2021年01月19日

◆ ガダルカナルとコロナ

 (第二次大戦の)ガダルカナルの敗北を見ると、コロナとの戦いに敗北しつつある日本との相似に気づく。

 ──

 NHK で昨年秋、ガダルカナルの敗北を探究した番組があった。
  → 歴史秘話ヒストリア 「ガダルカナル 大敗北の真相」

 これは一昨年の夏、次の番組でも放送された。こちらが元の番組だ。
  → ガダルカナルの真実 組織の論理が生んだ悲劇の指揮官| NスペPlus

 その内容は、上記ページの通りで、ネットでも公開されている。ただ、私はこの番組を録画してあったので、番組を見た感想を記そう。
 ひとことで言えば、こうだ。
 「ガダルカナルの大敗北は、コロナとの戦いにおける敗北との相似がある」
 そのわけを以下に記そう。敗因はいくつもあるが、いずれもコロナとの戦いの敗因に似ている。
 

 (1) 敵を見くびる

 ガダルカナルにおける日本軍の最大の失敗は、敵を見くびっていたことだ。敵の戦力を過小評価して、甘く見積もって、「自軍の方が優位だ」と思い込んだ。
 「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」
 という格言があるが、その逆で、「彼を知らず」という状態のまま、勝手に過小評価していた。
 「偵察機が調べたら、敵艦隊の船は一隻もなかった。臆病風に吹かれて、逃げ出したのに違いない。残る戦力など、わずかに決まっている。せいぜい 2000人だろう」
 ところが現実には、敵艦隊は逃げ出さなかったし、敵兵は1万人以上いた。そこへ 1000人ほどの日本軍が奇襲を仕掛けたが、あらかじめ用意万端だった敵は、待ち構えて、一斉攻撃を下した。飛んで火に入る夏の虫。機銃掃射の雨を浴びせられて、日本軍はあっけなく全滅した。

 そもそも、ガダルカナル島は、戦略的に圧倒的な重要性を帯びていた。要となる重要な地点だった。だからこそ日本軍はそこに飛行場を建設したのだし、米軍は脅威を感じて大量の部隊を投入してガダルカナル島を奪取した。なのに、その重要な要を「あっさりと放棄した」と思い込むのだから、頭がおめでたいとしか思えない。
 しかるに、「敵は勝手に逃げ出した」という、ありもしないシナリオを想定して、楽観していた。その愚かしい楽観主義は、呆れるほどだ。

 ──

 そして、この愚かしい楽観主義は、現在のコロナ対策と共通する。
  ・ 営業時間の2時間短縮だけで、コロナ対策が十分だと思い込む。
  ・ 今年中にコロナを制圧して、夏には五輪開催が可能だと思い込む。

 特に、後者の楽観主義には、呆れるほどだ。勝利していないうちに「勝利する」と楽観して、「勝利の証しに五輪を開催する」という予定を立てている。
 呆れる。ガダルカナルの指揮官だって、「戦いの前に勝利の祝宴のことまで考える」なんてことは、しなかったはずだ。なのに今の首相はそういうことをしようとしているのである。


 (2) 目標の喪失

 ガダルカナルの攻撃では、陸軍上陸の前に、海軍が敵艦隊を攻撃していた。その奇襲は、多大な戦果を上げた。いくつもの巡洋艦を撃沈して、敵の海軍戦力を大幅に傷つけた。
 しかし、それは本来の目的ではなかった。本来の目的は、ガダルカナル島の奪還である。そのためには、敵の上陸する部隊を減らすことが最大目的であって、そのためには敵の輸送船を攻撃するのが主要目的であった。
 ところが日本海軍の艦隊はそうしなかった。目の前に敵の空母や巡洋艦があったので、そちらを攻撃することに専念した。「空母や巡洋艦こそ、敵海軍の主力であり、これをたたくことが最重要だ」と思い込んだ。いかにも海軍らしい発想である。
 しかしこのときは、敵の空母や巡洋艦は戦いの主力ではなく、ただのボディーガードにすぎなかった。敵の主力は、ガダルカナルとに上陸するべき兵士と兵器だった。それらは、日本の艦隊の攻撃を受けなかったので、まるまる生き残った。輸送船なんて、武器がないのだから、攻撃を受ければひとたまりもないのだが、日本軍が攻撃を仕掛けてこなかったおかげで、まるまる生き残った。
 かくて、敵の飛行機と軽戦車と1万人の兵士は無傷でガダルカナル島に上陸した。こうしてガダルカナル島は鉄壁の要塞と化した。もはや難攻不落も同然である。そこに襲いかかった陸軍の精鋭 1000人の兵士は、待ち受けていた機銃攻撃を浴び、後ろに逃げようとすれば軽戦車に攻撃され、さらには上方から飛行機の機銃攻撃にさらされた。かくて精鋭部隊は壊滅した。
 そして、こういうことが起こったのは、「本来の目標を見失って、目先にある空母と巡洋艦ばかりを攻撃したから」である。
 
