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(1) 救急医療の崩壊
コロナの医療が崩壊しているだけでなく、(コロナ患者以外の)救急医療も崩壊しつつあるようだ。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、救急車を呼んでも搬送先の病院がなかなか決まらない事例が急増している。総務省消防庁の集計によると、全国主要都市の52消防本部では今月17日までの1週間の件数が、昨年12月初旬の1週間と比べて2倍超になっている。
( → 救急、決まらぬ搬送先 「困難」件数、先月の2.3倍:朝日新聞 )
以前ならば単に「医療崩壊」と呼ばれた事象。それが、特定地域で起こるだけでなく、あちこちで起こっているようだ。
「コロナで死ぬのは、病人と高齢者だけさ」
とうそぶいていると、そういう人が事故や急病で死んでしまうこともありそうだ。本来ならば助かったはずなのに、コロナのせいで病院が手薄になっているからだ。
もはやコロナは誰にとっても他人事ではない。「コロナなんて、たいしたことはないさ。インフルエンザと同様さ」なんて言っていると、天に向かって吐いた唾が自分の顔に落ちるかもしれない。
(2) 看護師の不足
医療崩壊というと、ベッド数の不足が話題となることが多いが、これはホテルを軽症者向けに使うことで、ある程度は解消できる。(前出)
しかし、医療人員の不足は、あっさりとは解決しない。特に、看護師の不足が深刻だ。
新型コロナウイルスの感染者が急増する中、患者のケアにあたる看護師の負担は重くなるばかりだ。
ICUのマンパワー不足は深刻だ。 同僚の看護師は「特殊な機器が多く、一般病棟から応援に来てもすぐには対応できない」と話す。初めはフォローが必要で、機器の扱いに慣れたところで応援期間が終わってしまう。
新型コロナの重症患者は、全国で900人を超え、この2カ月で4倍近くに増えた。受け入れる病床の確保が急務だが、看護師不足が大きなハードルになっている。
( → (新型コロナ)看護師、心労もう限界 ICU激務「1人で泣いてしまう」:朝日新聞 )
看護師の不足の解決策については、前にも述べた。「給料が安すぎるから、休業中の看護師が応募してくれない。給料を大幅に上げろ」と。
→ 新型コロナウイルスの話題 29: Open ブログ
それ以外にも、次の方法を取れそうだ。
「上の記事のように、他の診療科から応援看護師を受け入れる。その一方で、他の診療科には、新人看護士や休業中の看護師を導入する」
これは、玉突き式の手法だ。
非熟練の看護師 → 他の診療科の看護師 → コロナの看護師
というふうに、玉突き式で移動することで、コロナの看護師を増やすわけだ。
この場合、コロナの看護師を直接的に新規雇用するわけではないから、新たな看護師を導入しやすい。
(3) 兵站(へいたん)の重要性
ともあれ、コロナとの戦いでは、兵站(≒ 人員・物資)の問題を解決することが最重要だと言える。ところが、それを軽視するのが、日本軍の伝統的な欠陥だ。
→ 素人は「戦略」を語り、プロは「兵站」を語る:日経
今回の戦いでも、菅首相は兵站の重要性をまったく理解できていない。かわりに「罰則の導入」が最も有効だと考えている。彼は普段から、「言うことを聞かない奴はクビにする」という処罰が最も有効な人心掌握術だと思い込んでいる。
まったく、頭の悪い指導者というのは、度しがたいものだ。かくて、兵站の重要性を理解できない軍は、敗北に向かってまっしぐらだ。
※ ガダルカナルでも同様だった。空母や巡洋艦ばかりを追いかけて、肝心の輸送船を破壊しようとしなかった。「敵の兵站を破壊することこそ、勝利への道だ」ということを理解できなかった。自分の兵站の重要性を理解できないと、敵の兵站の重要性も理解できない。愚かな司令部というのは、そういうものだ。
→ ガダルカナルとコロナ: Open ブログ
(4) ワクチン接種の人員
ワクチン接種の人員が不足することが懸念されている。日本人の半数に接種するとしても、6千万人にも接種することになるが、そのための人員(医師・看護師)の手当てが大変だからだ。
接種希望者を会場に一度に集める集団接種になることも見込まれている。
