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PS5 は売れに売れまくっている。これに関して、次の記事がある。
→ ソニー「純利益で過去最高」予想に導いた驚きの“強さ”…「PS5」「鬼滅」ヒットだけみると見誤る
この記事では、
「 PS5 がいきなり利益貢献」
という見出しの章で、ソニーが全体で大きな利益を出したのは、 PS5 が売れて儲かっているからだ、という趣旨の話がある。しかし、これはおかしい。
この記事では、次の記述もある。
現状、PS5は、市中在庫がほとんどない。買いたくても買えない人の方が多い状態が続いている。
「調達にはベストを尽くしているが、世界的な半導体不足の影響も大きい」としており、短期で生産計画を大きく上積みするのも難しいようだ。
ここでは半導体不足で生産できないで困っているように見える。だが、実は逆だ。生産できないのは、困るどころか、ありがたいことだ。なぜなら、PS5 はコストがかかりすぎて、販売価格は原価割れなので、作れば作るほど赤字が出るからだ。(だったら生産量が少ないほど、赤字は少なくて済む。)
決算資料内でも、PS5は「製造コストを上回る戦略的な価格設定による損失」の存在が明記されており、現状「ハードは赤字」であることがわかる。
どうしてこうなったか? 将来は黒字になることを見込んで「戦略的な価格設定による損失」を受け入れているようだ。
だが、それは馬鹿馬鹿しい。原価割れで売るというのは、そもそも商売の原理からして、狂っている。むしろ、今は需要超過なのだから、価格を引き上げて、赤字を解消するべきだろう。
なのに、そうすることができない。なぜか? それというのも、「価格はずっと一定にしなくてはいけない」と思い込んでいるからだ。換言すれば、「最初は価格を高めにして、あとで価格を引き下げる」ということができないからだ。
これはつまり、ゲーム機器を「価格が安定する家電だ」と見なしているからだ。ここでは、「値下げがどんどん起こるIT機器だ」と理解できないからだ。(頭が時代遅れである。前世紀的。)
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日本企業は、市場原理を無視して、やたらと「値上げを嫌う」という傾向があるようだ。
その例は、ソニーの PS5 に見られる。(これは売り手が価格を固定する。)
また、前項の「自動車用の半導体の価格を、高額で買おうとしない」ということにも見られる。(これは買い手が価格を固定する。)
売り手と買い手の違いはあるが、こういうふうに「市場価格が変動する」ということを理解できずに、やたらと価格を硬直的なものと考えるのが、日本企業の特徴だ。
ソニーの場合は、価格を上げないせいで、ソニーは大幅な赤字を出している。その分、転売屋が大儲けしている。本来はソニーが得るべき利益を、転売屋が得る結果になっている。ソニーは転売屋に養分を贈るばかりだ。
自動車業界の場合は、価格を上げないせいで、各社は大幅な減産を強いられている。そのせいで自分で自分の首を絞める結果となっている。ほとんど自殺行為と言えるだろう。
ソニーにせよ、自動車会社にせよ、あまりも頭が悪すぎる。愚の骨頂と言える。
【 関連サイト 】
参考記事。
→ PS5の世界出荷数450万台から考察 日本への配慮とソニーの狙い(河村鳴紘)
→ PS5の「高額転売」がいっこうにやまない実態 | 東洋経済
ゲーム機にとって最も重要なことは、それで利益を上げることではないでしょう。ゲームを売るためにいかに迅速に展開できるかが問題なのであって、それができていないことの方がビジネスとして指摘すべき点ではないかと思います。
その理屈で言うなら、無料で配ればいいことになる。
無料でも 10万円でも、どっちでも同じ販売台数なんだから、10万円で売った方がいいに決まっている。
というか、高い価格で売った方が、高額所得者が買ってくれるから、ゲームの販売台数も伸びるんだが。
あるいは、ゲームとセットで、セット販売してもいいんだし。
> いかに迅速に展開できるか
それは半導体の供給量がボトルネックとなっているので、その量で決定される。値段を上げるかどうかは、別問題。
メーカー…初期ロットほど高額で売れるので初期から採算が取れる
転売ヤー…初期ロットは高額なのでそれをさらに高値で転売できるとは限らず、しかも次期ロットが安くなることが分かっているので転売しにくい→絶滅、または数が減る
転売ヤーから躊躇なく買えるような高額所得者…転売ヤーからさらに高額で買う
転売ヤーから躊躇しつつ買うような人…メーカーから初期ロットを買う
転売ヤーからは買えないと思う、または買わない人…メーカーのロットが適正価格と思えるまで待つ
なかなかいい感じ。ただし、ここには小売業者の視点が抜けている。小売業者も「仕入れた商材に利益を乗せて売る」点では転売ヤーと変わりないので、仕入れすぎて売れ残っているうちに次期ロットが出てしまえば損をしてしまう。それを避けるためには
A.卸売価格は小売価格ほど差をつけない
(初期ロットを高値で売ることによる利益をメーカーと業者で折半する)
B.初期ロットはCDの初回限定版のように
・オンラインサービスが無料になる期間が長い
・ソフトのダウンロード権が多く付属する
など、特典をつける
ことが考えられる。
B.だと初期ロットは売れ残っても高い価値を持つので、業者に優しいが、転売ヤーにも優しくなる。ロットごとに別製品の扱いになるので、小売業者は嫌がるはず。
オンラインサービスが無料になる期間を「購入から○ヶ月間」等でなく、「○年12月末日まで」等、固定した期間にすれば,同じ商品でも初期の製品ほど高いことがある程度正当化される。
単純に一律の本体価格+残り期間×月額料金だと意味がないので、初期ロットにはさらにプレミアをつけるといいのでは?
おっしゃる通り。
> 仕入れすぎて売れ残っているうちに次期ロットが出てしまえば損をしてしまう。それを避けるためには
仕入れすぎなければいい。普通の PC 部品と同様です。
> その理屈で言うなら、無料で配ればいいことになる。
どうしてそんなに極論に走るのでしょう。このくらいの赤字までならなんとかなると勘定したということは考えられないのでしょうか。
その判断が定量的に正しいかどうかはしばらく時間を置かないとわからないのですが。
その意味では
> というか、高い価格で売った方が、
こちらも同じことではないかと。
あと、字面通りの話をすると、無料では当局が何か言ってきそうですね。
> それは半導体の供給量がボトルネックとなっているので、その量で決定される。値段を上げるかどうかは、別問題。
そうです。今問題にすべきはそちらであって、値段は単独で考えるべきことではなくそちらにかなり依存する話になっていると思います。
それは通常の場合には成立するが、生産量を超える需要があるときには、値上げしても値下げしても販売量は同じなので、「値下げしてでも販売量を増やす」という戦略は意味をなさなくなります。
結果的には、ソフトの販売量はどっちでも同じであって、単に転売屋が儲かるかどうかという違いだけがあります。
※ 正確に言えば、高所得者による購入量が減るので、ゲームソフトの売上げは(ハードの赤字販売のときの方が)減ります。
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なお、初期にたっぷりと高収益を得ておけば、投資コストを回収できるので、将来の生産の分は、コスト回収の負担が減ることになって、値下げされます。
あなたがもし将来 PS5 を購入する予定だとしたら、初期に高い値段になっていた方が、お得になりますよ。将来自分が買うときの価格は下がるので。