2021年02月21日

◆ 電力安定供給には発送電分離

 電力で需給が逼迫したという事態が発生したことがあった。この再発を防ぐには、発送電分離をするといい。

 ――

 電力で需給が逼迫したという事態が発生したことがあった。そのときは「電力市場の価格暴騰が起こった」(そのせいで新電力の料金が高騰した)ということが話題になった。私も言及した。
  → 電力の需給逼迫の解決策: Open ブログ

 ここでは、解決策として、「広域の需給調整契約」という方法を提示した。
 これを解決したければ、九州電力や新電力などが、自己の裁量で、(東電管内にある)企業と需給調整契約を結ぶべきだ。つまり、(東電管内にある)自分の契約先に対して、「電力の逼迫時には電力供給を停止します」という条件を呑んでもらうべきだ。そして、その分、料金引き下げや補償金の支払いなどを決めておくべきだ。……そうすれば、需要逼迫時には、対処できる。
 あるいは、東京電力との間で、「東電の需給調整契約の相手に、電力使用の停止を要請できる」という委託契約を結べばいい。この場合も、間接的ながらも、電力の需要を減らしてもらえるので、実質的には、電力供給が増えたのと同じ効果が生じる。
( ※ 契約先の企業で電力使用がなくなれば、その分、電力が余るから、新たに電力が供給されたのと同じ効果が生じる。)

 ただし、後日になって、あらためて考え直した。
 上の方法は、どうも「奇手」と言える。物事の本道ではない。
 では、本道とは? それは「市場原理で需給が安定する」ということだ。
 しかるに現実には、その本道が成立しない。市場原理が正常に発動しない。では、なぜか? 何らかの阻害要因があるからだ。とすれば、その阻害要因を除去することで、市場原理が正常に発動するようになるはずだ。だから、その阻害要因を見極めて、市場原理が正常に発動するようにさせることが、本道と言える。

 ――

 ここまで考えると、その阻害要因もはっきりする。
 「電力市場においては、売り手と買い手とが(おおよそ)一致している。電力を売る側は大手電力会社であり、電力を買う側も大手電力会社である。本来ならば、電力価格が高騰すれば、売り手は多い量を売り、買い手は少ない量を買うはずだ。なのに、両者が一定しているせいで、買い手は買う量を減らさない。そのせいで、価格が高騰する。すると買い手は売り手となって、(新電電に)高い価格で売って暴利を得る」

 このことは、前に次のように説明した。
 需給調整契約には、利益相反がある。なぜなら、市場価格が高騰した方が、東京電量は儲かるからだ。需給逼迫が起こったとき、新電力や九州電力は、市場で電力を購入する必要があるので、損をする。一方、東京電量は(まだ余裕があるので)市場で電力を売却できる。とすれば、市場価格が高騰すればするほど、東京電量は(高値で売って)ボロ儲けできるのだ。東京電力は、需給調整契約を発動することで、需要を減らして、市場価格を下げることができる。しかし、市場価格が下がったら、東京電力はボロ儲けの機会をなくす。それはまずい。だから、需給調整契約を発動することはできても、発動しないのだ。
 東京電力が需給調整契約を発動するとしたら、東京電力自身が電力不足になる場合だ。それは、現在よりもさらに 5%ぐらい需要が増えた場合だ。そのときには、東京電力は需給調整契約を発動して、管内の電力不足を解消する。
 一方、そうなる直前では、新電力や九州電力が電力不足になって大損する一方で、東京電力は高値で電力を売ることができるので、ボロ儲けできる。ゆえに、需給調整契約を発動しない。
 これはまあ、市場原理で言えば、当然のことだろう。

 こう理解したあとで、これへの対策として、先に述べたのが、「広域の需給調整契約」だった。
 
 しかし、より根源的に言えば、ここでは「市場原理が正常に発動しない」ことが問題なのである。そして、その理由は、「売り手と買い手が一致していること」だ。

 ――

 ここまで考えれば、本道としての対策もわかる。こうだ。
 「電力市場において、売り手と買い手を分離すること」
 これは、換言すれば、こうだ。
 「発送電分離をする。電力の発電会社と、電力の送配電会社とを、分離する」

 こうすれば、電力の売り手と買い手が分離するので、送配電会社は価格高騰をイヤがるようになる。市場価格が高騰した場合には、市場からの購入を控えるようになる。換言すれば、需給調整契約を自動的に発動するようになる。だから、市場価格の高騰は自動的に避けられる。

