2020年12月08日

◆ 日本企業が衰退したわけ

 日本企業が衰退したのは、どうしてか? それを窺わせる話がある。

 ――

 朝日新聞の記事から。
 米大手コンサルティング会社のマッキンゼーが世界の主要企業を対象に興味深い調査をしている。
 経営陣への女性登用で上位4分の1の企業の利益率は、下位4分の1の企業より 25%も上回っていた。同様に人種・民族的なマイノリティーを積極登用した企業の利益率は 36%も上回ったという。これは 2019年の数字で、この傾向は年々顕著になっているという。
 多様なジェンダーやマイノリティーの登用を企業の道義的責務と受け止める空気はすでにある。しかし、この調査はそれが企業パフォーマンスや実利に直結することを証明している。
 公正・公平な評価が優秀な人材の登用に道を開いたからだけではない。調査を担当したケイリン・エリングラッドさんは、(1) 多様な人材で構成されるチームの方が解決の選択肢が多く、難題への対応能力が高い (2) 新しい発想に寛容――と説く。
 「似たもの同士の方が、摩擦は少なく、居心地もいい。でも緊張感がある方が『違った発想』が生まれる。成長を目指す時にこそ必要なものです」とエリングラッドさんはいう。
( → (日曜に想う)多様な人材登用、結果求めてこそ アメリカ総局長・沢村亙:朝日新聞

 なるほど。男ばかりの職場だと、体制が古くなり、パワハラなども起こりやすくなる。だから組織全体のパフォーマンスも下がる。
 女性を活用する職場だと、体制が新しくなり、各人の能力がフルに発揮されやすい。女に優しい職場は、男にも優しい。だから組織全体のパフォーマンスも上がる。
 そういうわけだ。

 ――

 ひるがえって、次のような状況は、いかにも古臭い。
  ・ 自民党が、選択的夫婦別姓を拒否する。
  ・ 自民党が、女性天皇を拒否する。
  ・ 大会社が、産休を取る女性社員をイヤがる。
  ・ 大会社が、産休を取る男性社員をイヤがる。

 こういうことをやると、頭そのものが固くなるから、組織全体が硬直する。そのせいで、市場における競争では、負けてしまうわけだ。

 ――

 これと関連する話がある。前出の排ガス規制の話だ。
  → 日本の温室効果ガス政策: Open ブログ

 ここでは、ZEV 規制や CAFE方式を導入せよ、と述べているが、同時に、(未達成への)罰金も導入せよ、と述べている。

 一方、日本政府の方針は、どうか? 
 脱炭素化へ向けた企業の研究開発を支援するため2兆円規模の基金の創設
( → 追加経済対策、財政支出40兆円 3次補正は19兆円へ:朝日新聞

 欧米では「非達成に罰金」なのに、日本では「開発のために2兆円の補助金」という優遇措置を取る。大甘だ。
 政府は 2030年代半ばに国内で売る乗用車の新車を電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など、排ガスの少ない車に限る目標を設ける方向で調整に入った。
( → 2030年代半ばに販売ゼロ ガソリンだけで走る新車 政府調整:朝日新聞

 欧米では「排ガス・ゼロの電気自動車か燃料電池車に限る」なのに、日本では「ハイブリッドも許す」となる。大甘だ。

 どっちにしろ、日本政府は、自動車業界に大甘である。甘やかしすぎとも言える。欧米とはまるきり違う。

 ――

 ここで思い出すのは、昔の日本だ。「マスキー法」などで排ガス規制が進んだ時期が合った。日本ではホンダの CVCC のような技術で、規制を技術的にクリアした。そのために莫大な研究開発投資をしたが、その投資で、世界最先端のエンジン技術を備えるようになった。
 この時期に日本の自動車会社は圧倒的な投資で世界最優秀のエンジン技術を備えるようになったので、以後は燃費でも優秀となった。おかげで世界的にシェアを高めることができて、今では日本の貿易黒字の大部分を自動車産業が占めるほどにもなった。
 そして、こうなった根源は、「厳しい排ガス規制をクリアしようと、自動車会社が必死に研究開発したこと」なのである。
 これは、「自動車会社に大甘で優遇しよう」という現在の日本政府の方針とは、正反対だ。

 「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」というが、そういう厳しい方針を取ることで、我が子を成長させる。それがかつての日本政府の取った方針だった。
 逆に、今の日本政府は、大甘のぬるま湯で優遇しようとする。経団連や自動車会社もまた、やたらと甘えたがる。金持ちのドラ息子みたいだ。

 こういうふうになったから、日本企業は衰退していくのである。



 [ 付記1 ]
 この手の現象を説明する言葉がある。「スポイルする」(甘やかして駄目にする)という言葉だ。
 日本の企業は、普段は「市場原理」「自由競争」なんて言っているが、実は「競争したくない」「政府からお金をもらいたい」というのが本音だ。いかにもドラ息子らしい。

 似た例で、「地デジ補助金」というのがある。これで地デジのテレビは急速に普及したが、需要が一巡したあとは、テレビがまったく売れなくなって、家電各社は売上げ急減に悩んだ。設備が遊休して、大損だ。
 政府が何もしなければ、一定の需要がずっと続いたのに、政府が「補助金」なんていう余計なことをして、業界もそれを歓迎したから、「急激な大需要」のあとには「需要急減」という状況となった。これはまるで「バブルと、その後の不況」という感じだ。トータルで言えば、大損となる。
 結果的に、大損を出した家電会社は、自社ではテレビを作れなくなってしまった例が多い。一世を風靡した「レグザ」はもはや外資に売られた。「アクオス」も会社ごと売られた。日立のテレビも消えた。(「ブラビア」と「ビエラ」は残っているようだが。)
 甘やかされた企業の末路は、哀れである。

 [ 付記2 ]
 金持ちのドラ息子と言えば、こういう例がある。
  → 性的暴行「ミスター慶応」を生んだ資産100億円一族 | 文春オンライン
 
 今の日本企業は、これと似たり寄ったりだ。

  ※ ドラ息子に金をやたらと与える馬鹿親父は、自民党政権だ。
 
posted by 管理人 at 22:22| Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 ニュースから。

>  東京都の小池百合子知事は8日の都議会本会議で、都内で販売される新車について、2030年までに「脱ガソリン車」とする方針を表明した。
 https://www.jiji.com/jc/article?k=2020120800884&g=soc

 政府が馬鹿すぎるから、東京都が当たり前のことをやると、特別に目立つ。
Posted by 管理人 at 2020年12月09日 07:18
>ドラ息子に金をやたらと与える馬鹿親父
円安誘導などで経団連というオールドエコノミーを甘えさせ続けた結果、この十年何ら新商品を生み出さなかったという停滞をもたらすことになってしまいました。
Posted by yomoyama at 2020年12月10日 01:14
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