2021年02月06日

◆ EV用の電池の支援に1兆円

 EV用の電池の生産を支援するために、1兆円の国費を投入しよう、という計画がある。これは MRJ という大失敗の再来だ。

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 EV用の電池の生産を支援するために、1兆円の国費を投入しよう、という計画があるそうだ。スクープ記事らしい。
 世界的な脱炭素シフトを受けて、経済産業省が車載電池向けに1兆円規模の巨額支援を検討していることがダイヤモンド編集部の調べで分かった。
 経済産業省が、車載向けリチウムイオン電池に1兆円規模の巨額支援をする方向で検討に入ったことが分かった。
 支援の対象は、トヨタ自動車とパナソニックの合弁で設立された車載電池メーカー「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」や、リチウムイオン電池の主要4部材(正極材・負極材、電解液、セパレータ)などを製造する電池材料サプライチェーンに組み込まれている企業群となる見込みだ。
( → トヨタとパナの車載電池に「血税1兆円」投下!中韓に劣勢のEVで挽回なるか【スクープ】

 これに対して、はてなブックマークでは、好意的な意見が多い。
 パソナに血税を吸われるより1兆倍マシ
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 GOTO一兆円に比べたらだいぶ良い…
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 韓国の事情は知らないけど、中国は政府が大きな資本を投下しがちなのでそれに対抗するとみればありといえばありなのかもしれない。
( → はてなブックマーク

 しかし、私はこれに対しては否定的に判断する。「これは MRJ の再来だ」と。つまり、こうだ。
 「もともと国際競争力のない駄目産業を振興するために、どれほど多額の国費を投入しても、その国費は無駄に消えるだけだ」

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 なぜか? パナソニックの業績が落ち目なのは、金がないからではない。技術的に圧倒的に劣っているからだ。技術的に劣っている状態で、どれほど多額の国費を投入しても、もともと競争力はないのである。(単に赤字を垂れ流して、最終的には倒産するだけだ。1兆円をドブに捨てるのと同じである。)

 そのことは、次の記事からわかる。ライバルの CATL という世界首位のメーカーが、技術的に断然優れているとわかる。
 CATLの高い技術を裏付けるトピックスとしては、現行品を超える16年間・200万kmの寿命を実現した「超長寿命電池」を開発したことが挙げられます。2020年6月にアナウンスして、大きな話題を呼びました。保証される走行距離は、テスラの「Model S」「Model X」の「8年または24万キロ」の8倍以上となり、すでにテスラが発表しているミリオンマイル電池よりも長寿命です。実は、ミリオンマイル電池もCATLとテスラで共同開発したものですが、CATL単体の開発のほうが、長寿命というのも面白い話です。
 長寿命化は化学材料の配合と生産技術、とりわけ正極/負極/電解液に異なる技術を導入して劣化を抑制することで実現したとのこと。技術的な詳細については発表されていませんが、この超長寿命電池はリン酸鉄リチウムイオン電池(コバルトフリー電池)であると見られています。同社の技術力の高さがうかがえますが、一方で残念ながら日本のメーカーは、車載電池としてのコバルトフリー電池に手を付けておらず(少なくとも目立った発表はない)、超長寿命化のトレンドに乗り遅れてしまう心配もあります。
( → 中国CATLとEV用電池安定調達を図る自動車メーカーの関係を整理してみた | EVsmartブログ

 電池の寿命が圧倒的に長くなれば、電池の再利用が可能となるので、中古車の電池を下取に出すこともできるし、最初から再利用の電池を新車に搭載することもできる。……どっちみち、大幅なコストダウンとなる。こうなると、もはや「電池の値段が問題だ」という EV 特有の難点も消えてしまうことになる。圧倒的に有利になると言えるだろう。
 だから、日産のアリアも、CATL の電池を搭載するそうだ。
  → 日産が世界最大手・中国CATLから初採用、主要自動車メーカー「電池調達」の全貌

 CATL が超長寿命電池を生産するのは、今年の6月から。日産がアリアの生産をするのも、ほぼ同じ頃から。とすると、日産のアリアの生産時期は、 CATL が超長寿命電池を生産する時期によって決まるのかもしれない。その意味で、日産のアリアは CATL の超長寿命電池を搭載しているのかもしれない。(違うかもしれないが。)

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 さて。問題は、このような技術水準の差が生じた理由だ。それは、先の記事に記されている。
 なぜ設立からわずか9年の中国企業が、ここまで急成長できたのでしょうか? …… 同社の強みは、独BMWとの協業を契機にグローバル戦略を強化し、「1000人計画」によって世界中から優秀な若いエンジニアを大量にヘッドハントするなど、最先端の技術開発を進めていることが大きいようです。
( → 中国CATLとEV用電池安定調達を図る自動車メーカーの関係を整理してみた | EVsmartブログ

