2020年11月07日

◆ アビガン使用の体験記

 コロナでアビガンを使用した患者の体験記がある。これを読むと、現状ではアビガンの運用基準が間違っているとわかる。

 ──

 コロナでアビガンを使用した患者の体験記が朝日新聞に掲載された。(連載5回)
  → (患者を生きる:4043)新型コロナ 住吉美紀とラジオ:1

 趣旨はおおむね、こうだ。
  ・ 入院した時点では、(軽めの)「中等症」と診断された。
  ・ アビガンの処方はなかった。
  ・ 4日目、症状が非常に悪化したら、アビガンの処方を提案された。
  ・ 「このままでは持たないかも」と思っていたので、アビガンを服用した。
  ・ 9日目には、熱が 37度台まで下がった。
  ・ 服用して8日目に、検査で肝機能の低下があったので、アビガン中止。
  ・ その後いくらかして、治癒したので、退院。


 この要点は、こうだ。(アビガンについて)
  ・ 症状が非常に悪化するまで、服用せず。
  ・ そこで服用したら、症状が改善した。


 これでは、やることが逆だろう。
 アビガンはなるべく早期に服用するべきだとされている。症状が出ていない打ちならば、早すぎるかもしれないが、いったん高熱を発したら、なるべく早期に服用するべきだ。特に、中等症の初期には、ぜひともアビガンを服用するべきだ。
 なのに、この事例では、中等症の初期には服用せず、症状が悪化した中等症の後期になって服用している。やることが正解とは逆になっている。

 ※ 病院はどこかのボンクラ病院ではない。聖路加国際病院という超一流病院だ。医師も当然ながら一流のはずだ。それでいて、この始末だ。呆れる。

 ──

 では、どうしてこうなったか? 専門家による運用基準が、そもそも間違っているからだ。記事にはこうある。
 日本集中治療医学会と日本救急医学会の指針によると、アビガンは軽症患者には「弱い推奨」とする一方、中等症や重症の患者には推奨するかどうか判断していない。指針をまとめたチームのリーダー、大阪医科大の山川一馬(やまかわかずま)准教授(42)=救急医学=は「中等症以上の患者への使用については科学的根拠が出そろっていないため、現時点では推奨していない」と話す。
 そのうえで「いまも中等症以上の患者に使う医師はいる」と〜
( → (患者を生きる:4047)新型コロナ 住吉美紀とラジオ:5 情報編 薬の使い方、個別判断も:朝日新聞

 「中等症以上の患者への使用については科学的根拠が出そろっていないため」と理由を述べている。「科学的根拠が出そろっている」という非常に厳しいことを条件として付けているわけだ。

 一方で、同じ記事にはこうある。
 一方、指針は中等症以上の患者へのステロイドの使用を「強い推奨」とした。患者の体内では、サイトカインと呼ばれるたんぱく質が多く分泌され、免疫が暴走して正常な細胞を傷つけることがあるとされ、ステロイドはこれを防ぐ効果があると考えられている。少量を使うことを推奨している。

 その根拠は、こうだ。
 重い呼吸不全がみられる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)……(略)
 ARDSの患者に対しては、呼吸状態が悪くなってすぐに大量のステロイドを短期間使うことで、重大な副作用がなく死亡率を下げる可能性がある。……」と話す。

 つまり、「死にかけた重症の患者に、大量のステロイドを短期間使うと、有効である」という結果が出たが、そのことを理由に、「ただの中等症の患者に少量を使う有効だ」と考える。勝手に考えるだけであって、何ら実証はされていないのだが、こういう勝手な考えに基づいて、中等症の患者へのステロイドの使用を「強い推奨」とした。

 つまり、こうだ。
  ・ 軽症と中等症へのアビガン処方については、有効性がほぼ実証されている。
  ・ 重症へのステロイド処方については、有効性が十分に実証されている。
  ・ 中等症へのステロイド処方については、何も実証されていない。(想像だけがある。)


 こういう状況において、次のように結論する。
  ・ 中等症へのアビガン処方については、推奨しない。
  ・ 中等症へのステロイド処方については、強く推奨する。


 これでは方針が反対だろう。頭がイカレているのではないか、と疑いたくなる。
 そして、こういうふうに頭のイカレた判断をするから、冒頭の記者は、症状が悪化するまで、アビガンを処方されなかったのだ。無意味に症状を重くされてしまったのだ。
 記事にはこうある。
 熱が40度前後まで上がったり少し下がったりを繰り返した。せきも続いていた。心臓をぎゅーっとつかまれるような痛みもあった。
 入院4日目、仁多さんたちは会議で、住吉さんにアビガンの服用を提案すると決めた。
 「心臓が持たないかも」と感じていた住吉さんは同意書に署名した。
( → (患者を生きる:4044)新型コロナ 住吉美紀とラジオ:2 心臓が…アビガン開始:朝日新聞

