2020年12月11日

◆ 若い世代を優遇する?

 「高齢者から若い世代へ資産を移転する」という名目で相続税を大幅減免するのは、言葉にだまされていることになる。自分で自分をだましている。

 ――

 「高齢者には資産があるが、若い世代は貧しくて困っている」というふうに唱える風潮が、世間にあるようだ。そこで、「若い世代を優遇するために、高齢者から若い世代へ資産を移転する」という方針で、「祖父から孫への贈与税を軽減する」という方針が取られた。
 これは以前から続いているが、今後も続くことが決まった。(ただし一部は改訂。)税制改正の記事で報道されている。
 令和3年度税制改正大綱では、子や孫に教育や結婚、子育ての資金援助をした場合、贈与税がかからないようにする特例措置について、来年3月末までとしている適用期限を2年延長することも決まった。新型コロナウイルス禍で所得環境が厳しくなっている若い子育て世代の負担を軽減する一方、節税目的の利用を防ぐため適用条件を見直し、富裕層優遇との指摘にも配慮した。
 教育資金の贈与を非課税とする特例措置は、30歳未満の人が祖父母や親から入学金や授業料などの教育目的の資金を1500万円を上限に一括で援助を受ける場合、贈与税が非課税になる仕組み。金融機関に開設した専用口座で資金が管理され、領収書などで教育目的に支出されたかがチェックされる。
 現行制度では、祖父母などが死亡した場合、贈与を受けてから3年がたっていれば、使い切れていない残りの資金に相続税はかからなかった。この要件を見直し、贈与を受けた孫などが 23歳未満や在学中である場合などを除き、相続税の課税対象とし、通常の税額に2割加算する。
 また、結婚や子育て資金を1千万円まで一括して贈与した場合に贈与税を非課税とする特例措置も同様に延長する。ベビーシッターや認可外保育施設の利用者に対する自治体や国の補助は所得税の課税対象から外し、出産後の母親に授乳指導や育児相談を行う自治体の「産後ケア事業」の利用料の消費税を非課税とすることで、少子化対策を税制で幅広く支援する。
( → 教育・子育て資金贈与の税優遇2年延長 税制改正大綱  - SankeiBiz

 「これはいいことじゃないか」と思う若い人がいそうだが、さにあらず。これで金が入るのは、祖父母がよほどの金持ちである場合だけだ。たいていの若者は、資産家の祖父母がいないので、対象外である。
 結局これは、金持ちの家系の若者だけが優遇されるわけであって、金持ち優遇策の一種であるにすぎない。それで国税が減る分、たいていの人は損するだけなのだ。

 ――

 ではなぜ、こういう馬鹿げたことが起こるのか? 
 それを知るには、次のことを考えるといい。
 「そもそも相続税は、高齢者から若い世代への資産の移転である。だから、高齢者から若い世代への資産の移転を優遇するのであれば、相続税を減免すればいい」

 どうせなら相続税の減免をすればいい、というわけだ。
 しかし、これがナンセンスであることは、すぐにわかるだろう。通常の家庭ならば、資産が2億円程度までは、相続税はごくわずかで済む。莫大な相続税がかかるのは、資産が2億円を大幅に超えるような金持ちだけだ。そういう特別な金持ち家庭だけを優遇するために、大幅な減税をするというのは、まったく筋が通らない。
 結局、「相続税の減免」というのは、金持ち優遇であるにすぎないからナンセンスだが、冒頭の「若い世代への資産移転」というのも、同様にナンセンスなのである。

 ――

 ではなぜ、人々はナンセンスである政策を支持したか? それは、こうだ。
 「高齢世代から若い世代への資産移転というのは、その世代に属する大衆間でのみ、意味を持つ。(高齢の大衆から、若手の大衆へ) 一方、特定の家系において、祖父から孫への資産移転というのは、ただの相続であるにすぎない」

 特定の家系における相続を、「世代間の資産移転」と呼ぶのは、自分の孫を「若い国民」と呼ぶのに等しい。自分の孫だけに 1000万円を贈与して、それを「日本の若い国民たちに 1000万円を寄付します。社会貢献します」というようなものだ。1人と全員を混同している。言葉のペテンだ。これでは、詐欺も同然だろう。

 そこで、「詐欺にだまされるな」と唱える本サイトが、そのインチキを指摘するわけだ。「自分の孫だけに相続させる(贈与する)ことを、若い世代への所得移転と呼ぶな」と。ただの家系におけるエゴを、あたかも社会貢献であるように見せかけるな」と。

 ――

 そこで、私としては、改善策を示そう。こうだ。
 「高齢世代から若い世代への資産移転を、非課税としてもいい。ただし、資産を受け取れる側としては、直系卑属(子や孫)を除く」


 子や孫に資産を移転するのは、ただの相続だから、非課税とはしないで、高額の相続税を課するべきだ。
 一方、冒頭の趣旨に応じて、子や孫以外の若い世代に資産移転をするのであれば、それは社会貢献と見なして、非課税としてもいい。
 とはいえ、そんなことをする高齢者はいるはずがないけどね。制度を作っても、利用者はほとんど皆無だろう。

 結局、そのことからしても、「高齢世代から若い世代への資産移転」というのは、題目があるだけで、実質的には内容は空疎であることがわかる。
 言葉のペテンにだまされないようにしよう。



 【 関連サイト 】

 → 教育資金援助に贈与税かからない特例措置 期限2年延長で調整へ | 税制改正 | NHKニュース




posted by 管理人 at 21:25| Comment(0) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
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