2020年12月28日

◆ 軽自動車の EV と HV

 コストに制約のある軽自動車では、EV や HV は可能だろうか?

 ――

 これについては、「軽自動車では、EV や HV は可能でない」という見解が強い。

 まずは、HV について、「軽では(コスト的に)無理だ」 という見解がある。下記の通り。
 10km/Lのクルマを18km/Lに出来れば走行10万kmあたりの燃料コストを130万円から58万円分低減して72万円に出来る。
 一方、リッター18km/Lの軽自動車を32km/Lにしても72万円が32万円分浮いて40万円になるのみ。
 加えて軽自動車のほうが平均的な年間走行距離が短い。総合して考えれば軽自動車にフルハイブリッドを導入する金銭的なメリットは小さいと考えていいだろう。 
( → くるまのニュース

 しかし、これはあまり理屈になっていない。なぜなら、それを言うなら、軽でなく小型車だって、HV はコスト的に報われないからだ。
 トヨタ ヤリスのハイブリッドZのメーカー希望小売価格は229.5万円、一方ガソリンエンジンを搭載するZのメーカー希望小売価格は192.6万円となり、その価格差は36.9万円となっています。
 セーブできるガソリン代は年間で2万3400円。
 つまり、ハイブリッドの36.9万円高という価格差を取り返すには約16年かかることになります。
 事実上ハイブリッドの価格アップ分をガソリン代で“元を取る”ことはできないことになります。
( → 家計に優しいハイブリッド車…実はそれほど貢献していない?? | abundantNews

 この試算は、トヨタ ヤリスの場合だ。価格差は 36.9万円。
 トヨタのカローラでも、ネットで見積もりを調べると、ガソリン車と HV 車の価格差は 35万円程度。この場合も( 16年とは言わないが)、かなり長い時間がかかるので、購入時の価格差を、節約したガソリン代で埋めるのは、ちょっと無理だろう。

 日産・ノートやホンダ・フィットでは、もっと大変だ。ハイブリッドのコストアップは 50万円程度にもなる。これだと、浮いたガソリン代で価格差を取り戻すには、20年ぐらいかかりそうだ。一方、車が廃車になるのは、10年ぐらいだ。となると、やはり、価格差を取り戻すのは無理だ。
 結局、「価格差をガソリン代で取り戻せない」というのは、軽自動車のハイブリッドに限った話ではないのだ。小型車だって同様なのだ。

 しかるに、現実には、ハイブリッド車は人気がある。これはつまり、コスト以外の美点がある、ということだ。
 ならば、同様のことは、軽自動車でも成立しそうだ。つまり、コスト的にはともかく、それ以外の理由によって、軽自動車でも HV 車は普及する可能性がある。

 特に、シリーズ式の HV ( e-POWER など)では、モーター駆動のおかげで、低速トルクが非常に強いので、軽自動車のパワー不足を補える。これはほとんど排気量アップみたいな効果だ。
 パワー不足の軽自動車にとっては、これは強い魅力となる。だから、多少のコストがかかっても、HV を買いたがるユーザーは多いだろう。

 ――

 理屈は、以上の通り。
 一方、現実はどうかというと、軽の HV は現実に販売される見込みが立っている。
  → ダイハツが軽で初の「ストロングHV」21年度に投入へ、ガソリン車+20万円で(ニュースイッチ)
  → ダイハツが21年度にも軽初のフルHV導入か トヨタ式20万円高で2030年代の電動化加速へ(くるまのニュース)

 価格差が 20万円だということだから、価格差をガソリン代で取り戻すことは、難しくはなさそうだ。( 16年もかかるということはない。)

 というわけで、「軽自動車でも HV を普及させることは可能だ」と言えるわけだ。




 一方、EV はどうか? 軽自動車でも、EV を普及させることはできるか?
 かつて、三菱の i-MiEV というものがあったが、これは、かなり効果か角すぎたということもあって、商業的には成功しなかった。

 一方、ネット情報によると、日産自動車が来年末ごろに、軽の EV を発売する予定らしい。
 軽自動車ベースの電気自動車は三菱自動車との共同開発車。三菱ブランドは「i-MiEV」の後継モデルとなる。デイズ/eKワゴンのプラットフォームを使い仕立てるといわれる。充電後の航続距離は200km以上を目標に開発を進めているようだ。
 車両本体価格は300万円前後を設定する見込み。2021年中盤に発表するが、発売は年末あたりになりそうだ。
( → 新型BRZ日本発売に暗雲!? トヨタ 次期86 来春以降発売情報入手!!
 