だが感染が拡大し、「第3波」の収束の兆しが見えない中、「3密」を避けながら接種を進めることは簡単ではない。すでに、感染者や患者に対応する自治体や医療現場ではマンパワーの不足が指摘されている。接種は数カ月に及ぶとみられ、医師や看護師らを十分に配置できるのか、自治体からは不安の声もあがる。
医療従事者や高齢者ら優先接種の対象者だけで約5千万人にのぼる。
( → 河野氏、政権の命運握るワクチン担当 遅れ回避なるか:朝日新聞 )
ただでさえ医療崩壊で不足しているのに、ワクチンの接種に人員を割くとなると、そのための大量の人員をとうてい確保できそうにない。そうなったら、ワクチンの接種は進まない。
のみならず、ワクチンの接種に人員を奪われると、肝心のコロナの治療の人員を奪われてしまって、コロナの医療崩壊がますますひどくなる。救急医療の医療崩壊もひどくなる。
「俺は若いからコロナには感染しないさ。それに、そのうちワクチンを打ってもらえるから、大丈夫さ」
なんて思っていると、「人員不足」のせいでワクチンを打ってもらえないままとなり、そのせいでコロナに感染する……ということも起こりそうだ。 ここでも、兵站について無計画な政府の欠陥が露呈している。
※ 河野太郎・ワクチン担当大臣がどこまでやるかが問題だ。彼は最近、NHK の記事について誤認したツイートを書いて、世間の批判を浴びている。仕事の第一歩が、事実誤認で批判されることだったのだ。これでは、先が思いやられる。河野大臣のおかげで、ワクチン対策が進むどころか、混迷しかねない。
(5) ワクチンに学徒動員
では、どうすればいい? そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「6000万人へのワクチン接種には、医学生や看護学校生を導入する。どうせ将来的には、自分でも注射をするようになるのだから、その訓練も兼ねて、6000万人に注射させる」
なお、注射が下手な学生もいるから、「全員必須」という形にはしない。試験で選抜して、注射の上手な人(器用な人)だけを選び出せばいい。
なお、注射の訓練は、最初は人形を相手に注射して、その次は仲間同士で注射しあう。実戦には出ないような新人は、自分では注射をしないで、注射の訓練をされる側(針で刺される側)だけを担当すればいい。
《 加筆 》
コメント欄に詳しい注記があります。下記の箇所。
> Posted by かわっこだっこ at 2021年01月21日 11:11
(6) ワクチンの正式契約
日本政府はファイザーとの正式契約を、ようやく結んだ。
→ ワクチン 米製薬大手ファイザーと契約を正式締結と発表 厚労相 |NHK
欧米各国では、すでに大量の人々にワクチン接種が進んでいるというのに、日本では今になって正式契約だ。そもそも、「日本で独自の治験をしてからでないと認めない」というのも、あまりにも馬鹿げている。
治験をしてから「OK」ということになるのなら、あえて独自の治験をする必要はなかったことになる。さっさと外国の治験の結果を流用すればいいだけだ。(その精度もあるから、その精度を適用すればいいだけの話。レムデシビルの承認では、そういうふうにした。)
逆に、治験をして「駄目」という結果になったら、もっと大変だ。大量の日本人が死ぬことになる。(アビガンの承認延期の二の舞だ。)
というわけで、どっちになるにせよ、日本独自の治験などは、有害無益なのである。馬鹿げたことはやめた方がいいね。そして、治験なしで、さっさとワクチンを導入するべきだ。
(7) コロナで自殺
コロナのせいでキャバ嬢が自殺した、という例があった。
歌舞伎町の調剤薬局には、キャバ嬢が睡眠薬を買いに来るそうだが、そこで聞いた話。
キャバクラ店勤務の女性(23)が来店した。中沢さんは「おお、お帰り」。仕事帰りに、処方された睡眠薬を買いに来たという。「最近の客の入りはどう?」と、中沢さんが話しかける。女性は「全然良くない」。
客は会社員が中心だったが、「コロナの影響で全く来なくなった」という。「ゼロの日もあって」。収入は激減した。キャバクラ店を辞めて、性風俗店で働くことにした同僚も数人いるという。
