――
朝日新聞の記事だ。事例の画像は、リンク先にある。(緑とピンクだとわかりにくいので、緑と紫にした、という事例がある。)
「色のバリアフリー」が、教育現場に少しずつ広がっている。色の感じ方に特性のある人に配慮し、だれでも識別しやすい色合いを心がけようという取り組みだ。
黒板では、できるだけ白と黄のチョークを使う。ホワイトボードなら青がおすすめ。黒と赤と緑が同じように見える人もいるので「青以外」として区別せずに使う。
( → 学校でできる「色のバリアフリー」って? 色覚の特性考慮、案内図見やすく:朝日新聞 )
問題は、上の引用部の後段だ。
「ホワイトボードを使うときに、青を原則として、黒赤緑を(青以外として)区別しないで使う」
というのを推奨している。しかし、これはまずい。理由は二つ。
・ 一番見やすい黒を使えないので、不便だ。
・ 「黒と赤と緑が同じように見える人もいる」というが、それは例外的だ。
特に、後者が重要だ。色盲・色弱で最も多いのは、「赤緑色盲」というタイプだ。これは、色を見る3種類の色細胞(青・緑・赤)のうち、緑または赤が欠落しているタイプだ。
このタイプは、青と黄色だけで色の世界が見える。
→ ゴッホの絵はこうみえる!?色覚異常の人が見た世界がわかる比較画像
この場合、赤と緑は区別されずに見える。いずれも「黄色」という色で代替することができる。理由は下図。

※ R は暗所でのみ働く桿体細胞
※ 出典は Wikipedia
当然ながら、「黄色」が感知されるので、「黒」ではない。
つまり、たいていの色盲(赤緑色盲)の人にとっては、「赤と緑は区別されない」が、「赤と緑を、黒と区別することはできる」のだ。
朝日の記事は、そこのところを勘違いしている。「赤と緑を、黒と区別できない」というタイプの人もいるには いる。だが、それは、「赤と緑の色細胞をどちらも持たないタイプ」(青の色細胞だけをもつ)というタイプであって、かなり例外的なタイプである。そういう人は非常に少ないのだ。
したがって、「黒と赤と緑を、青以外として区別せずに使う」という朝日の方針は、好ましくない。
( ※ そこまで厳しくやると、教育の能率が低下して、一般の生徒全般の学力低下を招いてしまう。それはいわば、教育用のパソコンのディスプレイをすべてモノクロにしてしまうようなもので、教育のレベル低下をもたらす。)
――
では、どうするべきか?
ホワイトボードを使うときには、次のようにするといい。
・ 黒を原則として使い、青を併用する。赤と緑は使わない。
・ 黄土色またはオレンジを、修飾用に使う。(下線・枠線など。)
赤と緑は区別しにくい人がかなりいるので、もともと使わないことにすればいい。
赤と緑を「黄色」のように見えることがあるので、赤と緑のうちの一方だけを使ってもいいのだが、(色弱の人にとっては文字としては見やすくないので)、修飾用にのみ使うことにする。
そのためには、健常者にも見やすくないような(文字としては使いにくいような)、黄土色またはオレンジを使うといい。
※ 本来ならば黄色を使いたいところだが、黄色はホワイトボードに書いても見えにくいので、暗い黄色に相当するものが良い。黄土色やオレンジ色が該当する。ウグイス色でもいい。
[ 付記 ]
ホワイトボードでなく、黒板の場合には、どうか? 上の話を援用して、次のようにすることがお勧めだ。
・ 白を原則として使い、黄色を併用する。赤と緑は使わない。
・ 薄い青色を、修飾用に使う。(下線・枠線など。)
ついでだが、薄い青色 ■(#5555FF)と、水色 ■(#00FFFF)とは異なる。前者は、赤緑色盲の人にもわかるが、後者は、赤緑色盲の人には(赤欠損と緑欠損の人で)見え方が異なるので、不適である。
【 関連項目 】
→ 白と黄色は明るさが同じ: Open ブログ
色弱・色盲の原理となるような話への言及がある。
詳しくは上記ページのリンク先の Wikipedia ページなどを見るといいだろう。
→ 交通信号と色盲(色弱): Open ブログ
交通信号は、色盲(色弱)の人には判別できない。では、どうすればいいか?
http://www.cudo.jp
推奨配色の資料とか
https://www2.cudo.jp/wp/?page_id=1565
パソコンでの色選択に使えるカラーパレットなどが配布されてます.
https://www2.cudo.jp/wp/?p=5014
メガネを掛けずにTVを視ているとよくわかる
最近のTVは淡い色の配色が多くなった
情報を正確に伝えなくてはならない情報番組で
多いのが気になる
黒板の話。
ご参考までに
https://www.nig.ac.jp/color/barrierfree/barrierfree2-2.html
>E:第1 色盲では赤が暗く見える
>赤緑色盲の色覚の特徴でもう 1つ忘れてはならないのは、第1色盲では可視光領域が長波長側で狭くなっていることである。
>白地に黒い文字列の中で、強調したい文字を赤字にすることはごく普通に行われているが、濃い赤を用いると第1色盲の人には黒文字とほとんど区別がつかず、まったく強調されて見えない
そういう人が少数ながらもいることは、もともと考慮されています。
私が否定しているのは、「そういう少数の人が主流である」という倒錯した認識です。この倒錯をやめろ、といっているわけ。
一方、そういう少数者を少数者と認識しながらも、少数者に配慮するということは、本項の提案で実現しています。つまり、「赤と緑は使わない」という方針です。
白板でも黒板でも「赤と緑は使わない」という方針を取っています。これで対処はできています。
一方、「赤を黒と同様に使う」というのは、少数者にとっては有益(というより無害)ですが、大多数の人にとっては有害です。