 熱が40度前後まで上がったり、心臓をぎゅーっとつかまれるような痛みもあって、「心臓が持たないかも」と感じた。それほどにも、ひどい症状になっていた。
 こんなにもなるまでほったらかしにおいて、死にそうになって初めて、アビガンを処方する。何というひどさ。「サディストかよ!」と詰りたくなる。

 ──

 ただし、以上の話には、斟酌すべき点もある。というのは、この患者の事例は、4月下旬だったからだ。このころは、アビガンの処方が一般化しつつあるという、経過措置の時点だった。アビガンの処方が一般化した5月よりも前の時点だった。だから、アビガンの処方にいくらか慎重になったとしても、仕方ないとも言えるかもしれない。

 とはいえ、現時点では違う。現時点では、アビガンはもはや有効性がはっきりと判明している。副作用の少なさも判明している。中等症の患者には、猶予なく、さっさと処方するべきなのだ。
 それにもかかわらず、専門家による運用基準は、以前のころ(アビガンの効果が不明だったころ)と変わっていない。
 これでは、中等症の初期の患者が、アビガンなしで放置されかねない。また、(高熱を出したばかりの)軽症者も同様だ。

 これらの患者の重症化を防ぐためには、(熱を出したら)なるべく早期のアビガン処方を、運用基準に記すべきだ。
 現在の専門家の指針は間違っている。早急に指針を改訂するべきだ。さもないと、無駄に重症患者が増えるだろう。



 [ 付記 ]
 以上とは関係のない話だが、次の記事がある。
 新型コロナウイルスの感染収束のめどが立たない中、全国の3割の感染者が集中する東京都では入院患者数が高止まりしている。3カ月にわたり1千人程度が続き、医療現場は疲弊する。冬場に感染が再拡大すれば医療崩壊を招きかねず、都は伸び悩む宿泊療養施設の利用を増やそうと工夫をこらす。
 入院患者数を抑えるため、都は無症状や軽症の人を対象に宿泊療養を促している。現在、ホテルなど9施設で計1910人の受け入れが可能。ただ、自治体に強制力はないこともあり、6日時点の利用者は275人どまりだ。
 そこで、都は持病があれば入院という原則を緩め、8月以降、薬でコントロールできる糖尿病患者や高血圧の人も宿泊施設で受け入れられると明示。
 当初は禁じていた食料や着替えの差し入れも、要望を受けて解禁。不評だった食事も野菜を増やしたり、ホテルのシェフに作ってもらったりと工夫を重ね、焼きそばなどの夜食まで提供する。
( → 東京のコロナ入院者数、高止まり 1000人3カ月、医療現場疲弊:朝日新聞

 今まで何やっていたんだ、という感じですね。
  ・ 病院は満杯で医療逼迫。
  ・ 理由はホテルの利用を制限していたから。
  ・ 薬でコントロールできる糖尿病患者や高血圧の人は利用不可。
  ・ ホテルの食事も利用禁止。
  ・ 食事は野菜不足で不評。
  ・ 食料や着替えの差し入れも禁止。


 これじゃ、収容所だろう。来たがる人がいるわけがない。馬鹿丸出しというしかないね。
 やたらと管理を強めることばかりを考えていたから、こういう結果になる。大川小の話と通じるところがある。
  → 大川小の津波被害の教訓: Open ブログ (前項)



 【 追記 】
 アビガンを早期に処方すると、上の [ 付記 ] の問題への対処策となる。なぜか? 
 現状では、入院患者が増えすぎているという問題がある。ここで、アビガンを早期投与すれば、患者の治療が早まるので、入院期間が短くなる。入院期間が2割減れば、入院患者数は2割減る。(早めに退院して、ベッドがあくからだ。)
 というわけで、入院患者が増えすぎているという問題には、アビガンの早期投与で解決が進むのだ。……この利点にも着目するべきだろう。
 
posted by 管理人 at 15:44| Comment(2) |  感染症・コロナ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2020年11月08日 19:18
アビガンの承認が見送られましたね。
Posted by なまず at 2020年12月23日 00:08
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