──
主人公の炭治郎は、鬼退治のときに怪我をして、その怪我が治りきっていないまま、治療を受けたが、その間はいろいろと痛い思いをしていた。それを回想して言うモノローグ。
珠世さんに手当てをしてもらっているが怪我は完治していない、勝てるのか?俺は……
その怪我が痛くて痛くて堪らないんだよ!!
俺はもうほんとにずっと我慢してた!! 善逸を女の子から引き剥がした時も声を張ったときも すごい痛いのを我慢してた!!
俺は長男だから我慢できたけど次男だったら我慢できなかった
( → ニコニコ大百科 )
「長男だから我慢できた」というのを、理解できない人が多いようだ。たとえば、下記。
炭治郎の「長男だから耐えられた」問題
あれを差別だとか家父長制だとか言ってるの、最初ギャグだと思って笑ってたんだけどマジっぽくて戦慄した。
「長男だから〜」程度のユーモアシーン ……(以下略)
( → はてな匿名ダイアリー )
こういう誤解もあるようだ。そこで解説しておこう。
──
この台詞はギャグなんかではない。真面目に言っている。だから、見た人の評判も高い。
→ 一番好きな竈門炭治郎のセリフは? 3位「俺は長男だから我慢できたけど…」
ここには次の感想もある。
「我が家の7歳の長男は、痛いこと、辛いことをやるときに、この言葉を喋って自分を鼓舞しています」と、実際にお子さんが使っているセリフだというコメントも届いています。
もう一つ、次のツイートもある。(2連発)
単純なわたくし「はっはっは、何でも我慢してしんぜよう!なぜなら私お姉ちゃんだから!お姉ちゃんだから!!!ドヤァ!!!」
— かまぼこ@抽選7日まで (@kamabokotikuwa) October 22, 2020
母「さすがお姉ちゃんになると違うわね、凄いわね」
単純なわたくし「はーっはっはっは!!////」
この二つの例からわかることは、何か? こうだ。
「子供にとっては、我慢することは大切だ。そのことを、子供自身が自覚している」
子供のことをわがままな動物だと思ってはいけない。子供は何かをしたがるが、同時に、それを我慢することも大事だとわきまえている。そして、そういうふうに我慢することで自分を成長させたい、とも思っている。
大人にとっては、「我慢するか/しないか」という二者択一であるし、今さら我慢しても仕方ないので「我慢なんて馬鹿らしい」と思いがちだ。しかし子供は違う。子供は、「我慢することで自らを成長させたい」と思っているのだ。子供にとって最高の望みは、自分を成長させることだ。目の前のチョコレートを見て、「食べたい」とも思うが、「それを我慢することで自分を成長させたい」とも思う。そして、後者を実行することで、深い満足を得ることもできる。
今さら成長することのない大人には理解できないだろうが、子供にとって何よりもの望みは「成長すること」なのだ。
だからこそ、「我慢すること」を自らに課する炭治郎に共感できるのだ。(子供たちの日々は、我慢することの日々でもあるからだ。)
──
わかっていない人が多いようだが、「鬼滅の刃」は子供向けのアニメである。そこでは「子供の視点・子供の心理」を基本に据えている。それが根本原理なのだ。
だから、映画館でも、半分ほどが子供であり、残りの半分近くはその保護者であって、大人が単独で来ることは少ない。
→ https://genkimorizou.com/kimetsu-movie-when/
中学生にも人気だそうだ。
→ 鬼滅の刃は中学生に大人気 - Togetter
幼稚園でも人気があるそうだ。
→ はてなブックマーク コメント
かなり幅広い年代の子供に人気があるようだが、いずれも子供である。つまり、20歳以下。換言すれば、成長途上。
したがって、「長男だから我慢できた」という言葉を理解できない大人は、「我慢して成長する」という子供の心理を理解できていないことになる。
「鬼滅の刃」は子供のために描かれているということを理解するべきだ。さもないと、この漫画の意味を理解できないし、「大人のためのバトル漫画だ」というふうに勘違いしかねない。……そんな解釈は、子供の玩具を取り上げるようなものであって、とても感心できたものではない。
→ https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201030/k10012688201000.html