2020年12月17日

◆ 洋上風力を推進すべきか? 2

 再生エネとして、洋上風力(発電)が有望視されているようだが、どうか?

 ──

 洋上風力は以前から有望視されていた。欧州では太陽光よりも風力の方が発電量が多い。それを真似して日本でも風力発電を増やすべきだ、という意見も多かった。(特に欧州かぶれの朝日新聞はそうだった。)
 しかしながら、日本では欧州と違って、風力発電に適した土地が少ない。平地だらけの欧州と違って、日本では(発電に適した)平地がもともと少ない。山はどうかといえば、風力発電に適したのは、風の流れのよいところで、「風の道」と呼ばれる場所だが、そこは鳥の通り道となっているので、風力発電を建てると、やたらと鳥がぶつかる。(バードストライク。)
 というわけで、平地も山地も、日本では風力発電には適さない。しかし、日本には、陸地は少なくとも、海がある。そこで、陸地のそばの沿岸で洋上風力をやろう……という発想が出たわけだ。それなら海の多い日本には適しているし、いいことずくめに思えた。
 とはいえ、現状では、やっている事業者は少ない。そこで政府は、洋上ふうろくを促進するために、太陽光の3倍ぐらいの高値で洋上風力の電力を買い取ることにした。(陸上風力よりももっと高い価格だ。)
 これでうまく行くだろう……というのが政府の目論見だったが、さて、どうか?

 ──

 最近では、いくつかの報道が出た。

 (1) 政府は推進
 政府は風力発電を推進する、と大々的な政策を決めた。これは「国策」と言ってもいいくらいだ。国を挙げて洋上風力を推進するわけだ。
 経済産業省は15日、再生可能エネルギーの切り札として期待される洋上風力発電について、現在はわずかな発電容量を2040年までに3000万〜4500万キロワットに引き上げる方針を決めた。原発30〜45基分に相当する規模で、政府が年内に公表するグリーン成長戦略の実行計画に盛り込まれる。
( → 洋上風力発電、40年までに最大4500万キロワット導入 経産省引き上げ方針 - 毎日新聞


 (2) 事業は撤退
 すでに実行されている洋上風力は、事業に失敗して、撤退が決まった。
 政府が福島県沖に設置した浮体式洋上風力発電施設について、所管する資源エネルギー庁は、風車2基など関連設備を来年度に全て撤去する方針を決めた。東京電力福島第1原発事故からの復興の象徴として計約621億円が投じられ、民間への譲渡を模索していたが断念した。
 楢葉町の沖合約20キロに設置された風車3基のうち、世界最大級だった出力7000キロワット風車は不採算のために今夏、撤去した。残る5000キロワット風車と2000キロワット風車の設備利用率は、今年4〜11月でそれぞれ20・9%と27・7%。5000キロワット風車は不具合が相次いでいた。
( → 福島県沖洋上風力発電、21年度全基撤去 原発事故復興の象徴、民間譲渡断念 - 毎日新聞

 設置したのはいいが、故障してばかりで、まともに稼働しないので、大赤字を出すばかりだ、というわけだ。





 こういう事例を見ると、お先真っ暗に見える。そこで、「さっさと断念しろ。どうせ無理だ」と言いたくなりそうだ。
 「MRJ や燃料電池車に駄目出しをした Openブログならば、洋上風力にも駄目出しをするだろう」と思う人もいそうだ。
 しかしながら、話はそれほど単純ではない。(以下で記す。)


 (3) 太陽光の限界
 地球温暖化を阻止するためには、日本の発電量の全量を再生エネにする必要があるが、太陽光発電だけでは無理なのだ。
 日本中の陸地のすべてに太陽光パネルを置くのならば別だが、そんなことをしたら、農業もできなくなるし、山林は丸裸となって各地で洪水が起こるし、道路には太陽光が貼りつけられているので自動車が走れなくなる。……それほどにも太陽光パネルだらけにするわけには行かない。
 現実的には、建物の屋根の全部に太陽光パネルを設置する、というようなことしかできないが、そういうやり方では、太陽光発電の発電量には限界がある。日本の総発電量のうち、10%〜20% ぐらいにしかならない、と見込まれる。
  → 太陽光発電の資源量 - Wikipedia

 ――

 【 以下の記述は、間違いである旨、記述の出展者から訂正がありました。 】


 一方、洋上風力ならば、その数倍の発電量が見込める。下記にグラフがある。

  《 ツイート削除 》


 このグラフでは、太陽光は総発電量の4割ぐらいまでまかなうことができるようだが、それでもまだ、総発電量の全量をまかなうことはできない。 陸上風力も、同様である。
 一方、洋上風力ならば、総発電量を大幅に上回る発電が可能だ。
 得られるエネルギー資源の面で見る限りは、そうなるのだ。

