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日本の技術水準そのものは、世界的に見ても高い。米国や欧州に並ぶし、大幅に劣っているとは言えない。
しかるに、技術者がいくら最新の技術を開発しても、権力者がそれをつぶしてしまうのだ。技術に対する理解がないがゆえに。
(1) レーダー
たとえば、八木アンテナの技術を理解できないまま、レーダーを開発しなかった、という例がある。これが、軍における日本の兵站の不足を招いた。
なぜか? レーダーがないので、日本の輸送船は敵の潜水艦にことごとく撃沈されてしまったからだ。仮にレーダーがあれば、敵の潜水艦の望遠鏡を見つけることができるんで、敵の潜水艦は近づくことができなくなり、日本の輸送船はこうもあっさりと餌食になることはなかっただろう。
また、そもそも、レーダーがあれば、戦いの分岐点となるミッドウェー海戦で、かくもひどい惨敗をしないで済んだだろう。ミッドウェー海戦の惨敗のあとでは、日本は「一発逆転」を狙うような無理な戦いをせざるを得なくなり、その無理がたたって、次々と敗北を繰り返すようになった。
※ ミッドウェー海戦の敗北の理由については、さまざまな説がある。だが、最も重要なのは、レーダーの有無である。日本軍にはレーダーがなく、米軍にはレーダーがあった。これは、「片方は目が見えず、片方は目が見える」という状態で戦うのと同様である。日本軍は奇襲攻撃を仕掛けたが、そのすべては敵に丸見えであって、あとは飛んで火に入る夏の虫となるだけだった。
→ ミッドウェー海戦は、日本人が生んだ技術に日本が敗けた戦いだった| 講談社
戦争においてはハイテク技術の有無が勝敗を分ける、としばしば言われる。そのなかでも、レーダー技術の有無は、最も極端に差をもたらしたと言えるだろう。
そして、そのハイテク技術の有無をもたらしたのは、技術水準の差ではなかった。技術水準では、八木アンテナを開発した日本の方が上だったとも言える。しかしその技術を、日本は自分で(意図的に)つぶした。一方、欧米は日本の技術を取り込んで、生かした。それが彼我の差を生んだ。
先進各国では八木の指向性アンテナの原理を応用し、着々とレーダーの開発を急いでいた。ところが、日本政府はその重要性をまったく理解できず、太平洋戦争に突入した後も、「敵を前にして電波を出すなど、闇夜に提灯を灯して自分の位置を敵に教えるようなものだ。真珠湾攻撃以来、奇襲戦を本領とする我が日本軍には必要ない!」と、まるで相手にしようとしなかった。
( → COBS ONLINE:20世紀の発明品カタログ 第4回 「世界の屋根に君臨する、八木アンテナ」 )
技術者がいくら優れていても、その技術者を生かせないのが、日本の上層部なのだ。
(2) 電子産業
日本の家電産業や半導体産業が衰退したのも、また同じである。日本の電子産業は、技術者を優遇するどころか、賃下げで冷遇したあげく、リストラで追い出した。そうした技術者を吸い上げて、世界トップレベルの会社にまで成長したのが、サムスンだ。サムスンは、技術者をとても優遇することで、最優秀の人材を取り込んで、会社そのものを世界トップレベルに引き上げた。……経営者の違いが、これほどの差をもたらしたわけだ。
(3) 官庁の情報機器
似た例だが、次のこともある。
→ 起動に5分以上、右クリックに30秒…劣悪すぎる公務員のパソコン環境をなんとかして欲しいという現場の声 - Togetter
官庁のパソコンがあまりにも古いので、大幅に能率低下を起こしているそうだ。
電子機械のコストを、年額換算で1万円ほど削減する。「これで1万円を背着したぞ」というつもりだろう。
しかし同時に、能率が大幅に悪化するから、人件費換算で、年額200万円ぐらい損をしている計算になる。
( ※ 払う給料が1人 400万円だとしたら、管理費や施設費を込みで、経費は1人 600万円はかかる。それで能率が 33%低下したら、200万円の損となる。通常、その分、人員を増やす必要が生じる。)
