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熊本県知事が建設の方向を打ち出した。
熊本県の蒲島知事が川辺川ダムの建設を進める前提で調整を行ったうえで、今月19日にも具体的な方向性を表明する方針であることが関係者への取材でわかりました。
( → 熊本 蒲島知事「川辺川ダム建設前提で調整」19日にも表明へ | )
従来のダムとは二点で異なる。
・ 多目的ダムでなく、治水専用ダムにする。
・ 穴空きダムにする。
穴空きダムというのは、下記のようなもの。
【流水型ダム】普段は水をためず、豪雨などによる増水時に貯水することで、河川に流れる水量を調節する治水専用ダム。堤体に穴をあけて流水路を確保する形状が多く、「穴あきダム」とも呼ばれる。魚の遡上(そじょう)や土砂の流出を妨げないことで環境負荷が少ないとされる一方、流木で詰まるなどの懸念もある。(図あり)
( → 川辺川ダム、容認へ 熊本県知事、近く表明 「流水型」軸に調整|【西日本新聞】 )
しかしこれには反対がある。
国は今年、河川整備に頼るだけでなく市町村や住民も治水に参画する「流域治水」を打ち出した。田んぼやため池を遊水地として活用するなど、流域全体で工夫して河川に一気に流れ込む水の量を減らしていく考え方だ。
( → 社説 川辺川ダム建設 流域治水の具体化こそ | 信濃毎日新聞 )
遊水地を使うという案は、私も推奨した。
もともと二つの流れがある。その二つのうちの一つにダムを作るわけだ。だが、ダムを一つ作っても、二つのうちの一つの分だけだから、水量削減の効果は半分でしかない。
結論。
球磨川に川辺川ダムを建設するというのは、巨額の金がかかる割に、効果はたいしたことがない。コスパが悪い。
かわりに、遊水地と越流堤をつくればいい。それならば、少なめの費用で、多大な治水効果が出る。
( → 川辺川ダムは必要か?: Open ブログ )
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一方、それとは別に、先日、政府は新たな方針を示した。災害の危険のある地域には人を居住をさせない、という方針だ。
財務省は19日に開かれた財政制度等審議会(財政審)で、被災するリスクが高い土地の開発を制限したり、ほかの地域に住むように促したりすることで、防災にかかる費用を抑えるべきだと提案した。来年度予算案の編成作業のなかで国土交通省に求め、増加傾向にある公共事業を抑えたい考えだ。
財務省は、人口減少が進んでいるのに、2015年時点で浸水が予測される土地に住む人口が、半数以上の自治体で1995年より増えている点を問題視。そのうえで、災害リスクの高い地域では、政府系金融機関の住宅ローンの金利を高くしたり、損害保険料を高くしたりして、リスクの低い土地に住むように促すべきだと主張した。
( → 災害リスク低い、土地居住を提言 財政審で財務省:朝日新聞 2020年10月20日 )
これと同趣旨のことは、その少し前にも報道されており、本サイトでも紹介した。
→ 災害危険地域に居住禁止: Open ブログ
いずれにせよ、これは合理的な方針だ。
実は、この方針は、私も前に述べたことがある。上の記事でも紹介しているが、過去記事で何度か提唱している。
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特に川辺ダムに関連する球磨川流域では、具体的に開発計画を地図付きで紹介している。下記項目だ。
→ 熊本の水害・その後(2020): Open ブログ
こういうふうに「流域対策」によって、水害を防ぐことができる。こちらが正しい方針だ。
一方、冒頭の熊本県知事の方針は、おかしい。
・ 川辺ダムに巨額の金を投入する。
・ 川のすぐそばにある危険な家屋は、そのままにして、移転なし。
これでは本末転倒というものだ。非常に危険な状態を放置しておいて、水害が生じないように巨額の金を投入する。あまりにも馬鹿げている。
比喩的に言うと、こんな感じ。
「歩車道を分離すれば、危険度は低いので、何も問題はない。なのに、歩車道を分離しないで、車道のそばを人が歩くようにする。これでは危険だからという理由で、車道の速度を時速 10km 以下にまで低下させる」
危険な状態を解消すれば何も問題はないのに、危険な状態をあえて放置するから、見当違いの方向で無駄な対策が必要になる。……あまりにも馬鹿げている。狂気の沙汰だ。そういうことをするのが、熊本県知事だ。
【 関連項目 】
→ 川辺ダムが建設へ 2: Open ブログ
本項の続編。