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これは新しいニュースではなくて、前からずっと話題になっていたことだから、知っている人も多いだろう。
ローグ (ROGUE) は英語で「お茶目な」、「悪戯な」という意味を持つことから、これが車名に決定された。しかし、「Rogue」には「悪漢」、「はぐれ者」という意味もあり、アメリカではこの車名が不評でもある。
( → 日産・ローグ - Wikipedia )
アメリカの自動車関係のブログで、日産『ローグ』がホットな話題となっている。発端は、「ローグっていい車なのに、名前がイメージと合っていない。名前を変えるべきでは?」という発言。これに賛同者が続出、日産には命名センスがない、と酷評されている。
ローグには、「悪漢、はぐれ者」と、「お茶目な、いたずらな」という2つの意味がある。日産は当然後者をイメージして命名したのだろうが、大多数のアメリカ人は前者のイメージを思い浮かべる、という
( → 日産『ローグ』は命名ミス? | レスポンス(Response.jp) )
後者は 2008年の記事なので、ずいぶん前から話題になっていたことになる。
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さて。上の解説だが、明らかにおかしいところがある。お気づきだろうか?
正解を言おう。こうだ。
「お茶目な、いたずらな」というのは、Rogue の意味ではない。「お茶目な、いたずらな」は形容詞としての意味であるから、Rogue(名詞)の意味でなく、Roguish(形容詞)の意味である。
つまり、上の説明は、まったくのデタラメである。おそらく日産が、あとになってこじつけで付けた説明なのだろう。
どうせなら、「茶目、いたずら」という名詞的な語義にするべきだった。それなら、まだわかる。
だが、そもそもの話、「お茶目な、いたずらな」という意味は、普通の中型の英和辞典には掲載されていない。大型の英和辞典で、かなり下位の方になって出てくる語義である。つまり、普通は使われないような、珍しい語義である。ということは、たいていの英語圏の人々には、理解できない語義である。そんなものを商品名にするというのは、明らかにおかしい。
とすれば、「お茶目な、いたずらな」という語義を持ってきたのは、やはり、後出しジャンケンのこじつけだろう。
要するに日産は、「お茶目な、いたずらな」というような語義のために、この単語を用いたのではない。本当は別の語義が理由だったのだ。
では、それは何か?
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こういうふうに迷って考えたすえに、一つ思いついたことがあった。こうだ。
「日産はこの名前を、英語で考えたのではない。日本語で考えてから、和英辞典で英訳したのだ」
では、日本語で考えたとしたら、どんな日本語で考えたか? 「悪漢」というような語義の言葉をいくつか思い浮かべると、適した言葉が二つ見つかる。
一つは、日産が前に別の車名として使った「バサラ」である。この風変わりな名前は、日本語の「婆娑羅」から取ったもので、次の意味がある。
身分秩序を無視して実力主義的であり、公家や天皇といった名ばかりの時の権威を軽んじて嘲笑・反撥し、奢侈で派手な振る舞いや、粋で華美な服装を好む美意識であり、室町時代初期(南北朝時代)に流行し、後の戦国時代における下克上の風潮の萌芽ともなった。
( → ばさら - Wikipedia )
日産の命名担当者には、こういう変な言葉を使う伝統があったようだ。
そこから思いつく言葉が一つある。これだ。
「荒くれ者」
これならば、SUV 車の名前としては、なかなか適している。特に、日産みたいな独りよがりな命名をしたがる会社にとっては、喜んで採用しそうな名前だ。
で、この「荒くれ者」という日本語を、英訳すると、どうなるか? 「たぶん Rogue になりそうだ」と思って、ネットで調べたら、まさしくそうだった。
→ 荒くれ者 英語 - Google 検索
辞書によっては、Rogue という語が出てこないことも多い。となると、いくつかの和英辞典で「荒くれ者」を英訳したあとで、最も発音しやすいものを選んだのだろう。
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以上のように考えれば、日産が Rogue という不評な語を選んだ理由が推測できる。
そもそも、英語圏の人にとってはひどく不評であるということからも、この命名が日本人だけで決まったことがわかる。
日産の社員の英語力のひどさが窺えるというものだ。
[ 付記 ]
で、こういう連中が「英語の社内公用語化」なんてことを実行するのだから、結果は推して知るべし。
「英語の社内公用語化」を実行した日産は、新車の開発体制が崩壊してしまったのかもしれない。
日産はここ十年間ぐらい、フルモデルチェンジをした車種は非常に少ない。すべての車種で平均のモデル年齢は8年ぐらいであるようだ。エルグランドは 10年目でも変わらず、フェアレディに至っては 12年目でも変わらない。(来年に 13年目で変わるらしい。)
日産は来年、多くの新車を出すらしいが、もしかしたら、ゴーンがいなくなったあとで、「英語の社内公用語化」を大幅に緩和・縮小したのかもね。それで新車が開発できるようになったのかも。
【 関連項目 】
→ 英語の社内公用語化は?: Open ブログ
※ 日産自動車の社内事情。
【 追記 】
この件から、教訓を得ることができる。こうだ。
「英語の(意味だけでなくニュアンスを込みにした)語感を考えるときは、和文英訳をするのではなく、英語だけで考えよ」
英語に慣れていない人だと、辞書などの和文英訳機能を使って英語を使いたがるが、それでは駄目だ。英文和訳機能を補助的に使うぐらいはいいが、原則としては「英語で思考する」ことが必要だ。
そして、そういうことができない人は、企業においては英語担当の役職には就くべきではない。特に「英語の商品名を命名する」というような部門においては、そうだ。
日産自動車は、「エクストレイル」「キャシュカイ」みたいに変な名前の車種が多すぎる。「ティーダ」「ティアナ」なんていう変に気取った発音しにくい名前も多い。車名のせいだけで売上げが数パーセントは落ちていると思った方がいいね。車名のリストラをして、全面的に変更した方がいいだろう。
なお、残してもいいのは、「マイクラ・セントラ・アルティマ・マキシマ」ぐらいだ。ただしこれらは国内では使われない名称だ。ちなみに、「フェアレディ」「スカイライン」は、世界的には通用していない国内専用の名称だ。もう、メチャクチャと言える。(ほとんど気違いレベル。)
【 関連サイト 】
日産の新型ローグは、発表されたばかりだ。(近日発売予定。) その意味では、新型ローグそのものは、ニュース価値がある。(名前の話題は古いけど。)
新型ローグの評価は、こちらにある。
→ 新型日産「ローグ」試乗レビュー アメリカ人の感想は?
CVT が改善されて、弱点がなくなったらしい。
まあ、2.5 L ぐらいのエンジンまでなら、CVT で足りるだろう。それ以上になると、CVT でなく トルコン AT が必要となるが。
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