 というわけで、原理的には、「太陽光発電だけでは足りないので、洋上風力が必要になる」と言える。「できるかできないか」という問題ではなくて、「何が何でもできるようにする必要がある」ということになる。「取るか取らないか」という選択肢は与えられていない。「取るしかない」という状況にあるのだ。
 仮にこれを取らないとしたら、化石燃料を取って温暖化を招くか、原発を取って危険性を招くか、どちらかだ。しかしそのどちらも、取るわけには行かない。ゆえに、洋上風力を取るしかないのだ。拒否権は与えられていない。(今すぐではなく、将来の話だが。)



 【 正しくは下記 】


  → 拡大グラフ

 太陽光だけでは必要な発電量をまかなえない……と思って、上記の削除済みツイートを引用したのだが、その後の修正版では、太陽光だけでも必要な発電量をまかなえる可能性はある、と判明した。

 ――

 (4) 結論
 では結局、どうすればいいのか? 
 実は、この問題については、前に考察済みである。「洋上風力をどうすればいいか?」というテーマで論じたことがある。
  → 洋上風力を推進すべきか?: Open ブログ
 そこでは、こう結論した。
 「洋上風力は、将来に有望であるが、現時点では技術が未発達なので、今すぐ実現することはない」
 「そもそも、洋上風力を製造する日本企業もない」( ※ 日立も三菱も製造からは撤退してしまった。欧州から設備を輸入して設置するというサービス業みたいなことだけをやっている。)
 「そこで、将来の普及をめざして、当面は技術開発だけを続ければいい。大々的な普及は、かなり先の将来へと先延ばしすればいい」


 ――

 以上が、先の項目で示したことだ。ただし、新たに本項で付け足すなら、次のように言える。
 「タイムテーブルで言うなら、2050年ごろまでは、太陽光発電の普及をめざすべきだ。技術的にはコストが大幅に下がるので、日本中の至るところで、設置できるところではどこにでも設置するべきだ。特に、建物の壁で発電するという、塗料型の太陽光発電が有望だ」
 「風力発電の普及は、2050年以後でいい。日本には台風が来るので、風力発電の設備は壊れやすい。この問題を解決するには、電子的な技術開発では足りず、材料工学的な技術開発が必要となる。それには、かなり長い年月がかかりそうだ。
 単に強度を得るだけなら、ケブラーやカーボンナノチューブなどでも使えば解決可能だろうが、これらはやたらとコストがかかる。こういう材料が安価に製造できるようになるには、かなり長い年月がかかりそうだ。
 それゆえ、洋上風力を推進するのはいいとしても、それが実用レベルになるまでには、かなり長い時間を見込んだ方がいいだろう。



 [ 付記1 ]
 一方、政府は、かなり楽観的である。冒頭の記事から引用しよう。
 風車を手掛ける国内メーカーは相次いで撤退している。製造数が増えれば、部品数が多い風力発電は経済波及効果も見込めるため、産業界として40年までに国内調達比率を60%に高める目標を掲げた。海に浮かべる浮体式と海底に設備を固定する着床式があり、このうち着床式の発電コストを30〜35年に1キロワット時当たり8〜9円まで引き下げる目標も盛り込んだ。
( → 洋上風力発電、40年までに最大4500万キロワット導入 経産省引き上げ方針 - 毎日新聞

 メーカーがどんどん撤退している、という状況なのに、「政府が補助金を出して推進すれば、技術開発がどんどん進んで、発電コストが大幅に下がるだろう」と見込んでいる。
 あまりにも楽観的すぎて、脳天気というしかない。MRJ の開発の音頭を取ったときと、すごくよく似ている。
 MRJ という無理難題を推進するために政府が莫大な金を投入したなんて、狂気の沙汰だ……と今なら思えるだろうが、当時は(私以外の)誰もわからなかった。
 それと同じことが、洋上発電でもなされているようだ。

 実は、洋上発電の技術開発というのは、最近になって急に始まったものではない。もう何十年も研究が続いている。たぶん 100年ぐらいは研究の歴史があるだろう。ここの 20年ぐらいなら、かなり大々的に推進されてきたはずだ。(特に欧州で。)
 しかし、それにもかかわらず、現在の風力発電はおよそ実用化の域に達していないのである。なぜか? 日本の台風はあまりにも条件が過酷だからだ。(常に一定の風が吹く欧州とはまったく違う。あちらは西岸海洋性気候。日本はモンスーン気候。学校の地理の授業の「気候区分」を覚えているなら、すぐにわかるはずだ。)