どう考えても大幅に損をしているのだが、上層部はそれを理解できないから、「経費削減」という名目で、古いパソコンを使い続ける。「1万円を節約して、200万円の人件費増」になっているのだが、機械の経費ばかりを見るから、それで得したつもりになるのだろう。
こんなことも理解できないで「行革を」なんて言っているんだから、無能にもほどがある。河野太郎・行革相は、まずは政府のパソコンをすべて最新版のデスクトップに置き換えて、同時に、人員を大幅に削減するべきだろう。
( ※ なお、ノートパソコンよりはデスクトップパソコンの方が圧倒的によい。私物のパソコンを使うことを禁じる職場が多いのだから、だったらデスクトップに統一するべきだ。外出時の持ち出しには、それ専用のノートパソコンを貸し出せばいい。)
(4) 学校でIT機器の利用制限
学校では、デジタル機器の端末が1人1台、配布されるようになったそうだ。コロナの感染防止のためにリモート授業などをするため、という名目だが、IT機器の配布をしていないのはアジアでは日本だけ、というほど、配布が遅れていることもある。(東南アジア諸国よりも大幅に劣っているそうだ。文明国では最低水準らしい。)
とはいえ、問題があるそうだ。
→ iPad届いたのに制限だらけ 学校間で広がるIT格差:朝日新聞
→ 小中学生に情報端末配備、現場の課題は 「GIGAスクール構想」前倒し、教員ら座談会:朝日新聞
記事によれば、使われる機器は、iPad、Android、ChromeBook、Windows10 PC(ノート型)など。
ただし、ソフトを使おうにも、強い制限がかかって、ソフトを使えないことが多いそうだ。Officeソフト、Gメール、MS OneDrive など、主要なソフトが使えないことが多い。Appストアのアプリをインストールしたくても、それも駄目。生徒同士でファイルの共有をしたくても、できない設定になっていることもある。とにかく、あれも駄目、これも駄目、ちょっとでも危険そうに見えるものがあればすべて駄目、という具合。
だから、何もできなくなって、教育用途には何も使わない。家で YouTube を見ることに使うだけ、ということもある。しかしそれはまだマシな部類だ。場合によっては、機械がまとめて用具室に置かれて、利用できないまま、ということもあるそうだ。そこにある機械を取り出して、教室に持ってくると、パソコンが起動するだけで時間が過ぎてしまって、使える時間はほとんどない、というありさまだ。場合によっては、コンセントの電力不足で、起動すらできないこともあるそうだ。
「それでもとにかく端末を配布しただけでもマシだ。端末の配布を決めた文科省や学校を批判するべきではない」という大甘の感想を出す人が多い。特に、はてなブックマークではそうだ。
→ はてなブックマーク
しかしそれは、記事を読んでいないからだろう。記事の全文を読めばわかるが、文科省や学校が制限をかけているのではない。地域の教育委員会が勝手に制限をかけているのだ。
教育において、圧倒的に強大な権限を有するのは教育委員会であって、教育委員会がバカだから、馬鹿げた制限を学校に強いるのだ。「情報漏洩の危険があるようなソフトはすべて制限すべし」というふうに。
だから学校は、加害者ではなく、被害者だ。
ここでは、「制限をした学校を批判するべきではない」などと(見当違いな)擁護するべきではない。「制限をしたのは教育委員会だ」と正しく認識した上で、「学校や生徒は被害者なのだから、学校や生徒を被害から救うために、教育委員会を何とかしろ」というふうに批判するべきなのだ。
ここを理解しないと、何が問題なのかも、わからないことになる。
なお、記事によれば、特に制限もなく、パソコンをほぼ自由に使えている地域もあるそうだ。それは、教育委員会がまともだからだろう。それがあるべき姿なのだから、そういう状況を推進するべきなのだ。
[ 付記 ]
お馬鹿な教育委員会のために、「正しくはどうすればいいか」を示しておこう。
子供向けの端末の利用制限は、教育委員会がいちいち指定しなくても、メーカーがきちんと方法を示している。だから、それを利用するだけでいい。具体的には、下記だ。
Windows10 は
→ Windows 10 でペアレンタル コントロールを設定する方法
iPad は
