2020年12月01日

◆ 水素時代という妄想

 化石燃料のあとで水素の時代が来る……という発想があるが、これは妄想だ。

 ――

 朝日新聞の論説記事にある。これまでは化石燃料の時代だったが、これからは水素の時代が来る……という趣旨。
 CO2の排出を削減するには、石炭や石油といった化石燃料は使えない。これらを燃やすとき、含まれている炭素(C)が空気中の酸素(O2)と結びついてCO2ができるからだ。
 一方、水素(H)であれば、燃料として使ってもCO2が出ない。
 水素と酸素で電気を起こす燃料電池を使うことで、車を運転しても、冷蔵庫やテレビを使っても CO2を出さずにすむ。将来、航空機や船舶、発電所で水素が使われることもあろう。 政府は、こうした水素の活用を「50年に実質ゼロ」にむけた実行計画に盛り込むことにしている。
( → (社説余滴)2050年、水素の「色」は? 村山知博:朝日新聞

 しかし、電気自動車ならば、化石燃料も水素も必要ない。電気を使うからだ。化石燃料や水素のような物質ではなく、電子があればいいのだ。

 つまり、「化石燃料から水素へ」という発想が古すぎる。その発想そのものが化石的なんだよ。自分自身が化石的なんだよ。

 ――

 しかしまあ、朝日の文系記者なら、理系のことはわからなくても仕方ない。たぶん分子と電子の区別もできないアホなんだろうし。

 一方、トヨタの社長は、(学歴はともかく)仕事は工業なんだから、ちゃんと理解してもらいたいものだ。なのに、(水素時代を夢見て)、こんなことを言っている。
 7月にはテスラの時価総額がトヨタを抜き、自動車メーカーで世界一に。いまやテスラの時価総額はトヨタの2.5倍になった。
 「株式市場の評価は完全に負けているが、リアルの世界では一歩先に行っている」。
 11月6日、トヨタの決算会見で、豊田章男社長はテスラに対抗心をむき出しにした。
( → (時時刻刻)EV、先駆ける米中欧:朝日新聞

 この記事では、世界の各国の自動車会社はどんどん EV を生産している……と述べている。なのに日本は日産の8位が最高で、トヨタは12位、三菱は13位だそうだ。1位のテスラからは大幅に引き離されている。そういう状況でありながら、
 「リアルの世界では(テスラよりも)一歩先に行っている」
 だって。アホか。どうも妄想にひたっているようだ。菅首相も顔負けなぐらい、現実認識ができていない。

 もしかしたら、燃料電池車(新型トヨタ・ミライ)を近く発売するので、「一歩先に行っている」と思っているのかもしれない。しかし燃料電池車はお先真っ暗だ。一方で、電気自動車はバラ色だが、その電気自動車では、トヨタはまったく出遅れている。

 これらの件については、下記記事で説明しているので、参考にしてほしい。

 ――

 テスラ車は、補助金をもらえなくても、もはや競争力が抜群に強い。肝心の電池については、稀少元素を使わずに大幅にコストダウンして、自動車の販売価格を下げる見込み。
 こうなると、テスラの一人勝ちとなりそうだが、テスラがどうのこうのというより、電気自動車が圧勝する時代が来る。これまではバッテリーが壁となって、ガソリン車に勝ちにくかったが、バッテリーの壁が(コスト的に)打破されれば、もはや「ガソリン車よりも高コスト」ということはなくなるのだから、ガソリン車を圧倒できるようになる。

 で、そうなったら、もはや燃料電池車(水素自動車)の出番はまったくない。
( → 燃料電池の死 6: Open ブログ

 日産は、来年あたりにリーフをモデルチェンジしたり、低価格帯の新車を出したり(上記)して、巻き返しを狙っているそうだ。落後することはないようだ。
 一方、ひどいのは、トヨタとホンダだ。落後しそうだ。
 トヨタとホンダは、完全に出遅れだ。他社(VWやベンツやBMW)が「電気自動車重視」という方針を数年前に出したのに、今ごろになってようやく「電気自動車重視」なんて言い出している。圧倒的に遅れている。
( → トヨタ・ホンダの大失敗 (EV): Open ブログ

 トヨタが久々に電気自動車を発売した。あまりにも出遅れだが。
 とはいえ、販売の規模がショボイ。
 国内ではたったの 135台だけの販売だ。これではまともに市販したことにはなるまい。
 これはホンダの EV もそうだ。Honda e は、国内では年間で 1000台しか販売しない。

 トヨタであれ、ホンダであれ、まともな EV を販売し始めたのが、ようやくこの秋からだ。あまりにも出遅れだ。しかも、その販売台数がきわめて少ない。試験販売というレベルに近くて、まともな商業レベルになっていない。
( → トヨタが電気自動車を発売: Open ブログ

 電池レスの EV が主流になりそうだ。
 無線で電力を得ることもできる。電磁誘導というやつだ。
 電磁誘導で送電を受けると、いくら走行しても充電容量が低下しない。なぜなら、信号機の前を通る(停車することもある)たびに、そこから充電を受けるからだ。ちょっと走行しては、ちょっと充電する、という感じだ。
 というわけで、充電容量が減らないのだから、充電池はごく小さなものがあるだけで足りることになる。
( → 電池レス EV: Open ブログ


 冒頭の朝日の記事では、「化石燃料の次には、どんな燃料を搭載した自動車が来るだろうか?」と思っているのだろうが、実は、燃料を搭載しない自動車が来るのである。水素を搭載して長距離を走る燃料電池車ではなく、電磁誘導を受けながら無限に距離を走る電池レスの電気自動車が来るのだ。 



 [ 付記 ]
 ちょっと思ったんだけど、 日産は新型ノートの EV を作るといいね。リーフは不格好だし、アリアは値段が高すぎる。ノートならば、リーフやシルフィよりも安価に EV を作れるから、台数を出せるだろう。
 もともと e-POWER を搭載する仕様だから、EV に改造するのも簡単だろう。(エンジンを外して、リチウムイオン電池を搭載するだけで済む。)



 【 関連サイト 】

  → 電気自動車の価格はバッテリーコストが下がり2022年までにエンジン車に優る競争力を獲得する | EVsmartブログ

  → 43万円のEV、中国でテスラ超え 五菱製「人民の足」:朝日新聞
  → 中国の「44万円EV」が農村市場で快走する背景 | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済







posted by 管理人 at 23:31| Comment(4) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
水素製造&輸送&供給に莫大な電力と化石燃料を必要とするので、そんなことをするくらいなら直接電力を使用したEVのほうが便利かつ低コストに決まってますよね。
Posted by けろ at 2020年12月02日 09:52
液体水素は非常に軽い液体で、その密度は70.8 キログラム/立方メートル(20Kの時)と重量エネルギー密度が最も大きい。したがってロケット燃料としては最も効率的である。
Posted by クエスチョン at 2020年12月03日 23:17
> 一方、トヨタの社長は、(学歴はともかく)仕事は工業なんだから、ちゃんと理解してもらいたいものだ。なのに、(水素時代を夢見て)、こんなことを言っている。

⇒ 耳が痛いですね〜!
  章鬼(あっき)滅殺、自滅(じめつ)の刃!
Posted by かわっこだっこ at 2020年12月04日 11:16
電池メーカー大手のパナソニックが、マツダを買収して、全力で電気自動車の会社に変身させるのが良いと思う。

RX−7ならぬEX-7とか、

コスモスポーツの
電動車版コスモスポーツEタイプとか、
Posted by 塚本水樹 at 2020年12月05日 21:51
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