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「太陽光パネルを屋根に設置するのは簡単だろ」と思う人が多そうだが、さにあらず。既存の住宅では、そうしたくても、不可能なことが多い。
なぜか? 太陽光パネルは、数百 kg の重量があるが、それだけの重量物の設置に耐えられる構造をもたない住宅が多いからだ。
この意味で、太陽光パネルを設置できるのは、あらかじめそれを見込んで構造を強化した新築物件に限られるのが普通だ。
システム容量 3.24kw 設置の場合
設置面積 24.0平方メートル〜25.6平方メートル
総重量 330kg〜550kg
( → 京セラソーラFC )
屋根に載せる発電モジュールの重さは全部で何kgになりますか?
当然ながら、発電モジュール(パネル)を何枚載せるかによって変わりますが、一般的な戸建て住宅の屋根に設置する規模では、トータルで300kgから400kg程度になります。
( → 屋根に載せる発電モジュールの重さは全部で何kgになりますか? - よくある質問 | 太陽生活ドットコム )
パネルの取付には架台が必用なので、架台も合わせると1KWあたり100kg前後と考えていいでしょう。これらより、4KWのシステムなら400KG前後、6KWのシステムなら600KG前後となります。
但し、ソーラーフロンティなどのCIS系の太陽電は、1KWあたり150kg前後(架台含む)と、発電効率の良いパソニックのHITと同発電容量で比較すると、重量が倍以上重くなるパネルもあります。
( → 太陽光発電の重量(重さ)はどれぐらい?地震には? )
以上のように、かなりの重量となる。これらの重量があると、どうなるか?
重たいものが家の一番上にあるので、アンバランスとなる。そのせいで、重量による家屋の倒壊という危険がある。下記のように。
太陽光発電システムは南側の空へ向けて設置するのですが、大量のパネルを設置した場合、重量が南側に片寄ることになります。先に述べたとおり、それが原因で屋根が破損することは考え難いのですが、その状態で大きな地震に巻き込まれた場合、家屋にねじれが生じて通常以上の強い負荷がかかり、最悪の場合は倒壊することすらあると言われています。
( → 太陽光発電を屋根に載せると、重さはどのくらいになりますか?〜太陽光発電コラム〜 | 太陽光発電の日本一最安価格に挑戦!【ソーラーリフォーム】 [リンク切れ] )
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太陽光パネルの重量については、「心配ない、大丈夫」と解説するサイトも見つかる。
→ 太陽光発電の重さを心配しないでいい3つの理由 各メーカーの重さ比較【ソーラーパートナーズ】
一方、危険性を指摘するサイトもある。上記の引用文(リンク切れ)もそうだが、下記サイトもある。
→ こんな家には危険!ソーラーパネルの重量が屋根に与える影響とは? - 太陽光発電比較探検隊
一般的に言えば、「家ごとに異なる」と言える。最新の鉄骨プレハブ建築ならば大丈夫であることも多いようだが、40年以上前の木造住宅では、もともと 1981年の耐震基準を満たしていない住宅が多い。だから、1981年以前の木造住宅は、きわめて危険だ。
ここに 400キロもの重量物を乗せたら、ただでさえ倒壊しやすいのが、いっそう倒壊しやすくなる。震度7までは大丈夫だろう、と思っていたら、ソーラーパネルのせいで、震度6でも倒壊してしまった、というふうになりかねない。
だから、「大丈夫だよ」なんて書いているサイトは、みんな嘘つきだと思っていい。そういうのは、「何が何でも太陽光パネルを売りつけてやろう」と思っている、詐欺的な太陽光パネルの業者のサイトだ。
正しくは「家ごとに異なる」である。鉄骨や鉄筋コンクリならば大丈夫だろうが、古い木造ではかなり危ない。「得をしようと思って、太陽光パネルを設置したら、家が崩れてしまった」というふうになりかねない。「元も子もない」とわけだ。そういうふうにならないように注意しよう。
[ 付記1 ]
古い木造住宅は危ない。一方、「鉄筋コンクリならば、地震でも大丈夫だ」と言い切れるかというと、そうでもない。地震以外にも、他の問題がある。
・ 延焼する形で火事に遭うかもしれない。
・ 台風で飛んできた物体によって、太陽光パネルが割れてしまうかもしれない。
そういうふうに、リスクはいろいろとある。
家庭や事業所に設置された太陽光発電設備は、台風や豪雨などによって浸水したり破損したりすることがあります。
太陽光発電設備は、浸水したり破損したりしても光が当たれば発電することがあり、むやみに近づいたり触ったりすると感電することがあります。
また、モジュール(太陽光パネル)によっては鉛やセレン、カドミウムなどの有害物質が使われている場合があり、破損の状況によっては有害物質が流出する恐れもあります
( → 災害で壊れた太陽光パネルは危険です / 大牟田市ホームページ )
[ 付記2 ]
他にも、「太陽光パネルは故障することがある」という問題もある。
→ 太陽光発電には安全神話がある
ここにはいろいろと問題が列挙されているので、勉強になる。
[ 付記3 ]
「太陽光発電は儲かるか?」というと、現状では、「少しは儲かるが、たいした額にはならない」と言える。あれこれと手間をかけて、メンテをして、さらに台風等で破壊される危険なども考えると、たいして得をするわけではない。その上、将来、撤去費用が別にかかる。
→ 太陽光発電は本当に儲からないのか? 利回りとリピーター投資される理由を検証
→ 太陽光発電は儲かる?損得分岐点と元が取れない場合を理解する
→ 太陽光パネルって儲かるの? - Yahoo!不動産
仮に FIT による補助金(または買い取り料金の引き上げ)がなければ、ととうてい成立しないような、非効率さである。FIT があっても、大儲けできるというほどではない。
※ まともに儲けが出るのは、電気自動車を保有している場合だ。その場合には、太陽発電でも、電気自動車でも、いっぱい補助金をもらえるので、補助金の分ぐらいは儲けが出そうだ。……とはいえ、国民視点で言えば、この人たちが補助金をもらう分、国民は損をすることになる。本人は得するが、国全体では損することになる。
(……だから FIT はクソなんだよ。これは別の話だが。)
[ 付記4 ]
結局、太陽光発電は、現状では特に推進するほどのものではない。将来的に、発電コストが大幅に低下したころ[ 10年後? ]に、ようやく普及するようになるだろう。
当面は、太陽光パネルの設置はしないで、「太陽光パネルを設置できるような、頑丈な建物を新築するだけにする」という方針に留めるべきだ。
この件は、次項で述べる。
→ 太陽光発電と屋根(新築): Open ブログ