→ お子様の iPhone、iPad、iPod touch でペアレンタルコントロールを使う
Android は
→ 保護者向け Google ファミリー リンク - Google Play のアプリ
→ 解説
ChromeBook は
→ Chromebook で使用するお子様のアカウントを管理する
これで危険性を排除できる。(エロゲなどは見られなくなる。変な課金もできなくなる。というか、もともと端末にクレカ入力なんかをしなければいいだけだが。)
[ 参考 ]
ちょっと似た話だが、昨年のカー・オブ・ザ・イヤーを取ったスバル・レヴォーグは、燃費がものすごく悪くて、BMW3 の倍ぐらいの燃料を食うそうだ。「ドライバー」という自動車雑誌の最新号に書いてある。
これもまた、目先の性能に目を奪われて、トータルの経費が大幅に増加することに気づいていないわけだ。得したつもりで、大損している。
専門家でさえ、こういうのに引っかかる。
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別の話だが、旧日本軍は、日本の紫暗号について、「理論的に解読不可能だから、解読されるはずがない」と信じ込んでいた。
→ Wikipedia
ここにもまた、上層部の「技術音痴」ぶりが見て取れる。レーダーだけでなく、暗号技術についても、「素人の勘違い」で軍事知識そのものをねじ曲げてしまったのだ。その無知と過信はあきれるほどだ。(…… 菅首相にはしっかりと引き継がれているが。)
[ 余談 ]
「ハイテク技術と戦争」という件では、戦車の話がある。
(1) 第1次大戦で初めて出現した戦車は、使い物にならないほど未熟なものだった。しかし、それを見た敵の歩兵は、まるでゴジラでも見たかのような恐怖にとらわれ、パニックに陥ったそうだ。
実際、塹壕を乗り越える戦車は、それまでの「塹壕と有刺鉄線」という戦い方を一挙に無効化させるものだった。ものすごい最新技術だったと言える。
それを知って、世界の先進国の各国は、自国でも戦車の開発を進めることになった。
しかし、そうなると、もはや「塹壕と有刺鉄線」という戦い方を誰もやらなくなった。戦争の仕方そのものが変わってしまった。
→ 戦車誕生の背景「塹壕戦」どんな戦いか 日露激戦 WW1西部戦線 そして戦車登場の衝撃
(2) のちに、第二次大戦でフランスとドイツの戦車が戦ったとき、フランスの戦車は量的に圧倒的に優位に立っていた。質的にも優位だった。しかし実際に戦うと、なぜかドイツの戦車が優勢になった。
どうしてか? 戦車自体に理由があったのではなく、無線装置の有無に理由があった。ドイツの戦車には無線装置があったから、たがいに連携して動けた。フランスの戦車には無線装置がなかったから、それぞれが孤立して動くばかりだった。連携するときには旗信号を使うしかなかったが、そんなことでは不十分だったから、結果的には不利になった。
→ 先進国だったはずなのに…WW2緒戦フランス戦車はドイツ戦車になぜ大敗北を喫した?
上の (1)(2) は、いずれもハイテク技術が勝敗を分けた、というような話だ。
野党の党首がゼロコロナなんて言ってるもんな
・国家公務員上級職の試験に数学III相当の問題を入れる
・不必要に能力の高い理系学生を吸収している歯医者の資格を専門学校レベルにして、高収入を止める
あと、財務省の官僚は、数学能力もかなりある東大法学部卒が多いので、学力の点では申し分ないのだが、まともな判断ができない人が多い。目先や局所にとらわれ、総合的なバランス感覚がない。
広い視野を持つことが最も重要なのだが、それができる人材が出世できないシステムに問題があるのかも。
今目の前の状況が理解できない、こいつらロボットかと何回もおもった。今コロナでおかしくなってるのも政治家だけじゃなく役人のせいもある。
それを解決するなら簡単。
公務員が無能な原因って職場がぬるま湯だから。
民間企業並み厳しくすれば無能な人員をふるい落とし人員削減出来る。
我々納税者こそ政治家公務員どもの上司や社長や株主なのだから奴らにもっと厳しく声を上げてやれば世論も動くししっかりと改革を迫るべき。