2020年12月28日

◆ 2030年以後は EV か HV か?

 脱炭素社会のため、2030年以後は EV にするべきか HV にするべきか?

 ――

 2050年に脱炭素社会を実現するという計画を、政府が発表した。前に述べたとおり。
  → 2050年脱炭素の計画: Open ブログ
 
 日本政府の方針では、「 2030年以後は、電動車にする」ということで、HV(ハイブリッド車)を明白に許容している。
 一方、欧州ではこの点を曖昧にしている(未定である)国が多い。
 HV を明白に許容している日本は、その点では、一歩遅れている(後退している)と見える。そこで、この方針を批判する論調もある。朝日の社説がそうだ。
 ガソリンを使うハイブリッド車を脱炭素の手段に含めるのは理屈に合わない
( → (社説)脱炭素の戦略 めざす理想もっと高く:朝日新聞

 では、この件をどう考えるべきか? 

 ――

 「ハイブリッドを推進する」ということであれば、すでに現在( 2020年)の時点で、ハイブリッドの技術は完成していると言える。なのに、2020年の技術を 2030年以後に普及させるというのでは、話があまりにも古すぎる。技術が 10年以上も停滞することを意味する。馬鹿げていると言える。この意味で、「 2030年以後に、HV を推進する(大幅に許容する)という政府の方針は、時代遅れの愚案だと言える。

 では、2030年以後には HV を禁止して、EV だけにすればいいか? いや、そうも言えない。2030年にすべてを EV にするとしたら、2020年の時点で、すでに EV が技術的に完成している必要があるが、とてもそうは言えないからだ。
 現在の EV には、どのようなものがあるか? ランキングを見よう。
  → 日産もトヨタもベスト10圏外へ?世界の電気自動車(プラグイン車)販売ランキングが示す現実

 企業別でなく車種別で見ると、ランキングのトップのあたりは、こうだ。
   1 テスラ/モデル3 
   2 ルノー/ゾエ  
   3 上汽通用五菱汽車(SGMW)/宏光Mini EV 
   4 テスラ/モデルY  
   5 現代/コナEV  
   6 日産/リーフ

   
 このうち、テスラ/モデル3 には、次の難点がある。
  → 「想像以上に深刻です」車が突然シャットダウン…?今年の9月に納車されたテスラがぶっ壊れてしまった

 日産リーフには、「リチウムイオン電池にクーラーがないので、電池がすぐに劣化する」という難点がある。
 
 中国製と韓国製の EV には、品質上の疑問点がある。

 となると、まともなのは、ルノー/ゾエ だけということになる。
 現時点で、まともに作られている EV が1車種しかないのだとすると、10年後に世界的に大規模に普及させる( EV 以外は禁止にする)のは、どう考えても無理だろう。無理に決めたあとで、「 EV も駄目でした」なんてことになったら、「世界から自動車が消えてしまう」という結果になりかねない。そんなリスクは負えない。

 というわけで、結局、「 2030年には EV に全面的に依存する」という計画も、あまりにもリスキーなのである。

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 しかし、HV を許容するのも駄目で、EV に全面依存するのも駄目だとしたら、どうしたらいいのか? ひょっとして、燃料電池車に頼ればいいのか? いや、それはもっと駄目だ。(そんなことをしたら、まさしく破綻だ。)
 困った。どうする?

 ――

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「 2030年以後は、EV と PHV ( PHEV )の二本立てとする。HV は原則的には禁止する」


 この話のキモは、こうだ。
 「主力は、 PHV ( PHEV )にする。その PHV の技術は、現在の新型ノートの充電池を、1.5kWh から 3kWh へと増やした形でつくるものだ」


 実は、このような技術は、先に述べた。
  → e-POWER を PHV にする: Open ブログ

 ここで述べたように、新型ノートの充電池を、1.5kWh から 3kWh へと増やすだけで、新型ノートは PHV になる。それは技術的に容易である。(単に電池を増やして、充電用のコンセントを付けるだけだ。馬鹿でもできるぐらい容易だ。)