 ※ ここでは、市場に出る電力は、電量の全量である。そのことに注意。現状では、全量のうちの、ごく一部だけが電力市場に出るので、急激に価格上昇したり、急激に価格低下したりする。また、その影響を受けるのは新電力だけであって、大手電力会社は影響を受けない。
 ※ 仮に、大手電力会社の電力もすべてがこの電力市場を経由するとしたら、価格が高騰したとき、大手発電会社はとんでもない莫大な利益を得るし、大手送配電会社はとんでもない莫大な損失をこうむる。(家庭の電力料金が定額だからだ。)
 ※ 逆に言えば、そういうことがないように送配電会社が需給調整契約を発動するから、価格が高騰するということは自動的に避けられる。

 ――

 というわけで、以上をまとめて、こう結論できる。
 「電力の需給逼迫(および価格高騰)を避けるには、発送電分離をすればいい。そうすれば、大手の送配電会社が需給調整契約を発動するので、自動的に需給逼迫(および価格高騰)は避けられる」



 [ 付記 ]
 話は以上で済んでいる。
 ただし、この話を書いたあとで、2月21日の朝日朝刊に、ほぼ同趣旨の話が掲載されてしまった。(ちっ。出し遅れた。)

 ただし、趣旨は似ているのだが、結論は大きく異なっている。
 本項の方法では、「これで需給逼迫は避けられる」となる。
 朝日の記事の方法では、「これで需給逼迫は避けられる」とならない。
 では、どうして差が生じるか? 

 「大手電力会社が、市場価格の高騰で、不当な暴利を得る」ということについては、朝日の記事もきちんと指摘している。
 新電力の多くは自前の発電所を持っていないため、市場で電気を調達せざるを得ない。ところが、昨年末から今年1月にかけ、その市場価格が急騰。最高で1キロワット時あたり250円超と、家庭向け電気料金の最大10倍にあたる高値となり、多くの新電力が大打撃を被った。
 経産省は寒波で急に暖房の需要が増え、火力発電に使う液化天然ガスも不足したと説明する。だが、2月8日の衆院予算委員会では、寒波は異例というほどでもなく、価格高騰の背景にはむしろ、大手電力による電気の出し惜しみがあったのではと疑う指摘もあった。電力市場に詳しいエネルギー戦略研究所の山家公雄所長も「大手電力はいまなお発電設備の8割を持ち、情報・知識量も多い。故意でなくても、圧倒的な市場支配力がある」と現状を分析する。
( → (東日本大震災10年)混迷の電力・原発:7 自由化でも大手支配の影、改革半ば:朝日新聞

 ただしここでは、「売り手と買い手が一致している」(発送電分離がなされていない)という肝心の点は指摘していない。

 発送電分離については、むしろ逆に認識しているようだ。
 小売市場では競争を通じて電気料金の値下げやサービスの向上を狙った。発電市場も参入しやすくして再生可能エネルギーなどの分散型電源を増やし、大規模電源への過度な依存をなくすことにした。このため、16年4月に大手電力が独占してきた家庭向けの電力小売市場を自由化した。新規参入した「新電力」も送電線を公平に使えるよう、大手電力から送配電部門を子会社化して切り離す「発送電分離」を 20年4月に実施。大震災を契機とした一連の改革の総仕上げと位置づけられた。

 この記事によれば、発送電分離は 20年4月に実施とのことなので、すでに実施済みだということになる。だとすれば、電力逼迫も価格高騰も起こらなかったはずだ。しかし現実には、電力逼迫も価格高騰も起こった。では、どうしてか?
 それは、記事を読めば明らかだ。この「発送電分離」は、「大手電力から送配電部門を子会社化して切り離す」というだけのものであるから、実質的にはまったく分離されていないからだ。事実上、「親会社と子会社」で、完全に一体化されている。
 発送電分離をするならば、価格について、双方が利害相反するのでなくてはならない。
  ・ 価格が上がれば、売り手は得するが、買い手は損する。
  ・ 価格が下がれば、売り手は損するが、買い手は得する。

 こういう形で利害相反してこそ、「市場原理」は正常に働く。なのに、両社の経営が一体化していれば、利害もまた一致するから、利害相反は起こらない。それゆえ、「市場原理」は正常に働かない。