 ──

 この愚かしい目標喪失は、現在のコロナ対策と共通する。
 日本のコロナ対策では、本来の目標は何か? 感染者を減らし、死者を減らすことである。ところが政府は、そういう本来の目標を見失った。かわりに経済対策ばかりを目標とした。そこで GoTo という施策を採って、これぞ最大のコロナ対策だと称した。
 そのせいで、最大の目標である「感染者と死者の減少」は放置された。かくて、冬には感染者と死者が爆発的に増えた。……ちょうどガダルカナル島で精鋭部隊が全滅したように。
 
 ガダルカナル島では、攻撃するべきものを攻撃しなかったが、その間に、敵の戦力は飛躍的に増大した。こうなってはもはや、敵は手に負えないほど巨大化したことになる。
 コロナとの戦いでは、取るべき対策を取らなかったが、その間に、(低温と乾燥の)冬という時期を迎えて、コロナの戦力は飛躍的に増大した。こうなってはもはや、敵は手に負えないほど巨大化したことになる。


 (3) 意思の不統一

 よく知られたことだが、旧日本軍では、海軍と陸軍の対立があった。その結果、意思の不統一が生じた。「何をなすべきか」という点で、意思が統一されていなかったのである。
 すぐ上の (2) のことでもそうだ。海軍は、空母と巡洋艦を攻撃することが最重要だと思い込んだ。そのせいで、最重要の輸送船攻撃という目的を見失った。(陸軍の参謀はそのバカさ加減を、個人の手記で強く非難したそうだ。)
 また、日本の陸軍が攻撃している最中には、陸軍の支援をするはずの潜水艦が、本来の持ち場を離れて、別方面の戦いに出向いた。そのまま敵を見失って、戦果なく帰還したが、そのときにはすでに、陸軍の 1000人は、攻撃中止を決定する伝達手段を失ったせいで、無意味な突撃をして、精鋭 1000人を失うことになった。(仮に潜水艦が持ち場を離れなければ、無意味な攻撃をしなくて済んだ可能性が高い。)
 ともあれ、海軍と陸軍が対立したせいで、日本軍には「統一された意思」などはなかった。陸軍と海軍が勝手に別の作戦行動をするばかりとなった。その結果は、悲惨なものとなった。

 ──

 こういうふうに意思の統一がないというのは、現在のコロナ対策にも共通する。担当の専門的な責任者は、本来ならば厚労省であるべきだ。なのに現実には、厚労相・コロナ担当相・ワクチン担当相という三人がいる。意思の統一など、ありそうにない。
 さらにもっとひどいのは、その上に「独裁者」としての首相がいて、勝手に GoTo のような政策を最優先にしてしまうことだ。そのせいであらゆるコロナ対策が無効になって、人々の外出行動を抑止するどころか、外出行動を促進した。
 コロナ感染から国民を守るときに、最大の敵は、感染を増やすような GoTo を推進する菅首相だったのである。これはいわば、「日本軍における最高司令官が、敵軍のスパイだった」というのも同然だ。
 そのおかげで、敵軍は圧倒的な戦果を得ることができた。「コロナ感染者と死者の爆発的な増加」という形で。
 菅首相が日本の敗北のために果たした役割は、非常に大きい。コロナ軍からは「多大なる戦果を上げた英雄」と称賛されてしかるべきほどの貢献だろう。
 実際、1人で数千人の日本人を殺したのだから、菅首相は、コロナ軍にとっては最大の英雄と言えるだろう。


 (4) 責任の押しつけ

 日本軍の司令部は、とんでもない判断ミスをして、精鋭部隊を壊滅させた。そのあと、どういうふうに責任を取ったか? 
 自分たちは、何も責任を取らなかった。かわりに、精鋭部隊の部隊長に、全責任を押しつけた。「こいつが無能だったから、無謀な攻撃をして、全滅したのだ」というふうに。
 現実には、司令部が無能だったから、部隊長に無謀な攻撃を無理強いして、全滅に追い込んだのだ。なのに、その事実を隠蔽して、部隊長に全責任を押しつけた。彼は部隊が全滅して自決したので、「死人に口なし」とばかり、失敗の責任を押しつけたわけだ。尻拭いふうに。

