2021年02月24日

◆ Skyactiv-X(HCCI)は成功?

 マツダの HCCI エンジンは、Skyactiv-X という名称で実用化されたが、これは成功しているか? 

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 マツダの HCCI エンジンについては、前に言及した。
  → HCCI と可変圧縮比エンジン: Open ブログ(2017年05月07日)

 ここでは「無理っぽい」と否定的に観測しているが、現実にはきちんと実用化したわけだ。その点では、立派だと言える。
 では、それは額面通り(公称通り)に、素晴らしい画期的なエンジンなのだろうか? 

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 このエンジンについて、新たな情報が出た。下記記事だ。
 スカイアクティブXのWLTCモード燃費は、2WDの18インチタイヤ装着車が17.2km/L(2WD/6速AT)だ。
 ちなみに直列4気筒2Lノーマルエンジン車の各種性能は、156ps(6000rpm)/20.3kgm(4000rpm)で15.6km/L(2WD/6速AT)になる。
 スカイアクティブXは2Lノーマルガソリンエンジンに比べて68万2407円高い。
 機能と価格のバランスで見ると、1.8Lクリーンディーゼルターボがベストだ。価格はマツダ3XDプロアクティブツーリングセレクションが291万1741円になる。
 2Lノーマルガソリンエンジンの20Sプロアクティブツーリングセレクションに比べると27万5000円高いが、スカイアクティブXのXプロアクティブツーリングセレクションに比べると40万7407円安い。
 またマツダ3のディーゼルは、WLTCモード燃費が19.8km/L(2WD/6速AT)だから、スカイアクティブXの17.2km/Lと比べても優れている。しかもディーゼルが使う軽油は、価格(正確には軽油に含まれる税金)が安い。
 新型コロナウイルスの影響で原油価格が下がった今は、1L当たり120円前後だ。レギュラーガソリン価格の140円、スカイアクティブXが使うプレミアムガソリン価格の150円を大幅に下回る。

( → マツダの宝 SKYACTIV-X なぜ苦戦!?? 理想の技術なのに… - 自動車情報誌「ベストカー」

 要領を得ない文章だが、対比すると、こうだ。(標準車との比較)
  ・ 燃費は 15.6km/L から 17.2km/L に向上 (ディーゼルは 19.8km/L )
  ・ 価格は 68万2407円高。(ディーゼルは 27万5000円高)
  ・ 燃料はレギュラーからハイオクに。(ディーゼルは軽油)


 燃費は 10% 向上している。だが、ハイオクにしているせいで、ガソリン価格が7%もアップしているので、実際のガソリン代の節約は 3% でしかない。そのために値段が 68万円も上がっている。あまりにもコスパが悪すぎる。
 そもそも、指定ガソリンをレギュラーからハイオクにすると、エンジンの圧縮比を高めることができるので、燃費は4%ぐらい向上するはずだ。とすると、その分を差し引くと、 SKYACTIV-X の機構的な燃費向上は、たったの 6% ぐらいでしかない。全然、たいしたことはない。
 というわけで、「コストの割には性能向上が少ないので、コスパがすごく悪い」というのが、評価となる。

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 ただし記事には、次の記述もある。
 欧州での価格差は19万円!!
 海外市場では話が変わる。欧州で売られるマツダ3ファストバック・スポーツLUXの場合、2Lノーマルエンジン車の価格は2万5540ユーロ(299万円/1ユーロを117円で計算)、スカイアクティブXは2万7140ユーロ(318万円)になる。
 スカイアクティブXが高いものの、差額は19万円だ。そのために欧州で売られるマツダ3とCX-30では、40%前後をスカイアクティブXが占める。

