【 改訂 】 記述を一部改訂しました。「1フロアを丸ごと空室にしておく」という方式に改めました。(本質的な違いはないので、特に読み直さなくても大丈夫です。細かいところが気になる人だけ、読み直してください。)
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宿泊療養施設が不足している、と前項で示した。そこでは、「原因はたぶん(担当者の)人手不足だろう」と推察した。
しかしコメント欄で教えてもらったが、理由は別のところにあるそうだ。
宿泊療養施設 使用率が3割にとどまっている
宿泊療養先の使用率が3割程度にとどまっていることが各自治体への取材でわかりました。
このうち、東京都では宿泊療養先として11施設、合わせて2630室を確保していますが17日の時点で実際に宿泊療養しているのは831人で、使用率は32%にとどまっています。
フロアの患者全員が退所するのを待って消毒と清掃
大きな要因となっているのが部屋の消毒・清掃で、患者が療養を終えた部屋ごとではなく、1つのフロアの患者全員が退所するのを待って消毒と清掃を行っているということです。
( → “入院か自宅か調整つかず” 東京で13倍も療養先使用率は3割 | 新型コロナウイルス | NHKニュース )
使用率が3割とは、まったく無駄なことである。もうちょっと頭を働かせてもらいたいものだ。
そもそも、「1つのフロアの患者全員が退所するのを待って消毒と清掃」というのでは、2週間以上も清掃しないことになる。不潔ですね。
どうせなら、(清掃の目的も含めて)4〜5日ごとに転室させればいい。そのとき、場所を詰めて、1フロアを丸ごと空室にすればいい。
( ※ 前項のコメント欄ではこれを「デフラグのように」と表現した人もいる。なるほど。)
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1フロアを丸ごと空室にする手順は、次の通り。
例示しよう。建物が5階建てだとして、次の順で、1フロアを丸ごと空室にする。(数字は階数)
1F → 2F → 3F → 4F → 5F
では、1Fを丸ごと空室にするとき、どのように転室させるか? 1Fの患者をすべて 5F に転室させればいい。5F に入りきれずにあぶれたら、あぶれる分を 5F から 4F に転室させればいい。(それでもあぶれるがあれば、3F に転室させればいい。)
そう思ったのだが、あぶれる患者が出ると、移転先で(未清掃のままの部屋で)感染する危険がある。そこで、これを避けるために、次のようにする。
「移転先となるフロアは、丸ごと1フロアを空けておく」
具体的には、次のようにする。
「新規患者を受け付けるときには、1階から順に埋めていく。4階まで埋めたところで、5階を1フロア丸ごとあけておく。この状態で満員状態と見なす」
この場合、1F〜4Fには患者がいるが5Fには患者がいない。この状態で、5Fを清掃しておく。
1回目の転室では、1Fの患者を5F(すべて空いている)に移転させる。すると、1Fがすべて空くので、この状態で1Fを清掃する。
そのN日後に、2回目の転室が起こる。今度は、2F の患者をすべて 1F に転室させればいい。すると、2Fがすべて空くので、この状態で2Fを清掃する
※ N は、1または2ぐらいが妥当だろう。
以下、同様にして、N日ごとに、次々と転室をさせればいい。
次のようにする。
(1) 1Fの患者を 5F に移す。
(2) 2Fの患者を 1F に移す。
(3) 3Fの患者を 2F に移す。
(4) 4Fの患者を 3F に移す。
(5) 5Fの患者を 4F に移す。
この (1)〜(5) を、ローテーションで繰り返せばいい。
Nが1なら5日ごとにローテーションが来る。
Nが2なら10日ごとにローテーションが来る。
ローテーションが来るたびに、患者は転室を迫られる。
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こうすれば、入居率は最大で 80%となりそうだ。(5フロアの場合には、1フロアがつぶれるので、5分の4しか使えない。)
実際にはどうか? 途中で空室が増えるはずだ。なぜなら、症状悪化で重症化して、病院に入院するため、施設を退所する人が出てくるからだ。退所した人が増えれば、空室も増えそうだ。だから実際には、80%という稼働にはなりにくいだろう。(現実的には、最善でも 70%ぐらいの稼働になりそうだ。それでも現状の 30%程度よりはずっといい。)
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さて。患者の症状はさまざまで、感染初期の人もいれば、退所間近で無症状になった人もいる。一方で、症状悪化のピークになっている人もいる。これらの人々をごちゃ混ぜにするのは、都合が悪い。
そこで、患者を発症日ごとにグループ分けして、同じグループ内では発症後の日数をほぼ同じになるようにそろえる。そして、同じグループごとにまとめて同じフロアに割り当てたい。
具体的には、こうするといい。
発症からの日数を 14〜16日程度と見なす。その日数を、使えるフロア数(= 建物の階数 マイナス 1)で割った数を、1グループの日数とする。
