2021年01月12日

◆ 電力の需給逼迫が続く

 電力の需給が逼迫している。しかもこの状況は続く。どうしたらいい?

 ――

 電力の需給が逼迫している。九州電力は、特にひどくて、需要が供給を越えたので、他の電力会社から電力を融通してもらっているありさまだ。
  → 3.11以来の電力不足でも国が節電要請を出さないワケ|日経エネルギーNext

 東京電力も、本日 12日のピーク時には、最大供給力の 95%に達して、余裕が乏しかった。


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でんき予報(2021-01-12)


 このせいで、電力市場の取引価格は異常に高騰している。特に、それに連動して電気料金を決めるタイプで契約している家庭では、電気代が滅茶苦茶に高くなって、とんでもない額を請求されるそうだ。(約 10倍)
  → 「今月10万円コース」1日の電気代が5000円…電気料金"市場連動型"プランで契約している家庭の電気代が電力不足などの影響で高騰し阿鼻叫喚の事態に - Togetter



 では、どうしてこういう問題が起こるのか?
 本来ならば、こういう問題は起こらないはずだ。なぜなら、一時的な需給逼迫に対しては、「需給調整契約」を結んだ企業の側が、一時的に工場を止めることで、需給逼迫を緩和してくれるはずだからだ。
 ではなぜ、現実には需給逼迫が起こったのか? それは、この需給逼迫が、一時的なものではなく、構造的なものだからだ。一時的な需給逼迫ならば、企業の側が一時的に休業すればいい。しかし、構造的な需給逼迫ならば、企業がずっと休業するわけには行かないのだ。

 では、構造的な需給逼迫は、どうして起こったのか? それは、世界的な LNG 不足が起こっているからだ。LNG 不足のせいで、LNG 発電ができなくなっている。発電所が足りないのではなく、発電所を動かすための燃料である LNG が足りなくなっているのだ。
 記事は下記にある。
  → 大手電力、家庭・企業に節電呼びかけ 寒波で需給逼迫: 日本経済新聞
  → LNG不足、太陽光の稼働減――電力需給逼迫の理由 | 電気新聞ウェブサイト

 では、どうして LNG 不足が起こったのか? それは、中国が石炭発電から LNG 発電に転換しつつあるせいで、中国が LNG の需要を大幅に増やしているからだ。他にも理由がある。
 北東アジアのLNGスポット価格上昇の原因は、日本を含む北東アジア地域の気温低下だけではない。韓国は微粉塵排出量削減政策の一環として冬期に60基ある石炭発電所を最大16基休止しており、 LNG需要が増加している。さらに、中国のLNG輸入量の急増がある。
 12月の中国のLNG輸入量は前月比40%増の900万トン超となった。習近平政権が推進するゼロエミッション政策の一環である「減煤」(石炭消費量総量規制)が1つの理由だが、別の理由として、外交関係の悪化でオーストラリア産の石炭輸入を規制しているからとも噂されている。
 また、近年増加傾向にあった米国からのLNG輸入は、パナマ運河の通過手続きがパンデミックによる人員不足で停滞し、船舶の渋滞が続いている 。既に太平洋に出るのを諦め、大西洋に行き先を変更する船まで現れている。
( → 電力市場の異常な高騰はまだまだ続く? LNG供給に乱れ|日経エネルギーNext

 記事では「ゼロエミッション政策」と言っているが、これは妥当ではない。ゼロエミッション政策は、2060年の実現をめざすもので、遠い先の目標だ。今現在でゴリ押しする政策ではない。
 中国が石炭を削減する理由は、ゼロエミッション政策ではなくて、大都会の煤煙対策だろう。中国は石炭発電や石炭暖房で大気汚染がひどい、という状況があるので、これを改善しようと狙っているのだ。この件は、先に述べた通り。
  → 中国の大気汚染と日本: Open ブログ
  → 中国の大気汚染が日本へ: Open ブログ

( ※ 電気自動車の推進も同じ目的だが、石炭発電の削減の方が重要だ。)

 ――

 ともあれ、以上のように、LNG の世界的な不足がある。これは構造的な問題であり、一朝一夕には解決しない。
 となると、電力の需給逼迫は、今後も続くことになる。下手をすると、さらに大幅に悪化して、停電で日常茶飯事になるかもしれない。(その危険性は十分にある。特に来年にはもっとひどくなっているかもしれない。)

 では、どうすればいいか? 
 まずは、なすべきは「節電」だが、肝心の政府はそれを拒んでいる。どうしてかというと、メンツのせいらしい。「節電要請をすると、無能だと批判されるかもしれない。そんなカッコ悪いことはできない」というわけだ。
 ある電力関係者はこう明かす。「電事連は1月10日午後にも会見し、節電のお願いをする方針だった。しかし、経産省との文言調整に相当の時間を要した。経産省が『節電』という文言を入れることに難色を示していたからだ。さすがの電事連もそこは譲れないと調整を続け、夜になってようやくリリースを出した」。
 だが、リリースタイトルにこそ「節電へのご協力のお願い」と記載してあるものの、中身には節電の二文字はなく、「電気の効率的な使用にご協力いただきますようお願いいたします」と書くにとどまっている。
( → 3.11以来の電力不足でも国が節電要請を出さないワケ|日経エネルギーNext

