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GoTo トラベルについての報道を、順に示そう。
(1) 世論の批判
世論の批判は、前項で述べたとおり。
政府の新型コロナウイルス対策は「評価しない」が55.5%。感染防止と経済活動のどちらを優先すべきか尋ねたところ「どちらかといえば」を含め「感染防止」を挙げたのは計76.2%に上った。
支持率は50.3%、不支持は32.8%だ。
( → 菅内閣の支持率が急落、50%に コロナ対応「評価しない」55% )
世論は政府のコロナ政策を批判している。
※ しかるに支持率は過半数だ。矛盾しているというか、倒錯的というか。
(2) 尾身会長の見解
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、GoTo に否定的な見解を示した。
→ 尾身会長、GoToトラベルから東京除外を指摘 : 読売新聞
→ 尾身氏、コロナ急増ならGoTo中止を 政府は継続方針変えず:時事
(3) 政府が一時停止を検討
政府が一時停止を検討している、という報道が出た。
→ 政府“GoToトラベル”一時停止を検討|日テレNEWS24
これはどうも、厚労省あたりがニュース源らしい。
(4) 首相が一時停止を否定
首相や官房長官は、「一時停止を検討している」という報道を否定した。
→ “GoTo一時停止”政府首脳ら否定的考え(日テレNEWS24)
→ 菅首相、Go Toトラベルの一時停止「まだ考えず」:東京新聞
→ GoTo一時停止、検討している事実ない=一部報道で官房長官 | ロイター
政府中枢が否定したということから、(3) は厚労省がニュース源であることを窺わせる。本来担当する厚労省の方針を、菅首相がひっくり返した、ということらしい。いかにもありがちだ。
(5) 分科会の逆襲
「一時停止はしない」という首相方針で落ち着くかと思ったが、人の命を見過ごしにはできないので、分科会が逆襲している。「停止せよ」と。
→ Go Toトラベル「ステージ3の一部で一時停止を」コロナ分科会が提言:東京新聞
→ 分科会、感染深刻な地域のGoTo停止を提言 菅首相「対応を調整」 | ロイター
後者の記事によると、分科会が「 GoTo 停止に加え、営業時間の短縮」と示したら、菅首相は「 GoTo の一時手死はしないが、営業時間の短縮をやる」というふうに答えたらしい。
何ということでしょう。
(6) 菅首相の意地
菅首相や周辺は、意地を張っているようだ。
菅首相は GoToトラベルの継続に強いこだわりを持っていて、政権幹部は「絶対に一時停止はしない」と話しています。
( → “GoTo一時停止”政府首脳ら否定的考え(日本テレビ系(NNN)) )
「絶対に……しない」
だってさ。こうなると、「何が正しいか」ではなく、「首相が意地を張るかどうか」ということが問題となっているようだ。
これは「インパール作戦」や「八甲田山 死の彷徨」を窺わせる。作戦の失敗を知っても、絶対に方針を改めない。なぜなら方針を改めることは、自らの誤りを認めることになるからだ。それよりは、部下の全滅を選ぶ、というわけだ。(一億総玉砕でも、敗北を認めない。)
まあ、独裁体制というのは、そういうものである。菅首相の名誉のためであれば、国民全体が滅びても仕方がない、というわけだ。
一将功成りて万骨枯る。虚栄。
※ もっと不思議なのは、こういう首相を支持する国民だ。[本項冒頭 (1) で述べたとおり。] 一億総玉砕を唱える首相がおかしいのかと思ったら、そういう首相を支持する国民の方がおかしい、というわけ。……日本国民、集団自殺。レミングの集団自殺(寓話)みたいなものか。どこまでも ついて行きます 下駄の雪。
【 追記 】
続報。菅首相は、国会答弁をしないかわりに、ニコニコ生放送に出演した。
尾身茂会長が記者会見でGoToトラベルの一時見直しについての提言を報告した同じ時間帯、菅義偉首相はニコニコ生放送に出演。
冒頭、「みなさん、こんにちは。ガースーです」とにこやかに挨拶した菅首相。
GoToキャンペーンを一時停止については「そこは考えていません。考えてないというか、今日提言を受けたわけですから」と語り、……
「いつの間にかGOTOが悪いことになってきちゃったんですけど、移動では感染しないという提言もいただいていた」との本音も吐露しながら、……
( → 菅義偉首相「GoToが悪いことになってきちゃった」 ニコニコ生放送で | ハフポスト )
「ガースーです」というのも痛いが、それはさておき。
「移動では感染しないという提言もいただいていた」というが、下記報道がある。
英スコットランド自治政府のスタージョン首相は9日の記者会見で、今夏以降の新型コロナウイルスの感染再拡大は旅行が原因だったと発表した。英科学者チームがウイルスの遺伝子配列を解析した結果、夏季の旅行によって英国内外からウイルスがスコットランドに持ち込まれたと結論付けた。
スタージョン首相は「調査結果は一度は抑え込んだ感染が再拡大した背景に、旅行が大きな役割を果たしたことを明確に示している」と述べた。
感染拡大中の日本では、政府が推進する観光支援策「 Go To トラベル」をめぐり、菅義偉首相が「感染拡大の主要な要因とのエビデンス(証拠)は存在しない」と主張している。スコットランドの調査結果は日本の議論にも一石を投じる可能性がある。
( → 感染再拡大、旅行が原因 英、遺伝子解析で結論―新型コロナ:時事ドットコム )