例。建物の階数は5。使えるフロア数が4。グループ数も4。日数は(4の倍数の)16。すると、割り算して、1グループは4日となる。そこで、発症日ごとのグループは、4日ごとにまとめて、次の5種類とする。(発症日からの日数)
・ 1〜4
・ 5〜8
・ 9〜12
・ 13〜*(上限なし)
同じグループごとに同じフロアを与える。転室したあとも、同じグループが保たれる。
なお、途中退所の人が増えて、空室が多くなったら、グループごとに空室のバラツキが出る。そうなったら、グループ分けの基準をいくらか変えてもいい。上記の区分は、あくまで目安であって、絶対的なものではない。
《 注記 》
「発症からの日数を 14〜16日程度と見なす」と述べたが、その理由は、次のことによる。
→ 新型コロナ患者の退院基準を再度見直し、「発症から10日経過かつ症状軽快から72時間経過」に短縮―厚労省
72時間は3日間。10日と3日の合計は 13日間。現実には、10日目で双方を満たす人も出てくるので、早ければ 10日目には退所する人が出てくる。といっても、現実にはそれほど早い人は少ないだろうから、標準的には「発症からの日数を 14〜16日程度と見なす」と考えるのが妥当だろう。そこで、上のように日数を想定した。
※ ただし、日数はあくまで目安だから、現実には区分けを柔軟に変えていい。この区分けを、AI を使って最適化すると、稼働率を限りなく 80%に近づけることができるだろう。(最適配分の問題だ。)
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1フロアを丸ごと空室にするための転室は、半強制的になされるが、これを「やだよ」とイヤがる患者もいそうだ。しかしこの件については、すでに次の記述がある。
新型コロナウイルスの感染拡大に際し、患者さんへの適切な感染対策を行うため、入院された後に他の病棟・病室への移動をお願いする場合があります。
( → 入院予定の患者さん・ご家族の皆さまへ(転棟・転室について)|お知らせ|がん研有明病院 )
要するに、この条件を最初に示しておけばいい。「消毒のための転室」という条件を受けれることができない患者は、もともと入所できないことにすればいい。
[ 付記 ]
HDD のデフラグみたいにするとしたら、「空室ができるたびに、下層階に移転する」というふうになるので、「毎日転室する」という義務が発生する。しかし、毎日転室するのは、患者の負担が大きい。
そこで、「5日間に1ぺんの転室」で済むようにしたのが、本項の案だ。これだと、空室がいくらか多めになるが、患者の負担が少なくて済むので、こちらの方がベターだろう。
(2) 2Fの患者を 1F に移す。(あぶれたら5Fに)
(3) 3Fの患者を 2F に移す。(あぶれたら1Fに)
(4) 4Fの患者を 3F に移す。(あぶれたら2Fに)
(5) 5Fの患者を 4F に移す。(あぶれたら3Fに)
ふと思ったのですが、
清掃・消毒は、部屋が空くたびではなくフロア単位で行っているので
あふれると未清掃・未消毒の退所者の部屋に移ることになるように思います。
そうか。なるほど。
それへの対策としては、次のようにするとよさそうだ。
「移動用のフロアとして、1フロアを常にあけておく」
本文の例で言えば、5階建てでなく6階建てにする(1フロアを追加)。
もともと6Fを1フロア丸ごと空けておく。1Fを明けるときには、1Fに残った少数の患者を、6Fに移す。これなら、あぶれない。
この場合、稼働率は最大でも6分の5にしかならないが、現状よりはずっとマシだろう。
※ 6階建てならば6分の5だが、5階建てならば5分の4となる。
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あとで本文を書き換えておきます。
→ 新型コロナ患者の退院基準を見直し、「発症から14日経過かつ症状軽快から72時間経過」で退院可能―厚労省(https://gemmed.ghc-j.com/?p=34196)
⇒ 追加記事をありがとうございます。本稿の趣旨(本質)には影響を与えませんが、いまの退院・退所(療養解除)は、上のリンクの記事から2週間で改められました(下のリンクの記事)。現在はこれで運用されています。
「発症日から14日間経過し、かつ、症状軽快から72時間経過した場合に退院可能」としてきたが、最新の知見を踏まえて、「発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快から72時間経過した場合に退院可能」と改める―。(引用終わり)
なお、無症状陽性者の場合は、「検体採取日から10日間経過した場合、退院可能」です。
https://gemmed.ghc-j.com/?p=34428
記述を一部改訂しました。「1フロアを丸ごと空室にしておく」という方式に改めました。(本質的な違いはないので、特に読み直さなくても大丈夫です。細かいところが気になる人だけ、読み直してください。)
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単純脳 さん、かわっこだっこ さん、ご指摘ありがとうございます。