をなかなか発揮できません。
ゴミ処理場の近くに温浴施設を造って電気や熱を供給するようなところも多いですが、理想の効率には程遠いかと。
うまいこと「カスケード利用」ができると、熱がとても有効に使えるのですけど、なかなか。
Posted by けろ at 2021年03月05日 00:35
 マンションで、給湯の需要に相当する分だけ、コジェネにすればいい。発電の全量をまかなうことはできないが、お湯が余ることはない。

 あと、お湯が余るのは、旧式のコジェネ。
 本項で紹介しているのは、低温でも発電ができるような、新型のコジェネ。この場合には、お湯になる量が大幅に減って、電力が増える。
Posted by 管理人 at 2021年03月05日 01:03
 最新型のコジェネの方式。
  → https://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201314mes/index.html
Posted by 管理人 at 2021年03月05日 09:34
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