2020年12月26日

◆ 2050年脱炭素の計画

 2050年に脱炭素社会を実現するという計画を、政府が発表した。だが、重大な点を見落としている。

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 記事はこちら。
 政府は25日、2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」実現に向けた実行計画「グリーン成長戦略」を発表した。30年代半ばに乗用車の国内新車販売をガソリンだけで走る車以外の「電動車」に限る目標を設定。洋上風力発電や水素利用など重点14分野の実施年限や技術的課題を定めた工程表を作成した。看板である脱炭素へ政策を総動員する。
( → 50年「脱炭素」へ政策総動員 車、30年代に電動化 ――「グリーン成長戦略」で計画:時事ドットコム

 同様の記事。
  → 脱炭素、原発新増設に含み 2050年グリーン成長戦略、政府発表:朝日新聞
  → 脱炭素化へ、課題山積 軽EV化→価格高騰/水素普及→運搬・貯蔵にコスト:朝日新聞

 さらに詳しい記事。
  → 「脱炭素社会」2050年実現へ その具体的な道筋は? | 環境 | NHK

 特に自動車について詳しい記事。
  → 「脱炭素社会」2050年実現へ 車の電動化は進むか? | 環境 | NHK

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 計画は総花的だ。
 そのすべてに言及することはしないで、本項では一点について言及しておこう。こうだ。
 「太陽光発電や洋上風力発電で再生エネを発電するのはいいが、発電した電力を蓄電することが必要だ。特に、夜間に発電した風力発電については、それを蓄電しておかないと、昼間に使うことができない。
 この蓄電という目的のためには、電気自動車のバッテリーを使うのが最善である。
 しかるに、燃料電池車の場合には、その方法(夜間の蓄電)ができない。ゆえに、将来の脱炭素社会の実現のためには、電気自動車の蓄電池を利用することが不可欠であり、燃料電池車は役立たずである」


 これは非常に重要なことだ。
 人々は「再生エネ発電」というとき、太陽光や風力の発電量を増やせばいいとだけ思っているが、それでは駄目だ。発電だけでなく、蓄電する必要もある。ここを見失ってはならない。(さもなくば、発電量が不安定になるので、火力発電所に頼るほかなくなって、脱炭素社会は大きくそがれる。)

 ここで、電気自動車のバッテリーを使えば、不安定な再生エネ発電の電力を蓄電することができる。しかも、その量は、実際に電気自動車が消費する電力量の何倍にもなる。
 たとえば、日産リーフe+ のバッテリーは、62kWh もあって、航続距離は 570kmもある。この電力量を1日で全部消費することは、ほとんどないだろう。普通は 30〜50km ぐらいの走行距離だから、バッテリーの1割以下の電力しか使わないことになる。
 ところが、これを蓄電池として使えば、毎日 62kWh の電力を蓄電することができる。(実際には、全部使い切るとまずいので、50kWh ぐらいに留めるかもしれないが。)
 ともあれ、電気自動車があれば、実際の消費量に比べて、その 10倍ぐらいの電力を蓄電することができる。
 電気自動車の電力消費量が、総発電量の2割だとしたら、その 10倍にあたる 20割(つまり2倍)の電力を蓄電できるわけだ。つまり、電気自動車のバッテリーだけで、再生エネの不安定な発電を安定化させることが十分に可能だ。(お釣りが来るほどだ。)

 一方、燃料電池車の場合には、そうは行かない。そもそも、蓄電するのではなく、水素を発生させるので、蓄電能力がない。せいぜい「エネルギーを水素の形にして蓄える」ということができるぐらいだが、この方法は、非効率であるし、すごく高コストだ。さらに、実際に使用する消費量の1倍までしか、エネルギーの蓄積能力がない。(電気自動車ならば、10倍も蓄電できるのに。上記。)

 というわけで、将来の脱炭素社会のためには、電気自動車が何よりも必要なのであって、燃料電池車は役立たずだ、と言えるわけだ。
 世間では「燃料電池車は究極のエコカーだ」という説もあるが、全然、そんなことはないわけだ。「燃料電池車はただの役立たずだ」と言ってもいいくらいだ。



 [ 付記 ]
 この計画では、「脱炭素社会」と言いながら、大量の火力発電に頼ることになっている。
 30―40%程度を原子力・二酸化炭素(CO2)回収前提の火力発電で賄う。
( → 情報BOX:政府の脱炭素「グリーン成長戦略」のポイント | ロイター

 しかし、火力発電に頼らなくても、電気自動車の蓄電でまかなうことは可能なのだ。その分、太陽光や洋上風力に頼ることができる。……そういうことを、本項では示した。

 ※ ただし燃料電池車では、それはできない。(なのに燃料電池車を推進するのは、馬鹿げている。)



 【 補説 】

 太陽光発電と洋上風力発電の潜在的なエネルギー量については、次のグラフを示せる。


  → 拡大グラフ

 実は、この図にそっくりな図は、前に別項で示した。(太陽光発電の潜在的な発電量は小さい、という趣旨。)
  → 洋上風力を推進すべきか? 2: Open ブログ

 ところが、そこに示した図は、まったくの間違いだった。データの入力ミスで、「太陽光発電の潜在的な発電量は小さい」というふうに示したが、実は、そんなことはないそうだ。正しくは、上で示したグラフのようになるそうだ。

 このグラフを書いた人は、
 京都大学大学院 経済学研究科 再生可能エネルギー経済学講座 特任教授。博士(工学)。専門は風力発電。
( → 安田 陽さん (@YohYasuda) / Twitter

 とのことなので、すっかり信用していたのだが、嘘をついたわけではないにせよ、あまりにもひどい初歩的なミスで、間違いを犯してしまったそうだ。
 で、私もそれに引っかかってしまった。そこで、本項では、データの修正を兼ねて、上記の図を示しておくわけだ。

 ※ 元の項目の記述は、すでに修正済みです。

 ――

 なお、グラフから、何がわかるか? 
 以前は、(間違ったグラフに基づいて)こう記した。
 「太陽光発電だけでは、日本の必要な発電量をまかなえないので、太陽光発電のほかに、洋上風力発電を増やすことが必要不可欠だ」

 しかし、そのグラフは間違っていたので、かわりに、次のように結論できる。
 「太陽光発電だけでも、洋上風力発電でも、日本の必要な発電量をまかなうことができる。原理的に言うのなら、太陽光発電でも、洋上風力発電でも、どちらでもいい。実際にどちらに頼るかは、将来の技術発展しだいである」

 では、そのどちらが(技術的に)有望か? …… その話は、次項で。

 
posted by 管理人 at 20:58| Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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Posted by 管理人 at 2020年12月27日 08:42
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