2020年12月08日

◆ 製鉄の炭酸ガスを減らすには?

 製鉄のときに出る炭酸ガスを減らすには、どうすればいいか? 
 
 ――
 
 鉄鉱石は酸化鉄だが、そこから製鉄するには、酸素を除くための還元剤が必要だ。それには現在では炭素(石炭・コークス)を使っているが、水素で代替するという案もある。そうすれば炭酸ガスの排出を減らせるからだ。
 この問題を扱った朝日新聞の記事がある。
 製造業で最大の二酸化炭素(CO2)を出す鉄鋼業界が技術開発を進めている。カギは大量の水素を安価に調達し、活用することだが、実用化のハードルは高い。
 コークスを水素に置き換えて需要をまかなう規模の鉄をつくるには、水素を大量に消費するからだ。
 コークスをすべて水素に置き換えるには高炉1基分で現在日本に流通する水素量の10倍を使うという。高炉は国内に20基以上ある。
 さらに日本製鉄の宮本勝弘副社長は11月の電話会見で「現在の水素は1立方メートルあたり50円。経済的になるには10円を切ってこないといけない」と指摘。水素を使う燃料電池車では30円で採算が取れるとされるが、鉄鋼業ではより価格が下がる必要があるという。
 これだけ大量かつ安価な水素を得るには、鉄鋼業界の取り組みだけでは難しい。「水素インフラが整った際に高炉で使えるよう準備しておくことしかできない」(業界関係者)というのが実態だ。

( → 鉄鋼「CO2ゼロ」は難題 水素・再生エネ活用、険しい道:朝日新聞

 水素に転換したいが、水素の量も価格も現状では実用レベルになっていないので、実用化は不可能だ、ということだ。困った。どうする?

 ――

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「還元剤として、廃プラスチックを使う。通常はゴミ発電の燃料として使われるが、かわりに製鉄所の還元剤として使えばいい」


 実は、これは私の独創ではない。すでに実現済みである。この件は、前に言及したことがある。
  → ケミカルリサイクルは本末転倒: Open ブログ

 なお、この手法は、「廃プラスチックのケミカルリサイクル」に分類されている。この分類の件は、前に言及したことがある。
  → 汚れたプラスチックの処理: Open ブログ

 というわけで、(私のアイデアではないのだが)製鉄で出す炭酸ガスについては、「廃プラスチックを使えばいい」と結論できる。
 「廃プラスチックを使っても炭酸ガスが出るぞ」と言われそうだが、廃プラスチックはどっちみち燃やして処理するしかないのだ。地球上からプラスチックをなくしてしまうのなら別だが、どうしてもプラスチックを作り続けるのだから、いったん作ったプラスチックをなんらかの形で処理しなくてはならない。とすれば、それを「製鉄の還元剤」として使うことで、「ゴミ発電に回すプラスチック」の量を減らすことができるのだから、総量としては、炭酸ガスの排出を減らすことができる。(ゴミ発電に回すプラスチックの量が減る分、炭酸ガスの排出量も減る。)



 [ 付記 ]
 「プラスチックをリサイクルして、プラスチックを作る」という方法だと、プラスチックが無限循環する。だから、こうすれば、燃焼されるプラスチックはなくて済む……と思うかもしれない。だが、さにあらず。
 この場合には、「廃プラスチックの精製」ということのために、エントロピーを下げるエネルギーが必要とされる。汚れたものを精製するという、本来は必要ないことのために、余計なエネルギーが必要とされる。その分、余計に炭酸ガスが出る。

 ペットボトルとか、食品トレイとか、もともと均一できれいな素材が大量にまとまっているのなら、精製のエネルギーは少なくて済むので、「再生プラスチック」を作るのは可能だ。
 一方、さまざまな包装材(素材は不均一)の混ざった廃プラスチックだと、そこから再生プラスチックを作るのには、高度な精製が必要だ。そのためには莫大なエネルギーが必要だ。

 通常、精製のためのエネルギーと、できたプラスチックのエネルギーは、ほぼ等量となる。エネルギーの大部分は、精製のために使われる。
 わかりやすく言うと、1グラムのプラスチックから1グラムの再生プラスチックを作るために、精製のエネルギー源として1グラムの石油を必要とする。これでは、まったくの無駄だ。

posted by 管理人 at 13:41 | Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
材料リサイクルのムダが付記されています。全くもってその通り!
リターナブルは良いシステムですが、材料ペレットリサイクルは無駄が大。
リターナブル後は、燃やすのが一番。

ですが、廃プラをコークスにするには脱水と重合が必要。加工で1割減か。
それでも水素のエネルギー密度の低さからすると数倍マシ。
水素は運ぶムダが多く、エネルギーキャリアとしては成立しません。
液体ならアンモニア、個体ならバイオ由来のコークス。
日本が海外から運んでこれる再エネの塊はそんな程度。
水素製鉄、メンテナンスや事故リスクの観点でコスト成立しますかねぇ?

脱炭素社会に、根本的な研究開発対象の見直しが必要でしょう。
政治家の基礎知識教育も実は根本的に必要。
例えば、炭素が悪いのではなく、空中に薄く散ってしまうのが問題。
溜められない運べない水素や電気で流通させるのは愚。

例えば間伐材やパーム搾りカスからバイオコークスを創る技術は日本で確立済。
色々な食品廃棄物、藁を現地現物で簡易コークス化して流通できれば。
発酵させてバイオガスにするのもムダ、コークス化させるのは意外な手。
エネルギー密度的に運搬効率もコークスなら各段。水素は物理的にダメです。

そもそも炭酸ガスが悪いかどうかも怪しい御時世。
それでもカーボンオフセットを目指すなら、ば。
再エネを創る国土の無い日本、運べる再エネに特化して研究開発すべき。
中国から海底ケーブルで送電してもらうつもりか?今日ビの政治家は。
バカ言えって感。送電の不安定は北海道厚真のブラックアウトで経験済。
原子力の恐ろしさも、広島長崎と福島で日本人は経験済。

今の世界のエネルギー流通に勝るコスト構築を思案すると、バイオコークス、
なんとなく唯一のような気が最近しています。
次点はアンモニアか。
製鉄所や発電所からのCO2ならCO2回収はなんとかできるでしょうし。
産業用途ならカーボンオフセット流通、コストペイしませんかね。

そもそも水素、地球の重力圏内に留まってくれるものでしょうか?
液化問題も含めた根本的なパンドラ問題が、水素には幾つも潜んでます。
nCO2+nH2O→CH2n+nO2は植物が選んだ超画期的な仕組み。
何故なら、水素が表に出ては非常にまずいからでしょう。結果的に。
それが優勝劣敗の結果であるとするなら、水素としての流通は劣敗必然。

んで、結局は、政治家の基礎知識教育が根本的に必要。に戻ってしまうのか…。
Posted by メルカッツ at 2020年12月08日 23:35
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