 だから、発送電分離をするならば、発電会社と送配電会社は経営的に完全に分離している必要がある。
 両者が経営的に一体化している現状では、利害が一致するので、たとえ形式的には別会社であっても、実質的には同一の会社であるのだ。……そんなこともわからないで、「一方を子会社にしたので、発送電分離ができました」なんて言うのは、とんでもないペテンだ。
 そしてまた、そのペテンを理解していないで、詐欺師の言葉を丸ごと信じて紹介しているのが、朝日の記事だ。(詐欺師の片棒をかつぐ。)

 こうして、問題がどこにあるかを、理解することができるだろう。

posted by 管理人 at 20:46| Comment(4) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
電圧低下という問題もしばしばおこる
最近は、朝方のソーラー発電が始まる時期に
電力需要が逼迫して上手く調整がとれていないのか
100Vを切るようになった
たまに、いっぺんに10Vも低下すると
自宅のUPSが反応しまくった

東電の瞬時電圧低下履歴検索
https://teideninfo.tepco.co.jp/day/shuntei/index-j.html
Posted by 老人 at 2021年02月22日 10:41
 上のリンクを見ると、群馬県と栃木県で頻発しているようですね。
 「落雷のせいではないか?」
 と思って、ググってみたが、やはりそうであるらしい。
 → https://bit.ly/3ukeLRw
Posted by 管理人 at 2021年02月22日 11:47
当方の認識が間違っていればご指摘いただきたいのですが、大手電力会社(東電や九電など)の子会社である送配電会社は電力自由化の制度設計上は電力の買い手ではありません。電力小売会社(大手電力会社や新電力など)が電力の需給調整市場の買い手ではないでしょうか。送配電会社は電圧と周波数の維持のための調整力を持っていますし、結果的にインバランス料金で調整することとなっていますが、制度的には電力というエネルギーを供給する水道パイプを提供するのが役割で、kwh当たり○○円の託送料をもらっているだけです。(系統が分離されている離島は除く。離島では発電・送配電・小売りを一貫して行っている)
記事的には、送配電会社を小売会社と読み替えれば要旨は変わらないとは思います。電力自由化の議論の中で、発電会社、送配電会社、小売会社に分離との案もあったようですが、いろいろな議論の果て、送配電会社の分離となったと聞きました。

ここからは私見ですが、今回の寒波による電力供給不安定化の事象は、局所的・短期的には儲からない投資を継続的に行わないと安定供給のレベルが保てないという点を経産省が軽視したことと、需要に見合った発電がされない-同時同量の原則-と供給できない電気という財の特性をよく理解せずに参入した新電力の甘い判断が招いたと考えています。新電力の方は、販売量に相当する電力を相対契約等で確保-疑似的に発電所を所有-したうえで参入すべきであったと考えます。当然ベースを超えたピーク部分は需給調整市場での調達で良いと思いますが。ベース需要の部分は確保しておく、それがお客さまに対する供給責任です。
電力自由化が供給の安定性を損ない価格の乱高下を招くことは、2011年以降の自由化論議の中で言われていたことでした。供給安定より市場経済化による新規プレイヤーの参入離脱がある開かれた市場を選んだのですから、今回の事象は当然の帰結と見えます。電力自由化には、東電が支配している業界を経産省が主導する形にしたいという意思が働いていたと感じます。そのうち分離させた10電力会社の送配電子会社を役所主導で経営統合する話が出てくるのではないかと思っています。
Posted by ゆうき at 2021年03月02日 16:01
> 大手電力会社(東電や九電など)の子会社である送配電会社は電力自由化の制度設計上は電力の買い手ではありません。

 そうです。だからそれを改めればいい(そうすれば問題は解決する)、というのが、本項の趣旨。

> ベース需要の部分は確保しておく

 それは全社がやる必要はなく、大手電力会社の送配電部門だけがやれば十分です。
 なぜなら、新電電がそれをやらなければ、新電電が(値上げで)損するからです。自分が損をしたければ、勝手に損をしていい。
 問題は、その損失を、家庭に転嫁していることだ。この転嫁は、認めるべきではないでしょう。

 p.s.
 上のことは、大手の送配電会社にも当てはまります。(独立した場合)
 だから、大手の送配電会社が自発的にベース電力の分をまかないます。それで大丈夫でしょう。
 新電電は、その分を大手送配電業者に委託して、需給調整契約の一部分を負担すればいい。(委託料)
 なお、委託料を払っても、払った金以上のメリットを得られるから、問題ない。(払うのは、万一の場合だけなので。)
Posted by 管理人 at 2021年03月02日 16:34
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