2020年11月02日

◆ 大阪都構想が否決

 大阪都構想が否決された。これを考察する。

 ──

 これは世間で騒がれている話題なので、私も言及しておこう。


 (1) 開票の大逆転
 開票は異例の大逆転となった。夜の 10時 20分ごろまではずっと賛成が小幅のリードを保っていたし、差は徐々に拡大しているように見えた。だからこのまま賛成多数となると思われた。ところがそれから 30分もたたないうちに、反対が多数となり、まもなく反対の勝利が確定した。
 私は 10時 20分ごろまで開票を見ていたが、「賛成多数」が揺るがないとみたので、そこでテレビから離れたのだが、気がついたらいつのまにか、ネットで「反対派の勝利が確定」と報じられていた。
 こんな大逆転は、今まで一度も見たことがない。びっくりだ。

 ※ クリントンにトランプが勝ったときは、ずっと「接戦」と報じられていたから、特に意外感はなかった。一方、今回の開票結果は、最後に意外感があった。


 (2) 反対の増加
 事前の世論調査では、ずっと「賛成」が上回っていたが、反対派は徐々に差を縮めつつあって、最後には「伯仲」となっていた。このように「反対がずっと増加基調にあった」ということが重要だ。
 下記にグラフがある。


osakato.png
9月からの都構想賛否の推移:ABCテレビ.JX通信社合同特設サイトより




 (3) 反対の理由
 では、どうしてこうなったのか? これについては、下記に一応、考察がある。
  → 最終盤に急増した「反対」ー 独自データで読み解く大阪都構想住民投票「否決」のワケ(米重克洋)
 だが、この考察を読んでも、あまり納得の行く感じはしない。「毎日新聞がコスト増加の記事を出したから」という理由も掲げてあるが、毎日新聞の部数なんてタカが知れているし、大勢を動かすには足りなかっただろう。
 むしろ、さまざまな人々が大阪都構想のメッキを剥がしていったからだ、と言う方がいい。たとえば、シルクという女芸人が、大阪都構想に反対を唱えた。
  → シルクオフィシャルブログ
 これに限らず、多くの人々が、大阪都構想のメッキを剥がしていった。
 ちなみに、本サイトでも同種の項目を書いたことがある。
  → 大阪都構想とコロナ: Open ブログ

 要するに、多くの知識人がこぞって「大阪都構想に反対」という趣旨の話をするようになった。大阪都構想というのは、維新の唱える夢物語であって、そのメッキを剥がせば、ただのハリボテにすぎないということが明らかになっていったのだ。

 つまり、反対者は、大阪都構想そのものがハリボテであることを見抜いて、反対したのだ。一方、賛成者は、大阪都構想を理解して賛成したのではなくて、維新を信任するから賛成しただけだった。「橋下さんはすごい」「維新はこれまで立派な業績を上げた」と思って、「だから維新の唱える大阪都構想を支持しよう」と思っただけだった。

 そもそも、維新の唱える「二重行政の解消」というのも、もともと意味のないことだった。二重行政というものは、もともとたいして問題ではない。問題があったのは、大阪市と大阪府が対立したからだ。
 ここで大阪市を解体したからといって、特に状況が良くなるわけではない。かわりに特別区ができたなら、特別区と大阪府が対立すれば、やはり同様の問題が生じる。要するに、自治体が喧嘩するのはよろしくないということだ。二重行政うんぬんの問題ではない。

 基本的には、維新の支持者たちが、維新の掲げた夢を勝手に信じていた、というだけのことだ。それに対して、反対者は、現実を見ていた(馬鹿げた夢を見なかった)だけであるにすぎない。


 (4) 年齢.性別の分布
 年齢.性別の分布を示すグラフがある。


osakato-2.gif
出典:産経ニュース


 これを見ると、次のことがわかる。
  . 30代、40代の男性だけは、賛成が極端に多い。
  . 20代の男性と、30代の女性は、賛成が多い。
  . 他の層はいずれも、反対が多い。


 主として若手の男性ばかりが、賛成多数となっているようだ。では、その理由は? やはり、「維新は現状を改革してくれる」「大阪都構想は大阪を成長させてくれる」と夢見ているからだろう。
 彼らのほとんどが、こういう夢ゆえに、大阪都構想を支持している。その一方で、「大阪都構想とはこういうものだ」という詳細については何も理解していないも同然だ。

