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この提言は、朝日新聞で紹介されている。(小さな記事。)
経済学者や財政学者が26日、感染拡大で医療崩壊の危機が迫っているとして、国の財政支援によって病床数を大幅に増やすよう求める提言を発表した。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーも務める小林慶一郎氏らがまとめた。
提言によると、現在計画されている患者向けの病床数(2万7646床)では足りず、さらに2万床が必要だという。
( → (経済ファイル)経済学者ら、病床数大幅増を提言:朝日新聞 )
簡単に紹介されてるだけなので、提言の内容の詳細は不明だ。
特に重要なのは、その新しい病床の種類だ。増やすのはいいとしても、どうやって増やすのか?
新規に増床するのか? 既存の病床を転換するのか? そのどちらであるかが不明だ。
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そこで、原典を捜すと、次のページが見つかった。
→ 【緊急提言】新型コロナ感染急拡大に対応した医療提供体制拡充について | 東京財団政策研究所
ここから該当箇所を捜すと、最もそれらしいのは、下記の箇所だ。
大流行に備えるためには、9月の予備費措置で確保できた病床に加えて、あと2万床(うち重症者向けには2,500床)を新たに確保することが必要であると考えられる。負担のかかる医療機関にさらに一層の協力をしていただくために、実効性のある追加的な財政措置を講じることが必要となる。方向性としては、民間医療機関にコロナ対策への参加を促す強力なインセンティブを与える措置を講じる。その際、医療機関間の連携を促進する観点から、医師や医療スタッフ等を他の医療機関に派遣する医療機関サイドにも支援措置が講じられることが重要である。同時に、現場を支え、奮闘している医療者に対して十分な支援措置を直接提供するとともに、現場の就労環境の改善に強力に取り組むことが必要である。
これを見ても、やはり不明である。単に「病床数を増やす」と述べているだけで、どうやって増やすかまでは述べていない。具体的に述べているのは財源の話だけだ。経済学者らしく、財源や補助金の話ばかりしていて、医学的な話はまったくされていない。最初から最後まで、お金の話ばかりだ。
そこでかわりに、私が医学的な面から考える。(本項の目的。)
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新規に増床するのか? 既存の病床を転換するのか? これについて考えよう。
まず、新規増床は無理だ。コロナの流行時に一時的に新規増床したら、そのときはいいとしても、そのあとでそれらの大量の病床が役割もなく稼働しなくなる。金銭的には償却もできず、莫大な赤字が残るだけだ。つまり、あとで大量の無駄が生じるわけだ。これでは駄目だ。
では、既存の病床の転換は? これもやはり無理だ。既存の病床の一部をコロナ用に転換したら、その分、他の病気の分の病床が削減されるので、他の病気の人が(病床不足・手術不足で)死んでしまう。……こういうことは、欧米で実際に起こっている。(他の病気の死者が増えている。)
結局、新規増床も、既存の病床の転換も、そのどちらも駄目だ。
提言の「金を出せ」という方針は必ずしも間違いではない。だが、「金さえ出せば解決する」というのは楽観的すぎる。いくら金を出しても、売っていないものは買えないのだ。売られていないものを買うことはできない。
経済学者は、「(市場では)金を出せば買える」と思っている。だが、医療は市場ではないのだ。そのことを理解できないようだ。
では、どうすればいいか? 病床を増やすには、病床を買うための金を増やすせばいいのではない。むしろ、病床の供給そのものを増やすべきだ。
そして、そのためには、「金を増やせ」という経済とは別の原理が必要となる。
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では、供給を増やすには? それに対する唯一の策は、こうだろう。
「軽症者向けの隔離施設に医師を派遣して、臨時の病床とする」
つまり、病院における正式の病床を増やすのではなく、病院に代わる臨時施設のベッドを増やす。そこでは、患者は、特に治療を受けるわけではなく、単に隔離されて滞在しているだけだ。
このような隔離施設ならば、既存のホテルを一時的に借りるだけで済むので、容易に実現できる。
だから、上記の提言は、次のようにするべきだった。
(誤)「病床を大幅に増やせ」
(正)「隔離施設におけるベッド数を大幅に増やせ」&「派遣医師を増やせ」
※ 増やすのは、医師だけでなく、看護師や技師も。
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このようなものは「簡易病床」と呼んでもいいだろう。
そこでは、本格的な治療は受けられない。だから、症状の重い患者は対象外だ。あくまで治療の必要のない軽症者だけが対象となる。
とはいえ、治療はなくとも、看護師の監視や、パルスオキシメーターの常時監視もある。また、体温もひんぱんに測る(検査する)。
ここで変化(悪化)があれば、看護師が即応する。大きな異常があれば、医師が即応する。いずれにせよ、隔離施設における看護師や医師が対応する。こういうことは、自宅ではできないことだ。(自宅ではパルスオキシメーターもない。)だかか、隔離施設に入ることには、大きな意義がある。(入院に近い効果がある。)
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ただし、問題もある。それはアビガンの処方だ。
アビガンは、現状では特定の指定病院のみが可能であって、他の施設では処方できない。軽症者向け施設では処方できない。これでは「軽症のうちに、なるべく早期にアビガンを投与することで、患者数や重症者数を減らす」という目的が達成できない。
だから、アビガンをさっさと承認するべきだ。そうすれば、軽症者向け施設でも処方できるし、老人向けの介護施設でも処方できる。かくて、症状が軽減されるので、入院が必要となる患者数を減らせる。また、重症者数も減らせる。
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結論。
・ 病床を増やすべきだ、という目的自体は妥当だ。
・ しかしその手段が問題だ。いかに増やすか?
・ 病院の病床を増やすことは不可能である。
・ 軽症者向け施設のベッド数を拡充するべきだ。
・ 軽症者向け施設への、医療人員も確保するべきだ。(医師等)
・ アビガンの承認も必要だ。
[ 付記1 ]
アビガンの承認こそが最重要だと言える。これによって、病床不足の問題を大幅に軽減できる。
そのためには、薬はコロナの特効薬である必要はない。薬は、ある程度の効果があればいい。たとえば、入院患者の総量をゼロにする必要はなく、入院患者の総量を半減させるだけでいい。半減させることができれば、それによって医療の負担は大幅に減じるからだ。
「特効薬でなければ意味がない」なんて言っているバカ医師の与太を聞く必要はないのだ。さっさとアビガンを承認することが、最優先の課題なのである。
→ アビガンを早期承認せよ(冬): Open ブログ(前項)
[ 付記2 ]
現実には自宅療養を希望する人が多いそうだ。
だが、単身者ならば(同居人がいないので)自宅療養でもいいが、華族がいる人なら、家族への感染が起こりがちなので、自宅療養は好ましくない。やはり隔離が必要となる。(単身者以外は。)