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これは有望なので、政府の計画(前項)にも組み込まれた。下記の通り。
【住宅・建築・次世代太陽光】 次世代型太陽電池でペロブスカイトなどの技術の開発・実証化を加速
( → 脱炭素化へ、課題山積 軽EV化→価格高騰/水素普及→運搬・貯蔵にコスト:朝日新聞 )
では、ペロブスカイト型太陽電池とは何か?
ペロブスカイト(perovskite)というのは、結晶構造の名称だ。具体的な構造は、下記に説明がある。
→ ペロブスカイト構造 - Wikipedia

このような構造を持つ太陽電池を提案したのが、宮坂力・教授だ。
現在量産されている太陽電池の多くは、「シリコン系太陽電池」と「化合物系太陽電池」と呼ばれるタイプのものだ。これらの太陽電池は壊れにくく、高変換効率(高いものでは25%を達成)である一方で、材料や製造コストが比較的高いというデメリットがあった。さらに、シリコン系太陽電池ではシリコンが厚く、曲げることができないことが設置場所を制限していた。
そこで次世代の新規太陽電池材料として期待を寄せられているのが、「ペロブスカイト太陽電池」だ。ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた新しいタイプの太陽電池であり、「シリコン系太陽電池」や「化合物系太陽電池」にも匹敵する高い変換効率を達成している。ペロブスカイト膜は、塗布(スピンコート)技術で容易に作製できるため、既存の太陽電池よりも低価格になる。さらに、フレキシブルで軽量な太陽電池が実現でき、シリコン系太陽電池では困難なところにも設置することが可能になる。
( → ペロブスカイト型太陽電池の開発|環境エネルギー|事業成果|国立研究開発法人 科学技術振興機構 )
「シリコン系太陽電池」と「化合物系太陽電池」が現在は普及しているが、いずれも高価格である。ところが、「ペロブスカイト太陽電池」は、ずっと低コストで済む。
特に優れているのは、厚さがシリコン型の 100分の1ぐらいだ、ということだ。とすると、仮に体積あたりで同等のコストがかかったとしても、100分の1のコストで部材を製造できることになる。こうなると、非常に激安になると言えるだろう。
他にも、曲げやすいという長所もある。また、壁に塗って使うというような使い方もできる。製造するときも、インクジェットプリンタで(塗るようにして)製造することもできる。これは製造コストの低減に役立つ。
こういうふうに、いろいろと長所があるので、将来的には最も有望だと見なされている。
ペロブスカイト太陽電池は、世界で最も注目されており、太陽電池に関する世界中の論文の大半がペロブスカイト太陽電池に関するものになっている。
とのことだ。
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トヨタの社長は、「自動車がみんな EV になったら、将来の発電量が足りなくなる」というような心配もしているが、日本中の建物の屋根や壁が発電するようになったら、太陽光発電だけで必要な発電量を確保することも可能かもしれない。
そして、それは、現在の技術ではおよそ不可能なことだが、ペロブスカイト型太陽電池を使えば可能になるかもしれないのだ。
【 補説 】
では実際に、ペロブスカイト型の太陽電池で日本中で必要な発電量をまかなえるようになるだろうか?
「可能か?」という問いになら、「可能だ」というふうに答えることができそうだ。ただし、「現実にそうなるか?」という問いには、「ノー」と答える方がよさそうだ。なぜか? 次の理由があるからだ。
(1) 太陽光発電は、昼間にしか発電できない。一方、夏の冷房や冬の暖房には、夜間の消費電力が非常に高くなる。それをまかなうのは、太陽光発電だけでは無理っぽい。蓄電池を使えば可能かもしれないが、筋が悪い。ここはやはり、夜間にも安定的に発電できる、洋上風力発電に頼る方がいい。
(2) 洋上風力発電ならば、夜間に発電して、電気自動車に蓄電する、という方法が使える。しかし太陽光発電では、「昼間に発電して、昼間に蓄電する」という方法は、そううまくは使えない。というのは、自動車は昼間には道路で走行中であることが多いからだ。家庭の屋根で太陽光発電をしても、それを蓄電するべき自動車は家庭にはなくて、会社などに出向いている。
となると、昼間の発電を自動車に蓄電するという手法( → 前項 )は、ちょっと無理筋である。せいぜい、休んでいる分の自動車に蓄電できるだけだ。その量は、全体に半分に満たないだろう。あまり頼りにならない。
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というわけで、蓄電のことを考えると、太陽光発電に頼り切ることはできない。どうしても、洋上風力発電にも頼るしかない。
とはいえ、太陽光発電には、圧倒的に有利な点もある。それは「コストが大幅に下がりそうだ」ということだ。現時点のシリコン型でさえ、1kWhあたりで6円以下にまで下がっている。今後、ペロブスカイト型太陽電池が大幅に発展すれば、コストは1円以下にまで下がりそうだ。となると、「発電量が不安定だ」という難点を差し引いても、太陽光発電を大規模に推進する動機が働く。
現実にはどうかというと、やはり、多種類の発電方法に分散する形になるのだろう。その上で、太陽光発電は「最も低コストの電源」として、できる限り多く採用するようになるだろう。
それでも、夜間には発電できないので、その分は、電気自動車の蓄電池に頼るか、洋上風力に頼るか、火力発電に頼るか、いずれかになるだろう。
おおむね、以上のように予想できる。
※ 政府の計画では、火力発電に大幅に頼ることになっているが、そうしなくても済むだろう。
【 関連項目 】
→ ペロブスカイト太陽電池大面積モジュールで世界最高変換効率16.09%を達成 | NEDO
→ 塗って作れる次世代の有機無機複合太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」とは
→ 温めると縮む材料の合成に成功
→ 温めると縮む物質の負熱膨張現象メカニズムを解明 ? 早稲田大学
太陽光発電のコストについては、
世界の太陽光の発電コスト(世界加重平均単 価)が 2017 年の 8.8 US セント/kWh から最新の 2019 年上半期では、5.7 US セント/kWh にまでさらに 一段と下がっている。
( → 日本の太陽光発電の発電コスト )
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