 [ 付記2 ]
 洋上風力のコスト予想について、「あまりにも楽観的すぎて、脳天気というしかない」と上で述べたが、その比較対象としては、MRJ よりも、もっと適したものがある。太陽光発電だ。これもまた、「将来はコストが大幅に下がる」と予想して、補助金で推進した。
 で、その結果は? それを信じて工場を大増設したシャープが、赤字で倒産する、という結果になった。
 この件では、2012年の時点で、すでに指摘している。再掲しよう。
 実は、昔は先端技術が大切で、シャープなどが有力だったが、今では中国メーカーも同様に作れるようになった。というのも、「太陽光パネルの製造装置」を、日本企業が中国に販売しているからだ。その製造装置を買って稼働させれば、中国メーカーだって一流品を作れる。しかも、電力や資材などの価格は、為替のせいもあって大幅に安いから、どうしたって中国製の方が圧倒的に安くなる。
 この件は、3年前に私が指摘した。
  → 太陽電池産業の育成
 
 こういう状況だから、もはや太陽光パネルは先端技術品じゃないし、日本企業が生産するべきではないのだ。(3年前に指摘したとおり。)
 なのに、シャープは「目のつけどころがシャープでしょ」と自惚れた。それだけじゃない。「太陽光電池の価格を1年で半額にします」と楽観して発表したりした。(もちろん実現しなかった。)
  → 太陽光発電の支援とコスト
  → 太陽光発電のコスト計算

 こんなデタラメなことを信じて、太陽光事業に突っ走れば、将来的には倒産するだろう……と私は予言した。それも、何度も。
  → サイト内 検索

 結局、私の予言通りになっただけだ。文字通りに倒産したわけではないが、大幅な業績悪化になったのだから、言っている内容としては予言通りになったと見なしていいだろう。
( → シャープの赤字はなぜ?: Open ブログ

 補助金政策が駄目なことについては、下記で述べた。
  → 補助金政策の愚: Open ブログ

 シャープの堺工場の失敗については、下記で述べた。
  → 太陽電池と中国製品: Open ブログ
  → 太陽光発電の問題: Open ブログ

 どうするべきだったかについては、下記で述べた。
  → 太陽電池産業の育成: Open ブログ(009年02月22日)
 パソコンであれ太陽電池であれ、大事なのは、工場で生産する量ではなく、技術開発だ。
 そして、技術開発のためには、需要への補助金で需要を増やせばいいのではなく、開発への補助金で技術開発を高めるべきなのだ。

 つまり、「需要を増やすために補助金を」という政策は、やるべきこととは正反対の方針となっている。愚劣。

 ──

 結局、私としては、次のことをお勧めする。
 日本は、太陽電池そのものは生産しないで、太陽電池を生産するための設備を生産する。そのための高度な技術開発を行なう。つまり、装置産業が成長するようにする。
 その一方で、太陽電池の生産は、特に熱心にやらない。やるならば、途上国の企業との合弁事業の形にして、リスクを回避する。

 これが日本企業の取るべき道だった。そのことは、かつて太陽電池について当てはまったが、今では風力発電について当てはまると言えるだろう。
posted by 管理人 at 23:52| Comment(5) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に [ 付記2 ] を加筆しました。
 太陽光発電との比較。かなり重要な話です。
Posted by 管理人 at 2020年12月18日 07:52
逆に、今頃になって東芝が洋上風力発電に参入意欲とのこと。大丈夫なのでしょうか。
Posted by 港北 at 2020年12月19日 22:43
 販売しても、今の技術では故障だらけになるでしょうが、故障リスクを客に負わせれば、大丈夫でしょう。
 また、客である業者は「故障を覚悟で、補助金狙い」というつもりだし、損はしないのかも。
 損するのは、多額の補助金を出して、故障だらけの機械を買う……という国民だけかな。東芝も、その甘い汁を狙うつもりなのかも。(国民を食い物にする、とも言える。)

 ま、販売しないで、当面は技術開発に専念する、という手もある。そのくらいの資金力はあるでしょう。三菱の MRJ みたいに事業化しなければいい。研究開発に専念すればいい。そうすれば、10年後には、大きな収益を生むかも。
(そのときまでは、補助金を食い物にして、生き続ける。)
Posted by 管理人 at 2020年12月20日 00:05
また無意味な補助金で、泣くのは国民ですか・・・・

おっしゃるようにMRJの失敗に学び、技術的に十分見通しが立ってから参入すべきですね。
Posted by 港北 at 2020年12月20日 16:59
洋上風力発電の研究開発ですが、NEDOのページに紹介がありますね。いろんな機関が共同で技術開発に携わっているようです。

(NEDOより)
https://www.nedo.go.jp/floating/index.html
Posted by 反財務省 at 2020年12月20日 20:39
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