19年秋から薬局に通う女子学生がいた。風俗店で働き、うつ状態で抗不安薬や睡眠薬を処方されていた。
風俗店で働き、うつ状態で抗不安薬や睡眠薬を処方されていた。昨年2月、「風俗を辞めてキャバクラで働くことになった。精神的に少し楽になりました」と話していたという。中沢さんも「良かったね」と返した。
それから、1週間もたたないうちに警察から、女子学生の自殺を知らせる連絡があった。
新型コロナの影響でキャバクラ店が休業。収入がなくなり、風俗店での仕事に戻っていた、という。
( → 眠らない薬局、頼りたい人がいる 歌舞伎町、悩みに耳傾ける コロナ下でも「働かざるを得ない人が」:朝日新聞 )
ここにはいくつもの問題がひそんでいる。
・ 大学の学費が高いので、学生はアルバイトが必須。
・ 女性だと、キャバ嬢になることもある。
・ コロナでキャバクラが閉鎖されるので、失業する。
・ キャバクラには雇用助成金が出ないことが多いので、無収入に。
・ やむなく風俗嬢として働く。(体を売る。)
・ そんな仕事をしていると、心をやられる。うつ病になる。
・ 自殺に至る。
コロナの蔓延と、政府の無為無策が続く。すると、コロナに感染して直接死ぬ人だけでなく、自殺などの形で間接的に死ぬ人も出てくるわけだ。
「若ければコロナには感染しないから大丈夫」
なんて言っていると、いつのまにか命を奪われることもあるわけだ。
次から次へと戦死してゆくからいくら集めても足りないんです。
激務の上に、給料は上がるどころか下がる、子供がいれば保育所から子供の預け入れを拒否される、家族も買い物もろくにできなくなるため本人がたとえやりたくても家族が辞職しろと言うそうです。
吉村知事は、大阪府5500の歯科医院でクラスターがゼロだから、歯科の対応に何かヒントがあるといっています。困ったときのOpenBlogはどう解釈しますか?見解を聞きたいです。
歯科は元々HIV対応の実績があり、寝て治療するから飛沫は上に飛ばないから歯科医に暴露しにくいとかかな〜とは思ってますが。
クラスターが発生する条件は、一般の飲食店よりも低い。
(医者はマスクをしているし、患者はしゃべらないので唾を飛ばさない。口を大きく開けていれば、呼気も遠くまで飛ばない。)
歯科でクラスターが発生するなら、(マスクなしで食事する)一人客がいっぱいいる飲食店はもっとひどいし、4人会食の飲食店はさらにひどい。
> なお、注射が下手な学生もいるから、「全員必須」という形にはしない。試験で選抜して、注射の上手な人(器用な人)だけを選び出せばいい。
⇒ 現場で上手い・下手が問題になるのは、採血・点滴や静脈内注射の場合だと思います。つまり、血管に針を上手く刺せるかどうか。具体的には、針で血管をグリグリ探ったり、血管以外の組織に注射液を漏らしてしまったり、神経に針を刺してしまって後遺症が残ったりするケースです。
ワクチン接種は皮下注射(皮膚の下の脂肪層に薬液を入れて、ジワジワとそれが吸収されるのを待つ方式:下のリンク@)ですので、殆ど技能はいらないと思います。注意する点は、注射する二の腕の刺入部位をどこにするか、そこに皮下脂肪層が5mm以上あるか、を見極めることくらいみたいです(下のリンクA)。
流れ作業の方式としては、ベテラン医師の問診時に、あわせて刺入部位を決めてもらい、そこにペンでマーキングする。後は医学生や看護師などが引き取って実際の接種を行う、でいいでしょう。一部の規格はずれの人(皮膚が分厚い人 or 皮下脂肪層が薄い人 or 腕が細い幼児・女性)はラインを別にしてベテラン医師が接種も対応するとか。さらに、注射針の長さもA,B,Cと3段階くらいに作っておき、それをマーキングとあわせて指示すれば効率的です。作業者はあまり考えずに、皮膚の真上から直角に根本付近まで針を刺せば狙いの位置に薬液が出る、という寸法です。
@ https://news.yahoo.co.jp/byline/nakayamayujiro/20171201-00078702/
A https://www.youtube.com/watch?v=7Bu1Qn3LE5w
https://news.yahoo.co.jp/articles/5cbb6c9a5e8e37d1f3bb0b36551f7820adf57572