 「だまされやすい人々がだまされている」と総括してもよさそうだ。


 (5) 理念と現実
 「大阪都構想は大阪を成長させてくれる」
 という理念があるが、現実はどうか? そもそも維新の政治は、大阪をどれほど成長させてくれたのか? それについては、大阪市民では「維新はよくやっている」「大阪は成長した」と思っている人が多いようだが、現実は違う。
 経済成長率をみると、全国に比べて大阪の経済の伸びが大きかったわけでもない。10〜17年度の国の名目経済成長率は平均年 1.3%で、大阪府の成長率(年 1.1%)を上回る。国内で生んだ付加価値の総額を示す「国内総生産」(GDP)に占める「府内総生産」の割合は、10年度の 7.4%から17年度は 7.3%とわずかだが下がった。
( → 大阪府に一元化で「成長実現」 別の要因も?:朝日新聞

 年次推移のグラフもある。(マイナス成長の年が多いとわかる。)
  → グラフで見る! 大阪府の府民経済計算 大阪府の実質経済成長率の推移 年度ベース 【出所】内閣府 県民経済計算

 要するに、実績を見る限り、維新は大阪を成長させるどころか、その逆だった。夢はまったく成立していなかったわけだ。


 (6) 大阪都構想の本質
 では、大阪都構想の本質は何か? もし実現したとしたら、何が起こるのか?
 「二重行政の解消」というと、「喧嘩の解消」という効果はあるが、もともと喧嘩をしていなければ、対立は生じないのだから、双方が維新の政治家である限りは、何も問題が起こらないことになる。

 実は、この問題の本質は、「権限の対立」ではなく、「財源の移行」である。つまり、次のことだ。
 「大阪市が解消すると、大阪市の開発予算は、大阪府に吸収される。本来は豊かな大阪市だけに投じられるはずの開発予算が、大阪府全体にまんべんなく投じられる。その分、豊かだった大阪市民は損をする」

 これを理解するには、次のことを想定すればいい。
 「仮に横浜市が解体されて、その開発予算が神奈川県に吸収されたら、どうなるか? 横浜市と他の地域とが平等に扱われるようになる。豊かだった横浜市の財源は召し上げられて、他の市に分配されるようになる。その分、横浜市民は損をして、他の市民は得をする」
 このことは、一種の「平等化」であるから、良し悪しは一概には言えない。ただし、横浜市民にとっては、明らかに損である。とすれば、横浜市民が「横浜市を解体しよう」というのは、「自分の財布の金を、他の市の人々にばらまこう」というのと同じであり、愚の骨頂である。
 そして、それと同じことをやろうとしているのが、今回の「大阪市の解体」だ。大阪市民にとっては自傷行為も同然だろう。(リスカするようなものだ。)


wristcut.png


 こういう話は、下記ではいろいろと説明されている。詳しい話を知りたい人は、読むといいだろう。
  → 今さら聞けない「大阪都構想」
 

 (7) 大阪都構想の真相
 結局、大阪都構想とは、こうだ。
 無知な人々が「大阪を成長させてくれる」と信じて夢見ながら、実際には自分の体を傷つけるだけとなる……という倒錯。
 
 ただし、本当の真相を言えば、こうなる。
 大阪都構想とは、「喧嘩の大好きな橋下徹が、喧嘩相手の大阪市長をぶっ潰そうとして売った喧嘩」である。
 そして、その喧嘩相手である大阪市長が消えたあとでも、喧嘩相手がいないまま、その喧嘩を無駄に続けているのが、大阪都構想だ。喧嘩相手がいなくなったのだから、もはや喧嘩を続ける意味はない。なのに、当初の喧嘩にこだわって、喧嘩に勝つまではいつまでも喧嘩を続けようとする。それというのも、橋下徹が、三度の飯より喧嘩が好きだからだ。喧嘩相手がいなくなっても、とにかく喧嘩に勝たないと、気が済まないのだ。

