2020年12月18日

◆ 人工呼吸器は増産されたか?

 コロナの重症者向けの人工呼吸器が不足している。ならば、大増産された米国から輸入はできないか?

 ――

 コロナの重症者が増えているせいで、重症者向けの病床が逼迫してる。
  → 医療逼迫「厳しさ年末まで」 28都道府県で病床使用率悪化 ― 新型コロナ:時事
  → 大阪府、重症病床の使用率70%超す 感染者増加で逼迫 [新型コロナウイルス]:朝日新聞

 重症者向けの病床には、ただの酸素吸入器でなく、(挿管する)人工呼吸器が必要だ。ところが、これの台数が不足している。(供給不足というより、需要過剰。)
 そのせいで、「患者の選別」が必要になりかけているそうだ。
  → コロナ感染者、増え続けたら… 誰に人工呼吸器、重い判断 医療現場の手続き、学会など提言:朝日新聞

 ならば、どうすればいいか? ここで思い浮かぶのは、「米国では人工呼吸器が大量に生産されている」ということだ。春の時点で、
  → 冬の大感染に備えよ: Open ブログ の (2)
  → 米国 の (11)

 実際に大量生産されたのだから、その一部を日本に輸入することは可能ではないか? 米国でも患者数は非常に増えているが、機械はあっても、操作する人が必要なので、大量生産した機械がすべて使われているとも思えない。ならば、使えないまま余っている機械を、日本に輸入することができるのではないか? 
 そう思って調べたら、意外な事実が判明した。

  → トランプ政権が確保した人工呼吸器14万台 約半数はコロナ重篤患者救えず | ニューズウィーク

 米国では、GM や フォードなどの自動車会社が人工呼吸器を大量生産した。しかし、その機械は、使い物にならなかった。なぜなら、その機械は「簡易版」の人工呼吸器なので、中等症や救急患者の応急処理ぐらいにしか使えない。一方、重症者に使うものは、挿管などに対応する高度な機械である。そういう機械はろくに生産されなかったのだ。だから、重症者向けの人工呼吸器が不足しているという状況は、一向に解決されない。
 結局、GM や フォードなどの自動車会社が人工呼吸器を大量生産したのは、見当違いの無駄な機械を生産しただけであって、ほとんど役立たずで合ったことになる。トランプ大統領の大号令の結果は、「ただの見当違い」に終わったことになる。
( ※ 当然、それを日本が輸入して使うこともできない。もともと使い物にならないのだから。)

 以下は、記事の引用。
 米政府は今年4月、約30億ドル分の人工呼吸器を非常時に備える米戦略的国家備蓄(SNS)用に発注したと発表した。
 しかし、ロイターが公開の仕様書を閲覧したり医師や業界幹部らに取材した結果、4月の発表以降に米政府が調達した14万台のうち、ほぼ半数は簡易型の呼吸装置だったことが分かった。コロナ患者の主要な死因である「急性呼吸窮迫症候群(ARDS)」の治療に必要な最低限の要件を満たさないとされる装置だ。
 ARDSの患者に気管挿管して使うタイプの集中治療室(ICU)用装置はわずか10%しかなかった。40%が短時間の使用を想定する搬送用装置だった。
 米胸部専門医学会の学会誌に掲載された人工呼吸器専門家22人の9月の研究によると、国家備蓄に追加された装置の半分は、ARDSの治療に向いていなかった。
 ジョンズ・ホプキンズ病院(ボルティモア)のサジッド・マンズール医師によると、呼吸器の多くがARDS患者に必要な条件を満たしていない上に、こうした人工呼吸器が国家備蓄されていることが、誤った安全の意識につながる。「ARDSになると症状は極めて重くなる。こうした患者のためには、どうしてもICU用の呼吸器が必要だ」と話す。
 米胸部専門医学会の報告の共同執筆者、マイケル・クリスティアン医師によると、集中治療室の患者の圧倒的多数が深刻な呼吸器症状である場合、患者を支えられるのは複雑な機能の人工呼吸器だ。