 ──

 日本のコロナ対策では、まだそこまでは至っていない。
 ただし、菅首相は、そのときのためのスケープゴートを用意しつつあるのかもしれない。それが、河野太郎だ。彼がいきなりワクチン担当相に任命されたのは、将来、いざというときに、彼に全責任を押しつけるためかもしれない。
 たぶん、菅首相は腹の内で、こう思っているのだろう。
 「あとで河野太郎に、コロナ対策と GoTo 推進の双方をやらせよう。もともとは(次期首相として有望だった)西村にそれをやらせるつもりだったが、それを改めて、(次期首相として有望になった)河野太郎にそれをやらせよう。うまく行けば、めっけもの。失敗したら、詰め腹を切らせばいい。これで、自分の責任を逃れて、ライバルを切ることができる。一石二鳥だ」
 そんな腹づもりなのだろう。


 (5) 真実の隠蔽

 ガダルカナルで大敗を喫したあと、日本軍はどうしたか? それを隠蔽したのである。部隊長の遺族には箝口令を敷いて、部隊長が戦死したことを周囲に隠そうとした。

 ――

 こういうふうに「真実の隠蔽」をしようとしたことは、現代日本にもあった。安倍首相時代には、特に顕著だった。
 そして、その番頭役だったのが、菅官房長官(当時)である。最近になって、隠蔽をようやく認めた。
  → 菅首相が陳謝「私自身も事実と異なる答弁 大変申し訳ない」 | NHK

 そう思うのなら、さっさと辞任するべきなのだが、そうしない。頭は下げても、心のなかでは「アッカンベー」をしているんだろう。そして、「この次も、嘘でだませばいいさ。国民なんてちょろいものさ」と思っているんだろう。



 [ 付記 ]
 NHK の番組は、「新事実を見つけた」という趣旨だ。そのこと自体は間違いではないのだが、そこで示された新事実は本質的ではない。
 なぜか? 仮に日本軍が正しい攻撃をすれば、勝利を得ることはできたかもしれないが、その勝利は、局地的・一時的なものでしかないからだ。たとえ勝利しても、すぐにまた敗北して撤退するハメになっただろう。つまり、元の木阿弥である。
 そして、そうなる理由は、根本的な兵力不足である。
 この兵力不足は、国富による根源的な不足も理由だが、さらに大きな理由は、輸送力の不足だ。(番組でも示されたとおり。)
 ではなぜ、輸送力の不足があったか? 輸送船団が次々と撃沈されたからだ。(番組でも示されたとおり。)
 では、その原因は? 番組では特に示されていなかった。だが、その理由はおそらく、「日本にはレーダーがなく、敵にはレーダーがあったこと」だろう。……と推測したら、まさしくそうだった。
  → レーダで敗北 日本護衛船団

 日本人の発明した八木アンテナによるレーダーを、日本は使わず、米軍は使った。
  → Wikipedia
  → 20世紀の発明品カタログ 第4回 「世界の屋根に君臨する、八木アンテナ」

 その結果、レーダーのない日本は、敵軍の攻撃の前に無防備となり、輸送船団を次々と撃沈されていった。それが輸送力の差となって、勝敗を分けたのだ。
 日本の最大の敵は日本だった、と言える。日本がレーダーを使用して勝利することを阻止した妨害者は、日本自身だったのである。

 ――

 そして今も、それは同様だ。コロナとの戦いで、同様のことをなしている。
 日本人の発明したアビガンというコロナ治療薬を、日本は使わず、インドは使った。
 その結果、アビガンをろくに使わない日本は、コロナ軍の攻撃の前に無防備となり、感染者と死者が激増していった。それが勝敗を分けたのだ。
 日本の最大の敵は日本だった、と言える。日本がアビガンを使用して勝利することを阻止した妨害者は、日本自身だったのである。
  → アビガンの承認が延期: Open ブログ



 【 関連項目 】

 → ノモンハンとコロナ: Open ブログ

 日本の対コロナの失敗は、ノモンハンの失敗に似ている。また、インパールや八甲田山の失敗とも似ている。(ガダルカナルだけではない。)
 
posted by 管理人 at 23:58| Comment(8) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
危機になると毎回日本人が愚かで残酷になるのはなぜか、いつか分析していただければと思います。
Posted by 通りがかかり at 2021年01月20日 09:08
 愚かで残酷になるんじゃなくて、もともと愚かで残酷なんです。それが危機のときには露見するだけ。

