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具体的な例は、下記にある。
感染判明は昨年11月。「今ならええんちゃうか」とゴルフコンペを開き、友人17人で宴会をした。翌日から次々と感染が分かり、自らを含めて感染者は計8人。「まさか自分がなるとは」
( → 「死んでたかも」、伝える覚悟 元コロナ患者の男性、闘病体験つづる:朝日新聞 )
「宴会ぐらいで感染するはずがない」と思って出席したが、感染して、「まさか」と思っているわけだ。はたから見ると、「呆れて物が言えない」というところだが、本人はあくまで楽観していたわけだ。そのあげく、死にかけて、さんざん後悔することになる。
朝から昼まで39度台の高熱。息を吸える量が減り、「過呼吸のような、陸でおぼれているような」状態に。手足を動かすのも難しくなり、トイレは車いすに酸素ボンベをつけて行った。「途中で呼吸が止まるんじゃ」と、夜は不安で眠れなかった。
(退院後は)再び緊急事態宣言が出た。医療現場の逼迫(ひっぱく)状況に胸を痛める。「自分がかかったのが今だったら、入院できずに死んでいたかもしれない」。
これは本人が感染した例だが、他人に感染させた例もある。
コロナに感染した息子が、実家に帰省して、家族で一緒に食事をした。すると、高齢の親がコロナに感染して、とうとう死んでしまった。息子は「おれが帰省したせいで親を殺してしまった」と激しく悔いたそうだ。
→ https://togetter.com/li/1658397
その一方で、会食ではない一人の食事が「けしからん」と非難されることもあるそうだ。「食堂で食事をすると、会食しなくても、危険だ。やめろ」というふうに。
→ 飲食店に行くのは罪なのだろうか
これは、楽観視するのとは逆の方向で、過剰に危険視していることになる。アクセルの踏みすぎとは逆に、ブレーキの踏みすぎだ。
その一方で、政府や都県は、「営業時間の短縮」という措置を取っている。これは、結果的には「会食の制限」という効果を(ある程度は)もたらしているが、方向がズレているので、正しい措置とは言えない。
・ 午後8時よりも前の会食が野放しである。 (制限不足だ)
・ 午後8時以後の一人食事まで禁じている。 (制限過剰だ)
以上のように、会食の是非について、正しく認識できていない人が多い。(政府や都県もそうだ。)
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そこで、「会食は危険だ」ということの理由を説明しよう。こうだ。
会食をすると、ウイルスを含んだ飛沫を飛ばす。それが、相手の食べ物に付着する。これはつまり、ウイルスをばらまいて、相手の食べ物に付着させてから、相手に食べさせる、ということだ。……これなら、簡単に感染するわけだ。
《 加筆 》
同様のことを、私も実験した。
十分に加湿された室内で、「はあ」という感じで軽く溜息をつくと、その呼気は約 70〜80cm 先まで届くのが確認された。(呼気が白い霧のようになるので可視化された。)
別に呼気を飛ばすつもりはなく、単に溜息のような軽い息を吐くだけで、それほど先にも飛んでいくのだ。
そして、その下に料理があれば、そこに飛沫が落ちるわけだ。
* *
こうして物事の本質が示された。
会食が危険なのは、単に「密」であることや、「会話をすること」や、「マスクをしないこと」などが理由なのではない。会食の場合には、ウイルスの付着した食べ物を経口摂取する。そこに危険性の理由があるわけだ。
比喩的に言えば、毒物があるとして、そばの空気に毒物を噴霧したからといって、必ずしも死ぬわけではない。だが、毒物を経口で摂取すると、きわめて危険性が高い。特に、毒物を食べ物に振りかけたりしたら、その食べ物を口に入れることで死ぬ危険性が高い。
会食が危険だというのは、そういうことが理由なのだ。
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なのに、小池都知事は、それを理解できない。そのせいで「営業時間の短縮」にばかりこだわって、「会食の禁止」を打ち出さない。
政府も、小池都知事の方針にならって、「営業停止」をやるばかりで、「会食の禁止」を打ち出さない。
菅首相に至っては、自分自身で会食をやる始末だ。
→ 菅首相、ステーキ会食でマスクせず:東京新聞
他にも例はある。
→ 2議員、緊急事態宣言下の夜に東京・銀座のクラブに:朝日新聞
→ 12人がコロナ感染 二階派“秘書軍団”が「和歌山カラオケバー会食」 | 文春
→ 橋下徹氏、(一定条件下での)「会食は当然認められる」
こうして、コロナのウイルスをばらまかれた食事を食べて、どんどん感染していくのである。
そして、政府は「会食禁止」を打ち出さないままなので、感染はなかなか収束しないのだ。
[ 付記 ]
「若ければコロナに感染しない」と思っている人が多いようだが、現実はそんなに甘くない。アメリカの例だが、次の報告がある。著者の娘の話。
(私が勤務している病院のICUでは)COVID-19が悪化していったん人工呼吸器を繋がれたら、そこから回復する人はあまりいない。
なかには20代の健康な男性もいた。糖尿病を罹患している人や高齢者だけではない。彼らの回復が望めなくなり、人工呼吸器を外すときには、私たち医師が家族に話をしなければならない。それは、本当につらい。
( → 新型コロナウイルスのワクチンを接種した救急医の娘が語った本音|アメリカはいつも夢見ている|渡辺由佳里|cakes(ケイクス) )
20代の健康な男性でさえ、重症化して、人工呼吸器を付けて、それでも効果が虚しいまま、「治療終了」となって、人工呼吸士を外されてしまうことがあるわけだ。(呼吸停止)
それらは生きている
口のなかにウイルスが入るだけで、口腔内の粘膜にウイルスが付着します。
それどころか、経口摂取しなくとも、相手の呼気の届いた自分の皿に、手指で触れるだけでも、感染します。(だから手洗いが重視されます。)
手指で触れるだけでも感染するのに、(経口で)口のなかにウイルスを直接たくさん含んだら、どうなるか? ちょっと考えればわかるでしょう。
呼気が可視化される、という話です。
まあ、そうまでして会食する必要はありませんね。
これを広めてしまうと、『じゃあ、酒で頻繁に流し込んでも同じだろう?みんなで飲み会やってる最中も、とにかく飲み続ければ大丈夫!』と屁理屈こねる馬鹿者が現れるだけなので、かえって逆効果ですね。
については、下記を参照。
>> 気管支の部分の表面には線毛という部分があって、これがウイルスのような異物をどんどん上方に運んで、体外に排出させているそうだ。ただしその機能は、湿度が下がると急激に低下してしまうという。
http://openblog.seesaa.net/article/479448190.html