 ――

 では、日本としては、まったく手がないのか? いや、そうでもない。春の時点で、日本政府は単独で、人工呼吸器の確保に走った。特に、自動車産業に依頼した。その結果、自社では作らなくとも、専門メーカーに協力することで、生産台数を6倍に増やした例もあるそうだ。
 新型コロナ危機のさなか、政府はトヨタに「部品でもよいので人工呼吸器を作れないか」と打診した。政府の人間の頭にはアメリカのGMが人工呼吸器を作ったという事例があったのだろう。
 「現在、生産しているところへ行って、品質を上げる、量がたくさん出るようにすることはできます」
 そこで、生産調査部は他社も参加した混成チームを編成し、医療向け電子機器メーカー日本光電の富岡生産センタ(群馬県)へ出かけて行った。チームはトヨタ、デンソー、東海理化の3社から8人が参加。4月の末から7月の中旬まで、断続的に指導した。
 「私たちは人工呼吸器に関しては素人です。しかし、生産性向上、増産に関してはプロです。ですから、できる限りやります。また、自動車も人の命を預かる機械です。必ずお役に立つことができます」
 政府からの要請は月に300台である。6倍もの増産だった。
 「結果的には達成しました。でも、私たちがやったことは具体的にはそれほど難しいことではないのです。
 まず新しいラインをひとつ作りました。次に作業の平準化です。毎日、一定の数を作ることを徹底しました」
 3カ月で生産性を6倍上げると聞くと、「それは無理」と思ってしまうが、実はムダを省いて、平準化するだけで生産性は上がる。問題は、ムダをしている本人はそれをムダと思っていないことにある。ムダは他人から指摘してもらわなければなくならない。
( → ノウハウがない人工呼吸器の生産を6倍に増加 トヨタ流の生産方式 - ライブドアニュース

 トヨタが生産の無駄を排除して、生産の効率を上げるだけで、生産台数が6倍に増えた。そういう効果があったことになる。

 また、そういうことを自動車会社に依頼した政府も立派だった。安倍首相が直接依頼したわけではなさそうだが、少なくとも、「コロナに対するいりょうん対策を急げ」という号令をかけたはずだし、それは立派だった。
 今の菅首相が「経済対策のために GoTo をやれ」という旗を振るばかりなのと比べると、当時の安倍首相のまともさがわかる。

 安倍首相に比べると、菅首相はあまりにも異様で異質で、経済のことしか頭にないとわかる。



 [ 付記 ]
 次の記事がある。
  首相はこれまで、自ら好んで「強さ」をアピールしてきた。かつて総務相として取り組んだふるさと納税の創設は、「金持ちの優遇になる」といさめた官僚の言葉を「抵抗」とみなして屈しなかった逸話として、繰り返し披露。
( → 「ぶれない」信条、頑なさに GoTo・医療費…きしむ政権:朝日新聞

 あちこちで「大失敗だ」と批判されている ふるさと納税を、自画自賛している。批判の声がまったく耳に入らないらしい。しかも、これで大得意になっているようだ。
 どうしてこういう馬鹿げたことができるのか? たぶん、こう思っているからだ。
 「国民が望んでいるのは、金のバラマキだけだ。国の全体をどうするかというようなことはどうでもいい。単に金をバラまくだけで、国民は喜んで、大喝采するはずだ」
 こう思っているからこそ、この逸話を繰り返し披露するわけだ。

 そして、そう思っている理由は、ただ一つ。「自分がそうしてもらったら嬉しい」と思っているからだ。結局、菅首相は、自分の財布のことばかりが大事であって、国や国民という全体をどうしようかというようなことは、まったく念頭にないのだ。その点では、常に国のことを意識していた安倍首相とは、正反対だとも言える。
 菅首相が情けないほどの小人物であることから、安倍首相が立派な宰相に見えてくる。史上最悪と思えた安倍首相が名宰相に見えてくるのだから、菅首相のひどさは度を超しているとも言える。
 
 ともあれ、人工呼吸器の生産を、安倍首相の時期の政府が春の時点で指示していたのは、日本国民にとって幸いだった。あのころから菅首相になっていたら、日本は今ごろ悲惨なことになっていただろう。(いや、すでに悲惨になりかけているが、輪をかけて悲惨になるところだった。)
 

posted by 管理人 at 20:48| Comment(0) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
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