 それに気づけばいいんだけど、保守的体質のせいで、それに気づこうとしない。だからいつまでたっても、是正されない。
 「自己反省の欠如」が根本だが、これは保守性とほぼ同義だから、日本人が保守的である限りは、自分の欠点には目を向けない。
Posted by 管理人 at 2021年01月20日 10:00
 NHK の番組の字幕情報を自動的に取得してテキスト化しているサイトがある。本件では、下記ページ。
 → https://tvpalog.blog.fc2.com/blog-entry-14436.html

 ※ 著作権上の問題はあるが、受信料を取る NHK だから、…… むにゃむにゃ。
Posted by 管理人 at 2021年01月20日 13:34
日本の輸送船団が壊滅された理由の一つは、確かにレーダーだと思います。しかしもっと重要な理由があります。それは暗号が解読されていたことを、日本軍が気が付かなかったことです。

米潜水艦のレーダーの性能は「距離30kmでの安定探知」とのことですが、広い海の上で、いつ、どこを輸送船団が航行するか「まったく予想できない」としたら、この性能のレーダーがあったとしても、見つけることは困難でしょう。

米軍は日本軍の暗号解読に成功しており、輸送船団がいつ、どこを航行するか分かっていたのです。それに加えてレーダーがあったから「壊滅」という結果になったのでしょう。日本軍があまりにも愚かだった点は、「繰り返し何度も輸送船団が撃沈されるということは、暗号が解読されているのではないか?」という、当然の理由に気が付かなかったことです。輸送船団と米潜水艦の会敵率を計算すれば、これしか理由はあり得ないのですが、当時の日本軍のインテリジェンスがあまりにもお粗末だったため気が付かなかったのです。

まったく信じがたいことですが、これは私の思い付きではありません。出典を示せなくて申し訳ありませんが、以前何かの本で読んだ記憶がありましたので投稿させていただきました。「太平洋戦争 暗号 輸送船団」でネットを検索すると、これを裏付ける次のWebページが見つかりました。

■英霊の遺書
「何が、日本の輸送船を壊滅させたのか」<https://forest318.hatenablog.com/entry/20180318>
Posted by ジョー at 2021年01月20日 21:10
 暗号が解読されることに気づかなかったというより、「紫暗号は理論的に解読不可能だから、解読されるはずがない」と信じ込んでいたんですね。
  https://bit.ly/3bX6QCY

 ものすごい自惚れ。
 その点では、菅首相とそっくり。
Posted by 管理人 at 2021年01月20日 21:47
済みません、先ほど示したWebページ「何が、日本の輸送船を壊滅させたのか」のURLですが、山括弧を付けたせいでFirefoxでは表示できませんでした。URLを再掲します。
https://forest318.hatenablog.com/entry/20180318

ところで、管理人様が示された「レーダで敗北 日本護衛船団」というWebページの著者は、軍事専門誌ライターとの肩書ですが、次の記述が見られます。
『(*2)最近では「日本商船暗号が解読されたから負けた」も加えて説明される』(投稿日:2019/7/6)

いやいやそれは「最近」じゃないですから。「30年前から」知ってる人は知ってます。あなた本当に専門家?と言いたくなります。

「何が、日本の輸送船を壊滅させたのか」では、日本の資料や書籍では輸送船団壊滅の原因として暗号解読を挙げていないことを指摘し、次のように述べています。なんだかこれはこれで、現在のコロナをめぐる状況に通じるものがある気がします。

---- 以下引用 ----
 ここでも、30年前の本に書かれていることが、未だに反映されていないのだ。
 これでは、今に至るも、日本人は、情報を「無視」ないし「軽視」しており、その重要性に気づいていないと思わざるを得ない。かっての日本海軍を笑えない、情けない話である。
Posted by ジョー at 2021年01月21日 00:02
なるほど、解読不可能なはず、との過信、自惚れだったんですか…(絶句)。
Posted by ジョー at 2021年01月21日 00:08
暗号 当時の日本軍 梅崎春生 桜島 時代は変わったもんですね 暗号兵の日常がわかります  戦後文学は事実を伝える価値も失っているのか 若い世代の痴呆化 間違いないですかね
Posted by k at 2021年01月21日 08:54
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