 というわけで、2020年の最先端技術を使えば、PHV は容易にできるのだ。とすれば、これを 2030年に大々的に普及させるということは、大いに可能なことである。しかも、最も現実的であると言える。
( ※ すでに古臭くなった HV 技術を 2030年に展開する、というような馬鹿げた案とは違う。)

 というわけで、「 2030年には、HV でもなく、EV でもなく、PHV を大々的に普及させるべし」という方針を、私の提案としよう。
 なお、この際、EV も補完的に普及させるべきだ。しかし、2030年になっても、EV はまだ主力とはならないだろう。(全固体電池も、現時点でまだ完成していないので、2030年に大々的に普及させることは無理だ。)

 ※ ただし、テスラ式のリチウムイオン電池が、コストを大幅に下げる可能性はある。ひょっとしたら、EV は 2030年の時点で、5割近いシェアを得ている可能性も、なきにしもあらず。(その可能性はきわめて小さいが。)



 【 関連サイト 】

 新型ノートの試乗体験記。
  → 【試乗+採点評価】日産 新型ノート e-POWER「動的質感は輸入車超えた!?」

 HV は、トヨタ式よりも、日産式 e-POWER (シリーズ方式)の方が圧倒的に上回っているとわかる。
 となると、将来の HV は、ほとんどがシリーズ方式になるだろう。新型ノートのように。そして、いったんそうなれば、あとは充電池をちょっと増やすだけで、HV が PHV になるのだ。
 ゆえに、将来は PHV が主力になるだろう、と予想できる。

 ――

 実を言うと、「 PHV はただの過渡的な存在に過ぎず、HV と EV の橋渡しをするために、短期間だけ存在するにだけだろう」と思われてきた時期もあった。ただの脇役扱いというわけだ。
 しかし日産の e-POWER の成功がそれを覆した。 e-POWER の方式を取るなら、PHV こそ、将来の自動車の主力になるとわかる。そして、日産の e-POWER は、その PHV の先行形式であったと見なされるだろう。
 日産は e-POWER を自社の特徴だと思って、これを主力にしたい考えもあるようだが、実際には、 e-POWER が主力となる期間は短くて、 e-POWER はやがては PHV へと発展的に解消することになるだろう。

 われわれは今、自動車における進化と滅亡(種の交替)の歴史を、目の当たりにしていることになる。



 [ 付記 ]
 EV 用のモーターは、先行して量産している日産とテスラが有利で、トヨタやホンダは不利だろう……と思っていた。だが、状況を一変させる事態になりつつある。モーター・メーカーの日本電産が EV 事業でモーターの大量生産に乗り出したのだ。中国・欧州の会社向けに受注を狙っているそうだ。
  → 日本電産、高級SUV向け EV用駆動モーター量産へ: 日本経済新聞
  → 日本電産、電動車向け駆動用モーター強化 2030年にEV向けモーターシェア40〜45%目指す

 シェア40〜45%目指すというのは、荒唐無稽にも思えるが、EV で出遅れたメーカー向けに、まとめて供給すれば、そのくらいの数字は可能かもしれない。
 出遅れたトヨタとホンダも、モーターなどの組み込み装置を外注することで、一気に日産やテスラに追いつくことも可能かもしれない。
 ひょっとして、日産がノートを PHV にするのを愚図愚図していていたら、その間に、トヨタとホンダが一挙に日産を追い抜く……というシナリオも、考えられなくもない。
( ※ だいたい、いまだにノート PHV を売り出そうとしない日産は、間抜けすぎる。技術がないのではなくて、ある技術を使おうとしないのだから、間抜けというしかない。)




 [ 余談 ]
 余談だが、日産が新型ノートを「電気自動車」と称しているのは、詐称だね。これは「優良誤認」に当たるので、独禁法違反の犯罪だ。検察は、摘発するべき。

  → 日産ノート 電気自動車 - Google 検索
  → 乗ればわかる 電気の楽しさ | 日産自動車
 
posted by 管理人 at 23:23 | Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
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