原発のコスト計算をしてみよう。付帯条件を加味すると、かなり高額になって、火力発電並みになるという。では、原発に将来はないか?
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原発のコスト計算をすると、単純なコストは kwh あたり 6円ぐらいで安い。だが、地元振興費や廃炉費用や事故補償費などを込みにして計算すると、9円ぐらいになって、火力発電の 10円と大差ないという。また、米国内ではシェールガスが激安なので、米国は火力発電が有利らしい。
では、原発に未来はないか?
少なくとも日本に関しては、地震国なので、原発はあまり有望ではない。これで話は片付いてしまいそうだ。
では、日本は別として、他の国は?
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特に、インドや中国を考えると、「原発はかなり有望だ」と思える。その理由はこうだ。
「広大な大陸に属して、内陸部分が広いので、海外からの燃料を運搬するのが困難だ」
日本のような島国なら、沿岸部に火力発電所を設置すればいい。しかし中国やインドではそうは行かない。石油や LNG を内陸部まで延々と運ぶことは大変だ。一方、ウランならば、簡単に運べる。というわけで、中国やインドでは、原発はとても有望だろう。
別の理由もある。石油や LNG は、輸入物資のコストがとてもかかるので、途上国にとっては代金の支払いが大変だ。一方、地元対策費ならば、国内でまかなえるので、大きな問題はない。また、その支払金額も激安で済む。(途上国だから。)
また、将来の廃炉費用も、現時点での中国やインド(つまり途上国)が払う必要はなく、成長後に支払うことができる。
さらに言えば、近年、LNG が大幅に不足している。中国が石炭発電をやめて、LNG に転換しているからだ。さらに将来は、もっと逼迫しそうだ。(中国の人口は 13億人。これは、日本・米国・欧州の全人口の2倍にあたる。)
→ 電力の需給逼迫が続く: Open ブログ
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以上のような理由で、「内陸部にある途上国」という限定を付ければ、原発が最も有望だと思える。火力発電所は、対抗力を持ちにくい。
どちらかと言えば、太陽光発電の方が有望だ。モンゴルあたりで巨大なメガ・ソーラーができたとしても、不思議ではない。(今すぐではなく、将来のことだが。)
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ただ、原発の建設には、技術が必要だ。ところが、欧州では、20年ぐらい原発の建設が(ほとんど)なかったせいで、技術が途絶えてしまったそうだ。アレバ社が現在、原発を建設中だが、完成予定が6年延びて、コストが倍増しているという。その理由は、この 20年のうちに、技術の継承が切れてしまったからだそうだ。( 朝日新聞・朝刊 2012-02-04 )
日本では、現在、そういう心配はないが、いつかはそうなる可能性もある。技術の継承は必要だろう。
「原発を捨てた日本が、他国へ原発を輸出するのは、けしからん」
と批判する反原発論者もいる。だが、まともな技術をなくせば、原発がなくなるのではなく、まともな原発がなくなるだけだ。つまり、欠陥原発ができるだけだ。
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日本に原発を設置するのが不向きだからといって、他人の国土についてまで口出しするのは、おせっかいが過ぎる。それは内政干渉というものだ。
中国やインドの電源については、あまり口を出すべきではない。何かを言いたければ、口を出すよりは、金を出すべきだろう。途上国について、「原発は駄目」というのであれば、「火力発電の費用を出します」と言って、金を出すべきだ。
したがって、これらの人々はまずは、「日本国内で消費税の値上げ」と提唱するべきだろう。
「地球上から原発を廃止するために、他国の火力発電の建設費用を出します。そのために日本人が大幅に金を負担します。だから消費税を大幅に上げましょう。5%から20%に」
と。(ありえないが。)
結局、日本以外の内陸国(地震の危険のない地域)では、原発は有力な電源なのである。そして、そのための技術は、日本で保持しておくべきだろう。
2021年01月15日
過去ログ
原子の火 暗い光 物がなければ陰ささず
優秀な若い人が 必要になるんですがね
これによると、「(内陸の原発で)河川水による冷却の場合、日本の海水による冷却の場合に比べて取水量は少ないが、例えばフランスなどでは、排水量の温度上昇のほうは10〜15℃と高くなる(日本の海水方式は一般的に7℃といわれている)。また、熱波や渇水などで河川温度が上昇すると、河川水(二次冷却水)と低圧水(水蒸気から復水後の一次冷却水)との温度差が縮まるので、熱交換の効率が低下して冷却能力が落ちる。そうなると、復水前の高温高圧の水蒸気からタービンを回して取り出せるエネルギーも減り、出力(発電力)が減少する。定格出力を割り込むこともあり得る」そうです。
※ 記事内の原文は日本語がかなりおかしいので、私のほうで一部修正してあります。
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/occasionalpapers/occasionalpapersno108
ライバルとなるのは、水力発電所や太陽光発電所や風力発電所でしょうか。これらは冷却水を必要としないので、冷却水を争点とすることができます。
⇒ 上の私のコメントの趣旨は、参考記事とあわせて、火力発電所よりも原発のほうが多量の冷却水を必要とする、また渇水・熱波に弱い、よってこれらのことも考慮すると内陸部では原発のほうが有利(新規建設は有望)だといえるのでしょうか?、という問題提起です。