 節電要請をしなければ、需給の逼迫は解消せず、下手をするとブラックアウトのような大問題が起こりかねないのだが、そういう危険を放置してまで、自分たちのメンツにこだわる。……これは、菅内閣の特質だ。コロナのときでも、同様だった。
  ・ GoTo の停止を渋る。
  ・ 緊急事態宣言の発令を渋る。
  ・ 医療対策その他の実施を渋る。

 やるべき対策をことごとく渋っている。
 その一方で、逆のことは熱心だ。
  ・ GoTo の推進や再開についてはしきりに PR する
  ・ 東京五輪の開催についてはしきりに PR する

 自分たちが称賛される機会を得るためなら、やたらと宣伝しているわけだ。

 結局、「危機の事前回避」は「批判される」と思って実行しないが、逆に、「自己称賛の事業は超楽観主義で推進する」というわけだ。ほとんど狂気の沙汰だ。

 ――

 では、どうするべきか? 電力の需給逼迫に対しては、どういう解決策をとるべきか? 
 一時的な需給逼迫ならば、「需給調整契約」の発動で済む。
 では、構造的な需給逼迫ならば、どう対処するべきか? 

 常識的には、次の二つが考えられる。
  ・ 原発の再稼働
  ・ 冬の暖房を灯油に切り替える


 原発と灯油。これならば、解決策になりそうだ。しかし、現実には難しい。

 原発は、再稼働の条件を満たさない原発が多いので、なかなか再稼働させにくい。
 灯油は、灯油タンクなどを使う必要があるので、手も汚れそうだし、都会の人は使いたがらない。
 ガス暖房ならば、都会の人でも気軽に使えるので、電気の需要を減らす効果はある。だが、ガスで暖房すれば、その分、LNG が減ってしまうので、電力に回す LNG が足りなくなる。これでは、元も子もない。( LNG を節約するために LNG を消費するのでは、意味がない。タコが自分の足を食ってしまうようなものだ。ナンセンス。)

 困った。どうする? 困ったときの Openブログに頼めば、何とかなるか? (打ち出の小槌のように、電力が次々と湧いて出てくる策があるか?)

 この話は難しいので、解決編は翌日の項目に回す。



 【 関連項目 】

 電力の逼迫が起こりつつある、という話は、一昨日にも記した。
  → 寒さでエアコンが無効に: Open ブログ の [ 付記 ]



 【 追記 】
 1月15日に、経産省がこの問題への対策を発表した。
 新電力が大手電力に支払う料金を、1キロワット時あたり 200円を上限とする……というもの。
  https://www.asahi.com/articles/DA3S14765176.html
  https://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/2101/15/news099.html

 なるほど。これは、手法としては、悪くない。このことで、大手電力が需給調整契約を増やす方向に進めば、問題は解決するだろう。(原理的には)

 しかしながら、難点が三つある。

 第1に、価格が 200円では高すぎる。今回の高騰価格も 200〜210 円だったから、200円では実効性がほとんどない。何もやらなかった場合と大差ない。どうせなら 50円ぐらいにまで下げるべきだ。

 第2に、こういうふうに政府が介入するのは、自由経済に反する。社会主義経済だ。原理的におかしい。せいぜい行政指導で経営を是正するぐらいが妥当であって、価格まで細かく決めるのは妥当でない。

 第3に、本来なら、こうするべきだった。「上限価格を導入するが、そのためには需給調整契約を結ぶ必要があるので、そのためのコストを新電電に払ってもらう」。
 換言すれば、こうだ。「大手電力は、上限価格の導入を引き受けるが、そのための手数料を、新電力から徴収する。その手数料は、上限価格に応じて変動する。上限が 200円なら少額で。上限が 50円ぐらいなら高額で」
 こういう方針を大手電力の各社が取れば、新電力はその中から好きなプランを選んで、好きな大手電力会社と契約すればいい。(通常、電力に余裕のある東電が、そのプランで最低料金を呈示する。)

 《 注記 》

 この問題は、根源的には、次のことによる。
 「発電業者と、電力の小売業者が、分離されていない。大手電力会社は、売り手と買い手の双方を兼ねている。そのせいで、価格が無駄に上がれば上がるほど儲かるという、いびつな市場になっている」
 これによって問題が発生するということは、「電力の容量市場」という県でも起こった。先に述べたとおり。
  → 電力の負担増 1.6兆円: Open ブログ

 やはり、発電業者と、電力の小売業者を、分離するべきだ。そうしないから、今回のような問題が何度も発生する。
 
posted by 管理人 at 23:49| Comment(2) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コロナ対策で「換気が重要」なんて言っている分、暖房の使用量が増えているのでは?
寒い方が風邪も引くし、コロナにもかかりやすくなると思うんだけど
Posted by のび at 2021年01月14日 10:20
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2021年01月16日 13:28
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