2020年12月06日

◆ 高温の微生物(120度)

 「生命の誕生」という話題で、新たな知見が得られたらしい。120度という高温の環境で生きる微生物が発見されたらしいのだ。

 ――

 はやぶさ2が帰還したことが話題になっている。この件で、数日前に、次の記事があった。

 私たち生命は宇宙のどこで生まれ、どう進化してきたのか。そんな起源の謎に迫ろうと、小惑星探査機「はやぶさ2」がまもなく、小惑星の砂を地球に送り届ける。砂には、生命の材料となる有機物が、太陽系が生まれたころの姿のまま保たれているとみられる。
 地球のような惑星は、大きく成長する過程で惑星全体がマグマに覆われるような極めて高温の時期があった。地球はその後、冷えて海ができ、生命が誕生するのだが、有機物は高温になると壊れるため、生命のもとになった材料は、地球が冷えたあとに改めて小惑星などからもたらされたのではないかという説がある。
 もし小惑星と地球で有機物の組成が似ていたら、生命のもとが宇宙由来だったという可能性が強まる。
( → (宇宙新時代)生命の痕跡、太陽系で探せ 「はやぶさ2」まもなく帰還:朝日新聞

 はやぶさ2で採取した岩石にアミノ酸が含まれるかもしれないが、それが地球の生物由来かもしれない……という話だ。

 しかし、アミノ酸だけなら、別に、宇宙に由来する必要はない。
 古くは「フラスコのなかにガスを入れて、放電すると、アミノ酸ができる」という実験がなされた。
  → ユーリー-ミラーの実験 - Wikipedia
 これは、そっくりそのままでは成立しないのだが、可能性を示唆している。

 ※ メタンやアンモニアのような還元性気体のなかで放電するとできるのだが、原始的な環境では二酸化炭素や窒素酸化物などの酸化性気体が主成分であり、そこでは放電しても有機物の合成は困難であるから。( Wikipedia による。)

 ――

 その後、もっと現実的な実験がなされた。
 生命が誕生する前の大気の成分である窒素や二酸化炭素に水や鉱物などを混合した試料を作り、金属片を秒速1キロで衝突させたところ、ごく微量のアミノ酸の一種であるグリシンとアラニンが生成されました。これによって無機物からアミノ酸ができる可能性を示したことになります。
( → 生命誕生の謎解く鍵か アミノ酸生成の実験に成功

 ここではガスは酸化性気体だが、金属があると、金属が還元性の触媒として働くのだと思える。だから酸化性気体と金属と衝突エネルギーから、アミノ酸ができるわけだ。

 いずれにせよ、アミノ酸のような小規模の分子ならば、特に宇宙から持ってこなくても、地球上で生成されることはありそうだ。

 ――

 アミノ酸から生命へ……という過程は、かなり大きな謎となっている。そこには大きな飛躍があるからだ。この件では、一応の仮説を、本サイトでは出したことがある。そこでは、次のような(進化の)経路を考えた。

 (アミノ酸) → ウイルス → 好熱菌(古細菌) → 通常の細菌


 ――

 一方、次の話も紹介したことがあった。

   古細菌 → バクテリア → 真核生物
 というのが従来の発想だったが、実はそれは成立せず、
   古細菌 → 真核生物
 という経路が成立する。(バクテリアを経由しない。バクテリアは別方向の生物だ。)

  → 古細菌(アーキア)と真核生物: Open ブログ

 ――

 一方で、「 120度の環境で生息する微生物が初めて発見された」という報道がある。
 高知県室戸岬沖の海底掘削調査で、海底からの深さ約 1200メートル、温度 120度に達する付近にも微生物が生息していることが初めて明らかになった。
 チームは 2016年秋、室戸岬沖約 125キロ、水深 4776メートルの地点で、海洋機構の地球深部探査船「ちきゅう」で海底を深さ 1180メートルまで掘り、円柱状の試料を採取した。海底の温度は 1.7度。掘り進むほど温度が上がり、最下部は 120度前後になっていた。
 この試料を調べると、最下部を含む部分に高温でも生きられる超好熱性のメタン生成菌が活動していることがわかった。海洋機構の稲垣史生・マントル掘削プロモーション室長は「地球深部で超好熱菌が発見されたのは初めて。1千メートルを超える深さから微生物の密度が徐々に増加しており、生息温度の限界は見いだせなかった」と話す。まだ掘削できていない、さらに深い高温部にも微生物が存在する可能性がある。
( → 室戸沖の海底下1200メートル、温度120度に微生物:朝日新聞

 「へえ。すごい」と思ったが、本サイトのなかで検索してみたら、この話はすでに言及済みだ。
  → 地下に微生物が大量存在?: Open ブログ

 「 120度の環境で生息する微生物」なんてものは、とっくに発見済みなのである。
 ググってみると、Wikipedia にも記述があるとわかる。
 2009年時点で最も好熱性が強い(高温環境を好む)生物は、……オートクレーブ温度を上回る122°Cでも増殖することができる。
( → 好熱菌 - Wikipedia

 とっくに発見されているわけだ。朝日の記事では「新発見」というふうに報道されているが、そんなことはないわけだ。

 ――

 とはいえ、新発見であってもなくても、120度という高温環境において生息する微生物がいる、とわかった。
 とすれば、こういうあたりが「生命誕生」の場に近いのだろう、と推定される。



 [ 余談 ]
 はやぶさ2の話題で、興味深い記事があった。
 日本の宇宙関連予算が年間3千億円台で推移するなか、はやぶさ2のような無人探査や観測衛星などの科学予算は5年前の約200億円から160億円に減った。逆に増えているのは、事実上のスパイ衛星である情報収集衛星など安全保障分野や、国際宇宙ステーション(ISS)計画を含めた有人探査の分野だ。
 特に、有人月探査計画には今後5年で約2千億円が投じられる見通しだ。宇宙政策委員会の松井孝典・委員長代理は「科学探査は技術開発の基礎。次世代を担う人材育成の場としても重要で、予算がさらに圧迫されないか心配だ」と話す。
( → 日本の宇宙探査、結晶帰還 50億キロの旅、生きた初代の教訓 はやぶさ2:朝日新聞

 安倍政権下では、はやぶさ2のような宇宙関連予算はどんどん削られているわけだ。「はやぶさ2はすごい」なんて言っているが、予算はどんどん削られているのである。先の展望は見込めない。(残念なことだ。)
 その一方で、有人月探査計画には、巨額の金が投入される。なぜ? 米国の計画にお金を献上するためだ。犬や奴隷というのは、そういうものだ。安倍首相がトランプ大統領の犬になりたがっていたので、そういう結果になる。


youkai_jinmenken2.jpg


posted by 管理人 at 23:50 | Comment(1) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
故トーマス=ゴールド博士による「未知なる地底高熱生物圏」で提唱された、生物起源説が画期的、歴史的新説でした。
この説の証拠が次々と発見される時代になったということだと思います。
Posted by 塚本水樹 at 2020年12月07日 04:53
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