 要するに、高給を払って、最優秀の人材を集めることが、大躍進の理由であるようだ。

 このことをより詳しく調べようと思って、ネットを検索してみたら、唯一の情報は、下記だけだった。
  → CATL(世界一の電池会社): Open ブログ(2018年05月26日)

 3年近く前の記事だ。この時点ですでに、「 CATL は高給で人材を引っこ抜いている」という本質を示した記事を書いていたわけだ。
 該当箇所の出典記事を再掲載しよう。
 《 中国CATL、EV電池首位疾走 世界から技術者 》
 CATLはボッシュや独コンチネンタル、仏ヴァレオなど世界の部品大手から技術者を大量にスカウトして他社に差をつけ、足場を固めた。関係者は「ボッシュ出身者だけで20人いる」と話す。
 さらに中国政府と組み、海外で活躍する超一流の技術者を高待遇で中国に迎え入れる
 独BMWの高級多目的スポーツ車(SUV)への供給を通じ、BMWから電池技術を吸収できたことも成長に弾みをつけた。
( → 日本経済新聞

 やはり、世界中の最優秀の技術者を高給で招いたことが理由だと言える。
 ひるがえって、パナソニックの技術者は、たいして高給をもらえるわけでもないし、技術者奴隷のような状況だ。
 総合職の年収は900万円〜1200万円、一般職が600万円〜900万円、技術職が600万円〜900万円と伺えます。
 主任になると700万円〜850万円、係長になると800万円〜1000万円、課長になると900万円〜1200万円、部長になると1200万円〜1500万円とかなりの高収入が期待できます。
( → パナソニックの年収【2021年最新版】出世するといくら貰える?ボーナスは?パナソニックの年収事情を徹底調査 - 年収ランキング

Q パナソニックの理系技術者(院卒)の年収って30代でどれくらいですか??

A パナソニックではないですが、同業、規模が酷似しています。
理系院卒なら670万円程度でしょう。
部署にもよりますが。。。
  30歳 600万円
  35歳 670万円
  40歳 740万円
大体この程度で間違いないでしょう。
( → Yahoo!知恵袋

 あくまで肩書きで給料が決まるらしい。どんなに優秀な技術者でも、肩書きが付かないと、文系の係長よりも安月給であるわけだ。東大の大学院卒で、世界レベルの研究をして、会社に数千億円の利益をもたらしても、日大卒の係長には及ばないわけだ。
 他社と比較しても、自動車会社よりもはるかに安月給だ。米国のIT企業とは雲泥の差だし、韓国のサムスンに比べても大幅に負けている。
 平均年収が最も高いのはサムスン電子で1億200万ウォン(約1100万円)だった。
( → 韓国大手企業の社員平均年収 サムスン電子がトップ | 聯合ニュース

 サムスンは、国内最高の給料を払うことで、国内の最優秀の技術者をたくさん集めている。そのことで抜群の競争力を誇る。
 CATL も、同じ戦略を取る。
 一方、パナソニックは、安月給で、国内でも自動車会社のはるか後塵を拝する。こんな会社に、まともな研究者が来るはずがないね。

 ――

 結論。

 CATL が急成長をしているのは、技術力が世界的に最高レベルにあるからだ。その理由は、世界中から最優秀の技術者を集めているからだ。それができるのは、「優秀な人材に高額の給料を払う」という経営方針を取っているからだ。
 一方、パナソニックは「技術者には安い給料を払う」という経営方針を取っている。だから技術の進歩がなくて、世界的には他社に大幅に負けてしまう。
 CATL とパナソニックの差は、技術力の差だが、それは経営の差から来ている。こういう馬鹿げた経営を改めない限り、たとえ1兆円もの国費をつぎこんでも、ドブに金を捨てるのと同じことにしかならない。
 国の金をつぎこんで無駄に捨てるのは、MRJ の再来と言えるだろう。企業経営者が馬鹿なら、こういう馬鹿に金を与える国はもっと馬鹿だと言えるだろう。

posted by 管理人 at 20:55| Comment(2) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
太陽光発電を国費で盛り上げようとしたのも失敗しましたね。こういう血税を無駄にした人に責任を取らせたいと思うのですが、どうしようもないんですかね。国会議員の選挙?でしょうか。
Posted by 横レス at 2021年02月08日 23:32
 太陽光発電の件では、与党も野党も総崩れなので、政治的には対抗馬は少ない。

 批判するんだったら、本サイトが当時( 2011年)の数年前から指摘していたので、本サイトで「太陽光発電・風力」というカテゴリを見るとわかる。
 たとえば、下記記事。
  → http://openblog.seesaa.net/article/435847124.html
Posted by 管理人 at 2021年02月09日 00:12
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