 というわけで、HV のみならず、EV でも、軽自動車では脱炭素化の自動車が現実化しつつあるわけだ。

 ※ 「価格は300万円前後」というのは、ちょっとありえないね。リーフなら、333万円だ。とすれば、250万円以下と見なすのが妥当だろう。(車両が軽くなれば、電池の搭載量も減るので、電池のコストが大幅に低下するからだ。航続距離が 200km ならば、200万以下も可能だろう。)

 《 加筆 》
 日産の軽自動車は、使うモーターを、ノート 4WD の後輪駆動用の 50kW タイプのものを使うかもしれない。そうすれば、既存の大量生産品を流用することができて、コストダウンが可能になるからだ。
 この 50kW のリア・モーターは、新型エクストレイルやアウトランダーでも使う予定らしい。( → ベストカー
 それだけ大量生産できるのであれば、コストも下がるから、軽自動車 EV に流用するには最適だろう。

     ※ 出力が少し不足気味だが、インバーターなどを変更すれば、1割程度は出力アップは可能だろうし、それで足りる。 55kW = 75ps だが、この数値は、ターボ付き軽自動車の 64ps を大幅に上回る。
     ※ あとで調べたら、ヤリスの1L モデルのエンジンは、51kW という出力だ。だとしたら、50kW のモーターを軽自動車に載せるというのは、リッターカーのエンジンを軽自動車に載せるのも同様で、過剰スペックとも言える。50kW ではちょっと強力すぎるので、40kW に減らした方がいいかもね。

 ――

 ついでだが、トヨタはどうかというと、次の記事がある。
  → トヨタ、超小型EV発売 2人乗り、価格「軽」並み:時事ドットコム

 何だか、オモチャみたいな自動車だ。中国の 40万円ぐらいの EV にちょっと似ている。しかし値段はずっと高い。

 これと似た車は、日産自動車が昔作っていた。チョイモビというやつだ。
  → チョイモビヨコハマ|EVカーシェアリングで人と街をつなぐ
 これは日産自動車が 2013年10月から始めていたもの。それと似たものを、7年遅れで、トヨタが事業化するわけだ。
 
 トヨタの遅れぶりには、情けなくて、涙が出る。
 だから社長が、「 EV の推進には大反対」と言っていたんだね。
  → トヨタの時代逆行: Open ブログ



 【 補説 】
 本項では軽自動車について述べた。結論は「特に問題ない」ということだ。

 むしろ、(軽でなく)大型トラックが問題だろう。大型トラックを EV にすると、電池の重量が重すぎて、大変なことになる。電池レス EV が普及すればいいが、実用化は遠い先のことになる。
 となると、大型トラックでは、EV を諦めて、燃料電池車にするしかない。しかしながら当面は、技術が未発達であるせいで、燃料電池車は高コストすぎる。

 現実的には、ディーゼル車を続けるしかないか? いや、そうではなく、大型トラックやバスについては HV が可能となっている。
  → トラックやバスにもハイブリッドの風 | NEDOプロジェクト実用化ドキュメント

 トラックやバスについても、
    内燃機関 → HV → PHV → EV
 
 という順の進化(?)は、起こるだろう。
 
 なお、大型バスは、かなり早期に EV 化が可能だ。路線バスなら、短距離を走るだけなので、小さめの電池で済む。長距離バスも、ときどき駐車して、充電すれば済む。(観光業なので、トラックと違って、休み時間はたっぷり取れる。)
posted by 管理人 at 23:42| Comment(3) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 後半で 《 加筆 》 の部分を付け足しました。
 軽自動車 EV 用のリアモーターの話。
Posted by 管理人 at 2020年12月29日 12:18
バスはBYDが既に結構作ってるので、EV化進むんでないでしょうか。
軽自動車はそれこそ中国の宏光miniくらいのが、100万位でスズキダイハツ辺りが出せばいいのに、と思ってますが無理なんですかね。
Posted by かかし at 2020年12月30日 16:17
1psが735Wですから、軽自動車の出力規制値64psは47kWになります。
ノート4WDの後輪駆動用モーター50kWは軽自動車用としてはちょっと強めですね。
このモーターを搭載した軽自動はリッターカーを超える(軽いから1.5Lクラス並み?)立ち上がり加速を誇るが、中速からソフトで制御して腰砕けになりそうです。
実際、初期型 リーフが(現行2代目は乗ってません)そういう特性でした。
Posted by 京都の人 at 2020年12月30日 21:06
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