 チェシャ猫が消えたあとでも、チェシャ猫の笑いだけが残る。それと同様に、喧嘩相手が消えたあとでも、喧嘩だけは残る。……そういう奇妙な形で、大阪都構想は残り続けたのである。
 そして、その意味は? もともとは、大阪府が大阪市に売った喧嘩であるから、大阪府が勝利して、大阪市が敗北することで、完結する。とすれば、大阪市民としては、「大阪市の敗北」を目的とする大阪都構想なんて、当然ながら、受け入れられるはずがない。受け入れれば、自分が損をするだけだ。

 なのに、そのことがわからないまま、大阪市民は大阪都構想を受け入れようとしていた。なぜか? 詐欺師の口車に、まんまと だまされていたからである。
( ※ 最後の最後になって、ようやく目を覚ましたようだ。ただし若い男性だけは、最後になっても、目を覚まさなかったようだ。「成長神話」という、ありもしないものを、いつまでも信じ続けた。)



 【 追記 】
 大阪からの現地報告。
【 大阪市民だけど、前回・今回の住民投票では分断を感じて怖かった。 】

 普段から親しい間でも政治の話はしないようにしているが、こと「(いわゆる)都構想」の話になると、自分から賛成・反対の意見を言い、そして自分の意見と逆の人を強く否定する人をネットでもリアルでも見かけるようになった。

  ̄ ̄
 投票権がない人からよく出た質問は「結局都構想って何?何が争点になっているの?」だった。
 それに答えられる人はあまりいなかったように思う。

  ̄ ̄
 維新を支持しているかどうかと、市を解体して特別区を設置することに賛成するかどうかは、別の話なんじゃないのかと思っていたが、そうではないようだ。
( → はてな匿名ダイアリー

 結局、賛成者というのは、「維新は素晴らしい。維新は改革で成長させてくれる」と信じた人々である。これはもう、宗教的な信仰に近い。
 彼らは、「大阪都構想とは何か?」を知らないまま、維新のやることに、白紙委任状を出したがっているわけだ。
 かくて、それが自傷行為になると気づかないまま、素晴らしい希望を夢見て、ひたすら直進するのである。(寓話の)レミングのように。
 
 
posted by 管理人 at 23:57| Comment(5) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>>  そして、それと同じことをやろうとしているのが、今回の「大阪市の解体」だ。大阪市民にとっては自傷行為も同然だろう。(リスカするようなものだ。)

これぞまさしく「身を切る改革」
Posted by ろくぞう at 2020年11月03日 03:14
>30代、40代の男性だけは、賛成が極端に多い。

この層が一番、大阪の経済がそれほど良くないのを肌で実感してて、
経済的な自立度が高く、都構想が失敗しても
大阪市どころか大阪から逃げられるからじゃないですかね。
かつ大阪市で生まれ育った人も比較的少ないでしょうし。
東京で同じようなことやっても同じ傾向になると思いますよ。
Posted by じん at 2020年11月03日 03:27
管理人様は、早くから大阪都構想のデタラメをブログに書いて下さっていて、その慧眼には心底関心致しました。
大阪人は、あまりにも酷い大阪の衰退で、大阪を改革してくれるなら、どんな政党でも良いという思いもあったと思います。(私が関西に住んでるときもそう思ってました)
維新のぶち上げる理想に陶酔し、東京はおろか、欧米の一級都市に比肩する都市を夢想していたように思います。
あと、この数十年の大阪は、ミニ東京のようになっていっており、「大阪らしさ」が薄れてきてます。(本来の大阪弁ではなく、吉本芸人が喋る似非関西弁みたいな感じ)
大阪から関東圏へ越してくる友人知人も増えてますし…私もそうですが、関西に見切りをつける人がこれからも増えそうです。(複雑ですが)
Posted by 名無し at 2020年11月04日 01:32
以前日本人はなぜ保守化したか?という記事を書かれていたので今回大阪で67万人も変化を望んでいて驚きました。大阪市解体という。
Posted by 山尾 at 2020年11月07日 16:44
 保守化しているから、お上である維新の言うことには、盲目的に従うんです。お上が「右向け」と言えば、盲目的に右を向く。それが何を意味するかもわからずに。
 大阪市解体だなんて思っている人はいないのでしょう。単に維新が賛成しろと言ったから、賛成しているだけ。意味もわからずに。
Posted by 管理人 at 2020年11月07日 17:35
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