 日本では 68万円高なのに、欧州では 19万円高だという。これなら、「コスパがすごく悪い」ということにはならないようだ。

 しかし、そうだとしても、ディーゼルには負けている。ディーゼルは燃費が圧倒的に上だからだ。
 とはいえ、ディーゼルは「排ガスに微粒子があって有害だ」という問題があるから、お勧めはできない。(マツダのディーゼルは比較的優秀だが、それでも問題は残る。)
 環境面からディーゼルを外さざるを得ないとすると、スカイアクティブXは「コスパは悪いが、燃費はいいので、受け入れる」というふうにするべきか? (少なくとも欧州では)

 ――

 私の判定は「ノー」である。なぜなら、「ミラーサイクル・ターボ」という優秀な方法が残っているからだ。こっちの方がいいだろう。
 ミラーサイクルは、それ自体では、コストがかからない。(単に吸気弁を早閉じするか遅閉じするか、という差[タイミングの差]しかない。)
 ただしその分、出力が低下する。それはターボで補えばいい。ターボにはコストがかかるが、スカイアクティブXにもスーパーチャージャーが搭載されているので、この点ではコスト差はほぼ同じだ。(または少し安くなる。)
 ミラーサイクル・ターボだと、インタークーラーが必要なので、この分はコストがかかる。これは約 10万円だ。
 全部加えると、ミラーサイクル・ターボだと、標準車に比べて約 20万円のコストアップだ。これは、欧州でのスカイアクティブXの価格とほぼ同じだが、日本でのスカイアクティブXの価格の3割でしかない。その意味では、ずっとコストが低くなりそうだ。(少なくとも日本では。)

 重要なのは燃費だ。ミラーサイクルターボだと、燃費はかなり良くなる。ざっと見て、10% ぐらい良くなるだろう。(ハイオクの効果なしで。)
 とすると、6%しか良くならないスカイアクティブX よりも、燃費改善の効果は高いことになる。

 ――

 結論。

 スカイアクティブX よりも、ミラーサイクル・ターボの方が、優れている。燃費改善の効果でも、コストの点でも、ミラーサイクル・ターボの方が優れている。つまり、スカイアクティブX は、ミラーサイクル・ターボよりも劣る。


 ※ 燃費改善の効果では、ハイブリッドには大きく劣るので、将来的には生き残れないだろう。ハイブリッド車は、今はかなりコストがかかるが、EV がもっと普及すると、その部品を転用できるので、ハイブリッドはかなりコストが下がりそうだ。そうなると、燃費改善の効果が圧倒的に高いハイブリッドに比べると、(ハイブリッドなしの)HCCI エンジンは、生き残れそうにない。
 ※ ただし、HCCI エンジンをハイブリッドと組み合わせるのは、「あり」だ。といっても、その場合も、(ハイブリッドと組み合わせた)ミラーサイクル・ターボには勝てそうにないが。

 ※ ついでだが、日産の VCターボは、可変圧縮比技術と、ミラーサイクル・ターボを組み合わせている。(前項)



 【 追記 】
 価格差にもかかわらず、スカイアクティブX を「優秀だ」と褒めている記事もある。静粛性や高応答性など。
 しかし、それをめざすのだったら、 e-POWER のハイブリッドの方がずっと上だろう。価格差も同程度だ。(というか、 e-POWER の方が少し安い。)
 さらに、 e-POWER ならば燃費の向上が圧倒的だ。セレナでは次の差がある。ガソリン車(マイルド・ハイブリッド)は 16.6q/L で、e-POWER は 26.2q/L だ。実際には公称通りではないとしても、 e-POWER の方が燃費削減効果がずっと大きいことは明らかだ。(減速時のエネルギーを回収するから。)
 どう考えても、スカイアクティブX は、ハイブリッドに対して勝ち目がない。
 トヨタのハイブリッドは、日産の e-POWER よりもコスト安なので、それに対しても勝てそうにない。(価格ではずっと高いのに、燃費では圧倒的に負けている。)




 【 関連項目 】

 HCCI エンジンについては、前に言及した。
  → HCCI と可変圧縮比エンジン: Open ブログ
posted by 管理人 at 23:31| Comment(1) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2021年02月25日 12:42
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